「ったく、疲れたな」
古城はいつも以上に気だるげな顔で帰路につく。
すると、古城は自分のマンションの前にトラックが止まっている事に気がついた。
(ん?なんだ誰か引っ越てくんのか?)
そう思いつつ、マンションの入り口を見るとそこには今さっき殺し合いをしていた少女が立っていた。
「………よ、よう」
古城は戸惑いながらも声を掛けると
「先ほどはすいませんでした!いきなり槍を刺したりしちゃって」
少女は謝ってきた。
「まぁいいや、なんでお前ここにいんの?」
「獅子王機関から命であなたの監視をすることになりました 姫柊雪菜です。今後、宜しくお願いします」
雪菜は緊張した様に挨拶をした。
「はぁ!?…勘弁してくれ」
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暁家 リビング
今、古城は妹の凪沙とさっきの少女 姫柊雪菜と夕食をとっていた。
机の上には、古城の妹 暁凪沙が作った豪華な料理が並べられていた。なんでも、凪沙と雪菜は合って1日目で友人となったのだという。
「雪菜ちゃんの引っ越しパーティーだよ!!でね今日は寄せ鍋。やっぱり真夏に冷房をガンガンに効かせて食べるお鍋は、贅沢な感じしていいよねぇ。そうそう、味は醤油味。
おダシはね、いちおうカツオと昆布と鶏ガラとホタテを使ったおダシで、今日はカニも入れてあるから、カニはオホーツクの毛ガニね。ちょうど今が旬でーーー」
「凪沙、止まれ」
古城は早口でまくし立てる妹の頭を軽く叩いて黙らせる。
「あ、あのお邪魔してよかったのでしょうか?」
「大丈夫大丈夫、あと2人じゃこんな量食べられないから」
そして古城は目の前の机に目を移す。
そこには、3人分どころではなく、8人前はあるような量の料理が並べられていた。
「勘弁してくれ…」
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料理がやっとかたずいたところで、古城は立ち上がった。
「ちょっとトイレ行ってくる」
古城は、トイレに入ると堪えていたものを吐き出した。
古城の嘔吐は2分にも続いた。
「はぁはぁ、くそ、妹の料理もろくに食えねぇとは兄失格だな」
この世界の吸血鬼は、血を主食にしているわけではない。
普通に人間の食事も摂れる。しかし古城の体は吸血鬼になってから人の食事を拒絶していたのだった。
古城はトイレから出ると雪菜はもう帰っており、凪沙がソファーで横になっていた。
「おい、凪沙。そんなとこで寝んなよ、俺はコンビニ行ってくるから」
「あぁうん。古城君、アイスお願い」
「ったく。今日は食うなよ」
そう言い、古城が家から出ると家の前には雪菜が立っていた。
「え?」
「どこに行くんですか?先輩」
雪菜はシャワーをしている途中だったかのような有様だった。
「まさか、お前ついてくんの?」
「もちろん監視役ですから」
「いや、ちょっとそこまで行ってくるだけだからな、監視とかいらないよ?」
「いや、でもしかし」
「まて、あとシャワーしてたのなら俺の都合で止めるな」
「それでは、監視が……」
「じゃ、そういう事だからついてくんなよ!!」
雪菜は納得していないようだったが、古城はそんな場合ではなく倒れそうだったため、走ってその場から逃げた。
「クソッあの頑固野郎、俺は腹が減って倒れそうなんだよ」
そう言いつつ古城は家の近くにある裏路地に向かった。
そこには、シワだらけの白衣姿の女が立っていた。
「んふ〜古城君、今日は遅かったわね」
「あぁちょっとな、頑固な奴が来てな……」
「まぁいいわ、はいこれ今週分の血ね」
女はそう言いつつ、古城に血の入ったものを渡した。
「ありがと、忙しいのに済まない」
「いいわよ、なんたって息子のためなんだからね」
このシワだらけの白衣を着ている女性は古城と凪沙の母親の暁深森だ。MARに務めており研究の合間を縫って、古城に血を届けているのだ。
その時、絃神島の貨物置き場の方から、爆発音が聞こえた。
「じゃあな、体に気をつけてな」
「ありがと」
古城は、母親が離れて行った後爆発音の聞こえた方を向き、獰猛に笑った。
古城と凪沙の母親が原作より優しくなってるような気がする。次回やっと戦闘に入れるかも。