双剣の騎士 ベイリン   作:とれんた

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心機一転して、心情や風景の描写をなるべく入れていこうと思います


五話

 ケイがエクター卿ともに訓練している場所はケイとあった場所からあまり離れていない場所だった。王都の中においても、そこだけは緑生い茂る公園で、多少こけたり滑ったりしてもけがをすることのないような草や土、剣をふるうのに適した広さだった。訓練するのにもってこいの場所だったからだろうか、数組の親子がここで剣の打ち合いや、素振りを見やって方に関することを話し合ったりしている。その広場の真ん中に二つの木剣を片手で持ちながら、何かを待っているようなひげ面でいかにも優しいそうな顔をした30代くらいの騎士がいた。ケイはそれを見て少しいやそうな顔をした。

 

「親父、休憩から戻ったぞ」

「そうか、ずいぶんと長かったな。それと何やら、連れ人がいるようだが何かあったのか?」

「マーリンと会った。こいつらはその紹介でな」

「そうか」

 

といい、騎士はこちらを向いた。人徳の高そうな顔と恐ろしく引き締まった体に何もやっても動かなそうな大木を連想した。そして、騎士は自己紹介をした。

 

「私の名はエクターというんだ、君たちの名を教えてくれないか」

「俺はベイリンと言います、それでこちらが」

「ベイランと申します」

 

ひとたび自己紹介をしてみたら、エクターからは第一印象と同じように何かにもたれかかるかのような安心感を感じた。この騎士は先ほどまでいたマーリンと違い、恐怖は感じなかった。いや、むしろこの騎士から人間味を感じ少し話してみたいと感じさせるような気持になった。ふと、隣のベイランを見るとこちらも何か穏やかそうな雰囲気に懐柔されたのか少し安心したかのようにエクター卿を見ていた。そして、こちらの自己紹介が終わったのを見計らったケイが

 

「親父、そろそろ訓練を開始しないか?この二人に関してはこの場で俺の訓練を見学していくそうだ」

 

といった。それに対してエクターはその言葉に従うように木刀を一本ケイに渡し、黙って木刀を構えた。それに対してケイも木刀を構えて、エクターに対して大きく振りかぶり剣を振った。エクターはそれに対して流れるようにケイの振った剣を受け流し、次に来るケイの切り上げが来る前に一歩下がりながら一言。

 

「脇が甘い」

 

それを聞きつつ、ケイは読まれているだろう切り上げをする。ただ、それは書物に書いてあるように次の行動を読んでいるエクターはただただ、剣で防いだ。予定調和のようにケイが振るうだろう剣の軌道、当たるだろう距離、もっとも威力の高くなるだろう場所を的確に見抜き、対処していった。ただ、そうした対処の中でも時に、ケイの最も打ちやすいだろう場所にケイを誘導し、そして、自身の木刀にケイの木刀をぶつけさせていた。そのさまを見て、その訓練を見て、俺は何と効率的な剣術だろうかと思った。エクターはよく躱していたが、それはケイの木刀をふるう姿勢がわずかに重心を振らさせてしまっていたり、剣の軌道がぶれていたりした。逆に、剣で受けていた時は、それらの失敗というべき場所がない時だった。そうやって、受けるときと受けないときを作ることによって体にどの方がいいかを覚えさせるような訓練だった。ほかの騎士の親子はそんなことをせずに、ただいたずらに親子でチャンバラをしているかのようだった。そう観察しながらケイの訓練を見ていると、急に動きを止めたエクターがケイの木刀を弾き飛ばし、そしてこちらを見た。

 

「どうだったかな、うちの息子の訓練は?」

「えぇ、とても効率的な剣術だったと思います。剣で防いだ時と足で動いた時で違いをつけることによって、体にどの振り方がよいかを覚えさせているのですね」

 

俺が気づいたようにベイランも気づいたと知って、少し驚いた。だが、エクターは俺よりも驚いていた。そして小さく、これは驚いたとつぶやいた。

 

「ケイも気が付いていなかったことを気が付く子供がいるなんて」

 

ベイランに負けずに俺も何か気づいたこと言わねばと思い、

 

「エクター卿、ケイとの訓練が最終的に始まったときと同じ場所に戻ってきたのはわざとですか?」

 

エクターはさらに驚いたように少し唖然として、

 

「あぁ、君たちと話すの遠くに行ってしまっては困るからね」

 

エクターはそういいつつ、ケイに吹き飛ばした木刀を取りに行かせていた。そして、こちらに木刀を俺に渡してきた。

 

「どうだね、妹のベイラン君にはやらせるのに忍びないし君ならできるだろう?」

 

といった。それに対して、俺は一瞬こいつは何を言いているんだと思った。弟が妹に見えたっとこの目の前の男は言った。それに対して、ケイを見てみると何か納得したかのような顔をしていた。そして、俺はこいつもか、とため息を吐いた。そして、エクターの誤解を解くために口を開いた。

 

「何を言っているのかわかりませんが、ベイランは弟ですよ、エクター卿。それと訓練に関しては是非ともお願いします」

 

エクター卿は心底驚いた顔をして口を開けたまま、数秒間そのままであった。その顔を見たケイはとても満悦の顔をして笑っていた。そのさまを見て、こいつ、口だけじゃなく性格も悪いなと思った。それはベイランもそう思ったのか、

 

「兄さま、あの方の笑みはとても何かよこしまなものを感じます。気を付けてください」

 

と何やら警告をしてきた。そんな弟の警戒している様子を知らずにケイは俺にいい笑顔でしゃべりかけてきた。

 

「ベイリン、ベイラン。感謝するぞ。久方ぶりに親父の間抜け面が見ることができた」

 

するとケイの言葉を聞いたからかエクター卿がようやく元に戻りケイに少し怒ったかのように言った。

 

「ケイ、そんな言い方はないだろう。それに私は間抜けズラなどしていなかったぞ。あぁ、それとすまなかった、ベイラン君。君の性別を少し勘違いしていた。それから、ベイリン君。稽古を始めようか」

 

そんなこと言って、俺とエクター卿の訓練が始まった。




何回聞いてもgarden of avalonはいいドラマCDですね。

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