ケイとの出会いはマーリンに示されて行ったものだった。ケイは自分の貴重な自由時間がつぶされたような不機嫌そうな顔をしていた。
「マーリン、なんだ、俺をこんなところに連れてきて?」
「それはこの前言ったじゃないか、君に紹介したい同年代の少年がいるって」
「あぁ、確かにウーサー王の葬儀の日の近くになったら紹介するといっていたな。だが、こんなに急に紹介するなんて聞いてないぞ。それも俺が親父から受けている剣術の訓練の休憩の合間をみごとにつぶすような感じでな。」
「それに関してはすまなかった。だが、私も最近は暇がなくてね。ちょうど、私と君と彼らが暇な時が今だったから紹介させてしまおうと思ってね」
ケイはマーリンとの会話中でも不機嫌そうな顔を隠さず、本当にイライラしているようだった。対して、マーリンはいたずらが成功した幼児のように口元を少しにやけながら楽しそうにケイをからかっていた。ふと、思い出したかのようにケイがこちらを見た。
「おい、そろそろ俺に紹介したい奴について紹介しろ、マーリン」
「あぁ、そうだね。このまま、君をからかい続けるのもいいけど私も暇ではないし、彼らを紹介して早くやらなればならない仕事をするとしよう。というわけで、すまない、ベイリンとベイラン。ケイをからかうのが楽しすぎて、ついつい君たちのことが頭から離れてしまった。さぁ、君たちの目の前にいるのが、私が君たちと知り合いになってほしいといったケイだよ」
「ご紹介にあやかった、ケイだ」
ケイは鼻で少し笑いながら不敵に自己紹介をした。
「俺はベイリンという。こちらが、弟の」
「ベイランと申します」
「兄弟ともどもよろしくお願いしする」
と、ベイランとともにこちらも自己紹介をした。この自己紹介が終わったのをみて、自分の役目が終わったのを確認し終えたマーリンはこの場に背を向けて、
「私は引き合わせたから、去るとしよう。ケイ、エクターに伝えてくれないか。今夜、私が君の家に行くことを」
と言って去った。
「おい、何か用意していたんじゃないのか、マーリン?!」
驚いた様子でケイは言った。そしてこちろらの方向を向いて、少し苦虫をつぶしたような顔をした。
「ベイリンとベイランといったな。俺はこれから、親父の下で剣術の訓練があるんだがお前らはどうする。マーリンから多少はお前らのことを聞いているが、騎士の家の子だろ?俺の、というより親父の訓練がどんなものか見ていくか?」
ケイからの提案は魅力的なものだった。というのも、ケイの父であるエクター卿は高名な騎士だった。そのエクター卿が息子に対して剣術を教えるというのだ。騎士家の息子として少し興味があった。だが、今回の外出の目的はベイランを元気にすることだった。それを踏まえて、ベイランに行ってみたいかどうか意思を確認をとった。
「ベイランはどうしたい?」
「私はエクター卿の稽古を見ていきたいです、兄さまもそうでしょう?」
この会話からケイの稽古を見ることが決定した。
地の文が少ないですね…