★19を同時に投稿しておりますので、そちらを見てからご覧になって下さい。
『ジョン・スミスさんが失踪して今年で三年になります。騎士道協会は彼の捜索と遺――』
彼女はラジオの電源を切って、バッグにテントや食料、ロープ等を詰め込んで、旅に出る新人トレーナーのように何度も確認した。
地元部族の協力と相棒のポケモンのお陰で、時間は掛かったが遂に「彼」の居場所を探り当てる事が出来た。
きのみの木に囲まれた巨人の家に住む者がいるらしい。そこはサン族の間では悪魔の谷と呼ばれる場所で、遠くから見ることが出来ても決して近づくことが出来ないらしい。
侵入者を拒む暴風、恐ろしい化物、百の生贄で開く門。サン族の語る言葉はどれも信じ難い伝承であったが、それを恐れて踏み止まるオンナではない。
旅に危険はつきものなのだ。ベテランのトレーナーである彼女はそれをよく理解していた。
事実、暴風はポケモンが飛行できないほどではなかったし、化物は断層の模様で、生贄の門というのは人の頭程の大きさのきのみがなる木が道なりに生えているだけだった。
ペンペン草も生えない場所だと言うのに、そこだけは下草の生い茂る豊かな森だった。しかし巧妙に隠されており、そこは決して晴れることのない場所だという。
そして、森を抜けた先には文字通りの巨人の家があったのだ。
――コンコン。
陰気な午後の事だった。誰かが唐突に我が家のドアを叩く。
(来客? まさか?)
俺は膝の上に座るサンダースを床に降ろし、ゆっくりとした足取りで扉に向かった。
俺の専らの生活は「借りた」本を読んで、実ったきのみを食べる無に等しいものだ。それが三年程続いている。
外に出ることはなく、此処に辿り着くには一番近い村からでも一週間以上は掛かるし、彼らは脅している。
なのでポケモンのイタズラかと思い、扉を開けた。
「……ああ、懐かしい顔だ。疲れただろう、きのみジュースを振る舞うよ」
突然の来客に面食らったが、三年分の歳を取った彼女を家の中に招待する。拒絶はしない。俺は何も変わらなかったが、どうやら彼女はとても変わっているようだ。
「混乱している? それは知らん」
彼女は怒っているような、泣いているような、狸に化かされたような、どうとでも解釈できる顔をしていた。俺の顔を不躾に触るや否や、問いを投げ掛けてきた。
余程気になるようだ、ここまで追って来る程度に。
「……話すと長くなる。簡単に言えば、俺は自分の罪から逃げ出した」
彼女はどうやら俺に話させたいらしい。
「俺の「騎士道」は、人と交わることがない……」
自嘲気味に言った言葉。俺の行いを知る彼女なら、その意味は十分に理解できるはずだ。
「よく分かるだろう? ■■■」
呼び慣れた彼女の名前を、俺は囁いた。
皆さん、投稿間隔が空いてしまい申し訳ありませんでした。
19は私の中でとても難産した部分で、ゲーチスをOOしたらNはどのような反応をするのか考えていたら随分と経っていました。半分くらい嘘ですが。
唐突な終わりです。ライチさんEND(初期案)にして「騎士道はまだまだ続く!」とか、「アローラの農業を巨大資本で乗っ取る」みたいな話を書きたかったんですが、面白くないし終着点が見えないと思ったのでやめました。
「誰々ルート」みたいなのもアリ、とは思ったんですが、同じような会話するんでやめました。
最後の唐突な懺悔は、皆さんが感じていた初期とのギャップですね(後付)。感想で似たようなこと言ってた人がいましたが、エイジの考えとポケモン世界の人達との考えはワールドギャップがあるので根本的に噛み合わないんですよ。
その自覚を、自分が気に入っているキャラクターを殺さなくてならないという状況でやっと認識して、逃げ出したわけです。
あとは調子乗ってパロネタ入れまくって申し訳ないです。次回作以降は気を付けます