この素晴らしい少年に祝福を!   作:ねこたつむり

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※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
やっぱり無理やりオリ主を入れるって難しいですね。多分色々矛盾してることがある気がします。(読み直してないからわかんにゃい)
あ、後ゴットイーターオンライン始めました。


第四章 爆焔シリーズ
帰郷


「先生先生先生先生ーーーッ!!」

それは清々しい朝・・・森にふにふらとどどんこの叫び声が響き渡った。

「めぐみん、アレは知り合い?なんか、思いっ切り狙われてるんだけど・・・」

知り合いな訳ないじゃないですか、アレは私に秘められた力を恐れし、魔王の尖兵か何かで・・・「ほ、本当に、なぜ私を追いかけてくるんですか!」

「めぐみんの日頃の行いが悪いからよー!こないだ、エリス教の祭壇に置かれてたお供えかじってるのを見たんだからね!?」

あれを見られたのですか・・・しょうがないじゃないですか、どうせあのお供えは誰も食べないのですから飢えてる子の栄養になった方がエリス様も喜ぶと思います。

そんないいわけを心の中でして、飛んで追いかけてくる漆黒の悪魔から必死で逃げていた。

しかし、なぜ私だけなんでしょうか。他の生徒もちらほら居るのにそれに目もくれず私だけを見据えている。やはり私の魔力が膨大過ぎて・・・やっぱりお供えを食べたことで罰が本当に当たったんじゃ・・・、?背中に何かモゾモゾしている・・・

それは剥がされまいと必死で爪を立ててるクロだった。

閃いた!

背中に張り付いてるふてぶてしい毛玉をつかみ、

「仕方ありません、この毛玉を差し出しましょう!どうです?私よりも美味しそうでしょう!我が妹がごはんにしようと言い出す程ですから!」

「流石は首席、発想が違うね!」

「酷すぎる!そんな事ばかりしてるからモンスターに追われるのよ!」

何やらゆんゆんは文句があるようだ。自分の使い魔が自分の身代わりになるのは当然だと思うのだが。

問題のモンスターはゆっくり目の前にに降りて私と対峙した。

と、ゆんゆんが短剣を引き抜き私とあるえを庇うようにモンスターの目の前に立った。

あるえは冒険者カードをちらりと見た。強力な魔法を覚えられないか確認したのだろう。

私なら上級魔法が覚えられる。でも、そうしたら・・・

そう思った瞬間、なぜかゆんゆんが短剣を構える後ろ姿があの人に見えた。

どうしてこんなときに居ないのですか。助けてくださいよ!

心の中で叫んだ。

「『双斬・雷切裂』」

突然そのモンスターの腹から二本の形状の異なった剣異様な音を立てながらが突き出し、上としたに真っ二つに分かれた。モンスターは声もあげずに崩れ落ちた。

私、いや、私達は目を疑った。その場に悠々と立っていたのは紛れもないあの人だった。

「「しょうた」君!?」

「お兄ちゃん!?」

「久し振り。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

視界がぼやけてる。涙のせいか・・・

涙を拭って改めて目の前の景色を見た。

「ただいま、紅魔の里。」

懐かしい景色が目の中に飛び込んできた。グリフォン像や、商業区。

「あれ、師匠・・・しょうた君じゃない。お帰り。」

「ただいま、そけっとさん。」

第一村人はどうやらそけっとさんのようだ。しかし・・・

「そけっとさん。少し顔色悪くありませんか?」

明らか血が足りてない・・・

「え、そ、そうかな・・・?」

多分、うどんしか食べてないんだろうな・・・

「昨日何食べました?」

「・・・ひ、久しぶりにうどんを食べたわ。」

チーン

皆さん今の音が分かりますか?そうです。あの嘘を感知する魔道具です。お土産に買ってきたのをスイッチを入れたまま放置してたらしい。

「ほう、久し振り?」

「・・・あ、一ヶ月前にも食べたっけなぁ?」

チーン

「「・・・」」

往生際の悪い。この魔道具があるの分かってるのに嘘をつこうとするなんて・・・

「はぁ・・・」

「その地獄の底から出そうな溜め息は止めてほしいな・・・」

「嘘をつかなければこんな溜め息出ませんよ・・・」

どうしたらいいんだこの人は・・・

「何で作ろうとしないんですか?」

「あの一件以来トラウマになりまして・・・」

焦がしただけでトラウマかよ。

「自信持ってくださいよ。余計なことさえしなければ焦がすことなんて無いんですから。」

「・・・しょうた君、うちに・・・」

「面倒事は結構ですので。これ以上問題を抱えさせないんでください。」

「ねぇ、しょうた君。どのくらい行き先があるの?それ考えると笑えないんだけど・・・」

俺も笑えん。

「そう言うことなので。では、家に帰らせていただきます。」

頭を下げて家へと向かった。

 

 

ガチャ

「ただいまぁ」

居間の方からすごい勢いで走ってくる音が聞こえた。

「しょ、しょうた!?お帰りなさい!」

俺の姿を見るやいなや抱きついてくる母さん。

「ちょ、ちょっと苦しいって・・・!」

「あら、ごめんなさい。」

いくら久し振りだからと言ってここまできつくしなくてもいいんじゃなかろうか・・・

「父さんは?」

「今朝から王都に報告しに行ってるわよ。それより・・・」

目線を俺の手に移した。包帯が巻かれてるから気になるんだろうか?別に今はそんなに痛くないから心配はいらないんだけど。

「その包帯、凄くかっこいいわね!」

俺は紅魔族を少しばかりなめてたようだ。ここまで中二病に陥ってるとは・・・

母さんは珍しく目を輝かせて言った。

「部屋に荷物置いてくる。」

そう言って自室に向かった。

『あぁ、久し振りですねこの部屋。』

「そうだな。でも、久し振りにしては暖かくないか?」

半年も空けてたんだ。この部屋には人が入ることは掃除以外にない。部屋は人が使うから暖かくなるのでここは寒い筈なんだが・・・

「ご主人様のベットに少しばかりの暖かみを感じます。」

「勝手に出てきて布団に入るな。」

こいつに今すぐにでも『スキルバインド』を掛けたい。でも、解除魔法をまだ覚えてないから安易に掛けられない。

「それにしてもご主人様、こっちに戻ってきたらニートですね。」

「に、ニート・・・は、働くし!しっかり働くし!」

そうと決まれば善は急げ。定食屋にお世話になりに行こう。

「あ、待ってくださいよ!」

 

 

定食屋に向かってる途中だった。

「うーん・・・?」

「森から変な魔力を感じますね。」

「お前も分かるのか?なんか嫌な感じの流れ方だよな・・・」

俺は最近『雪那』の『魔力伝導』のお陰で魔力に対してかなり敏感になってた。

「行ってみますか?」

「ああ。」

俺は『雪那』を手に森の方へ入っていった。

 

 

「なぁ、雪那。あれ悪魔じゃね?かなり強そうなんだけど・・・」

『上位とまではいきませんが、確かに一筋縄ではいかないですね。』

俺は邪悪な魔力を辿ってその持ち主らしきモンスターを見つけ、岩影に身を隠していた。

「・・・!?ちょ、ちょっと待て。あれの目の前に居る奴らゆんゆん達じゃねぇか。」

それを目にした瞬間、俺は『雪那』と『死神』を引き抜いて走り出していた。

何やらゆんゆんが短剣を構えてるようだ。あのバカ。勝てるわけないだろ。

モンスターの背後に近付き、

「『双斬・雷切裂』」

静かな声に反してその威力は絶大だった。明らかに刃を通さなそうな肉質をしてるモンスターにスッと入り、真っ二つに分かれた。別に斬った訳じゃない。刺して雷撃で弾け飛んだんだ。

声もあげずに崩れ落ちるモンスター。その亡骸越しに見えたのは目を丸くしてる三人組だった。

「「しょうた」君!?」

「お兄ちゃん!?」

「久し振り。」

「ひ、『久し振り』じゃないですよ。何も言わずに何処かに行ってしまうなんて・・・」

「そう言えばお前らには直接言ってなかったな。悪い。」

めぐみんとあるえに謝った。

「帰って来るなら帰って来るって連絡をしてくれたって良いじゃないか。」

何やら少しご立腹のあるえさん。

「突然帰ってきた方が感動的だろ?そもそもあれから半年。そろそろ帰ってくるんじゃないかとそわそわしてたんじゃないか?(笑)」

「まぁ、今思い返してみれば、最近ゆんゆんの様子がおかしかったですしね・・・」

チラッとゆんゆんを見てめぐみんが言った。

「な、何言ってるのよ。めぐみん!べ、別にそわそわなんか・・・!」

「むきになってるとこが余計に怪しいよ。それに一週間前から朝早く里の入り口で立ってるって言う話もちらほらと・・・」

「あああああ!そ、そんなこと・・・あ、あれはただ朝の散歩の休憩場所なだけだから!」

そんなに必死になって誤魔化さなくてもいいんじゃなかろうか。

「そっか、一週間も前から待っててくれたのか。ありがとな。」

ゆんゆんの頭を撫でながら言った。

「っ!?・・・」

「「・・・」」

おう、物凄い形相で見てきますね。

「はぁ、ところでその剣は一体何なんですか?『雪那』と同等位の魔力を感じますけど。」

めぐみんが『死神』を指していった。

「とある鍛冶屋で作って貰った。」

「君は神器級の魔道具を集めるのが趣味なのかい?」

「いえ、全くそんな趣味はありません。」

神器を集めるのが趣味な奴って貴族かどっかの盗賊女神しかいないだろ。

「はぁ、全くタイミングを狙ってたのに教え子に先にやられるとはな・・・」

場違いなセリフを吐く教師がやって来た。

「久し振り、ぷっちん先生。」

「ちょ、ちょっと待ってください。先生は私たちをいつでも助けれたのですか?」

「ああ、詠唱も終わってたし、後は一番格好いいタイミングで助けるだけだった。」

「あんたホントろくな教師じゃないな。」

「何をいってるんだ。俺はいずれは校長の座に座る者だぞ。」

「あんたはトイレの便座がお似合いだよ。」

「・・・十数年前にも同じようなことを言われた気がする。」

誰もがそんな前からこの人の本性を見抜くなんて見る目がある人ですね。

「まぁ、そんなことはどうでもいい。それよりお前のさっきのタイミングといい技といい、俺は教師として鼻が高いぞ。」

「は、はぁ・・・」

もうこの人には呆れてものが言えんわ・・・

「にゃー」

にゃー?

鳴いた方を見ると、

「何その愛くるしいねこは?」

めぐみんの肩に俺を興味津々に見てくるねこを指した。

「私の使い魔のクロ(仮)です。」

「仮名なんだ。よろしくな。」

「にゃーん。」

あかん、可愛すぎる。

「しょうたの顔が少し、いや、かなりヤバイ顔になってるのですが・・・」

めぐみんがが若干引きながら失礼なことを言った。

「おい、人の顔にけちをつけるな。」

クロ(仮)を撫でながら反論した。

『ご、ご主人様。私も!私も撫でてください!』

「・・・ついにお前がペット枠だと言うことに気付いたか。」

『ひ、酷い・・・!』

「あの・・・さっきから雪那の声が聞こえるのですが・・・」

めぐみんが辺りをキョロキョロして雪那の姿を探してる。

「あの、お前必死に探してるが雪那はここだぞ?」

腰に下げてる刀を触った。

『はふぅ。』

・・・・・。

「え、えーっと、前までその形で喋れなかったよね?」

聞かなかったことにするらしい。ゆんゆんが戸惑いながらも聞いてきた。

「ああ。迷惑なことに『共鳴』のレベルが上がったらしく自由に出入り出来る上に声を聞かせる相手を俺の任意で聞かせることが出来るらしい。」

『め、迷惑とは何ですか!?どこで迷惑を掛けたんですか!?』

「勝手に出てくるところ辺り。」

そのせいでこっちはいつも驚かされて心臓に悪い。

「しょうた。そっちの剣は自我を持ってないんですか?」

さっきから気になってたのかめぐみんがチラチラと『死神』を見ていた。

「幸いこいつにはめんどくさい自我は付いてない。その代わりに使う際にかなりの負担がかかるがな・・・」

前の『雪那』は良かった。卒業時辺りが一番良かった。魔力は劣るが精神的に楽だと思う。

『何文句いってるんですか?確実に戦力は上がってるんですから。それにその子m・・・』

「ほら、積もる話は後にしたらどうだ?一応授業中だしさ。」

雪那を遮るように珍しくもまともなことを言うぷっちん。

「あ、そうか。養殖中だったのか。またお前どやされるな。」

「恩師に対してお前呼ばわりするな。おいこら、ちょっと待て!」

喚いてるぷっちんを後に森からの脱出を図った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「よーし、お前らよく聞けー。邪神の墓の封印が解けかけていた事は話したな?今朝の野外授業で、変わったモンスターに出くわしただろう?ほら、そこに突っ立ってる俺の見せ場をかっさらっていった奴が倒したモンスターの事だ。」

ぷっちんは俺を指差し、少しばかり睨んできた。

見せ場って、そんなことならタイミングを計らずとも魔法をぶっぱなせば良かったのに。

「・・・いや、いつまでも俺を睨むな!さっさと続きを言えよ。」

「・・・ごほん。それで調査の結果、アイツは邪神の下僕である可能性があるとの事だ。封印の欠片を探しているのだが、相変わらず欠片は見つかってないそうだ。急いで調査を進めないとマズい。という訳で俺も、今から駆り出される事になった。昨日に引き続いてモンスター狩りだ。しょうた、お前も手伝ってくれと言伝てを預かってるぞ。」

「残念ながら、先の戦いで我が封印されし力を少しばかりの解放してしまい、その代償が体に来てるため、今回は参戦出来ないようです。まぁ、俺が居なくともぷっちん先生の秘められし力があれば十分だと思われます。」

流石に二本同時に魔力を流すと疲れが出てくる。『死神』に関しては流れやすいように『バーストモード』を発動させたのだから、負担が大きい。

「そうなのか。まぁ、俺のこの力があれば行けるだろう。」

紅魔族チョロい。

「よって、今日も午後の授業は無しだ。先日も言ったが、墓の再封印がなされるまでは一人で帰らず集団で下校するように。以上だ!」

ぷっちんはその事を伝えたら直ぐに教室を出ていった。

邪神とか物騒だな・・・

「にゃーん」

「どしたぁクロ?ご主人から離れていいのか?」

足元に近付いてきたクロ(仮)を抱き上げた。

「めぐみん。・・・あ、あの・・・きょ、今日も・・・」

どうやらゆんゆんがめぐみんに一緒に帰ろうと誘いたいらしい。

まだあいつコミュ症をこじらせてたのか。半年前までは普通に話せてただろうに。

そう思ってその光景をクロ(仮)を撫でながら眺めてると、

「・・・ゆんゆん、一緒」

「ねえ、ゆんゆん、一緒に帰ろう!ていうかさ、ちょっと話があるんだ!それと、さっき置いて逃げちゃった事を謝りたくてさ!」

めぐみんの言葉を遮るように、ふにふら達がゆんゆんを誘った。

俺はその光景を目の当たりにしてポカーンとしてた。

あのゆんゆんに話しかけてくれる人が出来ただなんて・・・しかも一緒に帰ろうって誘われてる・・・あ、ヤバイ、涙出そう。

最近涙腺がゆるゆるだ。

「えっ!?あ・・・、う、うん。」

めぐみんと帰るつもりがふにふら達と帰ることになったゆんゆん。押しに弱いのは知ってるが、流石に自分の意見を押し殺すのはどうなんだろう。そのうち土下座されたら何でもやりそうなうちの妹が怖い。

「えっと、じゃ、じゃあねめぐみん。また明日・・・」

そう言って何処か寂しそうな表情をして教室を出ていった。

残されためぐみんにあるえが近付き、

「・・・寝取」

「それ以上言ったら、その忌まわしい巨乳をエライ目に遭わせますよ!」

俺が居なくなって大分変わったもんだなぁ・・・

 

 

ガラガラガラ

「いらっしゃい!ただいま満席の・・・おおぉ!しょうた君じゃないか!いつ帰ってきたんだい?」

俺は再度雇ってもらうために定食屋に来ていた。

「今日の朝です。しかし、繁盛しすぎでは?」

いつ来ても満席。外には長蛇の列。ここの里の人は昼御飯を大抵ここで食べるのか・・・?

「ははは、ところで今日はどうしたんだい?」

「俺がここに来る目的は一つしかないでしょ。」

 

 

「では、合計千八十エリスとなります。」

めでたくバイトを再開することが出来ました。

「やっぱりご主人様のエプロン姿は良いものですね・・・」

「働けよ・・・」

雪那はカウンターで頬杖つきながら俺を見てた。

「いっそのこと写真集を・・・」

売れないと思うんだけど。

どうしてこいつはしょうもないことしか思い付かないんだろ?

「しょうた君、これ二番テーブルの。」

「了解です。」

ガラガラガラ

「いらっ・・・お金持ってます?」

「!?貴様、いつ帰ってきた・・・?」

俺はめぐみんの父親であるひょいさぶろーと睨め合った。

「今朝帰ってきた。それで注文は何にします?」

「カエル定食を一つ。」

・・・ん?

「お客さん失礼ですがお金持ってます?」

「馬鹿にしてるのか?こないだ丁度客が来てな。久し振りにお金が入ったんだ。」

「へぇ、そう言えばひょいさぶろーさんは何をしてるんですか?」

かなり前から気になってた。めぐみんの家がお金がない理由は?と。この人が仕事してない訳じゃないだろうし・・・

「魔道具の職人だ。まぁ、少し値が張るから売れないんだがな。」

ひょいさぶろーが乾いた笑をした。

「ひょいさぶろーさんの魔力は桁違いですからねぇ・・・強力な反面高いのは仕方ないですわ。」

「お陰で家族を養うのが難しくってなぁ。」

知ってます。あなたの娘さんにたかられましたから・・・

「またお菓子やらなんやら作って持っていきますよ。」

「いらん。貴様にうちの敷地を踏ませる訳にはいかん。」

「何でやねん・・・」

思わず素でツッコんだ。

「しょうた君。カエル定食出来たよ。」

「はーい。」

「ご主人様、なんやかんやでひょいさぶろーさんと仲良くありませんかね・・・?」

何言ってるんだこいつは。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふぅ、やっぱあそこのバイトは忙しいな・・・」

湯船に浸かりながら今日を振り返っていた。

「やっぱり限界値増やさないとな・・・『バーストモード』」

俺は10%程度でリミットを解放した。これを体にならしとけば時間が徐々に伸びていく。体力作りみたいなものだ。

10%程度なので目が通常の紅魔族の紅目になる。

「ご主人様。一緒に入りましょ。」

「『スキルバイン』」

「『マジックキャンセラー』」

数コンマ雪那の方が早かった。

「おい、ふざけてんのか?入ってくんなよ。」

「良いじゃないですか。一度やったことは二度三度やっても同じなんですから。」

なんというビッチの考え方・・・

「それよりご主人様。目が紅いですけど・・・もしかして怒ってます?」

「え、あぁ、大丈夫。ちょっと特訓をな・・・」

「今でもかなり強いのにまだ上を目指すんですか?」

「おいおい、一応最終目標は魔王討伐だぞ?今のままじゃ確実にリンチされてミンチになる。」

「まぁ、ご主人様の生命力は一般人以下ですからね。体力はお化けなのに・・・」

「正直言って体力は『バーストモード』の為にあるものだからな。」

ふーんと言いながら体を洗い始めた。

・・・目のやり場に困るな・・・

「ふふーん。ご主人様。別に見てもいいんですよ?あるえさんとゆんゆんさんには劣りますがどうです?結構自信があるんですよ。」

別に胸張って言えわれてもなぁ・・・いや、確かにまぁまぁだとは思うよ?でもなぁ・・

「だ、ダメだ。見たくても見れない。あるだろこういう経験。」

「ああ、確かに。ご主人様の」

「はい、ストップ!それ以上はいけない。」

雪那がとんでも発言をしようとしてたので全力で止めた。

いや、まさかあれを女子の目の前でやってたなんて恥ずかしいにも程がある。

「ふぅ、異性に見られるなんて死にたくなるレベルだぜ・・・そう言えばお前の体ってどうなってんの?」

前にこいつは俺のベットを汚そうとしたことがあった。つまりそういうものが出るということだ。こいつは刀でDNAもくそもない。その辺がとても気になる。

「き、気になると言われましても・・・見ます?」

顔を赤くしながら近付いてきた。

「そ、そう言うのじゃない。ほ、ほら遺伝子的なレベルの話。」

「・・・そんなの分かりませんよ。子供も出来るか分からないですし。もし出来ない体だったら完全にご主人様専用オ○ホですね。」

・・・マジで死ねばいいと思う。

「あのな、そういう重い下ネタは良くないと思うんだ。軽いのいこうぜ軽いの。う○ことかさ・・・」

「小学生ですか?と、ちょっと失礼しますよー。」

ザバー

雪那が入ったところで狭くなる訳でもないんだが・・・

「くっつきすぎ。」

「そうですか?いつもこのくらいくっついてますけどね。」

それお前刀の時だろ?

「あれ、ご主人様。肩の後ろに刺青がありますよ?いつの間にそんなものを・・・?」

「え、マジで?俺からじゃ見えんな・・・」

「形状は縞々で端的に言えばバーコード見たいですね。でもこれどっかで見たことあるような・・・」

風呂から出たら父さんに聞いてみよ。

「全く身に覚えがないんだけどな・・・」

「・・・あ!思い出しました!それゆんゆんさんにもありましたよ。流石にそれが何かは聞きませんでしたが確かにありました。とするとそれは紅魔族が持つ刺青と言うことになるんですかね。」

「ひでりうさんには無かったのか?」

「昔はこんなに積極的では無かったですもん。ちょっとおしゃべりなだけでしたし・・・」

俺もそれぐらいが良かったよ。

「もしこれは紅魔族のものだとしてだ、何で今出てきてるんだ?前も雪那とゆんゆんで入ったことあるけど気がつかなかったじゃないか。」

「あれじゃないですか、『バーストモード』。確かあれは紅魔族としての潜在能力がどうのこうのってエリス様が。」

「なるへそ。じゃあ目が紅くなるのと一緒でこの刺青も出てくるのか。」

そりゃ気づかねぇわ。

「いやぁ気付いて良かったですね。もしその刺青の事聞いてたら大変なことになってましたよ。」

「ホントに。」

危うく実は紅魔族の血筋を引いてることがバレてしまう。そうなれば俺が誰の子かなんて直ぐにバレてしまうだろう。そうなればどう考えても時系列的にズレが起きる。

「褒めてくれてもいいんですよ?・・・・ご主人様?」

「すーっ」

「ね、寝てますね。・・・しかも器用に『バーストモード』を発動させたままで。・・・少しだけなら良いですよね。」

 

 

「あぁ、ヤバい。切らずに寝てたわ・・・どれく・・・せ、雪那さん?」

「あ、おはようございます。」

雪那は声に気付き顔を上げた。

「えっと、そのおはようございますじゃなくてどうしてそんなところに・・・?」

今まですやすや寝てた俺だが目を覚めるとそこには俺の足にまたがって胸へともたれ掛かってる雪那の姿があった。

「どうしてって言われても、欲求のままに行動したらこうなりました。」

「良かったよ、お前の欲望がこんなもんで。」

思ってたほどこいつはわいてないのかもしれない。

「強姦しても嬉しさ半減でやっぱり合意の上でヤりたいですよね・・・」

前言撤回。やっぱりわいてやがる・・・

「というわけでどうですか?」

「・・・何言ってんの?ヤるわけないじゃん。そういうのは魔王討伐してからだ。」

「討伐したらヤらせてもらえるんですか?」

「・・・その前に色々決断しないと・・・」

最近色々あったせいで願い事が若干ではあるが揺らいできてる。たまにこいつらの一人と楽しく過ごすのもありかなって思うときがあったりもする。

「ご主人様はハーレム願望は無いんですね・・・」

「そんなの願ったって皆が不幸になるかもしれないだろ。そんなの願わない。」

「その割には気が多い気がしますけどね。」

すみません。

「ま、いいんですけどね。」

「それはそうと雪那さん。そろそろ離れて欲しいんですけど・・・」

「嫌ですよ。最低でも後五分はこうしとかないと気が済みません。」

「俺が寝てからどれくらい経った?」

「ざっと40分でしょうか?」

「十分じゃね?」

そう言って雪那を引き剥がした。

「いやん、エッチ・・・」

「ええエッチじゃねぇーし!どどどちらかと言うとお前の方がセクハラだからな!?」

「ふふふ、ご主人様ったら焦っちゃって、ホントに可愛いですね・・・」

今日もまた神器に弄ばれた。

 

 

「いや、自分の部屋に行けよ。」

「嫌ですよ。」

風呂から上がった俺達は自室の前で言い合ってた。

「何のためにお前の部屋を用意してもらったんだよ。申し訳ないだろ。」

「私はご主人様の物に指定されてこの世界に来たんですよ?だったら私はご主人様の所有物でご主人様の部屋にあっても可笑しくないんです。」

「いいか、俺は今のお前を物として扱ってない。一人の人として扱ってるんだ。女子が男子の部屋に入ろうとするんじゃありません。」

「ご、ご主人様・・・!」

目を潤ましてこっちを見てきた。

え?何でこいつ泣きそうなの?俺何か悪いこと言った?

「私嬉しいです。私を物として見ずにゆんゆんさん達と同じように一人の人として見てくれてることが凄く嬉しいんです。」

そう言って抱きついてきた。

「そ、そうか。良かった、もしかして気にさわることを言ったんじゃないかと・・・」

「ご主人様。」

俺の言葉を遮った。

「何?」

「やっぱりご主人様のことが大好きです。今日のところは諦めます。ではおやすみなさい。」

分かってたけど改めて直接言われるのは恥ずかしいな。

雪那は少しだけ頬を赤くして自分の部屋に戻っていった。

「はぁ、一番辛いのはあいつなんだよなぁ・・・」

ガチャ

自室に戻ると、

「・・・明らか布団に誰か入ってるよな。あれか遂に雪那が瞬間移動でも覚えたか?」

そんなわけないか。

バサッ

「すぅー、すぅー。」

まぁ、予想はしてたけどさ。

「おいゆんゆん。起きろ。俺の寝るとこがない。」

「ん、・・・」

俺の顔を見るなり赤くなる。

「え?ど、どうしてここに?」

「いや、ここ俺の部屋だろ?」

「・・・あ!そうだった。ここ半年の習慣が・・・」

「半年の習慣?」

「な、何でもない!」

「まさかお前ここ半年ずっとこの部屋で寝てたってことはないよな?」

「・・・」

さっきよりもさらに赤くなってしかも目まで光りだしてる。

「どうりで部屋が暖かかったわけだ。お前は使ってたんだな。」

コクリとゆんゆんが頷いた。

「寂しがりにも程が・・・!?」

ゆんゆんが抱きついてきた。

「雪那ちゃんの匂いがする。さっき抱きつかれたの?」

鼻をスンスンならして言ってきた。

あいつに匂いとかあるのか?一応刀だし付いてたとしても俺の匂いだと思うんだが・・・

「ま、まあ。それより早く部屋に戻れよ。」

「もう少し。後10分このままで居させて。」

朝は遠慮がちだったのにここに来てアグレッシブになったなぁ。

そう思いながら10分という短い時間を過ごした。

 

 

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「ごめん、今何て言った?」

定食屋の席に着き、ぷっちんに聞き返した。

「だから、最近あの邪神の下僕と思われるモンスターが里でも目撃されたらしい。そこで邪神の再封印の為に人を集めようってことになったんだが、そこにお前を入れたいと思ってるんだ。」

何言ってんだこの人。

「あのですね、封印にはとてつもない魔力が要るんですよね?俺の魔力どんなものか知ってます?平均ですよ平均。俺なんか頼むよりそこら辺で油売ってるぶっころりーさんとかぶっころりーさんとかに頼んだ方がいいと思いますがね・・・」

ニートだし暇もしてるだろう。

「いや、あいつは頼めば直ぐ来てくれるから後回しにしてるんだ。」

ぶっころりー、甘く見られてる・・・

「でもそうか、それなら仕方がない。他を当たるとする。悪かったなバイト中に。ご馳走さま。」

「いえいえ、またのお越しをお待ちしてます。」

ぷっちんが出ていき食器を流しに持っていくと、

「しょうた君の魔力って雪那ちゃんで強化されるんじゃなかったけ?」

店長ちょっと鋭すぎやしませんかね?

「・・・そう言えばスプリットのカエルの唐揚げが凄い濃かったんですよ。あれなんでですかね?」

「しょうた君!?」

詰まってる排水溝に無理矢理水を流すように話を流した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「くうううう!こ、ここっ!このマスに、『ソードマスター』を前進させれるわ!」

現在俺は芝生の上で訳の分かんないチェスの試合を観てた。

「このマスに『アークウィザード』をテレポート。」

「めぐみん、テレポートの使い方が嫌らしい!・・・ねぇ、『アークウィザード』は使用禁止にしない?」

「しません。ほら、そうこう言ってる間にリーチですよ。」

「ああああ、待って、待って!」

このあとゆんゆんがボロ負けしたのは言うまでもない。

そもそも何でこんな芝生の上で遊んでるかというと、どうやらゆんゆん達が昨日糞にーt・・・げふんげふん。ぶっころりーさんに相談があると言われ、ここで待機してる。

「なぁ、俺必要なのか?ぶっころりーさんには若い女の子にしかできない相談って言われたっんだろ?これって場違いなやつじゃ・・・」

「何言ってるんですか。もしかしたら色々と危ない相談かも知れないんですよ?」

あの糞ニート・・・ぶっころりーさんにそんな度胸ないと思うけどな・・・

「大丈夫だって。お前に需要があるのはごく一部だっ!?ま、待て!止めろ、あ、謝るから首締めるな!」

めぐみんが切れて襲いかかってきて馬乗りされた。

「め、めぐみん。まだ勝負中よ!」

「ちょっとうるさいです。この男に制裁を下さなければ・・・!」

制裁って何だよ。全く需要が無いって言った訳じゃないだろ?

「わ、分かった。今度喫茶店でサンドイッチ奢るから!」

「ふん、食べ物でこの私を釣れるとでも?サンドイッチとシチュー、それに飲み物を追加で。」

バリバリ釣られてんじゃねぇか。

「交渉成立ということで、どいてくれない?」

「仕方ないですね。では、これをそのマスに。」

何事もなかったようにゲームに戻り出すこの切り返しっぷりはなんだよ。

「にゃう」

「お前も大変だな。」

クロ(仮)を抱きながら寝転がった。

ぶっころりーさん早く来ねぇかな・・・

「や、やった、このままいけば何とか勝てそう・・・!さあめぐみん、これで終わりよ!このマスにクルセイダーを・・・」

「エクスプロージョーン!」

酷い光景をみた。駒が盤から宙に舞って、盤はひっくり返った。

「あーっ!めぐみんズルい、盤をひっくり返すのはズルいわよ!」

「でも、このルールブックにちゃんと書いてありますよ?・・・」

ルールブック片手に説明するめぐみん。て言うか、そんな糞ルール作ったやつは誰なんだ?普通エクスプロージョンとか思い付かんだろ。

 

 

「もう一回!ねぇめぐみん、もう一回お願い!」

このチェスみたいなのを始めて三時間半。いい加減諦めたらいいと思う。だが・・・

「何度やっても私の勝ちですよ。」

少し調子に乗ってるめぐみんを凹ましたい。

「しかしこのゲームは面白いですね。」

「おいめぐみん。一回俺とそれで勝負しないか?」

「ほほう。冒険者ごときがこの知力の高いアークウィザードに挑むのですか?」

「お前の知力がどんなものかは知らんが俺だってそこそこ高いって言われてるんだ。そもそもお前。学校でいつも二番手だったじゃねぇか。舐めんな。」

「っ、いいでしょう。あのときの雪辱晴らさせて貰います!」

~五分後~

「ふっふっふ。元一番手の実力はそんなものですか。大口叩いた割には大したこと無いですね。これならゆんゆんの方がまだ強いですよ。」

「冒険者をそのマスに。クラスチャンジでソードマスターに変更。」

「そんなとこに置いてなんn・・・!?」

「やっと気付いたか。お前がこのアークウィザードに気を取られ過ぎて気付かなかったんだな。次お前がどう動いてもここにクルセイダーを置いてチェックメイトだ。」

「わ、私としたことが・・・!も、もう一回です!」

「嫌だよ。一回って言ったじゃん。にしてもぶっころりーさん遅いな。」

聞いたところによると集合は朝ということであまり時間は限定されてない、が、今は昼前だ。どう考えても朝の時間ではない。

「呼びに行ってみる?」

「そうするか。」

俺達はゆんゆんの提案を受けてぶっころりー宅へ向かった。

 

 

「あれ、しょうた君達じゃないか。みんな集まってどうしたんだい?」

「あるえか。いやな、こいつらが昨日ぶっころりーさんに頼み事をされてな、不安だから付いてきて欲しいて言われて現在に至る。」

「ふーん。そう言えば雪那ちゃんはどうしたんだい?」

「あいつなら多分寝てるんじゃないかな?寝てる間にスリープ掛けたし。」

寝てる相手にスリープを掛けると睡眠時間が伸びる。

「ところであるえはどうしてこんなところに?いつもなら家で小説を書いてると思うんですが・・・」

俺もめぐみんと同じことを思ってた。せっかくの休日なのだから趣味に没頭するのが普通だ。あ、因みに俺も運良くバイトが休みです。いわゆる定休日って奴ですね。祝日と被るとか嬉しい。

「たまには外に散歩に出てもいいかなぁってね。」

「ねぇめぐみん。あるえにも付いてきてもらわない?」

「そうですね。ぶっころりーも若い子が増えたら喜ぶでしょう。」

相談相手が増えるからだよな?

「しょ、しょうた君。とても嫌な予感がするんだけど。」

「大丈夫だって。そんなお前が想像してる事なんて起こらないから。」

「そ、想像なんかしてない・・・!」

一気に顔を赤くするあるえ。

やっぱりこいつムッツリなんだなぁ。

「あるえ、何を想像してたの?」

あるえの顔を覗き込むようにゆんゆんが聞いていた。

「え、あぅ・・・」

止めてやってくれそれ以上追求したらオーバーヒートするぞ。

「ゆんゆんかなりえげつないことしますね・・・」

めぐみんまでもが若干引いてる。

「そ、そうかな?」

「ああ、いくらいつもお前がそんなことを想像してるからと言って他人に聞くのはどうかtごふっ!?」

いきなり溝内に拳をねじ込まされた。多分この世にHPゲージがあるとするなら、きっと今はイエローゾーンに差し掛かっているだろう。この生命力の低さを改めて実感した。

「な、何バカなこと言ってるのよ!?」

バカなことと思うなら殴る必要はないと思う・・・

「しょうたぁ、生きてますか?」

とりあえず親指を立てて生きてることを示した。

「そうですか、はぁ、ゆんゆんの気持ちも分からないこともないですがいきなり殴るのはどうかと思います。せめて一言言ってから殴りましょう。」

そこ?殴るの絶対なの?

「立てるかい?」

そう言ってあるえが手を差し出してきた。

「ん、あぁ、お腹痛い・・・」

朝食べたものが出てきそうだ。

「まぁ、しょうたもしょうたです。言葉をもうちょっと選んで発言してください。」

「はい・・・」

まさかめぐみんに怒られる日が来るとはな・・・

「で、あるえは来るのですか?」

「うーん、暇だし、みんなと一緒なら大丈夫だと思うから行くよ。」

大丈夫ってなんだよ。ぶっころりーさんはどういう風に見られてるんだ?

そんな疑問を抱きつつ歩き出した。

 

 

「ごめんください。ぶっころりーはいますか?」

「おっ、めぐみんじゃないか、らっしゃい!せがれならまだ寝てるぜ。」

ここは里随一の靴屋さん。まぁ、この里には靴屋なんてここしかないんだけども・・・

しかし、約束があるっていうのに寝てるって糞野郎だな。

めぐみんが目元をひくつかせて、

「すいません、起こしてもらっていいですか?実はぶっころりーから、『いたいけな少女の君達に相談があるんだよ、はぁ、はぁ!』とか言われまして。」

おっとそれはあんな風に見られても仕方がない。

「あの野郎!」

うわっ、物凄い勢いで飛んでいったな・・・流石にあんなことを息子が言ってたらな・・・

「ちょ、ちょっと!ぶっころりーさんが言ってた事とは、大体合ってるけど大きく違うわよ!」

「人を呼びつけといて呑気に寝ているニートには、このぐらいしてやらないと。」

大体合ってるなら良いじゃないか。

ぶっころりーさんの悲鳴を聞きながら思った。

「ひいいっ!ああっ、めぐみん!酷いじゃないか!親父に、『このロリコン野郎!』とか怒鳴られて・・・ねぇ、めぐみん。何でこいつが居るのかな?」

明らか敵意剥き出しでこっちを見てくる。なんかしたっけ?

「こいつとはしょうたのことですか?それは私達の護衛みたいなものです。そんなことよりさっさと行きますよ!」

「あっ、rちょっと待ってくれ!俺、まだ着替えてもいない!」

 

 

着替えを済ませたぶっころりーさんと俺達はお決まりの喫茶店に入っていた。

「ゆんゆん、あるえ。好きなのを頼んでください。ぶっころりーの奢りなので遠慮することはないですよ。あ、私はカロリーが一番高いパフェをお願いします。」

それ女子の注文じゃないよね?

「それって俺が言う事じゃないのか!?金なんてほとんど無いのに・・・」

「まぁまぁ、ここは俺が払っとききますから。」

「も、申し訳ない。」

さっきの敵意は何処へ行ったのやら。

「それじゃあ本題に入ろうか。相談ていうのは他でもない。実は俺・・・好きな人が居るんだ。」

うん、知ってる。

「ええっ!」

「ニートのクセにですか!?」

ゆんゆんとめぐみんは驚いてるがあるえはそうでもないらしい。『ふーん、で?』みたいな顔をしている。

「ニートは関係ないだろ!ニートだって、飯も食えば眠りもするし、恋だってするさ!」

その前に働けこの糞ニートが。

「こ、恋バナだ!ねぇ皆、恋バナだよ!」

何が嬉しいのか目を輝かせてるゆんゆん。そんなに恋バナがしたいならお前の全てを洗いざらい話すぞ。

「う、うるさいですよゆんゆん。しかし、相手は気になりますね。誰なんですか、そのニートのハートを射止めたのは?私達の知ってる人ですか?いえ、もしかしたら私達の誰かだとか・・・」

この里の人口少ないんだからほぼほぼ知ってる人だろ。

「おい、可笑しな事言うなよ。自分の年齢を考えてくれ。俺はロリコンじゃ・・・」

次の瞬間ぶっころりーさんに拳が三つ飛んできた。

めぐみんはともかくゆんゆんやあるえもロリコンに反応するとはな・・・今度から気を付けよ。

「さ、三人とも容赦ないな・・・それで、俺が好きな人って言うのは・・・」

 

 

「あのですね、月とすっぽんっていう言葉知ってますか?」

ぶっころりーに意中の相手を聞いためぐみんがそんなことを言い出した。

「何それ?」

まぁ、知らなくて当然か。日本の言葉だもんな。

「本で読んだんですが、遠い異国の言葉で月の様に綺麗なものとすっぽんのような醜いものを天秤にかけたときに使う言葉です。」

俺はすっぽんかわいいと思うけどなぁ・・・

「そこまで言う必要はなくないか?鋼の精神を持つ俺でも流石に傷付くんだけど。」

「まぁまぁ、それよりそけっとさんの家まで来たのはいいけど、これからどうするんだい?」

「手っ取り早いのはぶっころりーさんがお客になって会話を弾ませるって言うのがセオリーだと思うんだけど・・・」

そこまで考えれるならゆんゆん。もうちょっと友達増やそうぜ。

「そこまで社交性があったらニートなんてやってない。それにそんなお金があったら毎日のように通い詰めてるよ。」

「もう私達帰って良いですかね?」

そうめぐみんが言った瞬間、

「あ!!良い案がある。これなら会話も弾みやすいし、何より共同作業ができる。」

共同作業という言葉に反応する紅魔族。

「おいお前ら。何を想像した?」

「しょ、しょうた。その目で見ないでください。」

「死んだ魚の目だよそれ・・・」

「べ、別に変なことなんて想像してないから!」

「そ、そけっととの共同作業・・・」

もう駄目だこの人・・・

「はいはい。考えを言うから良く聞けよ。とりあえず今から食材を買いに行こう。」

「「「「え!?」」」」

「俺が得意なものは何だ?」

「トランプゲーム」

「イカサマ」

「たらし」

「殺戮」

泣いていいかな?

「違うだろ!?料理だよ!料理!」

「あ、成る程。私の家みたく料理教室みたいなものをやろうと言うわけですね。」

流石現主席。頭良い。

「そうか!お兄ちゃんそけっとさんに料理をちょくちょく教えてたから簡単には出来るのよね。」

「そ、そうだったのか。俺はてっきりしょうた君とそけっとが・・・」

な、成る程ぉ。だから敵意剥き出しだったのか。

「全く、年を考えてくださいよ。流石に二十代の人とは付き合えないですって。」

思いっきり守備範囲外だ。そもそもあの年代の人にはトラウマしか・・・

「そうと決まれば早速市場に行こう。」

どことなくあるえが楽しそうに言った。

 

 

で、再びここに戻ってきたわけだが。

「留守みたいですね。」

どうやらそけっとさんは不在らしい。

「どうしよっか。せめてどこに行ったかだけでもな・・・」

そうぼやいたら、

「そけっとの事なら俺に任せてくれなんせ俺とそけっとの仲だからね、まずそけっとは朝七時に起きるんだ、健康的だよね、その後シーツを洗濯かごに・・・・・こっからは書く気が失せたので省略させていただきますorz・・・・・まあそれはいいとして、今の時間帯だとそけっとが店に帰ってくるまであと二時間ちょっとってとこかな、このまま待っててもいいんだけどね。・・・どうする?」

あまりにも濃い情報過ぎる。俺が心配してたことがついに起こった・・・

「そ、それってストーカ・・・」

「おっとゆんゆん、それ以上言うのはいくら族長の娘でも許さないぞ。」

「いや、もうあんたが人間として許されないよ。でも、あと二時間か・・・それは長すぎる。早く居場所を知って誘わないと食材が・・・」

「大丈夫さ、行き先なら見当がついてるんだ。」

その自信がどこからくるんだろう。凄い自信満々に道案内をされた。

「なぁ、俺はどうすれば良いの?ぶっころりーさんを凄いと思ったら良いのか通報したら良いのか、どっち?」

「確実に後者ですね。」

里にある随一の雑貨屋さんにそけっとさんが居た。

「でもまぁ、ここなら普通に誘いやすいんじゃない?」

「じゃあ、ゆんゆん。お前行ってくるか?」

「ななな、何言ってるのよ!そ、そんなこと出来るわけないじゃない!」

流石コミュ症。俺も言えた立場じゃないけどな。

「はぁ、仕方ないですね・・・ここは私が・・・」

「いや、お前はいい。色々問題を起こしてきそうだ。」

「な、私を何だと思ってるのですか!?」

「・・・ふっ、言わせんなよ。」

「ぶっ殺!」

摩擦係数ゼロ何て言えるわけないだろ。

「ここは張本人のぶっころりーさんお願いできますか?」

「俺の社交性の低さを舐めるな。」

何を自信満々に言ってるんだこの人は。

「あるえは・・・」

「私はそけっとさんとあまり面識がないからね。話し掛けるのには無理があるよ。」

この中で唯一まともかなぁって思ってたやつも無理。

「仕方ねぇなぁ。」

「やはり私の力が必要なようですね。」

「俺が行くわ。めぐみん、お前は戦力外だ。」

「こ、紅魔族随一の天才の私が戦力外・・・」

「お兄ちゃん大丈夫なの?」

「まぁ見とけって。」

そう言って雑貨に向かって歩いた。

「おっちゃん!ハリちょうだい。」

「お、しょうたじゃねぇか久しぶりだな。ちょっと待っとけ。」

「あれ、し・・・しょうた君。奇遇ね。」

「あ、そけっとさん。こんにちは。今日はどうしたんですか?」

「まぁ冷やかしみたいなものね。しょうた君は?」

「裁縫道具を買いに。」

「お待たせ、はいこれ。」

「ありがと・・・おっちゃん。これハリじゃなくてヤリだよね?」

「ははは、男たるものヤリは常に常備してないとな。おっと、もう既に付いてるか、ガハハハ。」

俺はその辺に立て掛けてあった木刀を掴み、

「辞世の句を聞こうじゃねぇか。」

「じょ、冗談だって。な、一旦その木刀を置こう。そうしよう。」

「はぁ、そこまで怖がらなくても。それより早くハリを。」

「はいはい。これ。」

「どうも。あ、そうそう。そけっとさんこれからあそこに居る奴らに料理を教えるんですけど、良かったら一緒にどうです?まぁ、場所はまだ決めてないんですけどね。」

木の陰から覗いてるめぐみん達を指した。

「うーん、そうね。じゃあご一緒させて貰おうかしら。」

 

 

「はい、と言うことでそけっとさんが参加してくれる事になりました。」

「たまにしょうたが本気を出したら何れくらい釣れるのか試したくなるんですが。」

何その異物を見るような目は・・・

「それより、今日は何を作るの?」

「今日はこの広場でお好み焼きを作ろうかと。」

「「「「「おこのみやき?」」」」」

どうやらお好み焼きはこの世界には無いようだ。

「これはとても簡単だから教えやすいんだよ。まずは・・・」

鰹から出しを取って小麦粉、水の中に放り込んで混ぜた。

「取り敢えずこんな感じで生地を作って。めぐみん、ゆんゆん、あるえで組んで、そけっとさんとぶっころりーさんは二人で組んでくださいね。」

 

 

「ちょ、ちょっとめぐみん。クロちゃんが鰹節をかじってるんだけど!?」

「わ、我が化身の破壊欲は誰にも止められないのです。こ、こらそれ以上かじられると使う分がなくなるから止めるのです!」

鰹節かじれるってどんな顎の持ち主だよ・・・

「ああっ!そけっと、沸騰しすぎてお湯が無くなってるよ!どうしてこんなんになるまでほっといたのさ!?」

「あ、ご、ごめんね。そう言えば洗濯物を畳んでなかったなと思って・・・」

「い、いや、俺もちゃんと見てなかったのも悪いしな・・・」

何だかんだであんたらお似合いじゃないか?

「しょうた君。ダマが出来るんだけど・・・」

「一気に入れすぎだ。こう少しずつだなぁ・・・」

ふるいがあったらなぁ・・・

「次に卵を入れて。」

グシャッ

「ゆんゆん、もしかして料理下手ですか?」

「・・・経験が浅いだけよ・・・」

「私もほとんど未経験だから気にやむことはないよ。しょうた君に教えてもらって以来してないからね。」

「私は経験豊富ですからね。どんな男でも直ぐに落とせますよ。」

未経験とか経験豊富とかあまり言わないでもらえるかな?ちょっと危ないからさ。

「ちょっと、卵を握り潰してどうするのよ!?」

「あ、ごめん。つい・・・」

ついって何?その前に卵って握り潰せたっけ?物理的に無理なんじゃ・・・

こんな感じで色々あり、精神を削られていった。

 

 

「・・・あのさ、俺な、お好み焼きにこんな時間掛かったこと無いんだよ。」

生地や具の準備するのに一時間ちょっと掛かっていた。

目の前には鉄板の上でジュウジュウ音をならして焼かれている生地がある。

「もうちょい手際よくやれなかったのか?」

「「「「「すいません・・・」」」」」

まぁ本来の目的はあの二人の接点を作ることだから本腰を入れなくても良かったんだけど・・・入れないとプライドが許さなかった。

「はぁ、ま、最後は出来たし良しとするか。」

「ご主人様!」

それが聞こえた瞬間、その声の持ち主に抱きつかれた。

「!?せ、雪那、寝てたんじゃないのか?」

「いやぁ二時間ほど前までは寝てたんですけど、起きたらご主人様が居なくて探すのもあれですし、さっきまではご主人様のお布団を楽しんでいました。」

俺の布団には何かあるのかな?

「しょうた、もうこの子は駄目なんじゃないでしょうか?」

「今更感。こいつにはもう疲れたよ。」

「酷い言いぐさですね。」

「いい加減離れろ。ひっくり返せないだろうが。」

このままではお好み焼きが焦げてしまう。

「あ、すいません。」

意外にも素直に聞いてくれた。

「よいしょっと。出来た。これに・・・」

自作のソースとマヨネーズを掛けた。

「「「「「「おおぉ!」」」」」」

ソースとマヨネーズが焼ける音が辺りに響いた。

「さ、どうぞ。」

各々好奇の視線でお好み焼きを食べた。

それを雪那が眺めている。さっき来たばっかだから雪那の分は無い。

「雪那、ほら半分やるよ。」

「え、あ、ありがとうございます。」

「ほうほうこれがツンデレ・・・」

「つ、ツンデレじゃねぇし!?何ふざけたこと言ってるんだよあるえ!その口閉じないとお前のアイデンティティーをえらい目に遭わせるぞ!」

これを叫んだ瞬間、一瞬だけゴミを見るような視線を浴びせられました。

 

 

「はぁ、あ、そうだそけっとさん。ぶっころりーさんを占ってくれないかな?」

「え?別に良いけど。」

「しょうた君。いきなり何を言い出すんだい。俺は別に占ってほしくは無いんだけど。」

ぶっころりーさんが俺で囁いてきた。

「いいですか?今回ぶっころりーさんが占って貰うのは未来の恋人についてです。」

「み、未来の恋人!?」

「ちょ、いきなり叫ばないでください。もしそれでそけっとさんが映ればそのまま付き合うことも出来るし。」

「あ、頭良いなぁ・・・」

「と言うわけでそけっとさんよろしくお願いしまぁす!」

「それじゃあ何を占ってほしいの?」

懐から水晶を取り出していった。

それいつも持ち歩いてるんですか?

「え、えっと、み、未来の恋人について・・・」

俺から見たら面白い光景だが当の本人からしては生き地獄だろう。目を白黒させて言っていた。

「分かったわ。もうすぐこの水晶に将来あなたと結ばれる可能性がある女性が見えてくるわ。でも未来は変えられるもの。だからその人が絶対だよは言えないけれど・・・っと、そろそろよ。」

水晶から淡い光を放って・・・

「何も見えないんだけど・・・」

そこに写ったのは虚空だった。

「あ、あれ!?」

カエルを焦がした時と同じ顔をして慌ててるそけっとさん。

「これは・・・ぶっころりーさんには彼女が出来ないってこと?」

「どんな人でも一人は映る筈なんだけど・・・あ、だ、大丈夫よ。占いは絶対じゃないから。私が子供の頃に天気を占って、曇りって結果が出たけれど五分ほどににわか雨が・・・」

それはもうほとんど当たってるんじゃなかろうか?

「止めてくれ!占いの精度を自慢してるのか慰めてくれてるのか分からないよ!」

「そ、そけっとさんは自分の恋人について占ったことは?」

話題を切り替えなくては。

といっても切り出した話がまずかったかなぁ。

「そ、そうね、あるんだけど。」

あるんだ・・・

「占い師は自分を占えないのよ。私が関わってると水晶には何も映らなくて・・・」

・・・ほう。

「お兄ちゃんにめぐみん。ニヤニヤしてどうしたの?」

どうやら頭の良いめぐみんは気づいたらしい。

「「いや、釣り合いが取れないなっと思って(思いまして)」」

周りは釣り合い?と首をかしげてる。

まぁ何はともあれお幸せに。

 

 

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バイトからの帰りで夜道を歩いてる時だった。背筋が凍るような感覚に襲われた。

すぐさま振り返ってその場から距離を取った。

「・・・誰もいない?でも今の魔力の感じは・・・」

『気のせいじゃないですよ。私も感じましたし。』

どうやら雪那も感じたらしい。

あの感覚、この前のモンスターに似てるな・・・

「・・・まったく!せっかく、今日は良い一日で終わりそうだったのに!めぐみんは毎日何かをやらかさないと気が済まないの?将来、絶対に加入したパーティーの人達に迷惑かけそう!」

「何を言うのですか。私が爆裂魔法を覚えた暁には、パーティーの最大火力になって魔王の幹部ですらぶっ飛ばしてやりますよ。それに最初のパーティーは安心して私を任せられます。出来れば臨時ではない方が良いんですけどね。」

「そ、それは困るわ。お兄ちゃんは絶対に渡さないんだから。それに私もめぐみんと・・・」

カーン、カーン

紅魔の里に鐘の音が鳴り響いた。

ゆんゆんの顔が赤くなっている。

やっぱ中途半端は恥ずかしいよな。

あ、さっきからゆんゆん達を影から見てます。ストーカーじゃないです。変質者でもないです。お願いですからその携帯電話を置いてくれるとありがたいです。・・・誰に言ってるんだ?

しかしさっきの鐘は緊急事態を知らせるものだったんだが・・・

「すいません、鐘の音で最後の方が聞こえなかったのでもう一度・・・ゆんゆん?」

ゆんゆんはめぐみんの後方の空を見て怯えていた。

そちらの方を見ると、無数のモンスターの群れが。

隠れてる場合じゃねぇ。

「お前ら走れ!こっからじゃめぐみんの家が近いだろ!」

「「あ、あれ!?しょうた(お兄ちゃん)!?いつからそこに。」」

お前ら仲良いな。

「通りかかったらお前らの話し声が聞こえたから来てみたらこの有り様だ。それより早く。」

「お兄ちゃんはあれを倒せないの?」

「数が多すぎる。全滅は出来ない。」

俺達は走ってめぐみんの家に向かって走った。

『ご主人様、私を通して上級魔法を撃てば・・・』

「だまらっしゃい!」

出来なくもないがめんどいからやりたくない。

「え!?い、今雪那がとても気になることを言ったのですが・・・もしやしょうた。あれを一掃出来るのですか?」

「あああ!うっせいな!お前もくだらない爆裂魔法を諦めて上級魔法を覚えたら一掃ぐらい出来るだろ!?」

「く、くだらないとは何ですか!?いいですか?爆裂魔法と言うのは・・・」

「ふ、二人とも。こんなときにしょうもない喧嘩しないでよ!あ・・・もうダメ、追いつかれ・・・!・・・あれ?」

「通りすぎていったな・・・」

モンスター達は俺達に一瞥もくれず飛んでいった。

頬にビリビリと伝わってくるものがある。振り返ると後方の空に青白い光がいくつもあった。

「紅魔族って世界征服できるんじゃね?」

「さぁ?一人では無理かもですけど十数人集まれば半分くらいなら出来るのではないでしょうか。まぁ、爆裂魔法には及びませんがね。」

「一発屋が何を言ってんだか。」

小さく呟くと、

「何か言いましたか?」

「いいや、何も。」

「そうですか。それはそうと二人は今日は家で泊まると良いです。」

「と、泊まり!?い、良いのかな?」

「良いも何もこんな状況でどうやって帰るつもりですか?この人はもう役に立たないですし・・・」

その言いぐさやめろ。そもそも今『死神』持ってないから勝ち目ねぇんだよ。

「パジャマは私のを使うと良いです。胸が窮屈だとか丈が短いとか言ったら裸で寝させますからね。」

何だと・・・?

「い、言わないから。お兄ちゃんも反応しないで!」

「は、反応してねぇし!?」

『そんなに裸が見たいなら私に頼めばいくらでも見せてあげますのに・・・』

「それはなんか違うだろ・・・」

雪那に呆れながらめぐみんの家がそろそろ見えてくる所まで来た。

「それはそうと俺入れてくれるかなぁ・・・」

そう、俺が一番気にしてるのはひょいさぶろーさんだった。

追い出されたりしないかな、ちょっと命の危機を感じる。

「それについては安心してください。今家にはお腹を空かせながらも戸締まりをして一人でこめっこが留守番をしているはずです。両親二人は封印の儀式を手伝ってあそこに居るのではないでしょうか。」

めぐみんは後方の森の方を指していった。

「こめっこ一人で居るとか危なくないか?」

「まぁ、家はボロ家ですけどしっかり戸締まりをしとけばあのモンスターでも・・・」

多分侵入は出来ないと続けたかったのだろう。しかし今目の前には無惨に潰されためんぐんの家のドアがあった。しかも中から物音が。

「・・・こめっこ?」

 

 

「落ち着けめぐみん!」

「でもこめっこが!こめっこが!」

俺達は音のなるめぐみんの家に入り、こめっこを探したが家の中には居なかった。ついでに音のならした犯人らしきものの影もない。

「大丈夫、大丈夫だ。こめっこは必ず生きてる。あいつはそう簡単に殺られるたまじゃない。」

めぐみんを抱き締めて安心させるように言った。

しかし俺もそう言いながらも不安は隠しきれないらしい。

「お兄ちゃん、大丈夫?体が震えて・・・」

「言うな。それ以上不安になるようなことは言わないでくれ。」

「・・・そうです。我が妹はそう簡単にはモンスターの餌さなんかにはならないはず。探しましょう。」

「探すったって何処を・・・」

探すんだよと言おうとしたら後ろからあの魔力の流れを感じた。

急いで振り返るとそこにはくちばしを着けた爬虫類のようなあのモンスターが立っていた。

「うおぉっ!」

その姿が目に入った瞬間、何も考えず斬りかかっていた。

いや、こいつらを守らないとという思いはあったかな。

ギャァァァッ!

思いの外軽く刃が入り、肩口からかけて腰までバッサリと斬れた。

そのまま倒れ、黒い煙になって跡形もなくなり消えた。

物音の犯人はこいつだったのか。でもどこに隠れてた?

「前もこんな感じで消えたな。一体どういう原理だ?」

『多分構造は私が魔力で生み出す刀みたいなものですかね。魔力そのものを具現化するといった感じです。』

成る程。実際の肉体はないということか。しかし、こんなものを無尽蔵に生み出すって黒幕はどんな魔力の持ち主なんだよ・・・

「た、助かりました・・・ありがとうございます。」

「まさかこんなにあっさり殺れるとは拍子抜けだ。」

でも数で来られたら押されるだろうな。

「とりあえずここに居てもこめっこが出てくるわけでもない。めぐみん。心当たりはないか?」

「心当たりですか・・・うーんと、無いんですけど何か引っ掛かることがありまして・・・あ!」

どうやらそれが何か分かったらしい。

「ももも、もしかしてこめっこはあそこに・・・!」

「ねぇ、めぐみん落ち着いて。一体それはどこなの?」

「と、とりあえず付いてきてください。事情は向かいながら話しますから・・・」

そう言いながら家を出ていこうとしためぐみんが立ち止まった。

「おいめぐみん。どうした・・・」

めぐみんの目線の先にはめぐみんの鞄を裂くモンスターがいた。

「クロちゃんがっ!?あの鞄の中には、確かクロちゃんを入れてたでしょ!?」

おいそれまじか・・・あんなとこにクロを入れてたのか?

「も、もうあの子はダメです、諦めましょう!私達の尊い犠牲になったという事で、ちゃんとお墓も作ってあげますから!大丈夫、あの子はこれからも共に生きるんです。そう、私の心の中で、ずっと一緒に・・・」

「生きてるよ!ちゃんと見てよ、あの子まだ生きてるよ!諦めるの早すぎでしょっ!?」

ゆんゆんが指した方向には裂かれた鞄からもぞもぞ這い出してくるクロの姿があった。

鞄を裂いたモンスターは俺達の存在に気づいてるにも関わらずクロを見つめて抱き抱えた。

「おいめぐみん。お前の使い魔が丁重にもてなされてるように見えるのは俺だけか?」

「お、お兄ちゃん。そんなことあるわけないでしょ?」

いやでもクロが特段嫌がってるわけでもなく、すごく落ち着いてるんだけれども・・・

「きっとあのモンスターはクロに危害を加えるつもりはないのでしょう。家の教育の結果、あの毛玉は身の危険に対しては敏感になってますから。」

それどういう教育?

「ねぇ?何で二人ともそう冷静なの!?クロちゃんがさらわれそうなのよ!?」

「でも、今あのモンスターからクロを取り上げたら反撃が来そうで怖いんだけど・・・」

「そうです。あの毛玉が危機を感じてないなら今はこめっこが優先です。」

「ひ、人でなし!」

酷い言われようだな・・・

「はぁ、仕方ないですね。二人とも逃げる準備してくださいよ。ちょっと失礼しますよ。」

めぐみんがゆんゆんの腰に下げてある短剣を引き抜き、

「その子を持って行かれると、成長を心待ちにしている我が妹に恨まれそうなのです!我が投擲術を見るがいい!」

そう言いながら投げた短剣は見事に明後日の方向へと飛んでいった。

「ああっ!」

そう叫んだのはゆんゆんだった。

そりゃ自分のものを勝手に投げられた上にあらぬ方向に投げられたのだからこうもなるだろう。

「・・・ふっ、風の魔法壁を纏っていたとは。中々やりますね・・・あいたっ!?」

「お前がノーコンなだけだろ。その前にゆんゆんに謝れ。」

俺はめぐみんの頭にチョップを入れて言った。

「す、すみません。ってそんな事をしている間にクロがっ!」

俺らがしょうもない事している間にクロがモンスターに抱えられ空高くへと連れ去られた。

 

 

「・・・とりあえずこめっこから手をつけるか。」

「そうですね。」

「ほんとなんで二人とも冷静なのよ!?」

何か不満なことがあるのかゆんゆんが喚いてる。

「いいか、今回の事は多分繋がってるんだと思う。めぐみんの家に居たモンスターとクロをさらったモンスターは同系列のものだ。こめっこは何らかの形であのモンスターに接触したか、あるいはめぐみんの心当たりとあのモンスターが関係してるかだ。それとクロの事を並列して考えるとこめっことクロが一緒に居る確率もある。まぁ俺の勘だがな。」

「妄想もいいとこですね。でもその妄想に賭けたいです。」

「お兄ちゃんの勘は当たるからなぁ・・・」

「と言うわけでめぐみん。案内よろしく。」

 

 

「ねぇ、めぐみん。こんなところにこめっこちゃんは居ないと思うんだけど。」

めぐみんの後ろをついていってたどり着いたのは邪神が封印されてるという墓だった。

今思えばこの原因は邪神の下僕達がどうのこうのってぷっちんが言ってた気もする。ほとんど信じてなかったけど。あれはマジだったのか。

「とりあえずそこの茂みから覗いてみましょう。」

草影から顔を出すと、

「・・・居ましたね。」

「・・・居たね。」

そこにはさっきのモンスターと対峙してるこめっこの姿があった。

「・・・マジでクロ居るじゃん・・・」

自分でも驚いた。あんなポジティブシンキングが当たるなんて思ってもみなかったのだ。それより凄い気になるものがある。

「なぁめぐみん。こめっこが持ってるパズルって何?」

そう、こめっこは何かしらのパズルを持っているのだ。普通のパズルならどうでもいいと思って見落とすが、何かしらの魔力を発してるあのパズルは見落とすことができない。

「し、知りませんよ。」

「お前心当たりあるんだろ?もしかしなくてもそれってあれの事だよな。」

めぐみんは目をいっこうに会わせようとしなかった。

「おい・・・まぁいい。幸い今は一体だけだ。あれなら行ける。こめっことクロを回収してくる。」

俺は茂みから一気に飛び出して、

「こめっこ!クロ!無事か?」

「あ、しょうたお兄ちゃん。私のご飯がアイツにとられた!」

「「ご、ご飯って何!?」」

俺とゆんゆんの声が重なった。

ご飯?こめっこはクロを食べ物として見ていたのか?そりゃあ危機察知能力も高くなるわ・・・

ご飯という言葉を聞いてクロがビクッてしたのを確認しながら納得した。

「とりあえず、せいっ!」

クロを抱えてたモンスターを首ちょんぱした。

クロはそのモンスターが煙と化する前に俺に跳び移った。

「クロ、フードの中に。こめっこほら。」

そう言いながらこめっこをおぶってその場から立ち去ろうとした。

次の瞬間、

ギヤァァ!?

モンスターの威嚇らしき声が空から聞こえた。

「・・・あの数は無理だ。一匹ならともかく五体は無理だ。逃げろ!」

そう言いながら駆け出した。

 

 

「ハァハァハァ・・・」

森を半分くらい走ったところか、まだモンスター達は追いかけてくる。

このままじゃ・・・

「めぐみん、ゆんゆん。こめっこを!」

おぶって居たこめっこを前に持っていき、めぐみんに渡した。

「こいつらの狙いは明らかにクロだ。俺がクロを連れて逃げ回りながら何とか攻撃を仕掛けてみる。」

「で、でもあの数相手じゃ無理って先程・・・」

「仕方ないから本気を出すんだよ。じゃあな。」

別れを告げ脇道に入り、モンスター達を引き寄せた。

「・・・なぁ雪那さんよぉ。敵増えてないか?」

明らかに数十匹はいる。

『戦力をここに集中させたんでしょうかね?この数は流石に無理なのでは・・・』

「はぁこんなことなら『死神』を持ってくるんだったなぁ。あれがお前だったら『共鳴』で一発なのに・・・」

『・・・』

いや、なんか答えて欲しいんですけど。いつもみたいにバカな発言をして和まして欲しいんですけど。

『・・・とりあえず現状でやれるとこまでやりましょう。念のため『バーストモード』は無しでお願いします。ぶっ倒れたら元も子もありませんからね。』

「?マジで言ってんの?」

『はい。本気と書いてマジです。』

いつもと違う雪那に戸惑う。

「はぁ、まさか神器に課題を提示させられるとはな・・・」

『雪那』を引き抜き構えた。

「死なない程度に頑張りますか!」

そう言い放った瞬間、地面を強く蹴り数十相手に向かっていった。

 

 

「くそっ!こいつらのスピード速すぎる。」

今まで倒してきたのはほとんど不意討ちみたいなものだ。だから俺はこいつらの実力を知る余地がなかった。そして今正面でぶつかり合って分かったことは無茶苦茶速い。攻撃速度、回避速度全てにおいて数枚上手だった。魔法なら倒せないこともないが『バーストモード』禁止イコール体力を使うなという事。つまり魔力の低い俺なんかは魔法を使うことを制限されてる事になる。『雪那』を通しても消費は激しい。何が言いたいかというとかなりピンチです。

「何これ?リンチ?俺、リンチとか初めてなんだけど・・・」

俺が倒せた数は十数体。全体の1/3位だ。相手の攻撃を避ける事に気を取られて体力も少しばかり消耗している。

「いつまで続くんだよ。これじゃ拉致がごふっ!?」

一瞬気を散らしたせいで腹にきついのを一発食らった。

クロに関してはローブのフードにしっかり掴まってるらしく激しく動いても落ちない。

俺はクロを庇うように地面に叩きつけられる向きを変えて顔面から突っ込んだ。

「っつぅ・・・」

俺は強打した顔を押さえて立ち上がり焦点を合わせた。

「回復魔法をロアから教えてもらうべき・・・っ!?な、何で・・・?」

俺が焦点を合わせた先にはそこにはあるはずの無いものが・・・

「どうして『死神』が・・・」

数メートル前方に『死神』が地面に刺さっていた。

『・・・!?ご主人様!ボケッとしてないで早くあれを何とかしないと!こっからは手加減無し、本気で行ってください。』

「それは『バーストモード』込みで?」

『はい。』

「そうか、じゃあ雪那は見物しといてくれ。一気に片付ける。」

刺さってる『死神』を手に取り、

「『バーストモード』」

暗い森に紅い光が放たれた。

 

 

ヒギャァァ!

最後の断末魔が聞こえ、何とか生き残ることが出来た。

「ふぅ、もう歩くことしか出来ないな。足元フラフラだ・・・」

ハハハと笑いながら地面にヘタレこんだ。

『肩貸しましょうか?』

「そうだな、お前にも聞きたいことがあるしな・・・!?雪那、気のせいだよな?」

『・・・残念ながら気のせいじゃありません。先程とは言いませんがかなりの数が上空に居ます。』

もう無理だ・・・何が魔王討伐だ。こんなとこで死にかけてるんじゃ到底無理だ。

諦めて目を閉じた。

「『エクスプロージョン』!」

聞き覚えのある声が最後に聞こえた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「っう・・・ここは・・・死後の世界ではなさそうだ。」

見覚えのある家具。何度も使わせてもらった台所。

「めぐみんの家か・・・」

時間的に早朝、六時前と言ったところか・・・

「すぅ、すぅ・・・」

隣で雪那が寝ていた。

「何があったか聞きたいけど起こしちゃ悪いな。」

「あ、しょうた。起きてましたか。」

声をした方をみるとそこにはパジャマ姿のめぐみんが居た。

「おはよう、お前朝早いんだな。」

「まぁ早起きですからね。」

「寝る子は育つとはよく言ったものだ。」

「・・・黒より黒く、闇より暗き漆黒に」

「や、止めろ!そんな詠唱するんじゃねぇ!」

今のは多分だが爆裂魔法の詠唱だ。十中八九こいつはもう爆裂魔法を覚えたんだろう。昨日聞いた声は幻聴じゃ無かったわけか。

「とりあえずめぐみん。爆裂魔法の習得おめでとう。それに助かった。ありがとな。」

「い、いえ、別に礼を言わなくても・・・これからはパーティーとしての仲間なんですから・・・」

不覚にも照れるめぐみんに心をときめかされた。

「とりあえずこれからどうするかだな。街はアクセル辺りがいいと思うんだが・・・」

「私もそれがいいと思います。まずは初心に戻ってですから。」

「良い仲間が見つかると良いな。」

「・・・そ、そうですね。」

少し寂しそうな顔をしてうなずくめぐみん。

「そんな顔するな。またパーティーを組める機会だってあるさ。それにしばらくはアクセルに残るし。」

「ほ、ほんとですか!?」

「ち、近い。ほんとだから一旦離れろ。」

「でも、どうしてアクセルに残るんですか?しょうたのレベルじゃモンスターを根絶やしにすることだって・・・」

「・・・さぁな。また今度教えてやるよ。」

人を殺すためとか言えない。

「そうですか・・・あ、しょうた。ものは相談なんですが・・・」

めぐみんは頬を軽く染めながら切り出してきた。




こ、こんにちはです。ねこたつむりです。
思ったより期間が空いてビックリしてます。毎日更新出来てる人って凄いですね。
今回は爆焔まんまって感じですね。違うとこと言えば冒頭のめぐみん達のピンチをぷっちんが救うのではなく主人公が救うことと、そけっとさんとぶっころりーさんの所でぶっころりーさんが色々しでかすのではなく、しっかりと仲良くしてもらった事。そしてゆんゆんは中級魔法を覚えず上級魔法で卒業できることですかね。
めぐみんとゆんゆんの学校生活についてですが、原作と変わりません。ゆんゆんが勝負を仕掛け、弄られ涙目になっています。主人公が居るからと言って百合百合しい事は変わりません。でも、ガールズラブでは無いですはい。


~雑談~
最近ゴットイーターオンラインをし始めました。キャラクターネームはこの物語の主人公でもあるしょうたの名を借りてます。まぁ表記は物語上漢字、カタカナ、ひらがなと色々あるんで一括してローマ字のsyouta916ってしてるんですけど・・・サブアカは雪那の名を拝借を・・・武器はショートとロングしか使ってません。雪那に関しては氷刀固定です!間違いないです!なんたって雪那は刀と雪ですから!ちなみに表記は*雪那*です。
何が言いたいかというと、フレンド募集です!見かけたら気軽に話しかけてください!常一人でウロウロしてるんで。レベルはsyouta916がlv47。*雪那*がlv11です。

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