…マトイさんと____さんがあの深遠なる闇を封じてから二年近くが経った、マトイさんは目覚めて____さんがまだコールドスリーブに居る時に俺はその跡地の調査に向かうように命じられた、そして到着から一時間が経った頃、事件が起きた。
「…何だ?」
蠢きながらその場に存在する塊、ダーカーに似てるが何かが違った。
「此方調査船No.8、妙な物体を発見しました、どうしますか?」
「ふむ、回収出来るなら回収をお願いします。」
「了解。」
近づいてみるが特に動きが無い、このまま回収して一回帰還しようと思った矢先、とてつもない引力が起きた。
「!?」
気づいた時には塊が大きく膨らんでいた、このままじゃ耐久が持たない、船を棄ててこの場から脱出しようとしたら巨大な塊が口を開いて船を飲み込んだ。
「ぐっ…何だこれは!くそっ!」
そして強い揺れが起き、俺は頭を打ち付けて失神した。
目を覚ましたら、見知らぬようで何処か見たことあるような場所に倒れていた。
「ここは…地球?」
そう、地球だ、以前ライカさんと極秘裏の任務で調査をしていた場所だ、だが何か違和感が有る。
「…おかしい、確かエーテルとかの技術が有るハズなのに全然感じられない。」
通信は…ダメか、武器は何とかフォトンの貯蓄が有るから使える…あとアイテムバッグにアレが有ったはずだ。
「…ここは日本で良いからコレが使えるな。」
以前任務の時に渡された通帳と印鑑、確か相当備蓄が有ったはずだ。
「…そういやキャンプシップはどこだ?」
ここに来る前に乗ってたはずだ…そうして考えてると右斜めの方向から悲鳴が聞こえる。
「なんだ!?」
見てみたら男がダガンに襲われている、このままじゃ長くは保てないだろう。
「チッ…棄てて置けないか!」
俺は長銃を手に携え駆け寄る。
「大丈夫か?」
「え?あ、はい!」
「なら良い、そのまま立っていろ、直ぐに蹴散らす。」
リサさんからとことんレンジャーの特訓に付き合って貰ったんだ、こんなところで負けはしない。
「…喰らえ。」
確実に急所を狙い一撃で仕留め、直ぐに終わらせる。
「…殲滅完了、怪我は無いか?」
「は、はい…所であなたは…。」
「名乗るのが遅れたな、俺はナサト、地球では日下部南佐斗と言う名で通ってる、お前は?」
「ええと…萩野樫矢です、今日から聖桜学園に編入するはずだったんだけど…今この状態で。」
「成る程…1つ可笑しな事を聞くが、エーテルと言う技術は有るか?」
「エーテル…?」
「やはり…となるとここは別の世界軸と言うことになるな。」
以前そのような現象が確認されてるがまさか実体験するとは…。
「取り敢えず今日は下手に動かない方が良い、お前は普通の人間だから気づかぬ内に怪我してるかもしれないしな。」
「あ、あの!貴方は何者なんですか?」
「…一般人、それ以上でもそれ以下でもない。」
そう、俺は只の平凡な戦闘員、捨て駒、それで良いんだ。
「さて、これからどうするか…。」
異世界はダーカーや原生種等とは違う物が存在すると言っていたが、この世界は技術が低過ぎる、下手に動くと大きな事に成りかねないし…。
「まずこの衣装じゃ目立ちすぎるな。」
着替えなんて持ってないしこの格好で店に入るのもな…。
「あの…もしよければ俺に手伝わさせて下さい、助けて頂いたお礼がしたいんです。」
「…じゃあひとつ守ってくれ、今起きたことは他言無用、それさえ守ってくれればお前に頼ろう。」
「はい、じゃあ…これをどうぞ。」
「制服?サイズは…ぴったりとはいかないが中々丁度良いな。」
「俺の親父が理事長の知り合いで色々と頼まれたりすることがあるんですよ、その制服は強度テストのための試作品で捨てても良いと言われたんですけど勿体なくて…。」
「いや、助かる。」
確かにこの衣装なら動きやすいな運動的にも調査的にも。
「よし、これで良いな。」
「…あの、1つ頼みたいことが有るんですけど良いですか?」
「何だ?護衛なら俺のマグを付けるが。」
「いえ、じつは…最近聖桜学園で生徒が行方不明になる事件が多発しているらしいんです、それと…紅黒い塊が浮遊していたりとか色んな目撃情報が後を絶えないんです。」
「何だと!?」
人を拐うダークファルス…報告が有った奴だ、確か「適合者」を探し仲間を増やす特性を持つ奴だ、対処法は取り込まれる前に____さんのフォトンの光で闇を隔離して倒す、それしか今現在は方法が無い…。
「…なぁ、その学園の理事長と会うことが出来るか?」
「ああ、今は学園にいるはずです。」
「そうか…案内してくれるか?」
「勿論です、よろしくお願いします。」
それから住宅街を歩き10分程度で学園に着いたが…。
「…なにここ?ダーカーの巣の気配がプンプンするんだけど。」
「え?そうですか?」
確かに見た目は普通だが気配はまるで違う、恐らくアークス位にしか分からないだろう。
「成る程…現状は理解できた、理事長の所まで案内してくれ、あと微妙な敬語はよせ。」
「あ…はい。」
それから職員室に挨拶をして理事長室前に着いた。
「取り敢えずここまでで良いか?」
「いや、確かな証拠が欲しいから付いてきてくれ。」
「分かった、何か有ったら口裏会わせるから。」
「頼んだ。」
軽くノックし扉を押し込む。
「失礼する、貴方がこの学園の理事長でよろしいか?」
「いえ、私は教頭の藤堂静子ですが、何か用が?」
「はい、どうせ信じて貰えないでしょうが…樫矢、藤堂さんと窓際に退避してこれを地面に叩きつけてくれ。」
「え?」
「早く!」
「あ、ああ!それっ!。」
隔離エリアを張ったおかげで地形や外部の人間への被害の心配は無くなったな。
「何ですか…これ…。」
「動かないで下さい、斬るかも知れないので…ね。」
黒い闇が集結しダークファルス・ヒューナルが出現した。
「…時間が持たないからさっさと仕留めよう。」
中型の敵には出来るだけ素早い攻撃をするため抜刀を構える。
「来な、倒すのは一瞬だ。」
「キサマァァァァ!」
敵の飛び蹴りをギリギリで回避し背後を取る。
「…花が散り陽は霞み新たな季節を生み出さん。」
そして引き抜くのは「一瞬」それだけで勝負を決める。
「サクラエンド!」
交差するような斬撃を浴びせ確実に殺す、そのためにこの技のみを極めたのだ。
「さて、これでやっと話が出来るな。」
隔離エリアを解き向き直る。
「この学園は我らアークスの敵…ダークファルスの巣になっています。」
「…ダークファルス?」
「人を拐い仲間を増やしたりする化け物…と言えば分かりやすいですね。」
「…行方不明になっている生徒はそれのせいだと?」
「そうでしょうね、何せ平和なここは格好の餌場ですし。」
「……。」
「…助けたいですか?」
「何か方法が?」
「ええ、一番最初に行方不明が起きた日は何時ですか?」
「…一週間前です、陸上部の練習後の部室から出てこないと思ったらいつの間にか消えていたそうです。」
「成る程…完全に取り込まれるまで後30分位だな…樫矢、案内しろ。」
「お、応!」
「では30分後に救急車の手配をお願いします、相当衰弱していると思うので。」
「…貴方が何者かは知りませんが、生徒をお願いします。」
深々と頭を下げられてしまった以上、成功させないとな。
「ええ、任せてください。」
そして俺は部室へと駆け足で向かった。
「ここか…確かに気配が濃いな。」
ついでにフォトンの流れも微弱に感じる。
「有った有った、転送ゲートとテレパイプを…っとこれでよし。」
「…気を付けて。」
「ああ、分かってるよ。」
ゲートに飛び出し、転送が始まった。
「…全く、自分へのご褒美は弾まないとな。」
とか言いつつ覚悟を決めるので有った。
拐われた陸上部の女の子…まぁ一人しか居ないですね、次回は出来るだけ早めにします。