結月ゆかりがISの世界で仮面ライダーになるようです。   作:海棠

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前回のあらすじ
クラス代表に(ある意味)押し付けられた形で選ばれた一夏。
彼がクラス代表に選ばれたお祝いの誘いに対して結月はいつも通りそっけない態度で返した。
そして彼女は生徒会長と遭遇することとなった。






9話『酢豚』

「その情報、古いよ!」

 

全員がその方向を見るとそこには黄色のリボンで髪をツインテールでまとめている女の子がいた。

・・・というより。

 

「なんで肩出してるんですかあの人」

『『『うんうん』』』

ホントになんで肩出してるんですかあの人。制服は多少改造してもいいと確かに書いてありましたけどさすがにあれはないですよ。何ですかあれ。制服をファッションか何かと勘違いしてるんじゃないんですかあれ?というより冬は寒いのでは?

 

「お前、鈴か?」

あれ?知り合いなんですか?あんな肩出してる女の人と?

 

「ええ! 私はこうして帰ってきたわ! そして私は今や代表候補生でありながらクラス代表・・・。だからこうして宣戦布告しに来たのよ!」

「そ、そうなのか」

「そんなことはどうでもいいですけど」

私は二人の間に割り込む。彼女はどうやら死期が近いようです。

ほぉら、音もなくひしひしと近づいてきていらっしゃる。

 

「なによ、アンタ」

「あなた、そこでじっとしてていいんですか?」

ああ、彼女はどうやらここで死ぬみたいだ。いや、半殺しで済むのかな? いや、わりとそんなことはどうでもいいんです。今は彼女の後ろを指さしながらそんなことを言うしかやることがないわけです。

 

「おい」

「何よ!今取り込んで…」

あぁ、無常かな。あぁ、無常かな。

今彼女の頭の上から落ちてくる出席簿が命を刈り取る形をしていらっしゃる。

そしてそのまま彼女の頭に一直線で振り下ろされていく。

 

バァアアン!!

「ち、千冬さん・・・」

「織斑先生だ。さっさと戻らんか小娘」

「イエスマム!」

そのまま小娘はそそくさと二組に入って行った。・・・ああ、二組なんですか、あの人。

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

「IS、インフィニット・ストラトスは操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアーで包んでいます。また、生体機能も補助する役割があり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。これには心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量、脳内エンドルフィンなどがあげられますね」

山田先生の授業ってやっぱりわかりやすいと思うんです。わからないところがあれば丁寧に答えてくれるますしおすし。

 

「せんせー」

「はい、なんでしょう」

「先生、それって大丈夫なんですか?」

「なんか、体の中をいじられているみたいでちょっと怖いんですけど・・・・・・」

「わたしはいじってほしいかなぁ・・・・・・」

「体をいじくられるのね! 嫌いじゃないわ!」

クラスの多くが不安げな声を出しています。まあ、勝手にしかも機械に体をいじくられるのはあまりいい気はしないでしょうね。・・・私は体の一部を改造しているので何とも思わないんですけどね。・・・もっとも私の知らないところでまさか自分の体が改造されているとは思いもしませんでしたが。

しかし、変態もいるようですね。はっきり言って猛者ですね。怖い怖い。

 

「ISにも意識に似たようなものがあり、操縦者の意識――つまり一緒に過ごした時間で分かり合うというか、ええと、操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします」

・・・ふむ、一応人格っぽいのがあるのかな?もっとも、ハーゼちゃんやろーちゃんと比べたら相互理解しあうのは難しいと思いますが・・・。

 

「先生ー、それって彼氏彼女のような感じですかー?」

「彼氏できたことない女が何言ってるのさ」

「それは言わんといてー!」

オイコラ、そんなこと言うもんじゃないですよ。見てくださいよ。見る見るうちに山田先生が赤くなってますよ。まるでトマトみたいに。ちなみに私はプチトマトが嫌いです。

 

「ふぇ?!そっ、それは、その・・・どうなんでしょうか? 私には経験がないのでわかりませんが・・・」

「あ、そういや織斑君って彼女とかいるのかな?」

「いたら面白くない?」

「私はそうは思わないなー」

「イケメンなのね! 嫌いじゃないわ!」

「そういや織斑先生って彼氏いるのかなー?」

「いるでしょ。だって千冬様なんだよ?」

「それもそっかー」

『『『アハハハハハ』』』

「お腹すいたー」

この時私は見てしまった。織斑先生の口元がかすかに震えていたのを。しかも悔しそうに眉間を微妙にゆがめていたのを。皆様は気づいてなかったし、私も殺されたくないですからここは黙っておきましょう。お口チャックです。

・・・というよりさっきから妙にテンション高い人はいったい誰なんでしょうか?

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

昼休み、簪ちゃんと一緒に食堂に来てみると何やら叫んでるポニテとそれに対応しているチャイナ娘を見つけました。

 

「なにがあったんですか?」

私は近くにいた布仏さんに訊いてみた。なぜか簪ちゃんが後ろに隠れてしまいました。

 

「どうしたんですか?」

「・・・」

いや、黙られても困るんですがそれは。

 

「あのね~」

「ああ、はい」

「なんか~幼馴染でお互いのこと知らないからもめてるらしいよ~」

「・・・へぇ」

・・・そういやイアちゃん、元気でしょうか。私はずいぶんと変わってしまいました。今の私を見たらあなたはなんていうんでしょうか?

 

「で? それでなんで篠ノ之さんは怒ってるんです?」

「・・・さぁ」

そういいながら布仏さんは肩をすくめた。やはりこの子からはなんか裏を感じるんですよね。しかも会長さんのメイドさんらしいですし、下手な動きしたら生徒会室に連行されそうですし・・・。さっさとご飯食べて教室に戻りましょう。・・・あ、教室一緒だったんだ。

 

 

 

割愛。

 

 

 

放課後、私は寮に戻っている最中なぜかベンチでしくしく泣いているチャイナ娘を見つけました。

すると私に気づいたのかじっとこっちを見つめてきました。こっち見んな。そんな捨てられた子犬のような目で私を見るな!

 

「・・・」

「・・・」

「「・・・」」

私たちは目線を合わせていました。といっても声をかけるつもりも助けるつもりも話を聞くつもりも一切ないのでそのまま寮に帰ろうと足を動かすことにしました。

なんか後ろから「待ちなさいよ!」とか聞こえてきますけど無視です。あれは空耳です。気のせいです。今日は早めに寝て明日に備えましょう。

・・・と、その前に調べなきゃいけないことがあるんでした。

 

 

 

その日の夜

 

 

 

「検索を始めましょう」

私が言うと簪ちゃんはグーグルを開いてキーボードを打ち込む用意をする。

 

「まず一つ目は【中華人民共和国】」

「なんでフルネーム?」

「気分です」

「そう」

そう言いながら簪ちゃんはキーボードを打ち始める。

 

「二つ目は【代表候補生】」

「うん」

「・・・どうですか?」

「でたよ」

そう言いながらモニターをこっちに向けてくる。するとそこには【凰鈴音】と名前がでていた。

 

「じゃあキーワードを追加です。【凰鈴音】」

「うん」

「次に【専用機】」

「出たよ」

私たちがモニターをのぞき込むとそこには【甲龍】と出ていた。

 

「どんな武装が?」

「待ってね。・・・出た」

「どれどれ」

 

 

 

しばらくして

 

 

 

「なるほど、第3世代ですか・・・」

「しかも遠距離近距離どちらもこなせる万能型を目指して設計してるようだし、戦うとなると難しいよ?」

「その前に問題なのが衝撃砲です。弾が見えないほど面倒なものはありません」

「確かに」

「しかもようは空気砲じゃないですか」

「うん」

「弾けないんですよ、弾丸を」

「・・・ああ、成程」

私たちは真剣に討論した。

 

 

 

次の日。

 

 

 

教室に入ると織斑さんが座っていました。珍しいですね、ISの参考書を開いてますよ。

・・・なんで頬にもみじができているのかは謎ですが。

 

「・・・何があったんです?」

私は近くにいた女子生徒に声をかけた。

 

「あら? あなた中々の美人じゃない。だけど、私のほうがおっぱい大きわ」

「・・・質問に答えてください」

かなりむかついたので胸にくっついている余計な脂肪にビンタをくらわしておきます。女子同士ならこれくらい許されるでしょう、たぶん。

 

「あはん♡ ・・・ええ、教えてあげるわ! なぜ織斑君が頬をぶたれたか!」

「はい」

「・・・昨日の二組の子、いたでしょ?」

「ええ、いましたね」

「その子の昔の愛の告白を勘違いしてとらえたみたいなのよ」

「・・・」

ああ、だからか。昨日あそこで泣いていたのは。

 

「・・・で、どんな告白をしてたんですか?」

「えっとね・・・

 

『日本に帰って来たら毎日酢豚食べさしてあげる』

 

らしいのよ」

「・・・」

あまりにもバカすぎる告白で私は思わず絶句してしまいました。そしてそれを勘違いしてとらえる織斑さんに対しても絶句しました。

そしてなによりも・・・。

 

「酢豚って何ですか酢豚って・・・」

ホントになんで酢豚なんでしょう? これがお味噌汁だったらなんとなくわかりますよ? ですがなんで酢豚なんでしょう?

 

「酢豚って食べ物でしょ?」

「知ってますよ、そんなこと。私が言いたいのはなんで味噌汁じゃなくて酢豚にしたのかということですよ」

「さぁ、知らないわ。若気の至りってやつかしらね」

「それでも頭おかしいと思います。というより若気の至りって言葉だけですべてが済まされると思うなよ。・・・ところで、あなたの名前は?」

「あら? 私に興味があるのかしら?」

「そちらのご想像にお任せします」

すると彼女は胸を堂々と張って言った。

 

 

「私の名前は月影京水よ。覚えておきなさい!」

 

 

・・・どことなくオカマっぽい名前ですが気にしないでおきましょう。今はそれよりも聞きたいことがたくさんありますからね。

 

「で、結局どうなったんです?」

「なんかクラス対抗戦で決着するらしいわ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゑ?

 

 

 

しばらくして。

 

 

 

ハイ、今日はクラス対抗戦でございます。そしてなぜか私たちは強制的にアリーナに行くことになりました。いや、ホント勘弁してください。なんで無関係な私たちまで巻き込まれなきゃいけないんですか。

 

「ホント、やってられっかってんだ。ケッ」

「ゆかりさん、気持ちはわかるけど我慢して? 私も断腸の思いでここに来てるんだから」

「あー、さっさと終わってくれませんかねー?」

「それだったらなるべく相手のほうが勝ってほしいかも」

「まあ、その気持ちは私にもあります」

もう、ね。ホントこちらの負けでいいですからさっさと終わってほしいです。

ちなみにアタッシュケースは持ち歩いてます。

 

『覚悟しなさいよ一夏!』

『ああもう!鈴!俺が勝ったら約束の意味、教えてもらうからな!』

 

「あれ、どう思う?」

「戦いに私事を持ち込むな、と言いたいですね」

「そうだよね。クラスがかかってるのに私事で勝負するっておかしいよね」

「はい、そもそも凰さんもきちんと説明すればこういうことにはならなかったはずなんですよ。それなのにこういう風に決闘することになるのは明らかなる説明不足です。ああいう人に期待する方が間違ってるんですよ。察しろという方が無理です。あ、吹っ飛ばされましたよ」

「すごい! あれが衝撃砲なんだ!」

「あれが衝撃砲、ねぇ・・・」

ホントに厄介そうです。弾が見えないこともそうですが何より始めないのが大問題です。

 

私が顎に指を当てながらそう考えていると急に天井のシールドが叩き破られ何かが着地しました。

簪ちゃんはびっくりしたように目を見開き、私は少し目を細くしました、

 

 

続く




おまけ≪カード編≫
【Simulation Fox】
狐が複数描かれているカード。これをスキャンすることで相手の武器をコピーすることができる。



次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「な、なんだあれ?!」

『一夏、男ならそれくらいやれないでどうする!』

「なんで平然とそんなこと言えるんだよ!」

「あなたいったいどういうつもりなんです?」


次回、『襲来』

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