ストライクウィッチーズ~あべこべ世界の炊事兵~   作:大鳳

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遅くなってしまい申し訳ございません。今回はR-15要素が強い作品となっております。ご注意ください。


4話 発動!!撃一号作戦 そして酒は飲んでも飲まれるな

 9月半ばに新型の航空型怪異と接触し、智子さん(病室の一件からそう呼べと厳命された)が撃墜されかけるという出来事が起きてからというもの戦線のあちこちで新型が出現するようになっていた。この新型が厄介極まりないもので、以前のタイプなら従来の戦法の格闘戦に持ち込むことができたが、一撃離脱戦法を使用するようになったため格闘戦に持ち込むことが困難になっていた。また頑丈さが増し再生速度も桁違いなものとなっていた。そのため現在ウィッチ隊に配備されている火器は火力不足で、できるだけ近づかなくてはならず怪異との衝突事故が増えてしまった。現場からの度重なる火力不足という悲鳴にも近いクレームを受け、やっと腰を上げた陸軍上層部が送ってきたのがブリタニア製の重機関銃をライセンス生産した八九式重機関銃だった。だが、送られてきたのは銃だけであった。前線部隊から期待を持って迎えられた銃は配備された一週間以内に武器庫の片隅に山積みにされていった。新型の出現に伴い怪異の数も増え、一日に4、5回出撃するのはざらになっていった。多い日には二桁数も出撃していた。ウィッチ部隊の負担が増え部隊から離脱するウィッチも少しずつだが増えていた。新型怪異の出現と衰えを知らない怪異の攻勢を重く見た陸海軍のお偉方は11月20日に“大本営”を設立。本格的な戦争状態へと突入した。

 

 

 

 

 そんな重大な局面になっているときに自分は何をしているかと言うと、舞鶴のちびっこ達と焼き芋をしようとしてます。何でやることになったかというと、食品の在庫チェックしようとして食糧庫に入ったら若ちゃんがさつま芋をコートの中に隠そうとしていたところを目撃したので、尋問したところ焼き芋をすると吐いたので黙認する代わりに混ぜてもらっているのだ。季節は秋から冬へと移ろうとしているので吐く息は真っ白で外に出るにはコートが手放せない。手に持っているミカン箱を地面へと下ろし細い枝を集めている若ちゃんを手伝う。基地近くの木々は葉が落ち裸になっているのでかなりの枝を見つけることができた。枯れ葉を小さい山状に積みその上に集めた枝を置いていく。置いていく際に空気の通り道を作るのがポイントだ。

 

 「ほ…ほんとに大丈夫なのかなぁ…?」

 

 そわそわしながらあたりを見渡している醇ちゃん。対照的に若ちゃんは余裕綽々といった様子でマッチを擦って用意した火元に火をつけようとしている。

 

 「平気平気♪隊長たちは朝っぱらから軍議で詰めてるし、夕方だから灯火管制にも引っかからないしな。それに正さんから焼き芋しようって誘われましたって言ったらそんな怒られないって。」

 

 「おう若ちゃんサラッと俺に罪かぶせんのやめーや」

 

 「ご、ごめんなさい正さん。だからヘッドロック外してください。なんか頭からミシミシって音が聞こえてきたんすけど。ちょ、これ以上やったら割れる、割れるからやめて!!」

 

 火をつけ終わり焼き芋に対する全責任をおっかぶせようとしてきた若ちゃんにヘッドロックを決める。タップが入ったのと若ちゃんの声が涙声になってきたタイミングでヘッドロックを解除する。両こめかみをさすりながら涙目になっている若ちゃん。しまったやりすぎたか。

 

 「だいたい正さんもあの軍議に参加すべきじゃないんすか。何でも正さんの一言で決まったって聞きましたけど」

 

 「あ~、あれねうん。俺もあんな一言で作戦が決まるとは思いもせえへんかったわ」

 

 若ちゃんが言っていた軍議とは、新型怪異撃滅の可能性を探るための作戦会議なのだが作戦の基本的なプランを決めたのは自分の不用意な発言からだった。破壊するには今ある火力じゃ足りない、かと言って強力な火器があるわけじゃないといった問題に頭を抱えているところにお茶くみとして参加していた自分が、爆弾でも落としゃイイんだと冗談を言ったところ「それだ!!」と徹夜明けのテンションの皆さんに承認され作戦が立案されてしまっていた。

 

 「正さんはカールスラントに行ったりしませんよね!?」

 

 涙目でそう聞いてくる醇ちゃん。行かへんよと返事をする。あの発言の後ガランド大尉から「こんな自由な発想ができる人物を眠らせるのはもったいない是非コンドル兵団で働いてみないか」とカールスラント空軍にスカウトされたのだ。条件は9時5時で6カ月賞与、完全週休2日制という超ホワイトな条件だった。思わず首を縦に振りそうになったがその時に目が合った江藤中佐と先生の背後に般若が見えたので保留とするとガランド大尉に返答した。

その後江藤中佐と先生がガランド大尉とにらみ合っていたようだが見なかったことにした。

 

 「ま、腹が減っては戦はできぬってな。難しい話は置いといてそろそろ焼く準備でもしようぜ。」

 

 薪の様子を見ると火が落ち着くまでもう少しかかりそうだった。ミカン箱から芋を取り出し、一緒に入れていた新聞でさつま芋を包む。その後水でしっかりと濡らしアルミホイルを巻き付ける作業を行った。醇ちゃんと自分が黙々とその作業を続けている傍らで若ちゃんは肉を焼いていた。晩飯でも抜いてやろうかと嬉しそうに肉が焼ける様子を見守っている若ちゃんを片目にそな考えが頭をよぎった。それとは対照的に美緒ちゃんは心ここにあらずといった風であった。

 

 「なんだよ美緒?まだ“あの事”を気にしてるのか?」

 

 若ちゃんのかけたその言葉に美緒ちゃんの肩がビクンと揺れた。

 

 「…だって…あの時…」

 

 美緒ちゃんの言った“あの時”の意味が分かったのか若ちゃんが黙り込みあたりが沈黙に包まれた。薪の立てるパチパチという音が響き渡る。白くなった薪の中にアルミホイルに包んださつま芋を押し込む。

 

 「だからありゃ、お前が責任を感じる必要はないって先生も言っていただろ!みんな生きて帰ってこれたんだ。…それだけでいいじゃないか。もともと陸さんが突っ走らなきゃよかったんだよ」

 

 長い沈黙を破って若ちゃんが美緒ちゃんにそう言った。

 

 「でも…」

 

 「『でも』や『だって』も必要ねえ!後悔してる間にも奴らは来るんだ。そんな暇があったら次はそうならないように強くなれ!!」

 

 一瞬キョトンとしていた美緒ちゃんだったが若ちゃんの言葉にうなずき笑顔になった。醇ちゃんもニコニコしながらその様子を見守っていた。それを片目で見ながら先程火に入れた芋を取り出す。アルミホイルや新聞を剥がし芋を割ってみる。うまい具合に火が通っており断面が黄金色をしていた。

 

 「ほら美緒ちゃん、焼けたで。熱いから気ぃつけてな。醇ちゃんも食べや」

 

 「あ、ありがとうございます。」

 

 「正さんありがとうございます」

 

 そういって焼けた芋を受け取る二人。若ちゃんにも芋を渡そうとすると何やらごそごそとしていた。その傍らにはどこに持ってきていたのか薬缶があった。

 

 「何してんの若ちゃん。てか、それはフジ少尉のコーヒーミルじゃん。何でもってんのよ?」

 

 「いや陸軍の方々がおいしそうに飲んでたから、ちょっと拝借してきたんす。たしかここをこうやって。」

 

 そうやってコーヒーを入れようとしている若ちゃんを美緒ちゃんはあきれた目で、醇ちゃんは止めようとしていた。

 

 「勝手に持ってきちゃだめだよ~」

 

 「大丈夫だってちょっと借りただけだから。ほら出来た、香ばしくておいしそうだ!」

 

 若ちゃん、借りたって言ったけどそれを世の中では盗ってきたっていうんだよ。そう思っている自分を余所に美緒ちゃんと醇ちゃんにコーヒーの入ったカップを渡す若ちゃん、よく見ると若ちゃん自身の分も入れてある。

 

 「正さんも飲みます?」

 

 軽く手を振っていらないという意思を若ちゃんに伝える。少し残念そうな顔をした若ちゃんだったが、自分で入れたコーヒーをすする。それにつられるように美緒ちゃんたちもコーヒーをすすった。

 

 「「「・・・・・・にがっっ」」」

 

 ものすごい表情をしている三人。まぁ、いきなりブラック飲んだらそうなるわなと苦笑しながら江藤中佐たちへのお土産用に新しい芋を焼き始めた。コーヒーミルどうやって返そう・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大本営が設立されたことによって、かねてから陸海軍共同で検討されていた新型怪異撃破の可能性を探る作戦“撃一号作戦”別名『伊勢崎プラン』が発動されることになった。自分の名前が付けられるのは恥ずかしいが江藤中佐たち曰く、作戦に重要な発言をしたのに名前を入れないのはおかしいとのことで自分の名前が付けられた。肝心の作戦内容は、高度9000メートルに位置に索敵・無線誘導班を配置。その2000メートル下には攻撃班。誘導・囮班が高度5000メートルの位置に新型怪異を誘導し、攻撃班が急降下爆撃を行いこれを撃破するといったものだった。作戦の要となるのは速力と急降下性能に優れたBf-109だ。しかし、カールスラントからテスト用に持ち込まれたのは予備を含め2機のみだった。ガランド大尉の僚機を巡って調整が難航した。僚機を決める意見としてはじゃんけんやくじ引きといったようなものが出たが当然却下された。格闘戦に向かないという機体特性や急降下爆撃の確実性を重した結果、3次元空間把握能力を固有魔法とするフジ少尉が僚機となることで落ち着くこととなった。綿密な準備と打ちあわせの下撃一号作戦は発動された。

 

 

―––―––―––―––―––―––―––―––―––―––―––―––―––―––―––―––―––―––―––―

 

 

11月22日撃一号作戦発動から3日目3回目の出撃でも未だ例の新型怪異との接触を図れていなかった。秋晴れの空に二筋の飛行機雲を引きながら二人のウィッチが飛んでいた。

 

 「どうだい?Bf-109(それ)には慣れたかい?」

 

 そう言いながらガランドは僚機である武子へと声をかけた。

 

 「・・・はい、大体わかってきたと思います」

 

 「ほう・・・それなら私は失業かな」

 

 その言葉を聞いて慌てる武子。

 

 「あっ・・・失礼しました。そんなつもりでは・・・」

 

 「冗談だよ。気にするな。“上”の方はどうだ?」

 

 慌てる武子の様子に微笑みながら、上空で索敵に入ろうとしている美緒と連絡を取る。

 

 「目標高度に到達しましたが。少し風が強いので寒いです・・・」

 

 コートを着ているものの頬を撫でていく風は冷たく美緒は少し体を震わせた。

 

 「しっかり頼むぞ、目が見えないと手足をどう動かしたらいいかわからないからな。―北郷様子は?」

 

 「異常なし。憎たらしいほどにいい天気だよ。・・・坂本焦る必要はないぞ、落ち着いてやれば大丈夫だ」

 

 第一飛行戦隊の面々に交じって飛行している章香。

 

 「よし!!今日こそ仕留めて帰投しよう!!」

 

 ガランドの号令の元3回目の作戦が開始された。右目の魔眼に魔力を集中させる美緒。目の近くで両手の親指と人差し指を合わせた長方形を目の近くで作っていた。これは魔眼の見える範囲を強化する方法を正に相談した時に、「全部の景色が目に入ってくるから集中できないんでね。ガランド大尉みたいに照準器使ってるみたいに見える範囲を制限してみるとかええんちゃう?」とアドバイスされ、その方法を探していたときに武子たちが写真を撮ろうとしており指でフレームを作り風景を切り取っているのを真似したのだ。ちなみに武子たちが撮ろうとしていたのは木陰で昼寝している正の寝顔であったことをつけ足しておく。

 

 (この方法なら前よりずっと集中できる・・・!これなら!)

 

 視界が制限されたことによって右目に魔力を集中させやすくなったことにより以前と比べ遠方を視認することができた。光を反射したものがあり、怪異が三機編隊で飛行しているところだった。

 

 「目標三機編隊を捕捉!!・・・方位335から180へ南下しているようです!高度は約4000m、距離は約20000mくらいです!」

 

 目標発見の知らせをガランドへ伝える美緒。胸に下げていた照準器で報告があった方向を視認するガランド。美緒の報告通りに怪異が飛行していた。

 

 「よくやった!こちらでも捕捉した。以降はこちらから誘導する。加東少尉そちらから視えるか?」

 

 「ええばっちり視えました」

 

 無事に索敵の役割を終えた美緒は安どのため息をついた。そんな美緒の胸に醇子が飛び込んでくる。自分の班の役割を果たせたので嬉しそうだ。

 

 「・・・あとはあれがちゃんと当たってくれればいいんだけどな・・・」

 

 そんな二人とは対照的に徹子が珍しく不安そうな面持ちをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「―今“入り”ました。」

 

 固有魔法を発動していた武子は怪異が急降下爆撃のコースに入ったことをガランドへと告げた。囮班が怪異の攻撃を絶妙な機動で躱しつつ誘導している。

 

 

 「よし―我々も働くとしようか」

 

 そういって急降下の体勢をとるガランド。武子もそれにならう。囮班は怪異から攻撃されていたが囮班に選ばれただけあって猛者がそろっているため被弾することはなかった。絶妙な魔力障壁のコントールで怪異の攻撃を逸らしていく敏子。十分に怪異を罠へと誘い込んだことを確認する。

 

 「そろそろか・・・。あまり調子に乗るなよ・・・!!」

 

 その時急降下していたガランドと武子が現れた。怪異の未来位置と爆弾の軌道が合うようなタイミングで爆弾を投弾する。怪異が躱そうとするもタイミングが間に合わず自ら爆弾へと突っ込んでいった。周囲に閃光が走り、爆炎がもうもうと舞い上がっている。全員固唾を飲みながら爆炎を見守る。

 

 「反応は消えたようですが・・・」

 

 固有魔法を発動させていた武子がそう漏らしたとき全員に無線が入った。

 

 「観測員より連絡あり。閃光の後対象の姿を確認できず―。成功です!!」

 

 その報告をうけ、一瞬あたりが静寂に訪れ、そして割れんばかりの歓声があたりを包んだ。こうして新型怪異撃墜を探る撃一号作戦別名『伊勢崎プラン』は成功に終わった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 冬に入った12月、各国から派兵されていた航空歩兵隊が撤収する時が来た。当然その中にはガランド大尉も含まれていた。

 

 「いろいろと助かったよ。」

 

 「何気にするな。こちらこそいいデータが採れたし、今後の我が空軍の方向性を確認することができたんだ。安いものさ。」

 

 そういってガランド大尉へ声をかける先生。美緒ちゃんも魔眼についていろいろレクチャーを受けたのだろうお礼の言葉を述べていた。自分も声をかけておく。

 

 「ガランド大尉、大変お世話になりました。自分の役職上もっと扶桑食を食べてもらいたかったんですがね。いやこればかりは補給の問題もあって申し訳ありませんでした」

 

 「そんなに謝るようなことじゃないさ。辺鄙な場所でイイ男がいた上に、手作りの料理まで食べられたんだ。これ以上の贅沢はないさ。それとカールスラントに来ないか聞いたが、まだ私はあきらめたわけじゃないからな。気が変われば連絡したまえ。君からの電話だったらいつでも大歓迎だ。その場合はこの書類にでもサインしてくれるとありがたいがね」

 

 と、何か記入された紙を渡された。大半がカールスラント語で書かれており内容を判別することができないので後で分かる人に見せるとしよう。

 

 「ガランド、彼は扶桑皇国の人間なんだ。あまり他国に勧誘しないでもらえるとありがたいのだが?」

 

 「何を言う北郷。私は彼に惚れ込んだのさ。私が我慢できる間は預けるが、我慢できなくなった時はいただくとするさ。」

 

そう言って話しているガランド大尉と先生。お互い笑顔で話しているが背後には龍と虎がにらみ合っているのが視えた。先生の後ろにはいつの間にか江藤中佐もいた。

 

 

 「あ、そういうことさ。それじゃあ」

 

 そう言い残しガランド大尉を乗せた輸送機は飛び立っていった。ちなみにガランド大尉からもらった紙を先生に見せた所笑顔で破られました。怖かったです(小並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 年を越した1月、到来した厳しい寒波によって若干の怪異の活動に鈍りが見られるようになった。これに併せて陸軍はキューナナを全軍に配備し限定的に行われていた機種転換を本格的に行うことになった。また新開発された武装や輸入された他国の武装も試験が開始された。しかし新型怪異は未だに大きな脅威であることに変わりはなかった。陸海軍ともに機種転換はそこそこの状態であったが、怪異との如何ともしがたい性能を埋めるために新型のストライカー開発の必要性に迫られた。海軍では『十二試艦上戦闘脚』を、陸軍では遅れること4か月をして『キ43/44』の試作指示が出された。自分が所属している第一飛行戦隊では、冬までの出撃で負傷し後送されたウィッチや魔力切れになってしまったものなどが増え小隊規模にまでなってしまった。一時期はほんとにひどい状態で怪異の攻勢と共に食事の内容も変わってしまっていた。8月までは普通の食事だったものが、9月末にはうどんや素麺といった消化に負担のかからないものになり11月中旬にはお粥を出さなければならないほどウィッチの疲労がたまってしまっていた。粥を食べることができるのはまだましな方で疲労がひどいウィッチでは、乳酸菌飲料や流動食しか食べることのできない人もいた。そんな人たちを見るのは大変つらかった。最近は、出撃回数が減少したのとフジ少尉の得体のしれない強壮剤のおかげで普通の食事を出すことができるようになっていた。得体のしれない強壮剤を飲ませてもらったことがあるが数日の間味覚が麻痺してしまった。もう飲まねぇぞあんな生物兵器はと固く誓った。

 

 

 

 「大変急ですまないが明日から2日ほど休みを取ってくれないか?」

 

 突然江藤中佐に呼び出され突然休みを言い渡された。

 

 「随分急な話ですね。しかし、自分が抜けても大丈夫ですかね?食事の心配があるんですが」

 

 「厳しい状況が続いてたとはいえ、君は7月辺りから休暇を取ってないだろう?いい加減休暇を消化させないと人事部がうるさくてね。それに食事の方なら多めに作るように言っておくさ。」

 

 「それならいいですよ。ありがたく休みをいただきます」

 

 「そういってもらったところすまないがホントの目的があってな。北郷が教え子たちと浦塩に行くようでそのお供をしてもらいたいんだ」

 

 「それでもいいです。休みは休みに変わりないです。それでは失礼します」

 

 そう言って部屋から退出する。さて、お土産はどうしようか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 久しぶりの浦塩は大変楽しかった。だが今重大な問題が発生していた。なぜか美緒ちゃんが自分に馬乗りになっているのである。頬は紅潮している。経緯を簡単に説明すると先生が鎮守府で用事を済ます間美緒ちゃん達の面倒を見てくれと頼まれて街を歩るいていた。そこまでは良かった。しかしマズくなったのは出店のサイダー屋に声をかけられてからだった。少量のお酒がサイダーに入っていたようで美緒ちゃんの様子がおかしかったので声をかけた所、押し倒されたのだ。

 

 「ねぇ、正さん?どうしましたぁ?」

 

 回想に浸っていると美緒ちゃんから声をかけられた。顔に年齢からは考えられないような妖艶な笑みを浮かべており正しく魔女のようだった。

 

 「ど、どうしたんや美緒ちゃん。落ち着いて上からどいてくれへんか」

 

 「いいですよ。でもね」

 

 どうしたんだと言おうとしたとき唇に温かい感触がおき、口内に何かが入ってきた。そのなにかは口内を蹂躙していく。突然のことで頭が真っ白になる。美緒ちゃんが口を遠ざけた時銀色の橋が架かっているのが見え淫靡さが漂った。

 

 「正さんが欲しいなぁなんて思っちゃいましてね。正さんは雲でも数えてくださいよ。すぐ終わりますから。不安そうにしないでくださいよ。ますます興奮しちゃうじゃないですかぁ。大丈夫本で読んだことありますから。すぐに終わりますよ」

 

 妖艶にそう迫ってくる美緒ちゃん。若ちゃんたちに助けの目を向けるも若ちゃんは顔を真っ赤にして固まっている、醇ちゃんはそう思ったとき美緒ちゃんの後ろに人影が現れた。その人影は美緒ちゃんの首に腕を巻き付け3秒ほどで美緒ちゃんを絞め落とした。

 

 「独り占めはダメだよ美緒ちゃん。約束したでしょ?正さんとは二人仲良くするって。」

 

 その人影は醇ちゃんだった。

 

 「正さん大丈夫ですか」

 

 覗き込んできた醇ちゃん顔は笑顔だったが目が笑っていなかった。どこか蜘蛛の巣にからめとられていくような感じがした。

 

 「ねぇ、正さん。私は正さんに迷子になっていたところを助けてもらってからずっと正さんのことが好きだったんですよ。それにウィッチだからって嫌がらずに好意的に接してくれるところも好きです。きっと正さんのことを好きな人はいっぱいいると思います。けれども私はあきらめたりしませんから。絶対正さんを私にものにしてみます。そのための努力ならどんなことだってやって見せます。それだけでも覚えていてくださいね」

 

 そういって頬にキスをされた。日頃のびくびくしている彼女からは想像できない一面だった。

 

 「あの~正さん。そろそろ移動しませんか?周りの視線が」

 

 声をかけてきたのは若ちゃんだった。背中には気絶した美緒ちゃんを背負っている。

 

 「おう、そないしよか!!ほんとご迷惑をおかけしました。」

 

 お金を取り出しながらサイダー屋のおばちゃんに声をかける。

 

 「いや、迷惑かけたのはこっちだからお金はいらないよお兄さん。しかし、お兄さんも難儀だねぇ。こんなにウィッチに好かれるなんて。ま、頑張って」

 

 おばちゃんからそう言われる。今後どうなるんだろうなぁと思いつつ鎮守府までの道を醇ちゃんを背負いながら歩いて行った。

 

 

 

 

 

 ほんとどうしてこうなった・・・。

 




どうだったでしょうか。次回はアホウドリ撃破の回をすっ飛ばして書こうと思っております。1章が終わり次第if編でも書いてみます。感想や誤字訂正がおありでしたら遠慮なくお願いします。

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