カードファイト!!ヴァンガード 熱血の先導者と努力の先導者 作:先導
それから、今ヴァンガードGの続きを並行して書いてたので明日には投稿できると思います。
さて、今回はトーナメントの様子をご覧いただければと思います。
それではどうぞ!
ヴァンガードチャンピオンシップ、関東第3地区予選1回戦で見事、チームフォーブラックスに勝利を収めたチームQ4はエントランスに集まり、シンからのくす玉付きの労いの言葉を受け取っていた。
「チームクアドリフォリオ、1回戦突破、おめでとう!」
「あ・・・ありがとうございます!」
「ちゃんと掃除しろよ、店長・・・」
「も、もちろん・・・」
「俺たちは手伝わねぇからな」
「うぅ・・・」
アイチは素直にうれしかったようだが、くす玉を開けたことによってカムイとカズヤからのダメ出しが出る。シンは少し涙目になる。
「あの程度の相手、勝って当然だ」
「ちぇ、かっこつけやがって・・・俺だって出てれば・・・」
1回戦で唯一出られなかったカムイはこれを機に決断をする。
「決めた!次は俺が先鋒だ!お前ばっかりにいい格好はさせねぇ!」
「ふん・・・」
「じゃあ、先鋒はカムイ、次鋒は俺、副将は櫂、大将はアイチってとこだな」
チームQ4で試合に出る組み合わせを決めていると・・・
「カムイちゃーーーん!!!」
「ギクゥ!!」
「1回戦勝ち抜け、おめでとうーーー!!」
「うおおおお!!」
どこからともなくナギサが現れ、カムイにタックル付きで抱き着いた。この光景にアイチとカズヤ、シンは苦笑い。
「やめろ!離れろ!くっつくなーー!!」
「だってうれしいんだもん♡」
「俺はうれしくない!ファイトできなかったし・・・くっつきすぎだってば!」
「んもー、恥ずかしがり屋さんなんだから♡でもカムイちゃん、ファイトしない方がいいと思うよ?」
「どういうことだ?」
「だってお兄ちゃんやスバル君に勝てるわけないもん。さ、私も行かないと」
カムイの疑問にナギサは率直にそう答える。すると、フィギュアモーションシステムに集まっている観客は関心声でざわめいている。システムに映し出されているのは、ゴウキ率いるチーム男前だった。
「ゴウキ・・・」
ゴウキを見てカムイは真剣みな表情になっているのであった。
RIDE25「白熱のトーナメント」
チームQ4が観客席に辿り着くころには地区予選第1試合も残すところあと1試合だけだ。
「さあ、1回戦最後の試合、対戦するのは・・・華道、茶道、書道、俳句のエキスパートが集結したチーム撫子!彼女と男前を代表して、チーム男前!この2チームだ!さて最初の対戦、両チームの先鋒は、チーム撫子、茶道、咲井ヒロミ!対するチーム男前は、大文字ゴウキ!」
先鋒戦でいきなりゴウキの登場にアイチは少し疑問を抱く。
「ゴウキさんが先鋒?強い人が大将になるんじゃないんですか?」
アイチの疑問にシンが軽く説明する。
「先に1勝してチームに勢いをつけたいなら、これがいいだろうね。アイチ君の言う通り、最も強いものを最後にして、前の3人が気負わずに戦えるっていう方法もある」
「てことは、先鋒、中堅、副将、大将を誰がどこにするかで勝負が決まるってことか?」
「そう言うことです。チーム戦というのは、奥が深いんだ」
「へっ、そんなの俺には関係ねぇ。俺は誰にも負けねぇからな」
「カムイちゃんかっこいい!!」
カムイの言葉にいつの間にかQ4側に来ていたナギサがカムイに抱き着く。
「やめろーー!!!」
そうしている間にファイトは進み、決着がついた勝ったのはゴウキだった。
「勝者、大文字ゴウキ君!」
「すげぇな・・・」
「ね?ね?お兄ちゃん強いでしょ?」
「んなこと知ってるぜ・・・」
「なんか、この間より強くなってる気がする・・・」
「当然ですよ。みんな成長します。だからファイトは面白いんです」
ゴウキの実力を見て、アイチは少し考えている素振りを見せる。
(ゴウキさんに勝てるくらい強くなれればって思ってたけど・・・まだまだだよね・・・)
アイチが考えている間に中堅戦が始まる。中堅から出るのはスバルだった。ファイトが始まったが、勝負はあっという間に終わった。勝ったのはスバルだった。
「勝者、天城スバル君!」
「天城君・・・強い・・・圧倒的だった・・・」
「あいつ、ゴウキの右腕ですからね」
「あいつが強いのは知ってたが、あの中で2番とはな・・・」
スバルがヒロシやカオルよりも強いという事実にカズヤは目を開かせる。ファイトも副将戦に突入。男前から出場したのはカオルだった。
「ジャッパーーン!!」
ファイトの結果はこれも圧勝、カオルの勝利だった。これによって、第1試合をチーム男前の勝ち抜けが決定し、2回戦へと進んだ。
「勝負あり!副将戦でもチーム男前が勝利!さすが去年の優勝チーム!順調に2回戦を進みました!」
「もし戦うことになるとしたら・・・決勝に当たるんだ・・・」
「だったらなおさら負けるわけにはいかなくなったな」
「見てろ、ゴウキ。俺がチーム男前をぶっ潰す!」
「カムイちゃんかっこいいー!!」
「やめろーー!!」
せっかくカムイが勢いをつけたというのに、雰囲気をぶち壊しにするナギサであった。
☆
チーム男前のファイトが終了し、一回りして2回戦に突入した。チームQ4はさっそく最初の試合に出場するために中央会場に移動する。
「さあファイトは一回りして2回戦突入です!その2回戦第1試合は、チーム武道対チームQ4!」
2回戦第1試合に出るチームQ4は対戦相手であるチーム武道と対峙する。
「あ、来ましたよ」
「楽しみですね」
「ああ」
「ワクワクするジャパーン」
(カムイ・・・)
1回戦の試合でチームQ4の見方が変わったチーム男前のメンバーは観客席でファイトが始まるのを待っている。
「1回戦では素晴らしいファイトを見せてくれた小チーム同士でーす!」
「おさらいだけど、先鋒はカムイ、中堅は俺、副将は櫂、大将はアイチでいいんだよな?」
「はい!カムイ君、がんばって!」
アイチ、カズヤ、櫂、そしてキャピタルのメンバーたちに見守られながら、カムイはオレンジのVFグローブをつけてコンソールの前まで経つ。
「がんばれー!カムイちゃーーん!!」
なぜかキャピタル側にいるナギサはカムイを全力で応援するが、当のカムイはあまりうれしそうじゃない。
「ああ・・・あれがエミさんの応援だったら・・・いや!今はヴァンガードファイトに集中しなくては!勝って勝って勝ちまくれば、きっと、エミさんが応援に駆けつけてくれるに違いない・・・」
カムイはエミが応援に来てくれるのではないかという期待を抱きながら全力でファイトに挑む。
「いくぜ!!」
「「スタンドアップ・ヴァンガード!!」」
ファイトが始まり、カムイはバトルライザー、対戦相手はマダム・ミラージュにライドする。
「俺様の力、見せつけてやるぜ!!」
「道場の看板に賭けて、勝つ!」
序盤はお互いに順当にライドさせていく。カムイの攻撃が終わって、次は相手側のターンだ。
「ブラッディ・ヘラクレスにライド。そして、レディ・ボムをコール。
レディ・ボムのカウンターブラスト!貴殿のクイーン・オブ・ハートは次のターンスタンドできん」
メガコロニーの特異戦法、スタンド封じを行った後にバトルフェイズ。
「バーがブーストしたブラッディ・ヘラクレスでタフ・ボーイにメーン!!」
このメーンというのは、恐らく剣道の面のことを言っているのである。つまりは攻撃ということ。非常にわかりずらいことである。
「ドライブトリガー確認。トリガーなし」
「ダメージトリガーチェック。スタンドトリガー!クイーン・オブ・ハートをスタンド!」
スタンドトリガーによって、スタンドを封じたつもりが逆にスタンドを許してしまった。
「残念だったんな。何度倒れても必ず立ち上がるノヴァグラップラーにそんなスキルは通用しないぜ!!」
「素敵カムイちゃん!!勝ったら、頭なでなでしてあげる!!」
せっかくのかっこいいセリフをナギサによって崩されてカムイは思わずずっこける。何はともあれ、ファイトは終盤に差し掛かり、相手のグレードは3、カムイのグレードは2、ダメージは互いに5という状況になっている。
(ダメージはお互い5・・・奴の手札は2枚・・・こいつで決めてやる)
カムイは相手の手札を見てこのターンで勝てそうなカードにライドさせる。
「荒れ狂う邪悪なる魂解放!ジェノサイド・ジャックに俺様ライド!!」
カムイがライドしたのはグレード3ではなく、グレード2のジェノサイド・ジャックだった。場には3体のジェノサイド・ジャックが揃っている。
「ジェノサイド・ジャックが3体も⁉」
「すげぇ光景だ!」
「力任せか・・・」
「ジェノサイド・ジャック!トリプル拘束解除!これで3体全てが攻撃できる!」
「ぬっ・・・」
3体のジェノサイド・ジャックの拘束をカウンターブラストで解除させ、いよいよ攻撃の時だ。
「カウンド1!クイーン・オブ・ハートがブーストしたジェノサイド・ジャックでヘル・スパイダーにアタック!」
「リザードソルジャーガンルーで防御!」
「カウント2!クイーン・オブ・ハートがブーストしたジェノサイド・ジャックでアタック!
ヴァンガードのジェノサイド・ジャックはノヴァグラップラーにブーストした時、さらにパワープラス5000!」
「ファントム・ブラックで防御!レディ・ボムとブラッディ・ヘラクレスでインターセプト!」
「ドライブトリガーチェック」
カムイのドライブチェックで出たのはハングリー・ダンプティ、ノートリガーだ。しかしこれで相手の手札は0、インターセプトできるユニットもいない、勝負は決まったも同然だ。
「ラッキー・ガールがブーストしたジェノサイド・ジャックでアタック!フィニッシュ・ホールド!!」
「・・・ダメージトリガー・・・確認」
6枚目のダメージで出てきたのはグレード3のユニット、ノートリガーだ。
「カウント3」
「勝者、葛城カムイ君!」
「やったー!!」
「「イエイ!」」
カムイの勝利でナギサは喜び、エイジとレイジは互いにハイタッチを交わす。
「カムイ君!」
「やりましたよ、お義兄さん!」
「よくやったぜ!次は俺に任せな!」
「さあ、第1試合中堅戦です!」
中堅で出場するカズヤはカムイを励ました後、黄色のVFグローブをつけてコンソールの前に立つ。審判の合図とともに、中堅戦が開始される。ファイトの方は着々と進んでいき、ダメージの方はカズヤが5、相手側が4といった少し差をつけられてしまったようだが、手札の方は2枚、インターセプトを合わせて2枚、高いパワーさえあれば勝てる段階まできている。
「サベイジ・キングとバーをコール!
サベイジのスキル発動!ソウルブラスト!スカイプテラを退却して、パワープラス3000!
そしてスカイプテラのカウンターブラスト!手札に戻してもう1度コール!この動作をあと2回やって、これでブーストと合わせて、26000になったぜ!」
カズヤの準備を終えてバトルフェイズに突入。
「ターのブーストをつけたディノカオスで断罪の騎士ボールスに攻撃だ!」
「幸運の運び手エポナで防御!」
「スカイプテラのブーストをつけて、デスレックスで攻撃!デスレックスは攻撃した時、パワープラス5000だ!」
「薔薇の騎士モルガーナで防御!さらに、竪琴の騎士トリスタン、沈黙の騎士ギャラティンでインターセプト!」
「ドライブトリガーチェック!ドロートリガー!パワーをデスレックスに与えて1枚ドロー!これで攻撃はヒットするぜ」
「くっ・・・ダメージトリガー確認」
ダメージで出たのはノーマルユニット、トリガーなし。これでダメージ5枚。
「アタックがヒットしたから、ターは退却させるぜ。こいつでフィニッシュだ!バーのブーストをつけてサベイジでボールスに攻撃!」
「ダメージトリガー・・・確認・・・」
6枚目のダメージはグレード2のノーマルユニット、トリガーなしで決着がついた。
「勝者、橘カズヤ君!」
「うし!」
2回戦も勝利を収めたことによってカズヤは思わずガッツポーズをとる。
「やったなカズヤ!ナイスファイトだったぜ!」
「おう!2回連続でやってやったぜ!」
(やった・・・これで2連勝・・・あと1回勝てば・・・)
アイチとカムイがカズヤを労っている間に、副将戦が始まろうとしていた。櫂は赤のVFグローブをはめてコンソールの前に立つ。
「さあここが大勝負!第1試合副将戦です!」
互いにファイトの準備を終えて、副将戦がスタート。だが、櫂とのファイトは本当に圧倒的の差を見せつけられる。櫂がライドしたオーバーロードが相手のジャガーノート・マキシマムにとどめをさす。6枚目のダメージトリガーはノートリガー。このファイトでも櫂の圧勝だ。
「勝者、チームQ4!櫂トシキ君!」
「ふん・・・」
櫂の勝利によって3回勝利、よって第2回戦を突破し、準決勝に進出が決まった。
「ちぇ、ちょっとは苦戦してみろよ、かわいくねぇなぁ・・・」
「ま、それは無理だろうな、櫂の力を見れば」
(やった、3連勝で勝ちぬけだ!やっぱり、櫂君、カムイ君、カズヤさんは強い!)
「え?」
「なんか言ったか、アイチ?」
「あ、いえ、何でもありません」
自分は出場していなくても、チームが順調に勝ち進んでいることにアイチはうれしさを感じる。
(僕の出番はないかもしれないけど・・・このチームが勝ってうれしい・・・)
アイチがそう考えていると先ほどの対戦チーム、チーム武道が近づいてきた。自分たちが所属する道場の看板をもって。
「我が道場の看板を持っていけ」
「あ、いや・・・それは・・・」
「いらねぇよ別に。それにそれ、大事なもんだろそれ?」
もちろん受け取れるはずもなく、丁重にお断りするチームQ4。
「チームQ4、チーム武道にストレート勝ち!初出場ながら準決勝進出を果たし、彼らを向かい打つのは、白衣の強豪!チーム科学部だ!」
準決勝のチームQ4の対戦相手は白衣を着て、何やら不気味そうな雰囲気を纏ったチーム科学部となった。
☆
始まったチームQ4とチーム科学部のファイトは始まった。先鋒戦カムイはアシュラ・カイザーで相手のインビンシブルを倒し、中堅戦のカズヤはディノカオスの速足のライドで相手をジェノサイド・ジャックのままで倒し、櫂の方はあっという間、勝利の化身アリフに速足でライドし、相手をさらに下、タフ・ボーイの状態で勝利を収めた。圧倒的とはまさにこのことである。
「準決勝第1試合!勝ったのはチームQ4です!」
「よっしゃあ!」
「次は決勝だぜ!」
「カムイさん、すごいです!」
「KSっすー!」
チームQ4が決勝に進んだことにより、キャピタル側も喜びで満ち溢れている。
「すごいや3人とも!すごいすごい!決勝に行けるなんて、信じられないよ!」
「当然!櫂、お前じゃない。俺様のおかげだからな」
「そこはいいだろ別に。決勝に行ったことを喜ぼうぜ。な?」
「ふん・・・」
(いい意味でも悪い意味でも、実力通りですね)
シンはチームQ4を見て、冷静ながらも鼻高々といった表情をしている。
「準決勝第2試合も白熱しておりまーす!!」
同じ会場で試合を行っているチーム男前の方は先鋒ヒロシ、中堅ゴウキと出ており、この2つを勝利で収めている。
「チームホット麺ズ、後がない!!ファイトは副将戦、チーム男前は天城スバル!!」
スバルはヴァンガードを不死竜スカルドラゴンとし、相手ヴァンガードの科学者モンキー・ルーにとどめをさす。
「勝者、チーム男前!」
「さすがは前回の優勝チーム!圧倒的な強さで勝利です!これで決勝進出の2チームが決定!チームQ4、チーム男前!勝利の栄冠をつかむのはどちらだ!」
決勝に進むことになったチームQ4とチーム男前は互いに対峙し合っている。
(カムイ・・・とうとうここまで来たな)
(待たせたな・・・ゴウキ)
「カムイちゃん!がんばってー!」
せっかくの闘志をぶつかり合っているいい緊張感だったのに、やっぱりナギサがそれを壊していってしまう。
「緊張感ぶち壊すなーーーー!!!」
「怒鳴り声もだーーい好き!!!」
最後まで全然締まらない雰囲気だ。
☆
地区大会決勝は休憩を挟んで午後から行われる、つまり今この時間帯は昼食の時間ということだ。そんなお昼休憩の中、カムイとゴウキは会場外の裏側で2人だけで話をしている。
「やっとチーム男前をぶっ潰す時がやってきた。覚悟しろ、ゴウキ」
「へっ、カムイ、お前と一緒のチームで戦いたかったんだがなぁ・・・」
「・・・こいつを始めるきっかけをお前がくれたことには感謝してるぜ」
カムイは自身のデッキを取り出し、昔のことを思い出していた。
ヴァンガードを始める前のカムイは年上だからというだけで威張っている連中に腹が立ってケンカ腰になっている。だが、やはり体格の差では勝てない。カムイが悔しくて泣きながら歩いていた時に立ち寄った店が、カードショップ男前だ。カムイがその店に入った時に視界に映ったのはゴウキがヴァンガードファイトで大人を倒したところだった。その時に初めてゴウキとカムイが出合い、ゴウキがカムイにヴァンガードを勧めてくれたのだ。
「ヴァンガードファイトでなら、体の大きさも関係ないって・・・」
「そんなこともあったな・・・」
ゴウキは昔のことを思い返し、懐かしそうな顔をしている。
「俺はお前と全力で戦いたいんだ。それがお前に対する俺の、お礼参りだ」
「はは・・・いや、そこは普通にお礼でいいだろ」
カムイの発言にゴウキは苦笑いを浮かべるが、その後にすぐ真剣みな顔をする。
「俺は先鋒で出る。敵になった以上、本気で倒すぞ」
「こっちもだ!全力でぶっ潰す!」
カムイとゴウキは互いに好戦的な笑みを浮かべて、自分たちのチームの元に戻る。
☆
カムイはゴウキと話をつけた後、チームQ4が待っている小さなコテージで昼食・・・と思われたがここで大きな問題が発生する。
「ええええ!!?お昼ご飯持ってくるの忘れた⁉」
「すみません・・・店長代理のお昼と間違えて、持ってきてしまったみたいで・・・」
「どうやったら間違えるんだよ・・・?」
紙袋から出てきたのは弁当ではなく、キャットフードだった。シンの間違えようにカズヤは心の奥深くでそう思っている。それはカムイとアイチも同じだった。
「せっかくがんばって作ったのに・・・紅白のかまぼこ、伊達巻き、栗きんとん・・・」
「おせちかよ・・・」
「つかシンさん言うんじゃねぇ・・・余計腹が減る・・・」
「ど、どうしましょう・・・食べますか?」
「い、いえ・・・」
せっかくの昼食タイムなのにこのままでは食事抜きという事態にシンは慌てている。
「あの・・・これよかったらどうぞ」
「!!この声は、まさか、エミさん・・・」
聞き覚えのある声が聞こえて、カムイが後ろを振り向くと、エミがバスケットを持って立っていた。恐らくこれはお弁当だろう。
「エミ?どうしてここへ?」
「お母さんがお弁当持っていけって言うから」
「わあ!ありがとうございます、エミさん!」
「ありがとう、エミ」
「助かりました。いただきます、エミ君」
お弁当を持ってきてくれたエミにQ4(特にカムイ)とシンは本当に感謝の気持ちでいっぱいになった(櫂はどうかはわからないが)。
「アイチ、試合はどうなの?」
「バッチリです!」
「うん。次は決勝戦なんだ」
「すごーい!櫂さんと橘さん、葛城君って強いんだね!」
「い、いやぁ・・・ありがとよ、エミちゃん」
エミの純粋な気持ちを聞いてカズヤは少し照れている。カムイは言うまでもなく照れている。
「確かにそうなんだけど・・・」
「お義兄さんも強いですよ!1回戦はバッチリ勝ちました!つきましては、カムイって呼んでもらえると、うれ、うれ・・・うれしいな・・・なんて・・・///」
カムイは顔を真っ赤にしてさりげなく名前を呼んでもらえるように試みるが・・・
「どうぞ」
「聞いてないし・・・」
全く話を聞いていなかった。エミはカムイにサンドイッチを渡す。
「い、いただきます!こ・・・この・・・愛のお弁当を食べて、俺・・・決勝に勝ちます!」
カムイはサンドイッチを受け取り、うれしそうな表情をしながらサンドイッチを頬張ろうとした時・・・
「カムイちゃん見っけーーー!!ナギサの愛妻弁当だよー!!食べてーーー!!」
「ぐおおおおおっ⁉」
不運なことに弁当箱を持ったナギサに見つかり、カムイはそのままナギサのタックルを喰らってしまう。その際にサンドイッチを手放してしまい、サンドイッチは宙に浮いている。
「アイチの奴に、いっちょアドバイスでもして・・・むぐ?」パクッ
ちょうど近くを通りかかった後江中学生3人組の1人、森川の口にサンドイッチが入り、森川は口に入ったサンドイッチを一口で食べてしまう。
「あああああ!!!愛のサンドイッチがあああああ!!!」
「な、何なんだよ⁉」
一部始終を見たカムイは泣きながら森川に突っかかってくる。森川は本当に訳わからないといった表情をする。
「せっかくの愛のサンドイッチどうしてくれるんだ⁉」
「そんなに怒らなくてもいいでしょ?ナギサの作ってきたお弁当があるから!」
「お弁当?」
ナギサのお弁当と聞いて、カムイは嫌な予感を感じるが・・・
ぐううぅぅ~・・・
空腹にはやはり逆らえず、お腹がなってしまう。とりあえず中身を確認することにした。
「じゃじゃーん!カムイちゃんの顔のお弁当!おいしそうでしょ!」
中身はカムイの顔をモチーフにしているようだが、あまりに不格好だ。
(この中でまずそうって思ったのは俺だけじゃないはずだ・・・)
「うっ・・・」
カズヤは心の中でそう思っている。その気持ちが同じなのか、自分の顔の弁当を見て気分が悪くなったのかわからないが、カムイは思わず口を押える。
「食べて♡」
「おう、モテモテだなクソガキさん」
ナギサにモテモテのカムイを見て、若干ながら怒りを浮かべている森川。
「い・・・嫌だーー!!」
「カムイちゃーん!!」
カムイは思わずその場から逃げ出し、ナギサは弁当箱を持って追いかける。そんな追いかけっこの中、ナギサは石につまずき、転んでしまい、弁当箱を手放してしまう。そして弁当は森川の顔面に直撃する。蓋が開いていたため、森川は弁当の中身を口に含む。その瞬間、森川の顔が真っ赤になり・・・
「からあああああ!!?」
「森川ーー!!」
辛かったのか口から火を吹きだしている。メグミは慌ててうちわで沈下作業に入る。
「・・・何入れた?」
「わさびでしょ、マスタードでしょ、ペッパーソースに唐辛子、とにかく辛いのいーっぱい!」
数多くの香辛料を使った弁当ならば森川がああなるのも無理ない話だ。
「カムイちゃん辛いの好きだったでしょ?」
「で、あんなもの俺に食わせる気だったのか!!」
「えへ、ごめーん。カムイちゃん♡」
ナギサは特に悪びれた様子はなく、カムイに抱き着く。
「は、離せ!」
「やーだもーん♡」
「あ!あ、あの、エミさん・・・こここ、これは・・・」
この光景をエミに見られたカムイは何とか弁明しようとすると・・・
「カムイ君の恋人なんだー」
やはり兄妹、以前あったアイチと同じ解釈をする。
「そうなの!もうすぐ結婚式を挙げるの!」
注意、小学4年生では結婚はおろか、式も挙げられません。
「挙げねー、てか、恋人じゃねぇ!俺が好きなのは・・・」
「ナギサでしょ!」
「違う!」
「ナギサ!」
「違う!!」
「ナギサなの!!」
「ちがーーう!!!」
カムイはナギサを否定し、真に愛しいと思っているエミに視線を向ける。
「俺が好きなのは・・・」
「ん?」
「え・・・み・・・さん・・・だ・・・///」
カムイは顔を真っ赤にしながらそう言うが小声で言っているためエミには聞こえていない。だが、カムイの表情を見てカムイがエミを見ているのに気づいたナギサは気に入らなさそうな表情をし、エミに近づく。
「カムイちゃんはナギサのなの!べーっ!」
「え?」
ナギサはエミにあっかんべーするが、エミには何のことかわからないでいる。
「あはは・・・」
「これぞ修羅場ってやつか?」
「もてる男はつらいねー」
その光景をシンとアイチとカズヤは眺めている。櫂はそのままどこかへ行ってしまう。
「あ、あのー・・・」
「何すんの⁉」
カムイはナギサを抑えながらエミに謝罪する。
「すみませんエミさん、見苦しいものを・・・それに、せっかく俺のために作ってくれたサンドイッチ、マケミなんかに食べさせちゃって・・・」
「あ、あの~・・・」
「ムカムカムカ!」
カムイの必死の弁明にエミはわからないでいる。ナギサはその光景を見てイライラが収まらない。
「・・・決めた。勝負よ!」
「えっ?」
ナギサの放った言葉にエミは訳わからないでいる。そうしている間に、昼食の時間はあっという間に過ぎていった。
☆
昼食を終えた後、チームQ4はエントランスに集まっている。それというのも間もなく地区大会決勝が始まるからだ。
「いよいよだ・・・」
「遅れて申し訳ありません」
アイチが緊張しているとようやくリンとミサキが合流してきた。
「待ってましたよ」
「リンちゃん、ミサキさん、どうして最初からきてくれなかったんですか?2人が来てくれるとばかり思ってから僕大変だったんですよ?」
「そうですか」
「そうですかって、お前・・・」
アイチの言葉にリンは特に気にした様子はなく、その様子にカズヤは少し呆れる。
「ごめん、どうだった?」
「なんとか勝ちました。櫂君とカズヤさん、カムイ君の活躍のおかげでこれから決勝です!」
「そう・・・」
「で、決勝戦、お前ら出るのか?」
「ここまでやってきたんだから、あんたたちが最後までやりなさいよ」
「私は出ますよ。でなければ、ここに来る理由なんてありませんから」
「ぶれねぇな・・・」
ミサキはここまで頑張ったメンバーたちに全てを託すようだが、リンは出場する気満々のようだ。
「じゃあ、誰が抜けるんだ?やっぱ俺か?」
「あ、いえ・・・僕が抜けます。カズヤさんが出た方が勝率があがりますし」
アイチが抜けると宣言した時、一瞬だけリンは気に食わないものを見るような表情でアイチを睨んだが、すぐに普段通りになる。
「相変わらずだな、お前・・・それでいいのかよ?」
「いいんです。チームが勝てれば、僕はそれで」
「はぁ~・・・」
アイチの発言にカズヤはあまり納得がいっていないようだがしぶしぶ了承する。
「でも、決勝戦はカズヤの出番はないぜ。俺と・・・櫂とリンの3連勝で決まるからな」
「構わねぇぜ。元々俺は補欠だからな」
「では、行きましょうか、皆さん」
「はい!」
「おー!」
ある程度出場するメンバーが決まったところでチームQ4は会場へと向かっていく。
☆
決勝戦が始まる時間帯、会場にはチームQ4と男前だけでなく、観客全員が集まっていた。
「いよいよ地区大会も残すところ決勝戦のみ!その前に、大会テーマソングで盛り上げていただきましょう!!期待の新人アイドル、ウルトラレアデビュー曲、ミラクルトリガー~きっと明日はウルトラレア!~!!」
中央会場のカーテンが開かれると、そこには新人アイドル、ウルトラレアがおり、開かれたと同時にデビュー曲を観客に披露する。
♪~
ウルトラレアがデビュー曲を歌っている姿を観客は見ている。その中で森川はウルトラレアの曲のサビに合わせて何か言っているようだ。恐らく応援だろうが。
「何やってんだ、マケミ」
「森川はほっとけよ」
カズヤとカムイが森川に呆れていると、アイチはウルトラレアを見て、初めて3人と出会った時を思い出す。やっぱり最初の時と印象がかなり違う。
(やっぱり同じ人とは思えない・・・)
アイチはそう思いながら苦笑を浮かべる。そうしている間にデビュー曲は全て歌い終えたようだ。
「「「ありがとうございました!!」」」
ウルトラレアがきれいにお辞儀したと同時に会場のカーテンは閉められる。観客はウルトラレアに大歓声上げる。
「レッカ、音程ずれてたわよ」
「えー!そんなことないもん!」
カーテンの裏側でスイコとレッカがそんな話をしていると、コーリンは会場にいるアイチを発見する。
「あの子、決勝まで勝ちのこれたんだ」
「ん?あ~、あの時の」
「渡したカード、ちゃんと使えてるってことかしら?」
「ええ・・・」
ウルトラレアはアイチを見てそんな会話をしていことは観客は知らないだろう。
☆
ウルトラレアのライブが終了し、観客は観客席に戻り、決勝戦出場チームはそのまま残っている。
「地区大会決勝に勝ち残ったのはこの、2チームだ!」
MCミヤの発言と共に出場チームを発表する。
「初出場、チームクアドリフォリオ、略してQ4!4つ葉のクローバーの名の通り、勝利という名の幸運を掴むことはできるのか⁉対するはご存知大本命!前回の地区大会優勝チームにして、全国大会でも活躍した大文字ゴウキ率いるチーム男前!」
チーム男前の待機場にいるゴウキの隣になぜかナギサもいたことにカムイはそこだけ引っかかった。
(ナギサの奴、何であんなところへ?)
「ともにここまで全勝で勝ち上がってきた2チーム!どんなファイトを見せてくれるのか、さあ、勝つのはどてぃらだぁ!!」
「おおお!!かっこいい!!」
「そうなんだ・・・」
「森川の感覚ってずれてるよね」
『あはは・・・』
MCミヤの発音に森川はかっこよさを感じているようだが、他のメンバーはいまいちのようだ。
「先鋒戦、出場者は前へ!」
「いってきます、アイチお義兄さん!」
「がんばって!」
カムイはアイチの応援と共にコンソールの前に向かう。
「くううぅ!コーリンちゃんに会えるとわかっていたら、カムイごときにショップ大会代表の座を譲ってやったりしなかったものをおお!!」
「いや~、飽きないなぁお前」
森川の様子を見て三和は笑みを浮かべてそう言った。
「エミさん、俺のかっこいいところを見ててくださいね!」
「さ、女神さまも応援を!」
「え?あ、うん。がんばって!」
「「がんばってください!!」」
「が、がんばります♡」
エミの応援でうれしそうな表情をするカムイ。
(やっとチーム男前を倒す時がやってきた。ゴウキ・・・思う存分やってやるぜ・・・)
いよいよ始まろうとする先鋒戦、ゴウキが前に出る・・・と思いきやナギサが前に出る。ゴウキもスバルも止める様子はない。
「えっ?」
「私が相手よ」
「ナギサ?ま、まさか・・・」
「ナギサが勝ったらカムイちゃん、ナギサと結婚ね!」
「え・・・ええええええええ!!!???」
まさかのナギサの出場にカムイは思わず驚愕の声を上げてしまうのであった。
to be continued…
アイチ「決勝戦なんて夢みたいだ!」
森川「うぅ・・・まだ口の中がひりひりするぜ・・・」
アイチ「このまま3人で優勝しちゃうかも!」
森川「アイチ何を言ってる!世の中そんなに甘くないぞ!」
アイチ「あ、でも、櫂君もカムイ君もリンちゃんも強いし、カズヤさんも控えてるし・・・」
森川「それが甘い!!いいか、歩いてたらいきなりサンドイッチや弁当が降ってくる時代だぞ⁉」
アイチ「ああ、それは・・・」
RIDE26「決戦!ノヴァグラップラー」
アイチ「えっ?カムイ君の対戦相手って・・・白い建物に鳴り響く鐘の音・・・て何のイメージですか⁉」