名探偵コナン×ペルソナ5   作:PrimeBlue

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FILE.33 時計じかけの摩天楼 七

 パラパラと小さな瓦礫屑が床を鳴らす中、倒れ込んでいた梓はきつく閉じた瞼を開けた。

 

「……だ、大丈夫? ラヴェちゃん」

「……はい、大丈夫です」

 

 梓は自分の下にいるラヴェンツァの安否を確認し、特に怪我がないことにほっと心の中で胸を撫で下ろす。

 床に手を突き、上半身を起こす梓。ふと、瓦礫の落ちてきた背後を振り返ってみる。

 

 瓦礫は粉々に砕け、まるで梓達を避けていったかのように辺りに散らばっていた。

 

 その光景を見て、梓は首を傾げた。落ちてきた瓦礫は、確かに複数の人間を容易に潰せるほどの大きさだったのだ。ということは、梓達の元へ落下してくる前に砕けて四散したということである。だが、自然にそんなことが起こるとは考えにくい。

 梓は自分の下から退いて立ち上がり服に付いた瓦礫屑をはたき落としているラヴェンツァを見やる。瓦礫屑を落とし終えた彼女は顔を上げたところで何かを見つけたのか、その大きな瞳を見開かせた。

 

「あっ……」

 

 見ると、そこには四散した瓦礫に潰された紙袋があった。ここに来た目的――暁のために買ったチョコレートが入っていた紙袋だ。ラヴェンツァはすぐさま瓦礫をどかそうとしたが、非力な少女の力ではそれも徒労に終わってしまう。

 

 ラヴェンツァの人形のように綺麗な顔に影が差す。梓はそんな彼女の頭を撫でて、励ました。

 そうだ。こんな子供に何ができるというのか。魔法でも使えなければ無理に決まっている。梓は頭を横に振り、くだらない疑惑を放り捨てた。

 

「痛っ」

 

 そこで、梓は痛みに声を漏らす。どうやら、瓦礫には当たらなかったものの足をくじいてしまったようだ。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

 少しばかり離れた場所にいた人達が声を掛けてくる。非常口の扉をこじ開けようとしていた人達も扉から離れて梓達の元へ駆け寄ろうとした。

 刹那、非常口の扉が向こう側から強い衝撃を受け、枠から外れた。厚みのある扉は重力に従ってゆっくりと傾き、バタンと大きな音を鳴らして床に倒れる。

 

「…………や、やった! 開いたぞ!」

 

 一瞬の間を置いて状況を理解した人々は、唯一の出口が解放されたことに歓喜し、我先にと非常口から外を目指して駆け出し始めた。

 その先、非常口の向こうには、レスキュー隊の隊員達が驚きの顔で立っていた。

 

「レスキュー隊が扉を開けてくれたのか!」

「ありがとうございます! 本当にありがとう!」

「い、いえ、自分達が来た時には既に扉は開いていたのですが……」

 

 感謝の声を上げる人達に対して、隊員達は困惑気味にそう答えている。が、助けられた人達はその言葉を耳に入れることはなかった。

 

「私達も行きましょう。ラヴェちゃん」

 

 遅れて、梓もラヴェンツァの手を取って非常口から出ようとする。くじいた足が痛むのか、足を引きずっている。

 非常口を抜けた先で、ラヴェンツァは瓦礫の影から出てきた黒い影を見つけた。モルガナだ。

 

「まあ、モナちゃん! どうしてここに!?」

 

 梓も猫の姿のモルガナを見つけて、驚きの声を上げる。

 

「……暁君がレスキュー隊の人達を呼んでくれたのかな?」

 

 モルガナを抱き上げながら、そう口にする梓。

 ラヴェンツァは目を閉じ、フッっと笑みを浮かべるのであった。

 

 そこへ、レスキュー隊の話し声が聞こえてくる。

 

「‥…五階の方に向かったチームから連絡はあったか?」

「はい、たった今。また新たに天井が崩れた影響で、予定のルートからの救助は難しくなったと。我々非常口側からの方が早く到着できるかもしれません」

「よし、二名はこの人達を外まで誘導しろ。それ以外は私と一緒にこのまま瓦礫を除去しながら上へ向かう」

 

 どうやら、まだ五階の方に閉じ込められた人達の救助はできていないらしい。暁の話では、その中に蘭もいるはずだ。だが、現場に到着するまでもうしばらく時間がかかる見込みのようである。

 ラヴェンツァはモルガナに目線を向けたが、彼は首を横に振った。ペルソナを使えば力押しでどうにかできるが、そうすると派手に瓦礫を崩すこととなる。自分はおろか、レスキュー隊も危険に晒すことになってしまう。ここからは、専門家であるレスキュー隊に頼る他ないし、その方が確実だろう。

 

 

 

 

 誘導を担当する隊員の後に付いていき、ラヴェンツァ達はようやく外へと脱出を果たすことができた。

 

「おーい!」

 

 一人一人、怪我を負っている人を優先的に救急隊員達が担架を使って運んでいく中、ラヴェンツァ達に声をかける者が現れる。それは、先に脱出していた快斗と青子であった。梓は幼児化した快斗の姿しか見たことがないので、小首を傾げている。

 

「ラヴェちゃん、知り合い?」

「ええ、まあ」

 

 快斗は青子の手を握ったままラヴェンツァ達の元まで駆け寄ってきて言葉を交わす。彼らが脱出に成功した後で先程のレスキュー隊が話していたように再び天井が崩れ、五階へのルートが完全に塞がれてしまったらしい。間一髪だったのだ。

 

「しかし、嬢ちゃんも閉じ込められてたなんてな」

「あれ、貴方確か……快斗、この子のこと知ってるの?」

「まあ、ダチの妹みたいなモンっていうか……それより――」

 

 快斗はラヴェンツァの足元にいるモルガナを見て、その顔付きを真剣な物にさせる。ラヴェンツァもモルガナもここにいるということは、今暁は一人で戦っているのだ。

 

「梓。私達は先にポアロへ帰ります」

 

 モルガナが抱えられていたラヴェンツァの腕から飛び降り、ラヴェンツァ自身もその後を追い始める。ポアロへ帰ると言っているが、恐らく暁の元へ向かうつもりなのだ。

 

「え? ま、待ってラヴェちゃん!」

 

 もちろん、梓はそれを止めようとする。

 

「貴方は足をくじいているのですから、病院へ連れて行ってもらった方がいいです。私達は特に怪我はしてませんし、大丈夫ですよ」

「でも……」

 

 それでも渋る梓にラヴェンツァは振り返り、目を細めて微笑んだ。

 

「今日はありがとうございます。バレンタインのチョコレートは結局手に入りませんでしたが、とても有意義な時間を過ごせました」

 

 そう礼を言うラヴェンツァの微笑みは、子供のそれではなかった。まるで自分より年上、いや、遥か高みから見守っている女神か慈母のような、そんな気持ちにさせるような笑みであった。

 

「では……」

「――待って! ラヴェちゃん!」

 

 そのまま駆け出そうとするラヴェンツァを、梓は再び止めた。今度は引き留めようとしているわけではないと察したラヴェンツァが足を止めると、梓は鞄から何かを取り出しそれをラヴェンツァに手渡した。

 手渡されたそれを見て、ラヴェンツァは目を見開く。

 

「これは……ありがとうございます」

 

 そして、ラヴェンツァとモルガナは今度こそ走り出した。

 

 

 

 

 暁の元へと向かっていったモルガナとラヴェンツァを見て、快斗はそわそわと落ち着きのない表情を隠せないでいた。いてもたってもいられないというのが見て分かるほどである。

 

「……行っていいよ」

 

 そんな快斗を見てか、青子が口を開いた。快斗は予想外の青子の言葉に「え?」と呆けた声を出す。

 

「快斗がそういう顔している時はいつもそうだから。行かなきゃいけないところがあるんでしょ?」

 

 そんな青子の言葉に、快斗はしばし俯いて考える。

 そして、意を決したかのように顔を上げて青子の肩に両手を置いた。

 

「青子、オレ……多分このまましばらく戻ってこれないと思う」

 

 驚く青子に、母親のいるラスベガスでマジックの修行をするため、学校を休学するつもりだと告げる快斗。

 もちろん嘘だ。自分は嘘を吐き慣れている。だから問題ない。

 

 だが、吐き慣れているはずなのに、その胸はひどく傷んだ。

 

「――だから、待っててほしいんだ。他の誰でもない、お前に」

 

 それでも、この気持ちだけは本物だ。快斗はそれを言葉に乗せて伝えた。

 長い付き合いにも関わらず、今までに見たことのないような真剣な眼差しでそう言う快斗に、青子は胸の高鳴りを覚えながらもこくりと頷く。

 快斗はそれに笑みを浮かべ、青子の肩から両手を離す。

 

「絶対待ってろよ! オレがいねーと、オメー危なかっしくてしょうがねーからな!」

「ちょっと、危なっかしいって何よ!」

 

 と、戯けた調子に戻って煽る快斗に青子は憤慨する。そんな青子を笑いつつ、「じゃあな!」と快斗は背を向けて走り出した。いつもと同じように。

 

(これでいい。これでいいんだ)

 

 快斗は何度も自分をそう納得させながら、目的の場所を目指して全力疾走する。モルガナ達から場所は聞いていないが、快斗の頭脳を持ってすれば、かの高校生探偵のように場所を割り出すことは十分可能だ。

 

 ――今行くぜ、暁!

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 上空からビルのような形をした砲弾の雨が、柱を立てるようにジョーカーを襲う。

 それらを避けきったところで、今度は正面から放たれたそれに直撃してしまったジョーカーは、そのまま塔屋の壁に縫い付けられる勢いで叩きつけられてしまった。

 生憎、こういった物理的遠距離攻撃に対して耐性を持ったペルソナを今は召喚できない。血反吐を吐き、壁から崩れ落ちるジョーカー。

 

 そんな彼をつまらなそうに眺めるのは、悪魔としての身体を顕現させた森谷教授。

 その見た目は、どこからどう見ても建物のそれであった。教授の愛して止まないシンメトリー様式の城で、イギリスの古城がモデルだろうか。その中心に教授の顔の形がポリゴン調――まるでどこかの邪教の館の主のようだ――で浮かび上がっており、口に当たる所が正面玄関となっている。その後ろ、左右には一対のビルの形をしたオブジェが浮かび上がっていた。

 

 サイズからして本物と対比するとミニチュア同然であるが、全身鎧と言ってもいいその身体に傷を負わせるのは骨が折れる。

 しかも、苦労してダメージを与えても、見る見る内に破損した箇所が修復していく。まるで自らの理想である左右対称(シンメトリー)が崩れるのを拒むかのように。そのおかげで、相手は今だ無傷にも関わらずジョーカーは満身創痍状態だ。疑似認知空間と大差はないこの空間では、イシュタルのような回復に特化したペルソナを召喚できても力を存分に振るえず、体勢を立て直すのは難しい。

 

「つまらん。心の怪盗と聞いてどんなものかと期待したものだが、所詮はこの程度か。これでは話と違う。私の平崎氏ニュータウンの計画を台無しにした工藤新一の方がまだ楽しめたよ」

 

 膝を突きながらも教授を力強く睨みつけるジョーカー。しかし、絶対的優位な立場にある教授にとってはどこ吹く風である。

 教授の背後に控えていたビルのオブジェの一つがふわりと上昇し、まるで標準を合わせるかのようにその先端がジョーカーに向けられる。

 

「世間を騒がせた心の怪盗の最後がこんなあっけないものとは……怪盗も人の子ということか。そろそろ終わりにさせてもらおう」

 

 オブジェが砲弾となるべく、急速な回転が加わる。 

 

「だが、私にも慈悲はある。安心したまえ。お仲間もすぐに同じ運命を辿らせよう……それでは、さらばだ」

 

 弾丸が、発射された。超高速で放たれたそれは、標的であるジョーカーを撃ち殺さんと風を切り――

 

 

 

 ――横合いから飛んできた何かによって、真っ二つに分断された。

 

 

 

「何ッ!?」

 

 教授がその何かが飛んできた先を見やる。

 上空――疎らな雪が降る中、それに混じるかのように宙を漂う白い影。

 

「怪盗キッド……!?」

 

 どうやら、教授のビル砲弾を真っ二つにしたのは彼のペルソナによるもののようだ。そのままキッドはハンググライダーから手を放し、ジョーカーの前に颯爽と降り立った。

 

「ようジョーカー。随分苦戦してるみてーじゃねえか?」

 

 軽口を言うキッドにジョーカーはフッと笑みを浮かべ、痛みに耐えつつもゆっくりと立ち上がる。

 

 ――お前こそ遅かったな。もう少し遅ければ、一人で片付けてやるところだった。

 

 その返事にキッドは「それだけ元気ならまだ大丈夫そうだな」と笑う。そして、白と黒の衣装を纏った二人は並んで教授に対峙する。

 予想外の助っ人にさしもの教授も驚いたが、すぐに気を取り直してその正面玄関――口を動かした。

 

「まさか、キッドと手を組んでいたとは。宝石が専門なのではなかったのかね?」

 

 教授の姿が城そのものとなっていることに驚きつつも、キッドは不敵に口角を歪める。

 

「もちろん、盗ませていただきますよ。貴方のその歪んだ建築精神……この世で最も価値のない宝石をね」

 

 石で出来た眉を顰める教授。

 さすがキッド。いつも警察を相手に鬼ごっこをしているだけあって、人を煽ることに関しても一流だ。

 

「よかろう。ならば、今宵貴様らの怪盗人生に終止符を打たさせてもらおう。未来の設計図に、貴様らのような非対称(アシンメトリー)な存在は必要ないのだからな!」

 

 教授の歪みによる圧が増大したと同時に、彼の背後に控えていた一対のビル砲弾が二人目掛けて放たれる。直撃する直前で、二人共その場に伏せることでそれを避けた。

 間髪入れず、教授の背後に再び装填されたビル砲弾が続けざまに放たれる。ジョーカーとキッドはそれぞれ軽快な動きで砲弾の雨を避けつつ、言葉を交わす。

 

「それで、何も無抵抗に攻撃を受け続けてたわけじゃないだろ? 見た感じ奴のあのふざけた身体は並大抵の攻撃じゃ歯が立ちそうにない。何か打開策はあるのか?」

 

 キッドの言葉にジョーカーが答える。奴の身体にダメージを与えることができても、すぐに再生されてしまう。だが、奴は身体が崩れて左右対称(シンメトリー)の形状を保てなくなることをひどく拒んでいる様子であった。一度に複数の箇所を攻撃して左右対称(シンメトリー)を崩せば、再生を阻害させられるかもしれない。

 疑似認知空間内である以上、大規模な魔法は行使し辛い。故に、一人で一度に攻撃できる箇所は限られてくる。しかし、今ジョーカーは一人ではない。

 

「なるほど。オレ達二人でそれぞれ別の箇所を攻撃するってことだな」

 

 頷いて答えるジョーカー。ただ、それだけならいつも通りだ。今回のこれは、それぞれの攻撃をほぼ同時に行わなければならない。しかし、教授は冷静沈着で用意周到な男だ。下手に攻撃を仕掛けても対策されてしまいかねない。できるだけ相手の気を逸らしつつ攻撃に出たい。

 そこまで言うと、ジョーカーはキッドに耳打ちした。これから行う作戦を聞き終えると、キッドはニヤリと得意げに笑う。

 

「任せな。人を真似ることに関しては自信があるからな」

 

 

「相談は終わりかな?」

 

 教授が言葉を交わす二人の頭上目掛けて、上空からビル砲弾を叩きつける。二人はそれぞれ反対の方角に飛び退いて避けた。丁度、教授から見て左側にジョーカー。右側にキッドがいる状態だ。

 

 先程まで避けることに専念していた二人が纏う空気が変わったことに、教授は警戒心を強める。

 だが、どんな攻撃だろうと、この左右対称(シンメトリー)による防御壁を越えられることはない。私の芸術が怪盗などという存在に負けるはずがないのだから。

 

 

 

 ――ショータイムだ!

 

 

 

 掛け声と共に、二人が同時に駆け出し始めた。ジョーカーは右足から、キッドは左足から。

 教授はそれを迎え撃たんと身構えるが、徐々にその顔を驚愕の色に染め始める。

 

 

 ジョーカーとキッド、彼らはそれぞれ左右対称の動きをしながら向かってきているのだ。

 途中で前転宙返りなどの体操選手を思い浮かばせるアクロバティックな技を繰り出しつつ。

 

 

 もちろん、教授は戸惑いつつもビル砲弾による迎撃自体を行っている。しかし、それらも同じ動きで避けられてしまうのだ。二人を別のタイミングで攻撃すればいいのだろうが、二人の左右対称(シンメトリー)な動きに魅せられてしまっている教授の身体は単調な攻撃しかできない状態異常(バッドステータス)を引き起こしていた。

 彼らの怪盗衣装の見た目は教授が先ほど言ったように非対称(アシンメトリー)。しかし、色的な観点から見れば対照色だ。故に、それぞれがお互いの存在を引き立てているのである。

 

 気づけば、二人は教授の眼前にまで迫ってきていた。

 

「……ッ!」

 

 教授は渾身の力で身体に喝を入れて体勢を整える。そして、口を大きく開いて奥の手を起動させた。パワーが口内に収束し、光が溢れ始め瞬く間に広がっていく。

 今までその場を全く動かず、遠距離攻撃に徹底していた教授。それは何も、城という不動の身体に変化したからではない。奥の手である口からの光線攻撃を行うためにパワーを溜めていたのだ。

 だが、ジョーカーとキッドは構わず突き進む。

 

「馬鹿め! 喰らうがいい!!」

 

 教授の口がさらに開かれ、二人の身体が死の光に照らされる。

 

 

 ――その瞬間、教授の身体を魔法による攻撃が襲った。

 光の波動と、風の衝撃だ。

 

 

「なっ……ぐあぁあぁ!?」

 

 野太い悲鳴を上げて悶える教授。

 ベルベット(ラヴェンツァ)モナ(モルガナ)。今まで物陰に隠れていた二人が、魔法を放ったのだ。疑似認知空間上でも強敵に対して威力が出せるよう、機会を伺いながら魔力を集中させていたのである。そう、教授と同じように。

 魔法攻撃が教授の防御壁を貫くことはなかったが、それでも体勢を崩させるには十分な威力を発揮した。この絶好のタイミングを、ジョーカーとキッドの二人が見逃す理由はない。

 

「行くぞ! ジョーカー!」

 

 キッドの掛け声に、ジョーカーは頷いて仮面に手を添える。

 

 

 

 ア ル セ ー ヌ !

 ラ ウ ー ル !

 

 

 

 黒と白の怪盗紳士が現れ、漆黒の羽翼と純白の機翼が舞う。

 それぞれが愛銃を構え、その銃口を標的(ターゲット)の両目に叩きつける。ゼロ距離からの射撃。それは下手な物理攻撃よりも威力を発揮する、まさに一撃必殺(ワンショットキル)

 

 

 重なり合った銃声が、米花シティビルの騒ぎの影で人知れず鳴り響いた――――

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 ……ッ!?

 

 米花シティビル、その五階。

 米花シネマ1のロビーへと繋がる扉前で、江戸川コナンはハッと顔を上げた。そして、辺りを落ち着かない様子で見回す。

 

「……新一! ねえ、新一! どうしたの?」

 

 変形して開かなくなった扉を隔てて、ロビー側にいる蘭の声が届く。コナンは蝶ネクタイ型変声機を介して答える。

 

「なあ、今どこかから銃声が……」

「え?」

「……いや、何でもない」

 

 コナンは頭を横に振り、気のせいだと自分に言い聞かせた。今はそれどころではないのだから。

 

 そう、コナンと蘭は森谷教授が残した最後の爆弾の解体を試みていた。

 コナンが到着した時には既に残り四十分、そして今現在はたった残り五分の状態だ。だが、切らなければならないコードは後一本だけ。十分間に合う。

 

「よし。後は黒いコードを切れば完了だ」

「分かった。黒いコードね?」

 

 蘭は頷き、ハサミで言われた通り黒いコードを切った。

 

 額に流れる汗を拭い、緊張を抜くように大きく息を吐くコナン。

 無事に済んで良かった。もうこれ以上できることはないだろう。コナンが蘭と爆弾の解体を行っている最中、新たに天井が崩れた影響で上はおろか下へと続く階段も封鎖されてしまっている。故に自力での脱出は不可能。後はレスキュー隊の到着を待つ他ない。

 

 

 

「……新一。黒いコード切ったけど、止まんないよ? タイマー」

 

 

 

「な、何だって!?」

 

 コナンは驚愕に顔を染めた。

 蘭によると、まだ赤と青のコードが残っているらしい。クソッと思わず心の中で悪態を吐くコナン。教授は自分を嵌めるために、わざわざ爆弾の設計図を手渡したのだ。二本のコードを書かずにおいた設計図を。

 

「どうする? 二本共切っちゃおうか?」

 

 そんなことを言う蘭にコナンは「バカヤロウッ!」と声を上げる。恐らく、二本の内の一本はブービートラップ。切った瞬間に起爆させてしまうことになるだろう。

 

(どっちを切ればいい? どっちを……!)

 

 何のヒントもないこの状況では、どちらが正解か推測のしようがない。それでも、焦りで普段のように回らない頭を必死に働かせて考えるコナン。そうしている内にも、タイマーリミットは刻一刻と近づいていく。残りは、一分。

 

「……ねえ、新一」

 

 蘭に声をかけられ、コナンは慌てて変声機を手に返事をする。

 

「ごめんね、こんなことに巻き込んじゃって。私のせいだよね? 一人で舞い上がって、新一のこと映画に誘ったりしなければ…… 」

 

 その自嘲めいた蘭の言葉からは、諦めの感情が聴き取れた。

 そして、それはコナン――新一にも伝わる。張り詰めていた感覚が、消えていく。

 

「お前のせいじゃねえよ……」

 

 新一の身体から力が抜けてその場にドサリと座り込んだ。

 後数分と経たずに爆弾が爆発してしまうという状況にも関わらず、扉を隔てて背中合わせになった二人の心はとても穏やかな気持ちで包まれていた。

 

「……なあ、アレは持ってきてるのか?」

 

 新一の問いかけに蘭は「アレって?」と聞き返す。

 

「アレだよ、アレ。えっと…その……」

 

 何やら照れ臭そうに口を濁してはっきりしない新一。

 

「もしかして……チョコレート?」

「そうそうソレ!」

 

 それならそうとさっさと言って欲しいものである。蘭は素直じゃない新一にくすりと笑みを浮かべた。

 

「オメーが作ったのか?」

「まあ、一応……」

「甘いのか?」

 

 矢継ぎ早に質問してくる新一に戸惑いつつも、答える蘭。

 

「甘いけど……新一、コーヒー好きでしょ? だからちょっとだけ苦めにしてあるの」

 

 手間暇かけて作ってくれたようだ。蘭の返事を聞いて「そっか……」と呟く新一。

 そして、意を決したかのように顔を上げて口を開いた。 

 

「……蘭。好きなコード、切れよ」

「ええっ!?」

 

 驚いて思わず扉の方を振り向く蘭。

 

「でも、もし間違ってたら……」

「構やしねえよ。どうせそのままでも爆発しちまうんだ。だったら、一か八か運試しといこうぜ。オメー、昔からくじ運は良いだろ?」

「新一……」

「心配すんな。オメーが切るまでずーっとここにいるから……死ぬ時は一緒だぜ」

 

 新一の言葉を聞いた蘭はこくりと頷き、はさみを手に取った。

 残り三分ほどのタイマーを映す爆弾に目を落とす。

 

 

 

「もし死んじまったらさ……あの世でそのチョコ、食わせてくれよ」

 

 

 

 続けてのその言葉に蘭がハッと顔を上げたその瞬間、非常口の扉周辺の天井が崩れ始める。

 新一は咄嗟に飛び退いて瓦礫を躱し、蘭は瓦礫から逃れるために爆弾を抱えて扉から離れた。ロビー側からは完全に扉に近づけなくなってしまった。

 

「おい、蘭! 返事しろ!」

 

 新一はすぐさま扉に駆け寄り、蘭に声をかける。しかし、反応はない。スマホで連絡が取れないかとポケットを探る。

 それと同時に、轟音と共に下の階から積み重なった瓦礫を除去してレスキュー隊が現れた。

 

「おい、子供だ! 生存者を発見したぞ!」

 

 隊員達が新一――コナンを見て喜び騒ぐ。隊員の一人がそのままコナンを抱えようとする。

 

「待って! まだ中に人がいるんだ!」

 

 隊員の腕を払いながら訴えるコナンの言葉を聞いたリーダーらしき隊員が他の隊員に削岩機の準備を指示する。

 それを待っている間もその隊員が扉に体当たりしてみるが、歪んだ扉は大人の力を持ってしてもやはり開かない。助けが目の前まで来ているというのに、無情にも時間は過ぎていく。

 扉に手を突いた隊員が、溜息と共に言葉を零した。

 

「今日は家族と家で映画を見る約束をしてたってのに、この分じゃ帰れそうもないな……」

 

 隊員の言葉を耳にしたコナンの頭に、閃光が過ぎる。

 

 ――――映画?

 

 

 

『私、今度ここで新一と映画を見る約束してるんです! 赤い糸の伝説って映画なんですけど、その日はラッキーカラーも赤だからピッタリだと思って!』

 

 

 

 ……ヤバイッ!!

 

 その時、コナン達のいる階段室側の天井が完全に崩れ始めた。コナンは隊員に慌てて抱え上げられる。それを振り解こうとするが、大人の力には適わない。

 

「蘭! 赤を切るんじゃねぇ! 青を、青を切れぇ!」

 

 そんなコナンの必死な声も届かぬまま、残り十秒。蘭は一本のコードにはさみを向け……

 

 

 

 ――――切った。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 両の目を潰された森谷教授は野太い苦痛の悲鳴を上げた。

 城壁が崩れるようにして教授の悪魔としての身体が掻き消え、入れ替わるようにして人間の身体に戻った教授が倒れ伏す。

 

「この私が、こんなコソ泥如きに……ッ!」

 

 床を這い呻っている教授の元に、暁が静かに歩み寄る。キッドにベルベット、モナもそれに続く。

 諦めて爆弾を解除しろ。ジョーカーがそう要求する。

 

「爆弾……? フフッ、爆弾か……」

 

 ジョーカーの要求を聞いた教授は、クツクツと笑い声を上げ始めた。

 

「何がおかしいんだ?」

 

 眉を顰めて問うキッド。

 

「……爆弾は解除できんよ。アレは遠隔操作できない設計になっているからな」

 

 ほくそ笑みながらそう答える教授の胸倉をジョーカーが掴み上げる。

 だったら、今からお前を連れて直接爆弾を解体しに行くまでだ。ジョーカーのその言葉を聞いた教授は、ますます笑みを深くさせた。

 

「無駄だ。もう爆発まで後三十秒しか残っていない」

 

 何だって!? ジョーカー達に衝撃が走る。

 ジョーカーは教授を乱暴に放り、キッドにハンググライダーで米花シティビルに向かえないかと投げかけた。だが、キッドは首を横に振る。ハンググライダーは紐で繋がっていて、既に回収しキッドのマントとして格納されている。しかし、今から向かってもとてもじゃないが間に合わない。

 

 キッドは焦った様子でスマホを取り出して操作し始める。恐らく、まだ米花シティビル近くにいるであろう青子に避難するよう連絡するつもりなのだ。

 梓は? とジョーカーがベルベットに問いかける。

 

「彼女は救急隊によって病院に向かっているはずですが……まだ米花シティビル周辺にいるかもしれません」

 

 それを聞いたジョーカーもスマホを取り出した。

 

「もう遅い。残り五秒だ」

 

 

「四」

 

 

「三」

 

 

「二」

 

 

「一」

 

 

 

 ジョーカー達が一斉に米花シティビルを振り返る。

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 爆発は、一向に起きなかった。

 

 

「そ、そんな馬鹿な……」

 

 教授は顎を外れんばかりに口をあんぐりとさせ、驚愕に震えている。

 どうやら、誰かが爆弾を解除してくれたようである。九死に一生を得た気分だ。

 

「……工藤新一め。私の計画は尽く奴によって台無しにされる運命なのか」

 

 教授の呟きを聞いてジョーカーは驚く。

 工藤新一、蘭の幼馴染である彼が爆弾を解除したということか。そういえば、環状線の爆弾事件でも彼が爆弾の在り処を発見していた。爆弾解除もできるとは、高校生探偵というのはどうしてこうも優秀すぎるきらいがあるのか。

 が、今そのことは後回しだ。ジョーカーは両手を床に突いている教授を見下ろす。

 

 ――確かにお前には芸術家としての才能があったのかもしれない。だが、人々を蔑ろにするような者に芸術家を名乗る資格はない。

 

 芸術とは、芸術家とそれを評価する者の数だけ意義が存在する。実際教授の作品を評価する人がいるからこそ、彼は今の地位に就いている。故に、教授にとっての芸術を否定することは自分都合な文句と言えるだろう。

 だが、ジョーカーは知っている。見る人が希望を見出だせる、そんな絵を描きたいと言った芸術家を。例えおこがましいと言われようとも、ジョーカーが教授を否定する理由はそれで十分であった。

 

「君は、私以外の芸術家を知っているようだな……」

 

 教授はじっとジョーカーの目を見つめ始めた。悪魔体で両眼を潰された影響か、視界は朧げだ。それでも、霞んだ視界の中でジョーカーの紅い瞳ははっきりと見えた。そこから見出だせるのは‥…強い意思の力と、希望の光。

 

「……芸術とは得てして独善的な物。しかし、同時に普遍的でもある。君の知る人物は実に良い芸術家のようだ……私のような失敗作とは違ってね」

 

 そう言うと、教授は懐から何かを取り出した。握られた手の指の間から光が漏れ、ジョーカーを照らした。

 

「持っていくといい。これが君の求めていた物だろう?」

 

 ジョーカーは光り輝くそれを受け取る。光が徐々に収まっていく中、急激にサイズが変わり始めたので慌てて両手で持ち直す。

 それは、もはや幻となった平崎市ニュータウンのジオラマであった。全体を見ると見事なまでに左右対称(シンメトリー)の形となっている街で、そこかしこに英国風の意匠が施されている。完成していれば、観光名所として賑やかになっていたことだろう。

 教授にとってこれこそが夢であり、人生最大の建築だったのだ。彼は建築に愛は必要ないと言っていた。だが、ジョーカーはその街からこれ以上ないほどの建築への愛を感じ取れた。

 

 彼は愛しすぎたのだ。そして、それが分からなくなるほど歪んでしまった。

 

 力が抜けたようにその場に座り込んでいる教授。

 展開されていた疑似認知空間が解けていくのが感じ取れた。やはり、この空間は彼の仕業だったのだろうか。それと同時にジョーカーも元の姿へと変化し、キッドは子供の姿へと戻った。キッド――快斗は溜息を吐いて小さな自分の身体を見ている。

 

「ふう……それで、ソイツがオタカラってヤツか? これで改心は完了したってことでいいんだよな?」

「ああ、その通りだ」

 

 快斗の問いに、モナが答える。後は教授が黒幕だと知っている様子であった警察に任せておけばいいだろう。

 

 ところで、お前は改心に関わっても良かったのか? と暁が快斗に聞く。

 快斗は改心行為自体にそこまで積極的というわけではなかったはずだ。マジックで人の心を楽しませるマジシャンの快斗が、無理矢理その心を盗むなんてことを肯定できないのも無理はない。

 

「おいおい、今更だな。同盟組んでんだ。だったら例え直接力を貸さなくても改心に関わってないなんて言えねえだろ……まあ、確かにこういうやり方で心を盗むのは気乗りしないけどな。そうも言ってられねぇ状況なんだ。とっくに覚悟はできてるさ」

 

 そう言って、快斗は暁の持っているジオラマをひょいっと持ち上げた。

 

「多分もうすぐ警察が来ると思うから、オレは先に帰らせてもらうぜ。オタカラは邪魔になりそうだし、とりあえずこっちで預かっとくからな」

 

 またな、とジオラマを抱えたまま去ろうとする快斗。

 

 お前にしか価値のないチョコレート、大事に食べろよ。

 暁が快斗の背中にそう投げかけると、ズコッと快斗が転げかける。快斗が用意したスピーカーフォンから彼と青子の会話がバッチリ聞こえていたのだ。

 

「オメーな! ……そのスピーカーフォン、さっさと処分しとけよ!」

 

 捨て台詞を吐いて快斗はビルから飛び降りた。そのままビル風を利用して飛び去っていくハンググライダーを、ジョーカーは感謝の念を込めながら見届けるのであった。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 しばらくして、件のオフィスビルから警察に連行される教授の姿が現れる。

 大人しく従う教授に駆けつけた目黒警部は怪訝な顔を隠せない。工藤新一から彼が狡猾な計画犯罪を企てていた人間であると聞いていたからであろう。未だ雪の降る寒空の中、暁達はその様子を物陰から伺っていた。

 

「これで完了だな。正直に言えばバックに誰かいるのか調べたいところだったが……」

 

 モルガナの言葉に暁は頷く。彼の言う通りだが、教授を連れて一時的に身を隠す余裕はなかった。このような重犯罪では面会は無理だし、例えできたとしても職員が付き添いすることになる。少々危険ではあるが快斗に協力してもらって刑務所に忍び込み、連絡手段を手渡すのが最善かもしれない。

 

「……あの」

 

 ふいに、それまで後ろに控えてずっと黙っていたラヴェンツァが口を開いた。暁は彼女の目線の高さに合わせるために腰を下ろし、どうした? と返す。

 

「その、これを……」

 

 そう言って、ラヴェンツァは後ろ手に回していた紙袋を手渡してきた。彼女にしては珍しくまごまごした様子に首を傾げながらも、暁はそれを受け取る。

 中身を見てみると、中にはビニール袋に入った真っ黒な謎の物体が入っていた。これは? と聞く暁に、ラヴェンツァは眉尻を下げる。

 

「メレンゲショコラという物です。梓に協力してもらって作ったのですが……」

「ショコラ? 炭の間違いじゃ――」

 

 モルガナがラヴェンツァに蹴飛ばされる。

 どうやら、この謎の物体はラヴェンツァが暁のために作ったバレンタインチョコレートのようだ。メレンゲショコラと言っているが、とてもじゃないがそうは見えない。彼女の顔からして、失敗してしまったということだろう。

 

「……やはり、失敗作では駄目ですね。それは私の方で処分しておきます」

 

 居た堪れなくなったのか、ラヴェンツァは暁の手から黒い物体の入った袋を取り上げようとする。しかし、暁はそれを腰を上げることで制した。そして、袋から物体を一つ取り出して口に含む。

 

「あっ!」

 

 驚き、慌てて止めようとするラヴェンツァ。しかし、暁は硬そうにしながらもしっかりと咀嚼して飲み込んだ。

 確かに見た目はアレだが、味の方はなかなかどうして不味くはない。炭化していたのは表面だけだったようだ。苦味が増していて暁には丁度良い塩梅であった。失敗作も、捨てたものじゃない。

 

 すごく美味しい、ありがとうと暁が告げると、ラヴェンツァは顔を赤らめつつも微笑んで頷いた。

 

 

 

「――――おい、どうしたッ!?」

 

 

 

 突然、教授を連行していた警察達が何やら血相を変えて騒ぎ始めた。何が起こったのか、急いで暁達が物陰から顔を出して様子を伺う。

 それを見た暁達は、目を見開いた。

 

 

 

 教授が、白目を剥いたその両目から黒い涙を流して膝を突いていたのだ。

 

 

 

 鼻や口、穴という穴から黒い液体を流して倒れる教授。警察達は慌てて救急車を呼んでいる。

 

 ――これは、この現象は……

 

 

 

 暁達は、その様子をただ呆然と見つめることしかできなかった。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 米花シティビルの騒ぎから遠く離れた駐車場。

 停められている内の一台であるイタリア車の運転席に金髪の白人女性が座って煙草を吸っていた。その女性の元へ、アルミケースとボロボロの紙袋を持った茶髪の青年が歩み寄り、車の助手席に乗り込む。

 

「……ちょっと、随分待たせてくれたじゃない。一体どこで道草食ってたのよ」

「すみません、途中で美味しそうなチョコレート屋を見つけまして。こう見えて僕、甘い物に目がないんですよ。あ、お一ついかがですか?」

「結構よ」

 

 そうですか、と美味しそうにチョコレートを頬張る青年に、女性は呆れ顔で見る。時刻は深夜零時を過ぎている。こんな時間に店などやっているはずもないのに、この青年は真面目に誤魔化す気もないらしい。

 

「今更だけど、貴方ってホントに変わった子よね。この前もそうよ。私の変装技術を体験してみたいとか何とか言って、わざわざ自分をメイクさせるし」

「いや、実に見事でした。いつもは女の子達に囲まれちゃって大変なんですけど、おかげで新鮮な気分で渋谷を回れましたよ。さすが千の顔を持つ魔女ですね」

 

 にっこりとした笑みで女性を褒める青年であるが、女性は溜息を吐いて灰皿に灰を落とす。

 

「私が聞きたいのは、貴方が頼んだ変装のモデルのことよ。なかなか可愛い眼鏡の坊やだったけど、結局誰だったの?」

 

 女性の疑問に、青年はチョコレートを食べる手を止める。そして、僅かに口端を歪めた。

 

 

 

「……僕の、友人ですよ。とても大事な、ね」

 

 

 




突然ですが、本作品に登場するオリジナルペルソナの簡易ステータスを考えてみました。


■ジョジーヌ(ラヴェンツァのペルソナ)
無効:祝福
弱点:呪殺
スキル:コウハ系、コンセントレイト

■ラウール(キッドのペルソナ)
耐性:念動
弱点:物理
スキル:サイ系、ワンショットキル


本当に簡易的ですが、こんなものですかね。
読んで分かるように本作品では魔法や技の名前は口にさせず、ゲーム的な部分をなるべく排除しています。なのでステータスもそこまで考えてはなかったのですが、まあせっかくなので。

次回は、またしばらく間を空くかと。
妃弁護士の話が書きたいのですが、さっさと話を進めようと思うととなかなか難しいですね。次回予定している話ではキッドじゃなくて紅子が沢山出るようになると思います。








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