この素晴らしい少年に祝福を!   作:ねこたつむり

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※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
とりあえず読んでいってください。


真実

「へ!?」

驚きの声をあげる義賊。

「さて、今日の仕事終わりっと。さっさと城に連れてって寝よ。」

「ちょ、ちょっと待って。離してよ。」

「嫌だ。犯罪者を離すわけないだろ?」

『ちょ、ちょっとご主人様!?待ってください!』

「何だよ、こっちは眠いんだよ。」

「えっと・・・君は誰と話しているのかn・・・っ!?」

その人は俺の腰にぶら下がってる『雪那』を見て息を飲んだ。

「君、それってまさか神器・・・?」

信じられないと言うような顔で言ってきた。

「一目見てこいつが神器だと分かるのか?凄い鑑定眼してんな。」

普通分からんだろ・・・

「成る程、だからここに反応があったのかぁ・・・」

この状況で何を納得してるんだろうか。

『ショウター。大丈夫か?』

帰るのが遅いことを気にしたのかゼリテスが聞いてきた。

「ああ、問題ない。いm!?」

いつの間にか出てきた雪那に口を塞いできた。

『どうした?』

「だ、大丈夫です。ちょっとご主人様が躓いただけです。」

とっさに機転を利かせて言い訳を言う雪那。いつもそのくらい機転を利かせてもらえばいいのに・・・

『そ、そうか。そろそろ交代だから帰ってこいよ。』

そう返ってきたのを聞いて安堵する義賊と雪那。

「ご主人様、今からこの手を離しますが、絶対に叫ばないでください。」

何で?と言う疑問は抱きつつも取り敢えず頷いておく。

「ぷはぁ、おいこら、どういうつもりだ?」

「その人を捕まえるのを止めて欲しかったんです。」

「すまん、理解ができん。」

「あの、そろそろ離して貰えると助かるんだけど・・・」

「離すわけないだろ。捕まえたこそ泥を逃がすってどういう神経してんだよ。」

「だ、だよね・・・」

半笑いで諦めたような顔をしている。

「ご主人様、この人は女神様です。」

「「え!?」」

俺と義賊は思わず声をあげてしまった。

「えっと、その意味はストレートに女神って言ってるのか?」

「そうです。」

「な、何言ってるの?あ、あたしがエリス様な訳ないよ。」

「誰もエリス様とは言ってない。」

軽く墓穴を掘った義賊、いや、女神エリスに言った。

「ほ、ほら、女神って言ったらエリス様が思い浮かぶから・・・」

目を泳がせながら言い訳をほざいていた。

「俺は女神と言われたら俺をこっちに連れてきた駄女神が思い浮かぶけどな・・・」

「あ、アクア先輩は駄女神なんかじゃないよ。そりゃあ、ちょっとはやらかすこともあるけど・・・っ!?」

確定。この人はどうやら本物の女神様のようだ。

「女神が義賊ってどうよ?一応犯罪ですよ?」

「こ、これにはちゃんとした訳があるんだよ。」

「じゃ、その訳をしっかりと署で話そうな?」

「ご、ご主人様。お願いです。今回だけはその人を見逃してください。」

「そう言われてもな・・・犯罪者だよ?」

「ご主人様、その人は女神様です。もしかしたらご主人様が知りたがってることを知ってるかもしれません。」

「あ、そっか。じゃあ取引してくれる?」

「と、取引・・・?」

「今日は見逃してやるから明日、ちょっと話聞かせろ。」

「ほ、ホントに?それだけでいいの?」

「ああ、それだけの価値はあるし。」

「そ、そうかい。それじゃあお言葉に甘えてその取引に応じさせてもらうよ。明日の晩辺り君のとこに訪ねるから。」

そう言って入って来たであろう窓から出ていった。

「二ヶ月長かったですね・・・」

雪那がポツリと言った。

「そうか?俺は楽しかったから短く感じたけど・・・」

「はぁ、ご主人様。ホントに紅魔族ですか?今のは場の空気的に言うのが相場でしょ?空気読みましょうよ。」

いや、生まれも育ちも紅魔族じゃないし・・・

「ショウタ。何してるんだ。交代の時間が来たぞ。早く仮眠しろ。」

しびれを切らしたのかゼリテスが俺を呼びに来た。

もう来ないと思うけど、それをこいつらに言うと厄介だからこのまま仮眠に移らせて貰おう。

 

 

「結局来なかったね・・・」

ノーツがちょっとガッカリしたように言った。

そんなノーツを見ていると罪悪感を感じる。

昨日は見逃したが次は絶対見逃さない。

「まぁ、良いじゃねぇか。被害に会わなかっただけましだ。」

フロットが励ますように言った。

俺達は報告のため城に向かっていた。

「なぁ、ショウタ。昨日戻ってくるのが遅かったが、お前さん何してた?」

ゼリテスが耳打ちしてきた。

「別に、雪那が昨日言ったように暗くて躓いただけだ。」

「嘘を言え、お前さんが暗くてもしっかり見えてることは知ってるんだよ。普段なら別に躓いてもおかしくはないが、昨日は義賊の侵入を防ぐためかなり神経質になってるはずなんだ。そんなときにお前さんが躓くなんてへまはやらない。それに躓いたって言ったのは雪那だしな。普通雪那をあの状況で出すわけない。」

「勝手に出てきたんだ。」

「そこまで空気が読めない嬢ちゃんでもないだろ。」

「何が言いたい?」

「お前さん、義賊に会っただろ?」

「・・・はぁ、お前には隠し通せなさそうだ。確かに昨日、義賊と対面した。」

「お前のことだから普通に捕まえると思ってたんだが、その状況だとしたら雪那に邪魔されたみたいだな。」

「邪魔された訳じゃない。捕まえないでくれと頼まれた。」

「ふーん、それで捕まえなかったと。」

「その後も色々あったがまぁ、そんな感じだ。」

「なるほどな・・・あ、安心しろ。理由なんか聞かないからよ。そんな顔をするなって。」

「そ、そうか。」

そんなに顔に出てたかな?

自分の顔に手をやりながら考えた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「そうか。昨日は空振りだったか。」

城に着き、クレアに結果報告をしていた。

「悪いな、力になれなくて・・・」

「い、いや、いいんだ。昨日はどこも被害もなかったし・・・」

そりゃそうだわな。こっちに来たんだから。

「ショウタ様、気にやむことはありません。だから、元気を出してください。」

顔を俯かせてるのが落ち込んでると思ったのかアイリス様が励ましてきた。

「あ、いえ、別に落ち込んでる訳では・・・」

まさか、この年に慰められるとは思わなかった。しっかりしすぎてるだろ・・・

「今夜は昨日、ショウタ様達が祝勝会に出れなかったので、些細なことですが夕食をここでとってください。内容は豪華にしますので。」

「そこまでしなっ!?」

フロットに脇腹を突かれた。

「子供は大人しくありがとうございますって言って甘えとけばいいんだよ。何大人ぶってんだか・・・」

「そうだぞ、昨日のお前の活躍が無かったら、また多くの被害者が出ただろう。その遠慮がちな性格を何とかしろ。」

クレアに忠告された。お前に関しては性癖の遠慮無さに飽きるけどな・・・

 

 

夕食では今まで俺達がどんな活躍したのかアイリス様に根掘り葉掘り聞かれた。

俺は口下手だから説明をフロット達に任せていた。

「・・・で、そこでショウタが『皆さん、死にますよ?』って言うんですよ。おかしくないですか?『お前、普通そこはありがとうとかだろ。』って思いますよね?」

どうやら今は俺がずれているという話をしているらしい。そんなにずれてるかな・・・?

「確かにそれはおかしいですね。仲間の想いに感動して涙を流してもいいはずです。」

いつになく元気なアイリス様。それを見て発zy・・・喜んでるクレア。それを見て苦笑いのレイン。

平常運転だ。

「そうでしょ?後は・・・一昨日の冬将軍のことかな・・・」

「「「ふ、冬将軍!?」」」

向こう三人が叫ぶように驚いた。

え、そこまで驚くことなの?そんなに手を出さないモンスターだったの、あれ?

「はい、こいつが冬将軍と戦いたいって駄々をこねましてね・・・いつも大人ぶってるくせに子供っぽいことを言いまして、普通の冒険者なら絶対に近付かないようなやつに近付いていくんですよこいつは。」

三人がこっちを凝視してきた。俺がおかしいの?

「ショウタ、お前は命知らずなのか?」

クレアに呆れて目ををされてしまった。

「冬将軍相手に生きてることが奇跡みたいなものですよ。」

レインが久しぶりに口を開いた。本人はあまり目立たないことを気にしてるらしいが、常識人で別にいいと思うが・・・

「流石、『紅目の死神』と呼ばれるだけはありますね。」

アイリス様まで広まっていたか・・・

「ショウタ君、『紅目の死神』ってなんだい?」

「ん?俺が魔王軍にそう呼ばれてるんだ。ちょっとかっこよかったから通り名にさせてもらった。」

あれ?ちょっと待って、魔王軍に通り名をつけられてるってことは賞金首になってるんじゃ・・・

「ショ、ショウタ君?大丈夫?顔が青ざめてるよ?」

ロアが俺の顔をに覗き込み言ってきた。

ヤバい、下手したら年中命を狙われるんじゃ・・・

「ま、魔王軍がそう呼んでいたのか・・・となると安易にお前には手を出せないな。」

クレアが気になることを言った。

「え?賞金首になって年中狙われるんじゃないのか?」

「何を言ってる。さっきの話にも出てきた冬将軍のように賞金が掛かっていても手を出さないのが普通だ。それだけ強いってことだからな。それをそっくりそのまま魔王軍にも言い換えれる。魔王軍の連中も命は欲しい。むやみにお前には手を出せないだろう。」

それを聞いて安心した。寝首をかかれることもないのか。

「それで、冬将軍との戦いはどうなったのですか?」

結末が余程気になっていたのか凄い前のめりで聞いてきた。

「最初は五分五分で押したり押されたりしてたんですけど、途中こいつが無理と判断したのか泥沼魔法で中断させて逃げて帰りました。帰った後はこいつが完全に負けただのとグチグチ言って落ち込んでましたね・・・」

「そうですか、でも冬将軍と戦って生きて帰ってきたものは多くないので凄いことだと思いますよ。」

「そう思いますよね?それなのにこいつはまだ根に持っていやがる。」

俺を見ながら言った。

仕方ないだろ、あんな完全に差を見せ付けられたら誰でもへこむぜ・・・

その後はこのパーティーの日常生活等と色々話していた。

 

 

「皆様、今日はありがとうございました。とても有意義な時間を過ごしてもらわせてもらいました。今日は我が城でごゆっくりとお休みください。」

アイリス様が丁寧な挨拶をして自室の戻った。

「いや、第一王女って言うもんだからもうちょっと固苦しいのかと思ったけど、気を使ういい子だったな。」

王女の姿が見えなくなったのを確認してからフロットが言った。

「そうだね、ピリッとしてる印象を持ってたけど話してみるとそうでもなかったね。」

ノーツが同意した。

各々与えられた客室に戻っていった。

ガチャ

「やあ、待ってたよ。」

そこには昨日の義賊ことエリス様がいた。

「城に不法侵入って凄いですね。でもどうしてここが?」

「あたしを誰だと思ってるんだい?それに敬語は止めてよ。こっちでは盗賊クリスとして生きてるんだから。」

昨日の今日で敬語って普通だろ?

「ハイハイ、まずは本題に入る前にどうして女神様であろうあんたが盗みを働くかについてなんだけど。」

「えっと、それは・・・何て説明したらいいのかな、君も日本からの転生者なんだよね?その時に貰う神器が持ち主を失うとどうなると思う?」

「この世界のやつらが手に入れるなりなんなりするだろう。」

「うん、その通り。でも大抵の神器は本当の持ち主じゃないと強い効果が得られないんだけど、中には弱体化しても危険すぎる神器だってあるのさ。」

「あぁ、何となく分かった。要するにそんなものは財力のある貴族が手に入れやすいから回収に当たって貴族を狙ってたのか・・・」

「その通りだよ。」

確かにそれは真っ当すぎるくらいの理由だ。でも・・・

「それはいいんだが、義賊って呼ばれてるくらいだから当然神器以外を盗んでるんだろ?」

「うっ!そ、それは・・・ついつい不当なお金を見るとこれでどれだけの子供が助かるだろうって思ってついやってしまいました。」

心は女神だがやってることはな・・・一応犯罪なんですよね・・・

俺にはこの案件ジャッジ出来ないわ。

「そっすか・・・じゃあ、本題に入らせて貰う。雪那。」

「ふう、ちょっと心が踊りますね。」

まぁ、たぶんこの人が恩人だろうしな。

「君は変わった神器を持ってるね。」

「オーダーメイドだからな。っと本題本題。多分三十年くらい前になるのかな?ひでりうって言う人を知ってるよな?」

「え!?そ、そりゃあ知ってるよ。当時彼はこの世界の英雄だったからね。」

「その人の使っていた神器のこと覚えてます?」

「あれはたしか自我がある神器級の杖だったね。それが原因で彼は暗殺されたようなもんだよ。あれに関しては誰でも扱えるからね。速攻で回収に回ったよ。」

雪那の手を握る。今こいつは自分のせいで前の持ち主が殺されたと思っている。そんなことはない。殺したやつの性根が腐りきってるだけだ。

「実はこいつはその時に回収された神器の自我なんだ。」

「あ、あのときは本当にありがとうございました。」

ペコリと頭を下げた。

「え!?で、でも確かその自我は天界放して・・・まさかアクア先輩が!?」

当然驚く女神エリス。

「あの駄女神がやらかしてくれました。」

「ど、どうしてそんなことを・・・っ!?ま、まさか・・・き、君、その子に前の人に似てるって言われない?」

「こいつだけじゃない、他の人にも言われました。そんなことは今はいいとして、暗殺を命じた人分かりますよね?」

「・・・それを知ってどうするの?」

「軽く締める程度かな。」

「相手は貴族って分かってる?そんなことしたら君は死刑かもしれないよ?それにいくらその子の前の持ち主だからといって、そこまでする必要は無いんじゃないかな?」

「そうなんだけど、なんか引っ掛かるというか、ほっとけない出来事だと思うから。」

「ふーん、さっきの話。ほら、前の人に似てるって言う話。それに関係すると思う。」

「そうかもしれない。他人の出来事じゃないような気がするんだ。おかしいよな赤の他人で絶対に関わりがないのに。」

「絶対ではないよ・・・」

「いや、無理がある。さっきあんたが言ったように俺は日本からの転生者。その人と関わることはあり得ない。」

「・・・それがあり得るといったら?」

真剣な眼差しで言ってきた。

おいおい、前雪那が言ってた肉体転生か?

「なぁ、その人が亡くなった数日後に遺体が消えてた理由ってあんた分かるか?」

「分かるよ。肉体転生って言うのが原因だと思う。」

雪那の推理が当たりやがった。

「こっちからの世界でも転生が出来るのか?」

「偉業を成し遂げた人、英雄になった人には死後に特別な報酬があるんだ。あの人はどちらも成し遂げてるからどんな願いでも叶えることになったんだ。」

「その内容は?」

「争いのない平和な生活がしたい。というものだった。」

「その転生先が日本?」

「うん、こっちから向こうへ行くにはちょっと大変なんだ。そのため肉体ごと転生する必要があった。だから遺体が無くなった。」

成る程、納得はいった。争いのない平和な国が日本って言うのはどうかと思うけど。

「でも、それと俺が感じてる違和感がどう関係しているんだよ?」

「君、鈍いのか鋭いのかハッキリしてよ。ここまで来たら分かるでしょ?その子はすでに分かってると思うよ。」

口元を押さえてる雪那を見ていった。

「嘘、こんな偶然があるんですか・・・?」

え、超気になる。

「君がこっちの人にあの人と似ているって言われたんでしょ?それと君が他人とは思えない感情。それにその人は日本に居たという事実。これを掛け合わせて考えられる答えは一つ。」

・・・まさかな・・・

「君はその人の息子なんだよ。」

「っ!?でもあの人のステータスを知ってるだろ?俺には魔力の平均値しかない。あり得ないよ。」

「いや、君があの人に子供である確実な証拠があるよ。その紅く輝いてる目だよ。」

「こ、この目は遺伝だったのか・・・?人間のリミットを解除するものだと思っていた。」

「多分、リミッター解除って言ってるけど実際には本来の力が出ているんじゃないかな?紅魔族としての。でもその分普通の人間として体の器が小さすぎるから疲れたり倒れたりするんだと思うよ。」

「そう、なのか・・・」

「多分、目が輝いてる時の君の魔力は桁違いだと思うよ。」

確かにこれがすべて雪那の恩恵とは考えられない威力が出るときがある。それはこれが理由だったのか・・・

「じゃあ、英雄と謳われてた人はとんだ糞人間だったんですね。」

借金を作って消えたんだもんな。

「君はその話を信じているの?おかしいと思わない?残った借金は誰が払っていたのさ。」

た、確かに。前の母さんは父さんが居なくなった後、精神が限界で働くことが出来なかった。

祖父も祖母もすでに他界していて・・・借金が何百万あるとは聞いていたが借金取りが来ることもなかった・・・

まさかの嘘?どうしてそんなものを・・・

「多分、君のお母さんはお父さんが異世界の住人だったことは知っていたんじゃないかな?向こうに行っても魔法は使えるし・・・」

なんだと?向こうに行っても魔法が使えるのか?

「君がお父さんに未練を持たないようにわざと嘘を言ったんだと思う。すでに居ないお父さんを求めることがないように。」

「・・・」

「ご主人様?」

「・・・誰なんだ?」

「「え?」」

「父さんを手にかけたやつは誰だと聞いてるんだ。」

「軽く締めるだけなんだよね?」

「感謝の意を込めて殺す。」

「だ、ダメだよ。人を殺すなんて絶対にしてはいけないことだよ。そんな人には教えられない。」

「ご主人様、正気に戻ってください。あなたが人を殺すなんて言うはずがありません。」

「俺は正気だ。その貴族のお陰で俺はここに居れる。だけど、そいつは俺の肉親を殺したんだ。それに雪那にも多大な責任を負わせた。それだけのことされて頭に来ねえやつは居ねぇ!」

「い、今のあなたは正気じゃありません!目が、目が優しくないです。お願いですからいつものご主人様に戻ってください。」

「教えろ!」

俺はクリスに掴み掛かった。

パシッ

頬が痛い。

「あなたはいったい何をしてるんですか!?そこまでして人を殺めたいんですか!?」

俺は何をしようとしてたんだ・・・人殺しを?

寒気が襲ってきた。人殺しを平気でしようとしてたのか?

「ちょっとあなたに失望しました。少しの間離れさせてもらいます。」

雪那が部屋を出ていった。

待ってくれ、置いていかないでくれ・・・

「君の気持ちは分からなくもないけど非人道的な事を考えるのはもうよしなよ。今度会ったとき、君がもうその気持ちを抱いてなかったらその人を教えてあげる。」

そう言ってクリスことエリス様が部屋から消えた。

ははは、やっちまったな・・・

自分の神器に愛想つかされて、人殺しをどうとも思わなくて、どうしようもない人間だな。

ガチャ

「ショウタさん、お姉ちゃんが夜這いにき・・・どうしたの?」

「帰ったんじゃないのか?」

昨日の祝勝会で帰ったと思っていたセシリーが部屋の入り口の前にいた。

「ショウタさんと寝ないと帰れないなって思ってたんだけど、何かあったの?」

「別に・・・」

「もうホントに素直じゃないんだから。何もなかったら涙なんか流さないわよ。お姉ちゃんに話してみなさい。」

俺は水が流れるように今までのことを話した。

「そう、その気持ちは仕方ないと思うんだけど、やっぱりよくはないわよね。でも人間なんだから別にそれでいいのよ。多分、雪那ちゃんもそこのところしっかり分かってると思うの。今はあなたに立ち直る時間が必要だと思って離れたんじゃないかしら?」

誰だこの人?

いつも煙たがってるこの人が今は凄く傍にいて欲しい。

「セシリーさん、今晩暇ですか?」

セシリーは優しく抱き締めてくれた。

 

 

まず最初に感じたのは解放感、とうより直接布団に触れている感覚。

バサッ

「俺は寝るときにズボンは穿かない時はあるが上半身真っ裸で寝る趣味は無いぞ・・・」

隣を見る、すぐさま目をそらす。

?????

え?待って。何が起こったの?昨日の夜セシリーが来たのは覚えて一緒に居てくれって頼んで寝たのは覚えてるけど、これは知らない。

横にはチラリとしか見てないが多分産まれた状態で寝ているセシリーが居た。

取り敢えずもう一度寝よう。もしかしたら夢かもしれない。

ドサッ

倒れこみ、目を閉じる。

・・・・うん、夢じゃないな。眠くないもんな。あんなの見たら眠れないよな。

取り敢えずご本人に聞いてみないと分からない。

「すいません、セシリーさん?起きてください。今とんでもないことになってるんですよ。」

状況ことんでもないが下もとんでもないことになりかけてる。というか敬語になってる時点で結構焦ってるな。

「ん、あ、おはよう。」

なにさらりと挨拶出来てんだよ。

「この状況なんです?」

「え!?昨日のこと覚えてないの?あの後ショウタさんが私の服に手を掛けてそのまま・・・」

顔を赤くしながら言うセシリー。

「そ、そんなの覚えてない!」

「というのは冗談で、私は元々服着ないで寝る人で、ショウタさんの場合は寝苦しそうだったから脱がせただけよ。」

よ、よかった・・・間違いなんか起ころうものならホントにこの人を養わなくてはいけなくなる。

「危うくセシリーさんを養わなくてはならなくなるとこだった・・・」

「え?一回するだけでそうなるの?」

「そうじゃないんですか?」

「な、何て純情なのかしら・・・あ、もちろん私の体は清いままよ?心配しないでね?」

「誰もそんな心配はしていない。それより・・・早く服を着てください。」

まともにセシリーを見れない。

「うーん、どうしようかしら。あなたのその反応が可愛くて止めたくないんだけど・・・」

「恥ずかしくなんですか!?」

「恥ずかしいに決まってるじゃない。」

色々矛盾してるぞこの人。

「じゃあ早く着てください!」

「あの、普通の男性ならグヘヘ、良い体しやがって。少し触らせろよとか言うものよ?」

どこの変態だそいつは?

「そんなこと普通は言いませんから。早く着てください。」

「もう分かったわよ。」

何で俺の周りには変態・・・・雪那・・・

「はい、着替えたわよ。」

「ありがとうございます・・・あの、触れても良いですか?」

「っ!?ど、どうしたの急に。別にお姉ちゃん的にはスッゴく嬉しいんだけど・・・やっぱり触りたかったの?」

「人肌が欲しい。」

俺はセシリーに抱きついていた。少し焦ってたがセシリーは優しく返してきた。

ホント、どうしたんだろ。心のどこかに開いた穴を何かで埋めるのに必死になってる。

今さら自分の非人道的行動に恐怖を感じた。

まだ、殺したいと思ってはいるもののそれを行動に移すなんて出来ない。でも、少なくとも昨日の自分はそれが出来たのだろう。何の躊躇もせずに殺せたんだろう。

「人って自分自身でも分からない部分があって当たり前なの。それが殺人者の一面だとしても。それを受け入れて成長するものなの。ショウタさんなら多分すぐに受け入れられると思うわ。だってショウタさんは私が見込んだ人だもの。」

出会った当初はロリを引き連れてる羨ましい人だの言ってきてたのにどのタイミングでそうなった?

でも今はその言葉がありがたい。

 

 

あれから一時間くらいか時間がたった。

「ありがとう、もう大丈夫、離して。・・・早く離せ!」

「何言ってるの?こんな美味しい状況逃すわけないでしょ?」

こいつぶれないな!

「さっきまでは凄くいい人に見えたのに台無しだな!」

コンコンコン

「ショ、ショウタ君。起きてる?」

上ずったロアの声が聞こえた。

「お、起きてるけど何?」

「少し話したいことがあって・・・部屋に入ってもいい?」

「い、今はちょっと・・・」

こんな状況見られたらあらぬ誤解が生まれる。

『え?う、うん、分かった。』

あれ?誰と話してんの?何が分かったの?

と、ドアに手をかける音が聞こえた。

え、ヤバい!何で勝手に入ってこようとしてんの?

ガチャ

「失礼します。え・・・」

「入ってくんなって言ったのに・・・」

「せ、雪那ちゃんがこういうときは強引に入った方が特をするって・・・」

ロアは手に『雪那』を持っていた。

すぐに擬人化して、

「ご、ご主人様!浮気ですか!?」

「ち、違っ、そもそも浮気もくそもなねぇだろ!俺達は別に付き合ってるわけでもないだろ?」

「でも、どう見てもご主人様が抱いてるように見えるんですけど?」

「ち、違うくはないけど・・・でもそんな気持ちは無い!」

「でも昨日は『今晩暇ですか?』って誘ってきたじゃない。」

「!?もしかしてご主人様の初めてがこの人だなんて・・・」

「んな訳ないだろ。セシリーも紛らわしい言い方するな。」

頭が痛くなる。

「ショウタ君大丈夫?」

「はぁ、ロアと結婚しようかな・・・」

心配してくれる常識人ロアを見ていった。

「「「え!?」」」

「私というものがありながら何を言ってるんですか!?」

お前は俺のなんだ?確かにこいつは容姿は完璧だ。しかし、こいつの妄想力に俺に対する執着するド変態っぷり・・・ダメ神器だ。でも、何だかんだで俺を大事にしてくれ、よき理解者だ・・・あれ?けなそうとしてたのにいつの間にか褒めている・・・?

「も、もうご主人様ったら・・・」

頬を染めて体をくねらせている。またこいつは・・・

「勝手に読んでんじゃねぇ!」

枕を投げつけた。

「投げるならご主人様が使ってた方を投げてくださいよ!」

こいつもぶれないな。

「せ、雪那ちゃんってアクシズ教に向いてるとは思わない?」

ワクワクしながらセシリーが言ってきた。

「向いてたとしても入れさせないから安心しろ。」

正直、俺の周りにはアクシズ教に向いてる奴等が多い。(現パーティーメンバーを除く)

「それよりショウタさん。」

「何だよ?」

「あの子固まってるけど大丈夫なのかしら?」

セシリーが指を指した先にはショートしてるロアがいた。

「え!?ろ、ロア!大丈夫か!?あ、気絶してる。」

え?どこに気絶する要素があったんだ?

ロアを横にさせ膝枕をした。

「取り敢えず『フリーズ』っと。」

顔が熱かったので手に冷気を纏わせて顔に当てた。

「あ!ロアちゃんずるい!ご主人様!私にもしてくださいよ!」

「こんなところでわがまま言うな!」

「ショウタさん、私にはしなくていいから代わりに抱きつかせて。」

「あんたの願望はさっき叶ってただろ!?」

「じゃあ、私の願望も叶えてくださいよ。」

「嫌だ。」

ギャーギャー騒ぐ雪那を横にロアを冷やし続けた。

 

 

あれから十分が経過した。

雪那は騒ぎ疲れたのか俺の肩に顔をもたれさせてる。

セシリーといえば、

「ショウタさんって面倒見がいいのね。」

俺の横で微笑みながらそう言った。

「何を今さら。アルカンレティアの時も紅魔族三人連れて面倒見てただろ。」

「そうなんだけどね、でもこうして近くで見ると改めて思っちゃうのよ。」

感慨深そうに言った。

「いつものそんな感じだったらセシリーこと好きなったかもしれないのにな・・・」

「あら嫌だわ、ショウタさんにはありのままの私を好きになって欲しいもの。それに、皮を被って生きていたら楽しくないでしょ?」

「確かにな。」

日本で皮を被りまくってた俺にとっちゃ一番わかる感情だ。人の顔色を見て態度を変える。もうあんな生活はしたくない。

「ん、んー。」

ロアが目を覚ました。

「おはよ、ロア。」

「え、あ、おはよう。」

状況が飲み込めないのか取り敢えず挨拶をしようみたいな反応をとっていた。

「私にもそんな素敵な顔でおはようって言われたかったなぁ。」

あの状況で笑えるほど余裕があるやつはいないと思う。

「あんたに関してはアルカンレティアでショタ声で言っただろ。」

「あれも良かったんだけど、美少年に微笑みながらおはようって言って貰いたいのよ!」

セシリーが喚いてる中、ロアがキョロキョロして状況飲み込めたようで、

「え!?あ、あのう、ショウタ君?ど、どうして私の顔に手を・・・」

「顔が熱かったから冷やしてたんだよ。具合はどうだ?」

「大丈夫・・・へ!?」

俺の足の付け根を見ながら声をあげた。

「ん?どうした?」

「ひ、膝枕・・・?」

今さら気付いたのか。

「ああ、冷やす時に楽だしな。」

手が軽く届くので自然体でもロアの顔を冷やせれた。

「はわわわ・・・」

「おい、大丈夫か?また熱くなってきてるぞ。」

『フリーズ』をまた纏わせて顔に当てた。

「ひゃっ!?し、失礼しました!」

飛び起きるなり颯爽に部屋を出ていった。

「冷たすぎたのかな・・・?」

「「この天然たらしめ・・・」」

いつの間にか起きてた雪那とセシリーが言った。

「た、たらしじゃねえし!」

 

 

「ご主人様、もう心の整理はできましたか?」

「ああ、悪かった。そしてありがとな、雪那。」

軽く顔に手を当てた。

「こほん、ショウタさん。私もここに居るのをお忘れなく。」

「わ、忘れてない。これは・・・そう、犬と飼い主のスキンシップみたいなもんだ。」

「ご主人様・・・?」

後ろを振り向くのが怖い。

「結局ショウタさんはその人を殺したいって今も思ってるの?」

「ああ、でも殺れるほどの度胸は今の俺にはない。」

一瞬雪那の顔が強ばったがすぐに安堵の息を漏らした。

「でも、いつかは絶対に殺らなきゃいけないと思う。その時は、雪那。俺を許さなくていいから見守っといてくれ。」

「・・・はい、分かりました。」

笑顔で言ってくれた。

コンコンコン

「ショウタ。起きてるか?」

ノーツ達と思ったがノックしたのはクレアだった。

「起きてる。」

ガチャ

「朝食の準備が・・・せ、セシリー殿!?昨日の内にアルカンレティアへ帰ったのでは・・・?」

「いや、ショウタさんと寝たかったからつい・・・」

「あれほどショウタには手を出すなと言ったのに・・・!」

「お陰様で裸のお付き合いが出来たわ。」

「「な!?」」

「おいセシリー!誤解を生むような発言するなよ!こいつらの妄想力は凄まじいんだから。」

慌てて雪那とクレアの誤解を解いた。

「だとしても・・・」

「何?クレア、お前に関しては俺を風呂に連れ込んで襲っただろ?」

「「え!?」」

今度は雪那とセシリーが声をあげていた。

「クレアさんって思ったより大胆なのね?」

「ご、ご主人様が他の人にそんなことを・・・」

「お前も言えた立場じゃないからな?お前は家で風呂に犯す気満々で入ってきただろ?」

「うぐっ!?」

クレアとセシリーは驚きもせず納得している。

「ふ、二人とも!何で驚かないんですか!?」

「いや、雪那がやってもおかしくはないなと・・・」

「そうそう、雪那ちゃんってショウタさんに凄い執着心があるからいつかはやると思っていたから・・・」

「ひ、酷いです!私をそんな風に見ていたなんて・・・いいですよ。お二人がそう思っていたなら仕方がない。これからはいつでもご主人様を襲いますからね!」

「や、止めろ!」

ほとんど悲鳴に近い声をあげた。

「せ、雪那ちゃん。落ち着きましょ?さっきのは言葉の綾というか・・・!」

「そうだ、そこまでショウタのことを思ってるというか・・・!」

どう考えても言葉の綾ではないと思うが・・・

「ふふふ、冗談ですよ。そこまで必死にならなくてもいいじゃないですか。」

必死になってる二人に対して余裕の笑みを浮かべてる雪那。

「そ、そういえばクレア。あいつ等は?」

その場の空気を打開しようと言った。

「え、あぁ、ノーツ殿達は先に食べてると思うが、ロア殿は部屋に籠っていて・・・」

「ご主人様のせいですね。」

「ショウタさんのせいね。」

二人揃って言った。

「何でそうなるんだよ!」

「え、どう言うことだ?」

「ご主人様の癖ですよ。」

「あぁ、あれな。」

冷ややかな視線がこっちに向けられた。

「な、なにもしてない!」

「「「これだから天然は・・・」」」

その天然の意味をよく教えてもらいたい。

 

 

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朝食を食べ終わって一息ついてたら、

「ショウタ様、ちょっといいですか?」

見計らったようにレインが話しかけてきた。

「どうしたんです?」

「その、アイリス様の剣の稽古に付き合っては貰えないでしょうか?」

 

 

「せいっ!」

うおっと!?マジかよ、これが11歳の力かよ・・・

現在俺はアイリス様と木剣で試合をやっている。

しかし、アイリス様の剣の腕がここまでのものとは思いもしなかった。下手したら兵士よりも強い。これが血筋ってやつか・・・

しかし、まだ柔い所がある。重心の使い方や間合いの感覚等が所々不足している。

こう軽くずらせば・・・

「え!?ああぁ!」

「よっと、大丈夫ですか?」

勢いに乗りすぎてそのまま倒れそうになったアイリス様を抱え込む。

「え、ええ。ありがとうございます。それにしても何故今バランスを崩してしまったのでしょうか・・・?」

「俺が崩させたんですよ。」

「そ、そんなことが!?い、一体どうやってやったのですか?」

前のめりになって聞いてくるアイリス様。

「え、えっと。アイリス様の剣術は素晴らしいものなんですが、重心の使い方や間合いの感覚がまだ未完成なんです。今回の場合はアイリス様が過剰に前に重心を置いたことや、俺との間合いが少し遠かったんです。だから、こう剣を斜めに傾けてアイリス様の剣を滑り落とさせました。それに加え、間合いがもう少し近ければ上手く相手に重心を掛けることが出来て崩れることもなかったと思います。」

「す、素晴らしいです!この短時間でそこまで分かるなんて・・・それに剣を傾けて滑り落とす技術、普通の人は出来ませんよ。」

「慣れれば出来るようになりますって。では、まず重心から教えますね・・・」

アイリス様の剣の稽古は今日限り俺が指導することになった。

 

 

「今日はありがとうございました。」

「いえいえ、こちらも貴重な体験が出来たので・・・」

稽古が終わりアイリス様との挨拶をしていた。

「ショウタ様、今日は無理を言って申し訳ありませんでした。」

「いえ、今日は一日暇でしたし。」

この人は貴族なんだからもうちょっと気を張ってもいいと思うんだが・・・

姿勢が低いレインを見て思った。

体を動かしたから喉が渇き、今朝朝食を食べたところに何か飲み物がないか見に行った。

「あれ、ロア。今ごろ食べてたのか。」

そこには遅めの朝食を食べてるロアがいた。

「ショ、ショウタ君!?どうしてここに?」

「どうしても何も、何か飲み物あったらなぁって。」

「そ、そっか。」

可笑しな奴だな・・・

「なぁ、隣いい?」

「え!?」

「一人で食べてたら寂しいだろ?」

「・・・うん。」

それを聞くとロアの隣に座って水を飲んだ。

スッ

ロアが若干離れた。

俺嫌われてるのかな?

「ショウタ君、雪那ちゃんは?」

どうしてそんなことを?と思ったがまぁ、いつも一緒にいて今日はいないから不思議なんだろう。

「部屋でゴロゴロしてるんじゃないかな?」

俺が今朝使った枕を嗅いでそう。

「そうなんだ・・・」

ススッ

離れてた距離がもとの距離、いや、近くなってる。

よかった、嫌われてなかった・・・

「そういえば今朝のやつ。大丈夫だったのか?」

一瞬ロアがピクッと動いた。

「ロア?」

「も、もう、大丈夫だよ。迷惑かけてごめんね?」

「迷惑だなんてそんな。いつもロアには世話になりっぱなしだからな。回復とか補助魔法、それに心の癒しになってくれるし。」

二ヶ月前まではダメ人間に囲まれた生活だったから、ロアみたいな常識人との交流は精神的に助かる。そういった意味ではホントに癒される。

「!?そ、それが本当なら嬉しいな・・・」

「ここで嘘言っても何の特にもならんだろ?」

「そ、そういうことじゃなくて!もう、やっぱりショウタ君はずれてるよ。」

「えー、そんなにずれてる?自覚がないんですけど・・・」

「もっとショウタ君は色々と自覚した方がいいよ。」

「そんなこと言われてもなぁ・・・」

一体何を自覚すればいいのやら・・・

「ごちそうさまでした。ショウタ君、このあと暇?」

「うーん、うん。暇だな。」

このまま部屋に戻っても惰眠を貪るだけだしな。

「そ、そう、それじゃあ王都を案内してよ。」

「いいけど、俺もそこまで詳しくないぞ?」

基本父さんと歩いた所しか知らない。

「ショウタ君が知ってるとこでいいよ。」

 

 

「もう一声!」

「ど、どうしてこうなったの・・・?」

「お、お客さん、これ以上は・・・」

例のごとくNEGIRIをやっていた。

軽い気持ちで市場を通ったらマナタイトを見かけ、血が騒いで思わず値切っていた。

「まだ行けるはずだ!その値段だと三個・・・いや、四個だな。」

「!?」

「決まりだな。その値段で四個貰おう。」

「ショ、ショウタ君。その値段はちょっとお店の人がかわいそうだよ。」

「そうか?案外平気そうな顔に見えるけどな。」

俺だって鬼じゃない。まだ利益が出るくらいでおさめてるはずだ。

「はぁ、あなたには負けましたよ。いいでしょうその値段で売らせてもらいます。」

「ええ!?いいんですか?こんなの破格ですよ?」

「ま、まぁ、かなり損はしますが利益がとれない訳じゃないですし・・・」

「だろ?」

思いもしない買い物をした俺たちは市場を抜けて飲食店が建ち並ぶ街道へ出ていた。

「うわっ、人がうじゃうじゃ居る・・・もう昼時か。なんか食べるか?」

「え、あ・・・」

「え、あそっか。さっき朝食食べたばっかなんだよな・・・そうなると、あそこかな。」

路地にある隠れ家的な喫茶店を指した。

「よくあんなところにある店を見つけれたね・・・」

「前に王都に来たときに見つけたんだ。暇があれば行こうと思って。」

カランカラーン

ドアを開けて中に入った。

中は外と違い静かで、今にもクラシック曲が流れそうな雰囲気を醸し出している。

ワックスを丁寧に掛けられている木の床に自分の顔が写った。

良いとこを見つけたな・・・

「いらっしゃいませ、こちらの席にどうぞ。」

出向けてくれたのは初老の男の人だ。ついマスターと言いたくなってしまう。俺達はカウンター席に案内された。

客は多くないが確実に常連の客がいそうだ。

「こちらがメニューです。御決まりになりましたら、そちらのベルを鳴らして下さい。では。」

そう言って立ち去った。

どうやら店員が他にいない所を見るとあの人がマスターなのだろう。

ゆっくりメニューを眺めていると、

チーン、チンチンチーン!

どこかのアホが場の雰囲気を壊すような音を鳴らした。

「呼んでるんだから早く来いよ!こっちは腹空かせてんだよ!客を待たせてるんじゃねえよ!」

今時居るんだな、こんな典型的なチンピラが・・・こんなに居たら迷惑なんですけどね・・・

チンピラは四、五人居た。

「お待たせしました。」

律儀に対応するマスター。

「おっせぇよ!たいして客がいないんだからもっと早く来いよ!」

マジなんなんあいつら?一発入れていいっすかね?

「ショウタ君?」

ロアが肩を叩いて話しかけてきた。

「ん?どうした?」

「えっと、その、ちょっと怖い顔してたから・・・」

そっか、顔に出てたのか・・・気を付けないと喧嘩とか売られそうだな・・・

チーン

少ししてからメニューを決めベルを鳴らした。

「はい、何でしょうか?」

「このクリームスパゲティとブレンド一つ。ロアは?」

「えっと、このサンドウィッチセットを。」

「かしこまりました。少々お待ちください。」

マスターがカウンター越しで料理をし始めた。すると、

「っまっず!?なんだこの料理?コーヒーもにげぇし。こんなもんに金が払えるか!おい、帰ろうぜ。」

さっきのチンピラ風情共等が喚きだした。

「お、お客様。お会計を・・・」

「あんな物に金を払えだぁ!?頭湧いてるんじゃねえのか?」

もう殴っていいかな?いいよね?

ガタッ

「おい、お前ら!さっきからうるさいんだよ!折角の雰囲気が台無しじゃねぇか!」

「ねぇ、君達!さっきからうるさいよ!折角の雰囲気が台無しじゃないか!」

一瞬ビックリした。まさか同時に文句が言う人が居るとは・・・

「なんだ、兄ちゃん達!気取ってんじゃねぇぞ!?男二人ががりでもこの人数に張り合おうってのか?」

いや、文句を言っただけだし別に喧嘩しようなんて・・・いや、殴ろうとしてたのは事実ですけどね?

「お、男!?ね、ねぇ、あたし女だよ?」

隣の人が少し動揺してる。あれ?そう言えばこの声、どこかで聞いたことのあるような・・・

「嘘つけ!どっからどう見て女に見えるんだよ!確かにかわいい顔はしているけど。」

褒めるとこは褒めるんだな・・・それなら料理もしっかり褒めろよ・・・

「とりあえず金を払っていけ。そしたら殴らずにいてやる。」

「なめんなよ!こっちは五人、そっちはたったの二人。勝ち目あると思ってんのかよ!?」

あるだろ。

「そっかぁ、それじゃあおやすみなさい。」

結局、チンピラ五人は地べたに寝そべっていた。

「き、君凄い・・・あれ!?」

「え、あ・・・」

なんと一緒に文句を言った人はこともあろうかあの女神エリスだった。

「エリ・・・」

「こほん、クリスだよ。」

「く、クリス。どうしてここに?」

目で殺された俺は疑問に思ったことを聞いた。

「王都に居るときはよくここに居るんだよ。こっちに知り合いが居る訳じゃないし、行く宛もないから。」

そっか、この人は神器回収の為にこっちに来てるんだよな。

「普段は『アクセル』って言う街で活動してるんだ。もしよかったら今度来てよ。」

「暇があったらな。」

伸びてるチンピラ五人を縄で縛りながら言った。

「所で君はこんなところで・・・ははーん、なるほど・・・」

クリスはロアを見て何かを納得していた。

「何が成る程なんだ?」

「いや別に。」

なんだこの人?

「いや、お客様方。ありがとうございました。」

マスターがお礼を言ってきた。

「いえいえ、はい、これこの人達の分。」

俺はチンピラから財布を取り、代金を支払った。

「それ窃盗罪に入らないのかな・・・?」

「入らんだろ。そんなの言ったらあんたがやってる・・・」

「わああぁ!分かったよ。お願いだからそれを軽々しく言わないでよ・・・」

「あ、ありがとうございます。では、お二人には新作のコーヒーをサービスさせてください。」

代金を受け取ったマスターがそう言ってくれた。

「え、じゃあお言葉に甘えて。」

「あ、あたしはいいかな・・・」

「まぁまぁ、折角のご好意だから貰っとけよ。」

クリスの背中を叩いて席に戻った。

「あの人知り合い?」

「ちょっとしたな。拝んどけりゃなんか良いことあるかもしれないぞ?」

「な、ないよ。何言ってんのさ。」

そう言って俺のとなりに座った。

「それにしてもショウタ君凄いね。息をつく間もなく倒しちゃうもんね・・・」

気絶してる五人を見てロアが呟いた。

「よっぽど対人戦に慣れてないとこれは無理だよ・・・」

そうかな?敏捷性があれば行けると思うけどな・・・

「警察遅いな・・・」

そろそろ到着すると思ってたけど結構遅いもんだな。

「苦っ!?」

コーヒーをすすっていたロアが顔をしかめていった。

「無理するなよ。砂糖でも入れたら?」

「ショウタ君はよく平気で飲めるよね・・・」

「慣れてるからしゃーない。」

カランカラーン

「失礼する。店で暴れた被疑者の身柄を確保しに来た。」

暴れたって・・・暴れたの俺ですけどね・・・

「どーぞ。そこに転がってる人たちです。」

「うむ、確かに。いやぁ、こいつらは無銭飲食の常習犯で逃げ足が早く困ってたんだ。ご協力感謝する。」

そう言って警察の人が五人組を引きずっていった。

「あれ、将来のお前の姿な。」

「な、なんて事言うのさ!」

「あの人にも将来世話を掛けるんだから今の内に挨拶しとけよ。」

「き、君って奴は!」

「な、何の話をしてるの?」

放置されてご機嫌斜めなのか、声が若干低いロアが聞いてきた。

「いやこいつがぬs!?んーんー!」

「な、何でもないからね?そんなことより二人は付き合ってるのかな?」

無理矢理話題を変えようとするエリス様。

いくら話題がないからってそんな話を振られても困る。

「へ!?そ、そそそ、そんな、つつつ、付き合ってるだなんて・・・!」

おい、動揺しすぎてないか?

「んーんーんー!」

「ダメだよ。君はまた余計なこと言いそうだから、しばらくこのままね。」

何言ってんの、この人?

女神様がこんなことしていいものなのか?

「そっかぁ、その反応は付き合ってないんだね。」

コーヒーをすすりながら言った。

「んーんー?」

「もう、しょうがないなぁ。余計なことを喋らないって約束するならいいよ。」

しょうがないなぁってふざけんなよ。

俺は離して貰うべく仕方なく了承した。

「ぷはぁ、最近口を塞がれることが多い気がする。」

「余計なことをするからだよ。それよりホントに付き合ってないの?」

なぜこの女神様はこんなに興味津々で聞いてくるんだ?

「ああ、さっきのそいつの反応通り付き合ってない。」

「ふーん。」

なんだその目は?

「そう言うクリスはどうなんだよ?」

「それがさ、何でか女の人ばっか言い寄られるんだよね・・・」

「そ、それは・・・ドンマイ。」

いつも何も感じないコーヒーが苦く感じた。

「そ、それより。さっきからクリスのせいでロアがショートしてるから何とかしといて。」

本日二回目のショートをしたロアを指して言った。

「え!?あたしのせい?」

驚いてるクリスを見ながらどうやって犯人を聞き出すか考えた。

極力嘘はつきたくない。というかついたところでばれそうな気がする・・・

「なぁ、クリス。犯人教えてくれないか?」

ロアを介抱してるクリスに聞いた。

「・・・君はそれを知ってホントに殺すのかい?」

急に険しい顔になった。

周りの空気が重く感じられる。

「今は出来ない。でも、いつかは殺らないといけない気がする。」

「殺しはダメだよ。でも、君が自分の親の犯人を知らないって言うのは可愛そうだから教えてあげるよ。でもホントに殺っちゃダメだからね?そんなことをしようとしたら女神の力で直ぐにこの世界に降りて止めるからね。」

そんなに念を押されても・・・

「止めれるなら止めてくれ。俺だって殺りたくない。でも殺らなくちゃならない衝動に駆られる。」

不思議な気持ちだ。表では殺りたくないって思ってるけど心のそこでは殺らなくちゃいけないと思っている。

「分かったよ。必ず止めるからね。で、犯人なんだけど・・・アクセルの領主アルダープ。」

思ったより大物だった。

「・・・そうか。ありがとう。そのうち、必ずそのうち、そいつの家で会おう。」

そう言って気絶してるロアを抱えて、

「マスター、これ勘定。」

代金を支払って店を出た。

最後にクリスが少し笑ったような気がしたが気のせいだろう。

「さて、これどうしたものかな・・・」

気絶、いや、健やかに眠ってるロアを見て考えた。

領主アルダープ。必ずお前に制裁を下してやる!

顔も知らない憎き相手に向かって心の中で強く叫んだ。




はーい、ねこたつむりですよ。
最近紅魔組が出てきてないですね・・・
あらすじに紅魔族と楽しく過ごす物語はどこへ行ったのやら・・・
はい、ということでなんと主人公が実は紅魔族ということが発覚しました!
あ、これは予想外とかではなくちゃんとした予定通りの設定ですよ?嘘じゃないですよ?
お父さんがバリバリの最強ステータスだったのに主人公の魔力と生命力が少ないのはきっと母親が少なかったんですかね?まぁ、そんなことは知りようもないんですが・・・
てことで、今回も読んでくださりありがとうございます!
次回も読んでくださるとありがたいです。

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