名探偵コナン×ペルソナ5   作:PrimeBlue

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FILE.27 時計じかけの摩天楼 一

「それで、どうなんだよ?」

 

 ソファの背もたれに腰を下ろした快斗――姿は子供のそれに戻っている――が、伺うようにして紅子に問いかける。少し時間が経って幾分か落ち着きを取り戻している紅子であったが、未だその整った眉の根は眉間を歪ませたままである。

 

「……少なくとも、全ての力を失ったわけではないようだわ」

 

 紅子は先ほどから魔力が本当に無くなってしまったのか確認するため、簡単な検証を行っていた。

 全ての魔女がそうなのかは分からないが、その内の一人である紅子はその目から涙を流すと魔力を失くしてしまうらしい。魔女として生まれて相応に辛い目にあってはきたが、それと同時に両親から受け継いだその力を誇りにも思っていた。それを失ったかもしれないとくれば、あれだけ取り乱すのも致し方ないことだろう。

 

「つまり、大事には至らなかったわけだよな。良かったじゃねえか。まあ、コイツのことは許してやってくれよ。悪気があったわけじゃねえんだからさ」

 

 同じくソファに座っている暁の頭を背もたれの上から叩く快斗。怪盗衣装からいつもの姿に戻った暁は、申し訳なさそうな顔で頭を下げている。その隣では、モルガナを膝に乗せたラヴェンツァが執事の用意した紅茶に舌鼓を打っている。

 快斗の言葉に、紅子は深い溜息を吐いた。

 

「……分かってるわ。魔女が涙を流したら魔力を失うなんて話、知らなくて当然でしょうし……一応、こちらも暴走から救われたわけだから、今回は不問にしてあげる」

「暴走?」

 

 紅子の言葉を聞いて、暁は小さく安堵の溜息を吐いた。しかし、"暴走"という気になる単語にモルガナが反応する。同じく気になった暁はそれについての説明を求めた。

 

「私からご説明いたします。ここ最近、紅子様は突然起こった魔力の暴走に悩まされていたのです。膨れ上がる魔力を抑えるのが精一杯で、ろくに外出することも叶わない状態でした」

「ああ。だから学校にも来てなかったんだな」

「今頃になって魔力の制御ができなくなったなんて考え難いし、私としては外部からの影響によるものだと思ってるわ。それが何なのかは、今となっては(・・・・・・)調べられないのだけれど……でも、どうして暴走が収まったのかしら? ジョーカー、貴方が改心を行ったからじゃないの?」

 

 紅子の問いに暁は首を振り、君自身が自分で改心したからだと答えた。怪盗衣装を着ている時とはまた違う落ち着いた雰囲気の暁に、紅子は少し気恥ずかしさを覚えて思わず目を逸らしてしまう。

 それから暁は、ふむと顎に手を添えて執事と紅子から聞いた話を元に考え込み始める。外部からの影響による魔力の暴走……それはもしかすると、精神暴走の件と何かしら関係があるのではないだろうか?

 

「その話はひとまず置いておこうぜ。紅子、さっきも言ったけどオレ達、オメーに頼み事があってここに来たんだ。オレの身体をこんなにした組織のことについて、何でもいいから手掛かりが欲しいんだよ。確か、占いとかで色々調べられるんだろ? 迷惑ついでに試してみてくれねーか?」

 

 この通りだと、両手を合わせて頼み込む快斗。しかし、対する紅子の表情は硬い。目線を逸らし、頬杖を付いて大きな溜息を吐いている。

 

「…………無理ね」

「何でだよ? ちょくちょく俺の未来を占って警告したりしてたじゃねえか」

 

 無理と返す紅子に、快斗は減るもんじゃないだろとばかりにしつこく迫る。暁が無理に頼むのは良くないだろうと止めようとしたところで、紅子がバンッと机を割る勢いで叩き、般若のような顔付きで快斗を睨んだ。

 

 

「 だ・か・ら! その占う力を失ってしまったのよ!! 」

 

 

 またも機嫌を悪くしてしまった紅子にモルガナの肉球を触らせて再び落ち着かせ、詳しい話を聞く。

 紅子は"全ての力を失ったわけではない"と話していた。それはつまり、一部の力は失ってしまったということ。占う力――所謂千里眼能力を失ったということだが、正確には紅子自身にそういった能力はなく、その能力を持った悪魔を呼び出す力を失ったということらしい。魔力の暴走原因について、"今となっては調べられない"と言ったのも、それが理由であったのだ。

 

「紅子様、あの魔法の鏡ならどうでしょうか?」

「駄目よ。あれは鏡に千里眼能力を持った悪魔を呼び出していただけだもの。鏡自体には何の能力もないわ……それより、黒羽君。貴方元の姿に戻りたいって言うけど、さっき元に戻ってたじゃない」

「ああっと、そうだ! あれは結局何だったんだ? 暁達の言うペルソナってのを呼び出せるようになったってことは分かるんだが……」

 

「恐らく、あれが貴方の"反逆のイメージ"を具現化させた姿なのでしょう」

 

 紅茶を飲んでいたラヴェンツァが、カチャリとマグカップをソーサーに置いて口を開いた。

 

「マイトリックスターの怪盗姿を見たでしょう? あれと同じです。普段怪盗キッドとして活動している貴方なら、イメージから具現化されるのが本来のキッドの姿というのも、至極自然なことです」

「確かに、ラヴェンツァ殿の言う通りだな。認知空間上限定ではあるが、一時的には元の姿に戻れるってわけだ」

 

 ラヴェンツァの解説に、モルガナも同意した。暁から認知空間についての補足を聞き、快斗はふむふむと感慨深そうに頷いている。

 

「なるほど。オメーらの姿が変わるのはそういう仕組みだったのか……つまり、暁の反逆のイメージがあのマジシャン風の姿なんだよな。オメーも手品(マジック)とかやるのか?」

 

 手先の器用さには自信があるが、生憎手品(マジック)の類は手を出したことはない。暁は首を振ってそう答えた。

 

「そうなのか? オメーなら普段からポーカーフェイスだし、向いてると思うけどな。なんならオレが教えてやっても――」

 

 バンッ! と立ち上がった紅子の手によって、またしても机が叩かれる。無残にも耐久力の限界を迎えた机には歪な亀裂が走った。

 

「傷心の女を前にして何男同士でイチャついてるのよ! そんな話は今どうでもいいでしょうが!」

「いや、別にイチャついてなんか……」

「ああ、もう! 不問にすると言ったけど、やっぱり怒りが収まらないわ! どういう形であろうとも責任は取ってもらうから、覚悟しておきなさいジョーカー!」

 

 ズビシッと指を差され、困惑気味ではあるものの分かったと頷いて返す暁。それを見た紅子は、満足げに椅子に腰を下ろした。

 紅子との間に、歪ではあるが確かな繋がりが生まれたことを感じる。

 

 

 

 

 それからしばらく話し、辺りが暗くなってきたのでその場はお開きとなった。

 帰り道、紅子の標的が自分から暁に移ったことを悪いとは思いつつこれ幸いと心の中で安堵の溜息を吐く快斗。しかし、相変わらず組織についての情報は得られず仕舞いだ。

 

(さーて、これからどうすっかなぁ……)

 

 組織のことについてもだが、先ずは自分の身の回りのことを考えなければならない。そんな彼の脳裏に、ある少女の顔が思い浮かぶ。

 そんな快斗の心中を知ってか否か、暁が振り返りこれからどうするのかと快斗に問うた。その目から、組織についてではなく幼児化した自分を心配していることを察する快斗。

 

「ん? あ~、そうだな……まあ、何とかやってくさ。心配すんなって。一応組織についても調べておくから、オメーも何かあったら連絡してくれよ。それじゃあな」

 

 暁達に背を向け、暗い夜道を歩いていく快斗。小さなその姿は、先ほどの言葉とは裏腹にどこか寂しげに見えた。

 

 

 

 

 その夜、蝋燭の火が弱弱しく部屋を照らす中、紅子は物憂げな様子で両親が写った写真を眺めていた。

 

 父は紅子が生まれる以前に死に、母は紅子を産んで死んだため、二人共直接顔を合わせたこともなければ、言葉を交わしたことさえない。

 それでも、紅子にとっては大切な家族であった。周りから悪い魔女だと蔑まれても、自身を産んだ両親を恨んだことはなかった。魔女である自分こそが、両親が生きていたという証になるのだから。

 

 魔女としての力を制御できるようになってからは、二人を蘇生しようと死に物狂いで魔術の修行をしてきた。赤魔術は"呼び出す"ことに長けた魔術。悪魔を召喚するように、黄泉から両親を呼び戻そうとしたのだ。

 

 誰にも頼らず、縋らずに。

 

 もちろん、紅子は頼り縋ることができる相手を求めていなかったわけではなかった。求めていたからこそ、両親を甦らそうとしていた。紅子が魔女と知っていてそれでも答えてくれる相手は、両親以外にいないのだから。

 だが、結果は……今ここに両親がいないことから察することができるだろう。

 

 紅子の傍らに、醜い顔の執事が音もなく現れた。朧げな部屋の蝋燭の明かりに、執事が持つ燭台の明かりが加えられる。

 

「……紅子様。お風邪を引いてしまいます。もうお休みになられた方がよろしいでしょう」

「…………ええ」

 

 紅子の返事を聞いた執事は、頭を下げて部屋を後にしようとする。

 

「ねえ」

「はい、何でございましょう。紅子様」 

 

 呼び止められて足を止めた執事が、振り返って紅子の言葉を待つ。

 

 この執事は紅子が生まれた頃からいつも傍で見守っていた。小学校で虐められて、それでも泣くわけにもいかず必死に涙を堪えていた紅子のことを慰めようとしてくれていた。思えば、あの頃は素直に彼のことを家族のように思っていた。

 だというのに、紅子は自分の容姿端麗さに溺れるようになってから、醜い顔の彼を忌み嫌うようになった。コイツもきっと自身の外面しか見ていないのだと、そう思い込んでいた。紅子は心の中で自嘲する。外面だけしか見てなかったのは、自分も同じだったのだ。

 

 ……そういえば、彼の名前は何だっただろうか?

 

 

『ねえ、あなた名前はなんてゆーの?』

『紅子様。私は名前を持っていないのです。私は紅子様のご両親の魔術によって生み出された存在。ご両親は私に名前を付けてくださりませんでした』

『ふーん……じゃあ、わたくしが名前を付けてさしあげますわ! あなたの名前は――』

 

 

 まだ彼のことを家族と思っていた頃に、こんなやり取りをした覚えがある。

 いつの間にか忘れていたが、結局彼にどんな名前を付けたのだろう。

 

「…………貴方、名前は?」

 

 紅子の問いに執事は目を見開き、ゆっくりとその口元を緩めた。

 

 

「私の名前は……ヤマオカと申します。紅子様」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 そして、数日の時が流れた。

 相も変わらず組織の情報を得る方法を探ってはいるが、今のところ収穫はゼロのままだ。帝丹高校2年B組の自分に宛がわれた机で、暁は窓の向こうを眺めつつ小さく溜息を吐いた。

 

「まあ、そう焦ってもしょうがないさ。地道にやっていこうぜ」

 

 机の中のモルガナの言葉に頷く暁。

 しかしそうは言っても、情報を得られない中一度は卒業した高校生活を再び繰り返すというのは退屈という他ない。

 

 手持ち無沙汰になり、ポケットからスマホを取り出す。適当に開いたニュースサイトで、堤向津川緑地公園でラジコンが爆発したという記事が目に入る。その記事に並ぶ形で見つけたのは、米花駅近くの河川敷で爆発事件が発生、少年が負傷したという記事。

 まさか、例の組織が関わっているのでは? と邪推する暁であったが、当然これだけでは確信には至れなかった。

 

「おーっす、暁君」

 

 そんな暁の元へ、園子と蘭が歩み寄ってきた。スマホから目を離し、挨拶を返す暁。

 

「どうしたの? 何か悩み事?」

 

 見た目あまり変わらないが、雰囲気から察したのかそう心配げに尋ねる蘭。暁は首を振って何でもないと答えた。

 そこでふと、最近コナンの姿を見ないことを蘭に話した。先日蘭達はポアロへ夕食を食べに来たが、その時コナンはいなかった。組織のことを考えていて、そのことに触れず仕舞いになっていたのだ。

 

「あれ? ラヴェンツァちゃんから聞いてないの? コナン君、事件に巻き込まれて怪我しちゃって、今警察病院に入院してるのよ」

「確か、例の爆発事件だよね? ガキンチョが巻き込まれたの」

 

 蘭と園子の話を聞いて、驚く暁。

 先ほど暁がスマホで見ていた爆発事件。負傷した少年とは、コナンのことだったのだ。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 翌日の金曜の放課後、暁達は梓に断って毛利父娘と共にコナンのお見舞いに向かうことにした。

 コナンが怪盗団として気になる存在だからというのもあるが、それよりも純粋に心配であったからだ。それに、彼はラヴェンツァのクラスメイトでもある。暁達が同伴することを蘭はもちろん快諾してくれた。

 

「おい、坊主。まさか病院にまであの猫を連れてきちゃいねーだろうな」

「もうお父さん! いくら何でも病院に猫を連れてくわけないって。ね、暁君」

「モルガナなら鞄の中に――」

 

 咄嗟にラヴェンツァの口にお見舞い用に用意したじゃがりこを突っ込んでそれ以上言わせなくする暁。不満そうな顔でポリポリとじゃがりこを食べ始めたラヴェンツァを見て、蘭は首を傾げた。

 

 

 しばらくして、一行は警察病院のコナンが入院している病室に辿り着いた。

 

「あっ、蘭姉ちゃん! おじさんも……あれ、暁兄ちゃん達も来たの?」

 

 ベッドにはすっかり元気そうなコナンがいた。傍らには、同じくお見舞いに来ていた元太、光彦、歩美、それにふくよかな体つきをした白髪の男性がいる。

 

「ラヴェンツァちゃん、わたし達がお見舞いに誘った時は行かないって言ってたのに……」

「暁お兄様が行くと言ったので」

「おまえ、口を開けばその暁って奴のことばかりだよな」

「そちらの方がその暁お兄さんなんですか?」

「おお、君が暁君かね。コナン君から話は聞いとるよ。ワシは阿笠、コナン君の遠い親戚みたいなものじゃよ」

 

 一体どんな話を聞いたのか、そう思いつつも阿笠と名乗った白髪の男性と握手を交わす暁。見た目お爺さんのようだが、年齢的にはそこまで老けているというわけではないらしい。

 暁はコナンにお見舞いのじゃがりこを渡し、怪我の方は大丈夫なのかと聞いた。

 

「あ、ありがとう……怪我は大したことないよ。今日中には退院できるらしいし……って、もう開いてるじゃねーかこのじゃがりこ」

 

 どこか気まずそうに答えるコナン。彼の頭には包帯が巻かれたままだが、後遺症が残るほどの大事には至らなかったようである。

 

 事の経緯を説明すると、この前の日曜、つまり暁達が紅子の館へと向かった日の昼頃、蘭の幼馴染である高校生探偵工藤新一宛てに挑戦状とも取れる電話が掛かったらしい。ニュースを見ていない暁は知らなかったが、一昨日東洋火薬の火薬庫から大量の爆薬が盗まれていたのだ。そして、電話をかけてきたのが何を隠そう、その犯人だったのである。

 しかし、挑戦状を叩きつけられた当の工藤新一は不在。代わりにコナンが爆弾処理に向かったということだ。

 

「ったく、あの探偵坊主。今度会ったらただじゃおかねえ」

「いなかったんだから、しょうがないじゃない! 新一だって、そこにいたらコナン君に爆弾処理に向かわせるなんてことしなかったはずよ」

 

 行方知れずの新一に対して憤慨する小五郎。蘭はそんな小五郎に反論して、新一を擁護した。

 

「ボク達、堤向津川の緑地公園で犯人から爆弾の仕掛けられたラジコン飛行機を手渡されたんです」

「爆弾のことなんて知らないまま遊んでてさ、死ぬかと思ったぜ」

「でも、コナン君のおかげで助かったんだよ! 飛んでる飛行機目掛けてリモコンを蹴ってぶつけたの!」

 

 随分乱暴な処理の仕方だが、致し方ないだろう。そうでもしなければこの子供達が犠牲になっていたのだ。

 ラジコン飛行機の爆弾を処理した後、続けて犯人から次の爆破予告の連絡を受けたコナンは、すぐさまその場所――米花駅へと向かった。そこで爆弾を見つけ出し、何とか爆発寸前までに河川敷まで移動させたということである。頭の怪我は、その時の爆風を受けて出来たものらしい。

 確かあの日、暁は米花駅前のビッグバンバーガーで慌ただしい様子のコナンを見かけていた。まさか爆弾を探していたなんて思いもよらなかったが。

 

 ところで、直接犯人と接触した元太達は犯人の似顔絵を描いていた。 

 子供が描いたものなので上手とはいえないが、帽子とサングラスに長い髭をした男性という最もな特徴はよく表現できている。電話では変声機を使っていたらしいことから、十中八九変装で間違いないだろう。

 

「おお、毛利君。君達も来ていたのかね」

「目暮警部!」

 

 暁が犯人の似顔絵を眺めていると、病室に目暮警部が入ってきた。その後ろには、高木刑事や佐藤刑事とはまた別の部下と思われる男性が立っている。蘭によると、白鳥という名の警部補らしい。

 

「それで、その後犯人について何か分かりましたか?」

「工藤君に挑戦状を出したことから、犯人は彼に恨みを抱いている者と推測して調べてみたが……」

「彼によって解決した事件の犯人は、全員刑務所で服役中でした。ですので、その家族や恋人などの関係者の方も対象にして捜査の範囲を広げていますが、今のところ目立った収穫はありません」

「そうですか……」

 

 そのまま、話は工藤新一が解決した事件の中で最も世間の注目を浴びたものについてに変わる。目暮警部によると、恐らくそれは平崎市の藤原市長の息子がOLを車で轢き殺してしまった事件だという。

 当初はただの事故だと思われていたが、実は息子ではなく父親である藤原市長が車を運転していたことを新一が見事に見抜いたらしい。それによって、藤原市長は失脚し、彼が進めていた新しい街作りの再開発計画は一から見直し、もとい白紙になってしまった。

 

「その事件のことで、藤原市長の息子があの探偵坊主を恨んでいる可能性は十分にあるな……」

「我々もそう思って調べてみましたが、彼は爆発事件の当日は県外に出掛けていたというアリバイがありました」

 

 小五郎と目暮警部達は、難しい顔付きで話し合っている。

 暁達も怪盗団として爆弾事件の犯人はどうにかしたいが、今のところはどうしようもない。組織同様、情報が不足しているのだ。

 

「ボク達はそろそろ帰りましょうか」

「そうだな。コナン、またな」

「また来週、学校でね!」

 

 これ以上病室に屯するのはよろしくないだろう。元太達もそろそろ帰るようだし、暁達もそろそろお暇させてもらうことにする。

 

「おい、蘭。おめえもそろそろ帰れ」

「でも……」

「コナンのことはオレが見とくから大丈夫だ。どうせもうすぐ退院するんだし、先に帰って上手い飯でも作っておいてやれ」

 

 コナンのことが心配なのか渋る蘭であったが、小五郎にそう言われ彼女は仕方なく頷いた。

 

「それじゃあ、先に帰ってるね。今日はコナン君の好きなカレーにするから……そうだ! 暁君、良かったら美味しいカレーの作り方教えてくれる? 暁君の作ったカレー凄くおいしかったから前に真似して作ってみたんだけど、上手くできなかったの」

 

 蘭の頼みに、暁はもちろんと頷いて答えた。

 そのまま、子供達に続く形で蘭を連れ立って病室を出ようとする。

 

 

 しかし、そんな蘭の上着の裾をコナンが握って止めた。

 

 

「? コナン君?」

 

 蘭が振り返って不思議そうにコナンを見る。コナンは俯いていた顔をゆっくりと上げた。

 

「行っちゃやだよ、蘭姉ちゃん。一緒にいて?」

 

 そう言って、縋るような顔を見せるコナン。蘭は小さくその口元を緩めた。

 

「……ゴメン、暁君。やっぱり私残るね。いいでしょ? お父さん」

「ったく、しゃあねえな」

 

 初めて年相応なコナンを見た気がする。暁はそんな感想を抱きながら小五郎や目暮警部達に頭を下げ、コナンをからかう元太達と共に病室を後にした。

 

 そんな暁の後ろ姿を、コナンは複雑な感情を宿した目で見つめていた。

 

 

 




まだ途中までしか書いてないのですが、一応書いてますアピールということで冒頭のみ投稿しました。
書いている内に設定の矛盾や無理が生じてきた場合は次話投稿時にこちらの文を編集する可能性がありますが、その際は次話の前書きにてお知らせします。




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