ログ・ホライズン 〜見敵決殺の冒険者〜(改稿中)   作:業炎

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9殺目 弟子

にゃん太とセララは困惑していた。

 

 

 

 

 

ススキノを離れ、海峡を飛び越え、日が暮れる頃に野営の準備を始めた遠征組。役割を決めて、にゃん太とセララのススキノ組は薪集め、シロエらアキバ組はテントの設営を担う事となっていた。

 

 

それで森の中に入ったにゃん太とセララ。冒険者の優れた運動能力を活かしてある程度薪を瞬時に集め、さあ戻ろうというところでセララが発見したとあるもの。それが2人に冒頭のような感情を齎した。

 

 

其処に倒れているのは人。それもこの世界に似合わない紺色ジャージに短パン。ジャージの所為で上半身は余り分からないが、短パンから伸びるスラリとした足は同性のセララが思わず喉を鳴らす程。頭にキャップを被り後頭部から金髪ポニーテールが覗いている。

 

「さてはて、どうしますかにゃ〜?」

 

顎をスリスリしながら暢気なことを口にするにゃん太。しかし別に助けたくない訳ではなく、セララの自主性を育てるべくわざと言っているのだ。彼は普段から心優しく、他人を助ける大人な余裕を持っている。

 

「助けましょう!」

 

慌てて駆けていくセララを目を細めながら嬉しげに眺めるにゃん太。そして次の瞬間に聞こえて来るであろう言葉を思うといつも以上に口角が上がるのを自覚する。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「うぅ〜……………」

 

セララが女性を抱き起こすとその顔の細り方は尋常ではなかった。誇張された様な、漫画などで見られるやつれきって干からびた細顔。そして同時に鳴るお腹の音。セララは目を丸くしており、にゃん太に至っては声を上げて「にゃはははっ」と笑っている。

 

 

「お腹、すいた……………」

 

 

セララは思わずずっこけそうになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「アカツキ」

 

「これだな、主君」

 

「ん」

 

ハサンは頷き、アカツキから金槌を受け取り杭を叩く。キンキンと金属の打ち合う音が山の中に響く。

 

「アカツキ」

 

「ここか?」

 

「そうそう、しっかり押さえておいて」

 

今度はアカツキが天幕用の布の端を引っ張って余裕を持たせ、ハサンがその端に付いた二本の紐を持って杭に結びつける。そうする事で幕が地面にしっかりと固定される。

 

 

その様子を見ていたシロエと直継は表情は苦笑を浮かべつつ、内心ではウズウズしていた。まるで初心な友人をからかいたくなる様な、そんな感情がふつふつと湧いて来る。

 

 

ハサンとアカツキは口に出す事なく必要としている物を理解している。当然選択肢が少ない分だけ分かりやすくはあるが、それでも数週間程度しか旅をしていないというのに素晴らしい連携である。現に1人でするより3倍近い効率で進んでいる。

 

 

2人はアカツキがハサンにほの字な事を当然把握している。それに、文句をつける気など全くない。彼女くらいの年齢の女性が恋に生きる気持ちも理解出来るし、自分達が彼女の立場で異性に手を差し伸べられたらキュンとする気持ちも分かる。

 

 

しかしそれとからかう事は別である。自分達の前でイチャイチャされると口の中が甘ったるくて仕方がないし、壁を殴りたくもなる。その解消法として当事者をからかう事を誰が責めるだろうか?いや、ない(反語)。それにアカツキのような生真面目少女をからかうのは面白そうだという邪の考えも微かの存在している。

 

「ふぅ………これでオーケーかな?」

 

「ああ、バッチリだ主君」

 

グッグッと布や紐の張り具合を確認し、2人ともグーサインで合図。既に小テントの方を張り終えたシロエ達の所に歩み寄る。

 

「お疲れ様……」

 

「お疲れ〜……」

 

椅子代わりの岩に腰掛けるシロエと直継。その表情はどこか暗い。その表情に何事かとハサンは思考し、その表情の意味を理解した。

 

「…………飯か」

 

「ああ…………」

 

絶望し切った顔の直継と同情するように肩をぽんぽんするハサン。シロエもアカツキも大袈裟だと言いたげだったが、否定出来ないのか声には出さなかった。

 

「皆さーん!」

 

「少しこちらに来るにゃ」

 

セララとにゃん太の声が聞こえて来る。同時に漂って来る、香草と肉の脂が焼ける表し難い極上の香りに肉の焼ける音。鼻を犬ばりにヒクつかせ、耳をこれでもかと研ぎ澄まし、歩き出す。その動きが亡者のようにトロトロした動きから駆け足に変わるのはそう掛からなかった。

 

「おお〜!?」

 

「これはっ!」

 

焚き火のそばで焼かれた串焼肉。それだけで3名の意識は全てそこに持っていかれる。しかしハサンだけは既にそこに座して必死に肉を食らう金髪少女に視線を奪われる。別に惚れたとかそういう理由ではない。

 

「……………!?」

 

嘘だろ?という言葉も出ない程驚愕している。

 

「主君?」

 

既に焚き火の側に腰を下ろすシロエと直継とは対照的にアカツキは主人であるハサンが固まっている事に気付き手を引く。しかし一歩として動かない。

 

「あれ?君は?」

「そういやお前誰だ?」

 

「へっ?…………………!?」

 

今更その少女の存在に気づいた2人は揃って疑問を投げかける。それに対して肉をガツガツ食っていた少女は漸く新たにやってきた4名の存在に気付き、そしてその中の1人を見た瞬間、目が驚愕の色に染まる。

 

「しっ、師しょぶぅぅぅ!?」

 

「「「「えええええええっ!?」」」」

 

気づけば金髪少女の側にハサンは立っており、何か言おうとした彼女の脳天に全力の拳骨を落とした。痛そう、そんな小学生並みの感想は誰も浮かばなかった。冒険者の腕力は馬鹿みたいに高い。全力で殴るとか何考えてんだと言いたくなる。もしもこれが平穏(ギャグ)パートで無ければダメージで即死なんて笑えない事になっていたかも知れない。

 

「何やってんだ、馬鹿弟子?」

 

「「「「弟子!?」」」」

 

「ほほーっ」

 

4人の声がこだまする。ただ1人にゃん太の納得するような呟きが妙に浮いて聞こえた。

 

 




という事でオリジナル要素一つ目、ハサンの弟子こと某X=さんです。キャラは本家より抑え気味で行く予定ですが、暴走は多少してもらいます。それも、ハサンのキチガイっぷりが頭角を出し始めたら薄れる程度ですけど(遠い目)


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