この素晴らしい少年に祝福を!   作:ねこたつむり

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・・・すみませんorz


夏のある日

・・・あぢぃ。

まだ朝にもかかわらず外でうるさく鳴いているセミが聞こえる中での目覚めの一言がそれだった。それもそのはず昨日の夜中に張り巡っていた氷が溶けて、気温も戻り三十度前後。そんななかで布団をかぶりなおかつめぐみんとこれでもかと言う位にくっついて寝ていたんだ。こんな布団さっさと出たいんだけど・・・

「・・・ふっふっふ、これが爆裂魔法のいりょk・・・・」

この変な寝言を言ってる爆裂狂にしっかりとホールド喰らってるので動こうにも動けない。『フリーズ』でもぶっかけたろうか・・・

いや、そんなことをしたらこっちにも被害が被る。大人しく待つしかないか・・・

 

 

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~昨夜 自宅にて~

おかしい。いつも通りの時間戻ってこない。確か今日はめぐみんさんの爆裂魔法に付き合ってるんですよねご主人様は。はぁ、早く帰ってきてこの頭を撫でてほしい・・・いっそのことそのまま抱いて・・・あ、いけない鼻血が・・・鼻血が出るんだったら私に血が流れるってことですよね。やっぱり遺伝子的なものがあるんですかね?そもそも分泌液が出るんだしありますよね絶対。ということはご主人様との子供も・・・今はそんことはどうでもいいですね。ご主人様が帰ってくるまでご主人様の枕を堪能しますか。

「雪那ちゃん。枕に鼻血がついてるよ・・・」

「ひゃっ!?ゆんゆんさんいつの間にそこに・・・」

「え、えっと、お兄ちゃんの部屋を熊のように歩いてたところ辺りかな・・・」

「ほぼほぼ最初からじゃないですかやだー。」

「そんなことよりどうするのそれ?」

ゆんゆんさんが指差した先は私がさっきまで顔を埋めていた枕だった。

「・・・この血を見てご主人様、発情しますかね?」

「し、しないと思うよ!?そもそも血で発情する人とかいるわけないじゃない!」

「・・・そうですかね?過去にそんな人がいたような。」

ロアさんとか。

「い、居たの!?い、いや、今はそんなこといいよ。それよりは早くその枕の血を落とさないと・・・」

「前にご主人様言ってましたよ。血は簡単には落ちないって。なんかえんきせいの何かをかけないとダメだって。それがなんのことかあ分かりませんが。」

「?簡単に言ったら漂白剤掛けたらいいんじゃないの?」

「ひょうはくざい?なんですかそれ?」

「えーっと要するに色を落とす洗剤よ。」

「そんなものが!?でもどうしてご主人様は簡単に落ちないなんて・・・」

「さぁ?」

ご主人様にも所々抜けてる所があるんですね。

 

 

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「いい加減にしろ!」

「あいたっ!?」

「いつまで寝てるんだこの爆裂狂!」

俺はいつまでたっても起きないめぐみんに痺れを切らせて布団ごとひっくり返した。

こいついったい何時間寝たら気がすむんだ。

「うぅ、いきなり何するんですか!?勢いで頭をぶつけてしまいましたよ・・・」

「今何時だと思う?」

「へ?」

「今何時だと思うか聞いてるんだ。」

「八時くらいでしょうか?」

「十時じゃボケ!店長に迷惑かかるだろ!さっさと支度して表に出てこ・・・」

そこまで言って俺はあることに気づいた。

「?どうしました?急に顔を赤くなんかして。」

「と、とりあえずめぐみん。しばらく布団を被ってくれ。具体的には俺がこの部屋を出るまで。」

「流石にこの暑さの中は嫌ですよ。誰が好き好んで暑い中布団に潜るんですか。」

「っい、良いから早く布団を被ってくれ。すぐ終わる。すぐ出ていくから。」

今、俺がこの部屋を出ようとしたらめぐみんの背後にあるドアを開けなければならない。そうなるとあれがあれしてしまう恐れがある。

「・・・さっきからどうして私を見て話さないんですか?物事を人に頼むときは相手の目を見て言うべきでしょう?それともなんですか、見れない理由でもあるんですか?」

俺はそっとめぐみんを指差し、

「汗でシャツが透けてる・・・」

そういくら昨日の夜にこの部屋が氷漬けにされてたからと言って、少なくとも二時間程度はこの暑い中布団の中で人二人が密着してたんだ。そりゃ、汗が出ないわけがない。

その結果、めぐみんのシャツは汗で透けて見えてはいけない部分だって見えてるはずだ。あまり見てないからわからんがな。少なくともシャツが透けて身体に張り付いてることは確認できた。大丈夫だ。見えたのはそれだけで他には何も見てない。

「ひゃっ!?ああああ、も、もう!そ、そそ、そう言うことは早く言ってくださいよ。なんだか私がしょうたに見せつけてるみたいじゃないですか!」

めぐみんは顔を真っ赤にして急いで布団の中へと戻っていった。

「わ、悪かったな、すぐ出るから。」

そう言ってドアに手をかけ、

ガタッ

開かない。

「え、ちょっ、ゆいゆいさん!?開けてください!お願いします、開けて!ゆいゆいっお母さm」

「『アンロック』」

やけに早くないか?

ガラガラ

「『スキルバインド』!」

俺はドアを開けるや否やゆいゆいさんに向かってスキルバインドを全力でぶちこんだ。

もちろん理由は再度ロックを掛けられるのを防ぐためだ。

「え!?」

いきなりスキルバインドを喰らって現状把握が出来てないようだ。

これで向こうに主導権を握られることは無くなったかな?

「と、とりあえずめぐみんは支度を早く済ませろ。ゆいゆいさん、俺のローブと『死神』どこにありますか?」

「え、えっと居間に一式置いてますけど・・・」

「どもです。」

駆け足ぎみで礼を言って居間に向かった。

「・・・今後あいつの顔、まともに見れるかなぁ?」

居間でひょいさぶろーさんがまだぶっ倒れてたのはまた別の話。

 

 

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~同時刻 自宅にて~

・・・流石に一日連絡も無しで帰ってこないなんておかしいです。もしかしたら爆裂魔法に巻き込まれ・・・いや、それはないですかね。だとすると誘き寄せられたモンスターに・・・100%ないですね。うーん、魔力切れでどこかでぶっ倒れてるんでしょうか?いやでも、もう十時ですし戻ってきても可笑しくないと・・・あ、そのままバイトとかに行ってそうですね。八割方それでしょう。そうと決まれば定食屋さんに行くのは後にして、あと二時間ぐらいご主人様の布団に埋もれましょう。はふぅ。

 

 

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何とかバイトに間に合った俺達は熱中症予防の為打ち水をしていた。

「・・・しょうた君。」

「はいなんでしょう?」

「君さ、何でそんなにずぶ濡れなの?」

どうやら店長は俺が水に滴ってるのが気になるらしい。別に打ち水で遊んだ訳じゃないからね?水に滴るいい男というわけにもいかないかな?いきませんねわかります。

「ちょっと汗かきすぎたんでクリエイトウォーターで汗を流したんですよ。」

めぐみんが今朝汗だくだったということは、当然一緒に寝ていた俺も汗だくだった。めぐみんの家でシャワーを借りるという手もあったんだが、それだと時間が掛かるしな。めぐみんもシャワーしなければならなかったし、一緒に入るということはできないので外で水浴びをしたというわけですね。妙にゆいゆいさんにシャワーを勧められたのもその理由の一つだ。絶対何かあるだろ・・・

「少し野生的や過ぎないかい?」

「そうですか?俺の地元ではこのぐらいの時期になると水の掛け合いですよ。こう打ち水してると誰かg」

バシャッ

・・・生身は濡れてるからいいけどよ。制服はまだ濡れてなかったんだよな・・・

「・・・おいめぐみん。何のつもりだ?」

「しょうたの住んでいた所はこれが普通だったんですよね?じゃあ問題ないじゃないですか。」

喧嘩を吹っ掛けてきてんのかこいつは?

軽くウィンドブレスで服を乾かして、

「俺とやり合おうってのか?上等だ。」

「え、ちょ、二人ともまだバイト中!そう言うことは終わってからにしてね。」

おっとそうだった。

めぐみんを睨むのを止めて、

「今日上がったら仕切り直しな。」

「ふっふっふ、望むところです。これまでの雪辱を晴らしてやりますよ。」

それ前のチェス戦でも言ってなかったか?

「前と同じように返り討ちにしてやる。」

 

 

「どうしてこうなった。」

バイトが早く上がり、

今俺の目の前にはめぐみん、ゆんゆん、あるえがいる。対するこっちは俺、クレア、セシリー。

もう一度言おう。

「どうしてこうなった。」

「ご主人様、何回も同じこと言わないでくださいよ。」

今日は傍観者の気分だと意味不明な供述をしてた雪那は広場にあるベンチに座ってぼやいた。

何処から話そうか。そうだな、まずクレアについて話そう。

確か昨日辺り父さんが一日泊まりで王都に出向いていた。何でも紅魔の里に関する重要な会議が行われたらしい。俺は最初にそれを聞いたときはあの話かなと思ったんだがどうやら違ったらしい。

ま、そんなことがあり、今日父さんが帰ってきたんだけど、何故か知らんがクレアが付いてきたらしい。それで案の定クソ父がバイト先につれてきた。ホント何故なんだ。俺自身クレアに何でこっちに来たのか聞いてみたところ、

「最近魔王軍が本腰をいれてきてな。こちらもそろそろ本格的に体制を見直すことになって、その中に魔王城の監視も見直すということで私が来たわけだ。」

なんとも真っ当な理由だ。しかしだな、お仕事で来た人がこんなところで水遊びをしてもいいんですかね?

次にセシリー。

この人は「ショタ成分が足りない、そうだ紅魔の里に行こう。」と訳わかんない理由で来たらしい。アルカンレティアにもちびっこは居るだろうと言ってみたが、

「あそこではもう私は子供に近づくことが許されないのよ。」

遠い目をしてそんなことを返してきた。

この人何やらかしたんだろう。

とりあえずそんな感じでいろんな人が集合していた。

え?ゆんゆんとあるえはどうして来たかって?めぐみんが戦力補充として集めてきました。

いやあ、この世界の人はアホなのかな?水掛合戦って言っただけで目を輝かせてさ。ノリが中高生かよって・・・・・・そんなノリめっちゃ好きです。

セシリーなんて、

「私には水の女神アクア様が付いてるから勝ったも同然よ」

ってその付いてるは憑いてるじゃないかな?あれは駄女神だからな・・・

っとここでどうやって水掛合戦をやるのかとご説明を。まず転移魔法の下位魔法『ディスプレイスメント』を使い、だだっ広い池に繋げて水を補給する。この魔法は物体を短距離の間を瞬間移動させるものだ。当たり前だが人や動物、魔物は移動させることが出来ない。距離も半径二キロと微妙なものだ。街同士が点々としてるこの世界ではあまり需要がない魔法のひとつだ。その魔法を各チームのバケツに繋げてある。水の掛け方は基本的に打ち水の時に使う釈を使う。まぁ何を使っても良いんだがな。もちろんこの掛け合いに勝ち負けなんかありゃしない。ただ遊ぶだけなんだが・・・

「今日こそはしょうたにひと泡吹かせてやりますよ。」

凄くやる気満々のめぐみんが居る。

いや、今日こそはってそこまで勝負事してないんじゃなかろうか。

「ね、ねぇ、私達ってこの格好じゃなきゃダメなの・・・?」

そう言ったのは大胆な所があるのに恥ずかしがり屋なちゃっと矛盾しちゃってる子、ゆんゆんだった。

「別に良いけど・・・濡れたり汚れるぞ?そのTシャツ一枚でいいんじゃ無いのか?」

そう今この場にいる全員がTシャツを着ている。

「そ、そうじゃなくて下に何も穿かなくて良いのかってこと!」

「え?今お前ノーパンなの?」

「ち、違っ!?」

「ゆんゆん、流石にそれは引きますよ。」

軽くゆんゆんから距離を取ってめぐみんが言った。

「違うから!私が言いたかったのはズボンとか穿かなくても良いのかってことなの!」

なんだそんなことか俺はてっきりゆんゆんが痴女に目覚めたのかと・・・

「仕方無いだろ。この辺に軽く穿けるもの何てないんだから。制服が汚れてもいいって言うんならそれでも良いけど。」

「それは確かに嫌だけど・・・」

「というよりゆんゆんは何を恥ずかしがってるんだい。お風呂だって一緒に入ったことだってあるんでしょ?今更感だよ。」

「い、いやそれはこんなパブリックな場所じゃなかったし・・・」

確かに風呂はプライベートな空間だもんな。最近はそんな概念がどっかにすっ飛んでたけどな。

「んもう!つべこべ言わずにさっさと始めましょう!いい加減にしてくださいよ。大体あなたは大胆なのか繊細なのかハッキリしてから文句を言ってください。そんなんだからあなたの胸は中途半端何ですよ。この世は0か100なんですよ!」

ついにめぐみんが自分を0だと認めた。これはもう自他共に認める摩擦力係数ゼロ・・・

「ま、まぁ私はこれからバインバインになる予定ですし。」

急いで自分のことを否定し始めるめぐみん。

お前もお前で中途半端だよな・・・

そんなしょうもないやり取りを眺めていると、

「ちょっとショウタさん?後どのくらいかかりそう?そろそろ暑くて死にそうなんだけど・・・」

そう言ってセシリーはTシャツで仰ぐように首もとをはたつかせた。

いや、その何気ない仕草なんですけど、汗でシャツがへばりついたり、チラチラ胸元が見えたり、なんかもう色々とエロいです。

「ん?今ショウタさん、いやらしい目で私のこと見てたかしら?」

「大丈夫っす。見てたとしても曰く付き物件には手は絶対出しませんから。」

「あら、酷い言われようね。」

こんな軽い冗談を飛ばしていたらどうやら紅魔族組の言い合いは終わったようだ。

「全く、下らないことで時間を潰してしまいましたね。」

「毎回思うけど全部めぐみんが長引かせてるからね!?」

「はいはい、さっさと定位置につけ。スタート合図は雪那な。スタートは一分後。各チーム作戦会議でも開いてくれ。以上。」

さっくり指示をだし、クレア達の元へ向かった。

「ショウタ、作戦会議と言っても何に対して立てるんだ?私は魔王軍との戦いにおいての作戦ならある程度立てれるが、こういった遊びごとに関してはあまり関われて来なかったからどういう風に動けばいいか・・・」

「そう、これは遊びなんだ。だから作戦と言ってもそんなに真剣に考えなくてもいいんだよ。別に命張ってる訳じゃないからな。ただ少し位は策を張ってた方がいいだろ?ちょっと二人の冒険者カードを見せてくれ。・・・ん、ありがとう。うん、このステータスなら・・・」

俺は二人のステータスを参考にしながら作戦を伝えた。

 

 

「開始十秒前です。・・・・五、四、三、二、一、スタートです!」

雪那の合図と同時に両チーム地面を蹴り、走り出した。

「二人とも。ショウタを潰せば勝ち同然です。一点集中で叩きますよ!」

成る程、めぐみんが司令塔か。まぁあいつは体術は得意じゃないからな。だからと言ってめぐみんを狙うのはよくないかな。あるえもゆんゆんもトップ3に入ってたもんな。頭は良いはずだ。どいつを倒しても司令塔は成り立つしな。となると・・・

「めぐみん以外を先に片付けよう!やり方は各々好きにしてくれ。」

「はーい。」

「分かった。」

さてと、俺が狙うのは・・・

「ちょ、三対一っていじめよね!?」

どうやら他の二人もゆんゆんを狙うようだ。

「んー、ステータス的に考えたら先に倒したいのはゆんゆんさんってなるしこうなるのは予想がついたんじゃないかしら?」

「というわけですまないがゆんゆん殿。最初の犠牲者になってくれ。」

「理不っ・・・ねぇ、お兄ちゃん。手に持ってるのは何に?」

「どうみてもバケツだろうが。」

「酷いっ!ゴボゴボゴボ・・・」

俺はエンドレスバケツをゆんゆんにぶっかけた。

ゆんゆん戦意消失で離脱!

「ショウタ、それはやり過ぎというより鬼畜の所業なんだが・・・」

「良いかクレア。気を抜いてたら死ぬぞ・・・」

「どうしてだ!?」

「もう私たちは死線に居るってことね。お遊びじゃ生き残れないわ・・・」

「お前たち戻ってきてくれ!」

しょうもないやり取りをしている間に第二の刺客が来たようだ。

「セシリー一等兵とクレア二等兵はあるえの相手をしてやれ。俺は司令塔を潰しにいってくる。」

「ラジャー、大佐。」

「こ、これ私も乗った方がいいのか・・・?」

「どうしたクレア二等兵!返事が聞こえないぞ!」

「ら、ラジャー・・・」

「何言ってんのクレア?」

「そんなこと言って恥ずかしくないのクレアさん?」

「うぅ、もうお前たちは一回死んだら良いと思う・・・」

クレアを涙目にしたところでさっさと終わらせにいこう。

「そうだ、このバケツを持っていけ。弾切れじゃ笑えないからな。」

「え、でもショウタはどうするんだ。」

「良いかこの世は勤勉な奴が勝つんだ。そしてこの勤勉な俺はこういう魔道具だって作ったりするんだ。」

そう言って俺が取り出したのは日本で誰もが使ったことのあるであろう水鉄砲らしきものだ。見てくれは同じようだが中身が全く違う。まずひとつ目は補充がいらない。中で水を生成する機構がある。要するにクリエイトウォーターが埋め込まれている。次に圧縮機構だ。これは技術的に頑張った。ほんとに頑張った。時には本体が破裂したり水の歯止めが聞かなくなったり色々あった。その結果いい感じに銃内の空気を圧縮して水圧を上げることが出来た。圧縮する際は銃の後ろに付いてるレバーを押し下げればいい。後はトリガーを引いて弁を開けるだけ。こう圧縮された水が出てくるって訳です。難点を上げればレバーがくそ重いってことぐらいだ。どれぐらいかと言うと指が真っ赤になるぐらい。本気で押さないと中々下がってくれない。人によれば両手じゃなきゃ下げれないかもしれない。

「それは一体なんだ?見たことがない魔道具だが・・・」

「水圧式遠距離砲。加減ひとさじで威力が全く違う。」

補足説明をしておこう。レバーは段階式だ。大まかに言うと五段階ある。一段階目は普通の水鉄砲の威力だ。痛くも痒くもない。二段階目は少しお高い水鉄砲。圧縮式とまではいかないがそこそこ威力のある。当たったら「あ、当たったな。」というレベル。三段階目は皆さんご存じの圧縮式の水鉄砲。飛距離が数十メートルというモンスターだ。あれ当たったらいたいですよね・・・ここまでは力の無い人でも指を真っ赤にして片手でレバーを下げれる。次が問題だ。四段階目は人が気絶するレベルの衝撃をだす。実際にぶっころりーさんが気絶した。そして最後の五段階目は岩をも砕く威力を持つ。実際に砕いた瞬間を見たときにはこれを封印しようと思った。圧縮機構がキチガイ過ぎた・・・もちろんそんな威力でやりませんよ?せいぜい三段階目までで止めときますから。

「というわけでサクッとやってくる。」

俺は先程までめぐみんが居た場所に向かった。

「隠れて奇襲でもする気なのか?」

辺りを見回したがめぐみんの姿はそこにはなかった。

「動かないでください。」

え?いつの間に背後とられたんだ?・・・いや、屈折魔法か。そういえばゆんゆんもあるえもこの間卒業したんだっけか。

俺はめぐみんにお釈とバケツを突きつけられていた。

「エンドレスバケツでもやる気か?」

「あの行為に名前などあったんですね。でもまぁそんなとこです。」

「そうか。」

俺は銃のレバーを一気に押し下げた。

「で、俺をこうやって脅してる理由は?」

「そうですね、寝返りをお願いしに来たんですよ。流石に私とあるえではあなた達に勝てないです。」

めぐみんは遠くでクレア達と戦闘をしているあるえを見ていった。

いや、お前の目的は俺を倒すことじゃなかったのかよ。

「今あなたは私に疑問を抱いてますね?お前の目的は俺を倒すことじゃなかったのかよと。」

「エスパーか!?」

「その目的はあなたが私たちに加勢することで達成します。あなたが私の要件を飲んだ時点であなたは作戦的に私の負けになりますからね。」

なるへそぉそういうことか。

「ま、いい作戦だと思うよ。相手が丸腰の俺であればの話だが。」

俺は銃口を地面に向けた。

「そんな魔道具で何ができるんですか?見たところ水を発射するようですが・・・」

「見とけばわかる。」

そう言いトリガーを引いた。

次の瞬間俺の体は四、五メートルはね上がった。

空中でレバーを三段階にチェンジしてバケツを持っている手元に照準を当て、

「あっ!?」

射出し、思わずめぐみんは手をバケツからはなし、バケツが転がった。そしてもう一度五段階に入れ直し、バケツを撃ち抜いた。

「チェックメイトだめぐみん。」

俺は銃口をめぐみんの眉間に当て言った。

「ふふふ、何が『チェックメイトだめぐみん。』ですか。その魔道具を使うときにかなり親指に力がいるようですね。手が震えてますよ?」

俺の手は無意識に震え、親指にはくっきりとレバーの跡がついている。この有り様なら三段階目にいれるのも怪しいな・・・

「あれだけの威力ですから相当な反動が手に来るはずですよね?つまりあなたは今武器を無くした状態ではないのですs」

カチッぴゅー

「・・・なんですかこれ?」

「誰が武器がないって?」

確かに地力では三段階からはこいつを使えない。でも一段階二段階は使える。

「っふ、そんなちゃちぃ攻撃なんとm」

カチカチッびゅー

「さっきからなんなんですか!?人がしゃべってる途中で!それとさっきより少し威力上がってないですか?そっちがその気なら!」

そう言って腰に手を回し取り出したのは、

「お前ずっとそんなもの隠し持っていたのか?」

ミニバケツだ。

「私があれだけの武器であなたに挑むとでも?」

「め、めぐみんが爆裂魔法以外のことで頭を使っただと・・・?」

「一体あなたは私をなんだと思ってるんですか!?」

「いやだって朝の寝言で『ふっふっふ、これが爆裂魔法のいりょk』って言いながらよだれを垂らして寝て」

「や、やめてください!」

めぐみんが口元を押さえてそう言った。

カチカチッ

「「・・・・・」」

それが合図かのように互いに動いた。

めぐみんはバケツをこちらにやるように構え、俺は地面に伏せ、

「なっ!?」

多分今めぐみんの目に写ってるのはバケツを持ったクレアだろう。

バシャッ

流石にエンドレスバケツはやらなかったようだ。

カチッ

それはかすかだったが確実にレバーが入る音がなった。

俺は標準を定めて、

「さ、ほんとにこれで詰みだな。」

「先程程度の威力で詰みですか。私も舐められたもんd」

バシュッ

「痛いっ!?ど、どうして・・・先程の奴が限界だったのでは?」

「まぁな、俺単体ならさっきの奴が限界だな。」

「で、ではどうして今の威力がっ!?はっ!まさかしゃがんだときに地面に当てた・・・?」

そう、俺はしゃがんだときに勢いをつけて地面にレバーを当ててもう一段階圧縮した。そして、

「『バーストモード』」

カチカチカチカチッ

「この四段階目はクソニーtじゃなかったぶっころりーさんが気絶した威力を持っている。降参するなら今のうちだぞ。」

「大人げないですよ。奥の手を引っ張ってくるなんて・・・」

諦めたように両手をあげてめぐみんが降参した。

「それにしてもクレアさんがここに来たということはあるえが負けたということですか?」

「いや、私は途中抜け出してこっちに来たから勝敗は分からないが・・・まぁ、少なくともセシリー殿があっさりやられることはないだろうな。」

逆にシャツが透けてウキウキしてそうだな。

そう思い、先ほどまでセシリー達が戦闘していた場所に目を移した。

「あれ?移動したんですかね?」

人影が全くない。耳をすませると戦闘音はなく、足音が聞こえる。それはここからだと少し遠い林の中から聞こえた。

足音は1人くらいか?しかも足が重いな。かごでも背負って誰かが山菜でも取りに来たのか?いや、そんなことはどうでもいい。あいつらの何かしらの音も聞こえないのはおかしい。

一方、林の中から聞こえてくる音はこちらに近づいて来る。

うるさい・・・雑音を聞こえなくするようにその音を意識から消す。

聞こえてくるのは川の流れの音と風が林をすり抜ける音、そして木々の葉がこすれ合う音だけだった。

聞こえてきたのは息づかいだ。これは、俺の前に一、二・・・めぐみんとクレアだな。遠くから雪那とゆんゆんの息づかいまで微かに聞こえてくる。それと、俺の後ろに二つ息づかいがある。それらの持ち主は誰と言わずとも分かるだろう。

直ぐ様振り返ると、

バシャッ!

俺は行きなり大量の水をかけられ、その水を飲んでしまった。

「ゲホッゲホッ・・・あるえはまだ分かるとしてセシリー、お前が何で俺に水をかけるんだよ。」

セシリーはいたずらっ子のような笑顔で、

「だってショウタさんがあまりにも濡れてなかったからこれじゃ面白くないなぁって。」

「いや、お前の目的は何なんだよ・・・」

「ショウタさんの濡れ姿を間近で見ることかしら。」

駄目だこの人・・・

それよりもだ。

「それはいいとして、いや良くないけども、どうやって俺の背後を取ったんだ?耳を澄ませても一人の足をとしか聞こえなかったが。」

そう聞くとセシリーは自慢げに、

「私って結構力あるのよ。冒険者カード見たでしょ?」

あ、そういえば接近戦がまぁまぁ出来るぐらいはあったな。

「そこで私があるえさんを負ぶって森の中をかき分けてここまで来たのよ。」

な、なるへそぉー。だからあんな足音が・・・

「・・・セシリー。お前よくそれで精神保てたな。」

「何とか我慢できたわ・・・体が大人でも顔がこれじゃ襲じゃなかった可愛がりたくなるもの。これがめぐみんさんだったら完全にアウトだったわ。」

「今襲いたいって言いそうに」

「なってないわ。」

俺がそう言いかけたら即否定されてしまった。

「ちょっと待ってください。今聞き捨てならないことが聞こえたんですが。」

「気のせいだろ?俺は何も違和感を感じなかったぞ。」

「それは宣戦布告と受っとってもよろしいので?」

「お前は何に対して怒ってるんだ?」

ほんと女子ってわからん。

「無自覚!?ほんとに分かってないんですか!?分かりました。普段あなたが私をどう思ってるのかよーく分かりましたよ。」

摩擦係数ゼロのことか?今の流れでよくそれが分かったな。

「大丈夫よめぐみんさん。人にはそれぞれ良さがあってね、めぐみんさんのその凹凸のない体だって良さの一つだわ。」

「慰めになっていませんよ。」

待って、いつセシリーの精神我慢からめぐみんの発育に関しての話題になったの?

「だ、大丈夫よめぐみん。き、きっとそのうち大きくなるわ。多分・・・」

「もっと力強い言葉をくださいよ。何ですか、やっぱりあなたは中途半端な人間だったんですね。そんな事してるからいつまで経ってもはっきり伝えられないんですよ。」

「そ、それは今関係ないでしょ!?だ、だいたいめぐみんだってはっきり言ってないじゃない!」

その本人がいる目の前でそんな話するかね普通・・・

「わ、私はタイミングをですね・・・」

「はいはい二人ともそこまで。今ここでその話をしても意味はないよ。」

あるえ先輩止めるんならもうちょっと前で止めてくださいよ。

「皆さんいつまでそこで話してるんですか?終わったなら早くこっちに戻って来ておやつ食べましょうよ。」

待つことにしびれを切らしたのか、気だるそうに雪那がこっちに歩いて来た。

「あぁ、悪い。例の如くこの2人が言い合ってな。しかしおやつなんかあったか?」

「それは、今からご主人様が作るんですよ。」

何を言ってるんだこいつは・・・

「.おいおい、流石に疲れてる時にそんなこと頼むなよ。食べたければ自分で作ればいいじゃないか。」

「いや、自分のためにおやつ作るとかめんどくさいじゃないですか。」

何という自己中な奴め。だったら・・・

「俺はお前が作ったやつを食べてみたいけどな・・・」

「っ!?ほ、ほんとですか?じゃあ今から速攻で作って来ます!」

そう言って雪那はどこかに走り出した。

・・・そういえばあいつってお菓子作れたっけ・・・

 

 

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「す、すいません・・・」

俺達は雪那が少し心配になって自宅に帰ってきた。そして案の定焦がしたり配分を間違えてたりと色々しでかしていた。

「い、いや、俺も気づいてやれんかったとこにも非があるしな・・・」

クレアのパーティーの時に手伝ってもらったこともあったがあの時はクリームを混ぜてもらったり塗ってもらったり飾りつけをしてもらったりなどを任せていた。

とりあえず一口食べてみるか・・・

少し黒いクッキーをかじった。

「あ、ご、ご主人様食べちゃダメですよ!」

・・・いや、そこまでまずくないぞ。

「いけるいける。若干粉っぽいけど最初にしては上出来だ。焦げも一つのアクセントとして考えたら悪くないし・・・」

「ちょっといいですか?」

とめぐみんが脇から手を伸ばしてそのクッキーに手を伸ばした。

「ふむ、こんなもんなんじゃないですか?そもそも比べる相手を間違えてはいけませんよ。この人の料理は貴族の下をうならせるものです。」

「そ、そうなんですかね。」

めぐみんのフォローもあり雪那も少し機嫌を取り戻した。

その後は雪那の作ったクッキーを囲んでトランプなどをして遊んだ。もちろん俺はその輪から省かれた。これがいわいるいじめってやつなんですかね。

 

 

「おい!そろそろいい時間だ。お前ら帰れよ。」

時刻は夜の八時。良い子はみんな寝ている時間だ。何と悲しいんだろうか・・・というよりそもそもこの世界は早寝早起きは普通らしい。どこかの家庭はもうすでに全員寝ているかもしれない。

「そうだな。そろそろ帰らないとアイリス様が心配だ。」

「そういえばクレア。お前今日半日ずっとここに居たけど仕事とか大丈夫なのか?」

もともとこいつは紅魔の里を視察に来たはずなのに、俺達と水遊びをしていた。これじゃ監視の視察もあったもんじゃない。

「そこについては問題ない。今日の仕事はここの視察だけだ。それも今朝片付けた。」

んー?それってもうすでにクレアはここに用無しだったのか?じゃあ何でこいつここに残ってんの?

「ほう、それじゃあなたはわざわざしょうたに会うためにここに残ったのですか?」

「そ、そういうことになるな・・・」

いや、何クレアさん照れてるんですか?その姿見てるこっちまで恥ずかしいじゃないですか。

「しょうた君。何照れてるんだい?」

おっと、あるえさん。目がガンガン光ってますよ?

「ねぇねぇ、私もしょうたさんにわざわざ会いに来たんだけど?」

「いや、あんたは来ても何とも思わないというか、本能で生きてるような人だからしょうがないかなと・・・」

セシリーに関しては何も感じない。もちろん最初はかなり驚いたがそんな驚きは全員集合していることに驚いたことに掻き消された。そもそもこのショタロリコンが紅魔の里に来ないことが不思議なんだよな・・・

「本能で生きてる何て失礼だわ。欲望で動いとると言って。」

そっちの方が失礼じゃないか!?

「それじゃあ、そろそろお暇しましょうか。しょうた私とあるえを送ってください。」

「えぇ、めんどい。」

「め、めんどいとは何ですか!?こんなか弱い乙女を二人だけで帰らせようと?途中で襲われたらどうするんですか!?」

あるえに関しては襲われそうだがめぐみんはなぁ・・・

「おい、今失礼なことを・・・」

「しゃーない。送ってやるよ。」

「では、ショウタ。私とセシリー殿にテレポートを。」

「別に私は送らなくてもいいわよ。今晩はショウタさんとこに泊めてもらうから。」

「いや、全力で帰すから。」

これ以上俺の精神を削らないでほしい。

「雪那。手伝って。」

「はーい。」

俺と雪那で二人をテレポートで王都とアルカンレティアへと送った。

「さて、お前ら帰る準備は・・・そもそも何も持っててきてなかったな。じゃあゆんゆん。送ってくるわ。」

「いってらっしゃい。なるべく早く帰ってきてね。」

そんな言葉を背に家を出ながら、

早く帰ってくるメリットでもあるのかな・・・?

と思ってしまった俺である。

 

 

「しかし、夜でもやっぱ夏って熱いな・・・」

軽く顔を流れる汗をぬぐいながら言った。

「そうですね、相変わらず蝉もうるさいですしね。夏はあまり好きに離れません。」

「でもかと言って冬も寒いからねぇ・・・」

「やっぱ秋だよな。気温とかちょうどいいし、ピクニックに行きやすいし。」

「ピクニックに行って何をするんですか?お弁当を食べながらキャベツでも眺めるんですか?」

「キャベツ?いや、なんでピクニックまで行って畑を見に行かなきゃならんのだ。紅葉とか色々あるだろ。」

「畑?しょうた君が何を勘違いしているかわからないけど、キャベツは秋には畑にはいないよ?」

「い、いない?それはあれか?収穫されているってことか?そもそもキャベツを見に行かねぇって。」

「いや、逆だよ。収穫されまいと抵抗すかのように誰も居ない地へと飛んで行くんだよ。」

ナニソレ?

「キャベツッテトブノ?」

「何言ってるんですか。そんなの当り前じゃないですか。ホントにしょうたはここの知識が無いですね。何者なんですかホントに・・・」

めぐみんに呆られるように言われた。

もうこの世界の常識怖い。

とたわわ・・・たわいもない話をしているうちにあるえの自宅に到着した。

「じゃあ、しょうた君めぐみん。また明日。」

「おう、またな。」

「また明日。」

別れを告げめぐみん宅へ足を向けようとしたその時。

「あ、しょ、しょうた君。ちょっと耳を貸して。」

「いや、俺耳ちぎれないから貸せないよ!?」

「そ、そっちの意味じゃない!」

「あ、何だそっちか。最近体の部位が無残に飛び散っていくモンスターを見ていたからてっきり・・・」

そう言い、少ししゃがみ耳を傾けた。

「一体君は何をしてるんだい・・・」

そう言って俺の顔まで近づいつ来た。

何の話だろうか。また自作の小説か?いや、それだったら耳打ちする必要もない。となると、あ、あれか、人の耳に息を吹きかけるつもりかこいつ。そうはさせるか、させるもんか・・・

 

ちゅ

 

そんな事を考えてると不意に頬に何かが触れる感触がした。一瞬何が起こったか分からなかったがすぐに分かった。

「い、今はこれくらいしか出来ないけど、いつかはもっと先の事を・・・」

俺の頬から離れたあるえはそう言った。

えっと・・・一つ反応するとしたらお前、アルカンレティアでしでかそうとしたこと忘れてるだろ・・・

「あ、あああるえ!な、なな何をしてるのですか!?」

そしてパニクってるめぐみん。そんな中俺は、

「しょうた君?」

思考回路が停止してました。

一拍置いて再起動した俺は、

「ごめんなあるえ。時が来たら答えるから。」

いつも通り最低な言葉を使った。

「うん、待ってるから。おやすみ。」

「おやすみ。」

俺は完全に使い物にならないめぐみんを引き、その場を後にした。

 

 

めぐみんを引っ張りながら歩いて数分。流石に人1人引っ張るのはしんどい。猫の手も借りたいわ。という訳で、クロじゃなかった。ちょむすけだっけか。どうやらめぐみんがこいつを正式に使い魔にするらしく新たな名を与えられたらしい。俺には紅魔族のネーミングセンスが一ナノメートルも分からない。それはそうとちょむすけや。俺の肩から降りてお前の主を一緒に引っ張ってはくれまいか?と、俺の肩で偉そうに寝ている黒い毛玉に向かって心で訴えた。が、その思いが届く訳もなく、黒い毛玉は欠伸をしてリラックスしている。なんだこいつ。可愛いな。

しかし、可愛いものを見てもしんどいのは変わらず、

「おい。そろそろ歩け。俺もう疲れた。」

本当に疲れてきてるらしい。助詞すら言えてない。

「あ、あるえに先を・・・」

まだ言ってるよこいつ。

そもそも頬にキスしただけだろ。そんなことほかのやつも・・・あれ?待って、あるえが初めてじゃね?なんかそう考えたら気持ちわかるかも。たしかに小さいことではあるが大きく先を越されたな。となるとこいつの性格から考えると・・・ないわー。度胸あるように見えてあんまりないもんな・・・それを裏付けるようにさっきからこっちの様子をうかがってる。てかそんな余裕があるなら自分で歩いてほしんだけど。

めぐみんを引っ張り続けながら結局めぐみん宅が見えてきた。それと一緒にめぐみん宅のドアの前で立ち往生しているフードの人が目に入った。

こんな時間に誰だ?どうみても紅魔族ではない。てことはひょいさぶろーさんの客かな・・・

「おい、めぐみん。お前の家の前に誰かいるんだけど知り合いか?」

「え、いえ、あんな人は見たことないです。そもそも私たちのの家に用がある人なんて居ませんよ。」

悲しいこと言うなよ・・・

しかし、中々の魔力の持ち主だな・・・アークウィザード並だな。

と考えながらその人を見ていると、こちらの視線に気づいたのかこっちを見てきた。すると何を思ったのか走ってこっちに向かってきた。

「偉大なる我が主。こんな所にいましたか。このアーネスどれだけ探したか・・・さ、お迎えにあがりました。」

と、深々と頭を下げて言った。俺の前で・・・

「なんですか。しょうたの知り合いでしたか。はぁ、またあなたは・・・」

「いやいや、今回は違うぞ!?こんな人知らん!あ、あの、人違いじゃないですかね?俺は手下をつけた覚えはないんですけど…」

「?あなたは何を言ってるのです?私が主と呼んだのは貴方の肩で丸くなられてる御方ですが?」

もしかしなくともそれはちょむすけの事か?つまりこの人はこの毛玉の家臣的な何かなのか?この猫何者なんだ・・・?

「さ、ウォルバク様をこちらへ。」

そう言ってアーネスがこちらへ出してきた。

いや、そう言われても困る。俺の癒しを取り上げられるのはとても困る。

「さっきから聞いていたら私の使い魔を寄越せ、そう言ってるのですか?そうは行きませんよ。そういうのは私を通して下さい。勿論許可しませんが。さ、ちょむすけこちらへ。」

めぐみんがちょむすけに手を伸ばすとそちらの方へ飛び移った。

「ちょ、ちょむすけ?ちょむすけ!?まさかとは思いますが、それはウォルバク様ことを指しているのですか?その方はウォルバク様です。勝手に可笑しな名前をつけないでください。さ、ウォルバク様。私と共に参りましょう。」

するとちょむすけが、アーネスの方を一瞥し、めぐみんの腕の中で丸くなった。

「ウォ、ウォルバク様!?」

心外だと言わんばかりにアーネスが驚いた。

「ふっ、どうやらちょむすけはそちらに行く気はないようですね。」

「アーネスだっけか?ちょむすけが行く気ないんだったら諦めたらどうだ?みんなこいつが急にいなくなったら困ると思うし、まぁ特に俺がだけど。」

「困りましたね・・・あっ ・・・」

あの、俺の話ガン無視ですか・・・?

「それなら、タダではとは申しません。ウォルバク様を今まで保護していただいたお礼も兼ねて・・・」

金を渡すから寄越せと申されるのかこの人は・・・

そんなもでめぐみんが動くとでも思ってんのか?

そう思いながらも少し不安に感じ、めぐみんの顔を見た。

うん、大丈夫そうだ。こいつも渡すまいという顔をしている。これなら俺の癒しも手を離れることもない・・・「そうですね、今手持ちが三十万エリスしかないんですが・・・」

「いえいえそんな、十分ですよ。ほらちょむすけ、この人が新しい保護者です。達者に暮らすのですよ。」

いや、心変わりするの早すぎるだろ。さっきまで待たすもんかって顔してたじゃねぇか。

めぐみんがちょむすけを抱き上げ、アーネスに差し出すと、それに抵抗するようにちょむすてがめぐみんの服に爪を立てた。

「あ、あの・・・。ウォルバク様がかなり嫌がっておられますし、お別れなどもあるでしょうから、また明日伺います。今夜一晩、最後の時を過ごしてはいかがでしょうか?」

そう言いアーネスは立ち去った。

「さて、お金も手に入ったことですしさっそく明日にでも出発しますか。」

「いやダメだろ。ちょむすけを売った金で行くとか頭おかしいんじゃねぇの?そもそもちょむすけ嫌がってただろ。」

「わ、私もただお金につられた訳ではありません。これから私たちは冒険家業をするために里を出るんです。安定しない生活、モンスターとの激闘、その中でこの小さな体のちょむすけが狙われるのは目に見えてます。それならいっそアーネスとやらに渡したほうが安全ではないかと・・・」

「お金の話が出てから渡すと言ったその訳は?」

「・・・さて、冒険に出る準備でもしますか。」

それ俺がよくする逃げ方!

その日の夜はちょむすけとめいっぱい遊ばせてもらいました。




ハイ久しぶりっす。ねこたつむりっす。
まさか二か月も伸びるとは思わなかったです。
書こう書こうとはしてるんですけど部活で加工加工ばっかしてたんであまり時間が取れませんでした。そしてだんだん思ってきたことがオリジナルも書きたいなぁって思うようになってきたんですよ。もうね、雪那のことで頭いっぱいになりすぎてヤバイです。
あ、そういえば天華百剣っていうゲームをさわり始めました。イベントボスが強すぎて死にそうです。そのゲームを始めた原因が雪那でもあったりする・・・
というわけで、今回予定してたところまで進みませんでしたが妥協して投稿させていただきました。もう話の内容がちゃんとしてるかどうかも分からなくなってきましたよ・・・またご指摘があればよろしくお願いします。

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