結月ゆかりがISの世界で仮面ライダーになるようです。   作:海棠

16 / 23
前回のあらすじ
 VTシステムに飲み込まれたラウラを助けるためにバリアを破って侵入したゆかりと簪。ゆかりはそこで自分は"生きたいと願う者の味方"であると発言した。

 そしてラウラの真実を知り、織斑千冬にアドバイスを送ったゆかりは次の日、ラウラに"おかーさん"と呼ばれることとなったのだ。






16話『買物』

「そういえば近いうちに臨海学校がありましたね」

 

ゆかりさんが部屋で本を読みながら突然ぼやいた。私たちは思わずゆかりさんの方を向いた。ちなみに月影さんとラウラさん(本人がそう呼べと言ってきた)はなんか上がってきて一緒に本を読んでいた。・・・ラウラさんに関してはすごく納得がいかないけど。

私はその時の会話を思い出す。

 

 

 

 

『なんでおかーさんって呼んでるの?!』

『え、おかーさんがおかーさんって呼んでもいいって言ったから・・・』

『ゆかりさん!』

『はい?』

『なんで止めなかったの!』

『そう言わないと話が終わらなかったから』

『なんで月影さんも止めなかったの!』

『え、私も?! えーと・・・』

『えっと・・・』

『なに? 私今すごく『おねーちゃん』・・・ゑ』

『な、なんで簪ちゃんが"おねーちゃん"なのかしら?』

『目標にしてる人と親しい女の人は"おねーちゃん"と呼ぶと副隊長から聞きました』

『それ、だまされてるわよ』

『そんなことないです! 副隊長が嘘をつくはずがありません!』

『あ、ダメだわ。この子話聞くタイプじゃないわ。簪ちゃんも何か言いなさい』

『おねーちゃん・・・。おねーちゃんかぁ~』(∀`*ゞ)エヘヘ

『あ、この子もダメなパターンだったわ』

『で、えーと…おねーちゃん』

『あら、私も?』

『はい!』

『・・・まあ、悪い気分じゃないわね』(∀`*ゞ)テヘッ

 

 

 

 

・・・アレ? 私たちうまいこと丸められてね? というより自分納得いってるじゃん。

ま、そんなことは今はおいとこう。今はそんなことは重要じゃな、・・・いや、重要なのかな?

 

「じゃあ水着買いに行こうよ」

なんか私の口が勝手に動いたんだけど。

 

「そうね、そうしましょう。結月ちゃん、いいでしょう?」

「おかーさん! 買いに行こう!」

するとゆかりさんはすごく嫌そうな顔になった。

 

「えー・・・」

「なんでゆかりちゃんそんなに嫌そうなの?」

「だって、素肌見せるってなんか嫌じゃないですか」

「私はそんなことないけど・・・」

「私もそこまで嫌じゃないかな」

「私は祖国でいつも仲間と一緒に着替えてたので平気です」

「・・・私は嫌なんですよ」

私たちは不思議に感じて顔を合わせる。ここまでゆかりさんが拒絶するのは珍しいと思う。

 

「そんなこと言わずに、ね?」

「とにかく、私は嫌なんですよ」

「なんで嫌なんですか?」

「それは・・・」

するとゆかりさんは言葉を詰まらせた。ここまでうろたえるゆかりさんも珍しいと思う。

 

「思ったんだけど結月ちゃんって素肌ほとんど見せないわよね。学校生活でも手袋付けてるし、下はズボンだし、上にブレザーの代わりにパーカーはおってるし」

「・・・」

するとゆかりさんはバツが悪そうに顔ごと目線をそらした。

 

「深くは詮索しないけれど、いずれ説明してよね」

「・・・考えておきますよ」

そう言ってゆかりさんは再び本を読み始めた。

 

「おかーさん、買い物に付き合ってください!」

「ん、いいですよ」

「「「?!」」」

「? どうしたんですか?」

「いや、すぐに返事したのが意外だったから・・・」

「私ってそこまで疑い深い性格だって思われてます?」

私がそう言うと3人とも首を縦に振った。マジか。

その後、全員のスケジュールを確認して待ち合わせ場所をどこにするか決めてからその日は解散となった。

 

 

 

 

休日。&視点変更。

 

 

 

 

休日ということでゆかりさんよりも早く来てしまった。

私、今すごく緊張してる。

 

「待ったかしら?」

そこに月影さんがやってきた。結構カジュアルな服装だった。普段真面目だから意外だった。

 

「おねーちゃん!」

さらにまたラウラさんもやってきた。多分月影さんにコーディネートしてもらったのだろう。すごく似合っていた。

 

「で、結月ちゃんは?」

「まだ来てないよ」

「おかーさん、水着買うことにあまり乗り気じゃなかったから・・・」

そうなのだ。ゆかりさんはつい前の日にスケジュールを確認して何を買うか決めるときに水着を買うことにあまり乗り気じゃなかったのだ。

もしかしたら来ないかもしれない。そんな不安が私たちの上を渦巻いた時、声がした。

 

「待たせましたか?」

まるで鶴の一声だった。私たち全員がその方を見る。そして絶句した。

 

 

 

ゆかりさんの服装が黒一色でまとめられていたのだ。

 

 

 

いや、黒一色で服の色がまとめられているだけ(・・)ならまだいい。

 

 

 

黒いソフト帽に黒いサングラス、そして黒いシャツに黒いネクタイ、さらには黒いズボンに黒い上着、そして黒いブーツとなると話は別だろう。 

 

 

 

「あの、結月ちゃん・・・?」

「なんですか?」

「その恰好、なんなのかしら?」

「気合い入れてきました」

いや、気合入れるとかそんな次元じゃないと思う。

 

「・・・」

するとゆかりさんはサングラスを外して胸ポケットにしまった。かっこいいね、片手で折りたたむなんて。

 

「さすがにサングラスはまずかったですかね・・・」

違う、そうじゃない。

 

「いや、全部まずいわよ」

結構容赦ないよね、月影さん。

 

「ま、そんなことはいいんです。問題は買い物でしたよね」

「なんか話そらされたけどまあいいわ。その通り。私たちの水着を決めるのよ。そんなに脱ぎづらい恰好はいただけないわ」

するとゆかりさんはしゅんっとしながらつぶやいた。

 

「私的にはすごく気に入ってるんですけど・・・」

「まるでメンインブラックじゃない」

「懐かしいもの引っ張り出してきましたね。私あの映画好きなんですよ」

そんなことを言いながらゆかりさんソフト帽の中に息を"ふっ"と吐いた。

 

「で、買い物に行くんですか? 行くんですよね?」

「ええ、行くわ。そんなにせかさなくてもいいじゃない」

「私的には早く終わらせてご飯食べて寝たいんですよ」

「今日はすごく欲望に忠実だね、ゆかりさん」

そう言いながら私たちは歩き始める。

 

「ところで結月ちゃん」

「なんです?」

「今までずっと疑問に思ってたんだけど」

「はい」

「あそこまでの戦闘技術、どこで身につけたの?」

「それは私も気になってました!」

「それは私も疑問だった」

嘘は言ってない。実際すごく疑問に思ってた。なんであそこまで戦闘慣れしてるのか。

 

「・・・あー」

するとゆかりさんは身が無視をかみつぶしたような顔をして遠い目をした。

 

「後、武器持ってないの? 普通の機体は武器持ってるものよ?」

「一つなくしました」

「え?」

「正確に言うと壊れました」

「それじゃあ、遠距離はどうするのよ」

「相手の弾丸を跳ね返すか落ちてる物体を相手に向かって蹴り飛ばすしかないですね。ハハッ」

「いや、割と本気で笑い事じゃないから」

そんな会話をしながら歩いていると偶然にも凰さんとセシリアさんに遭遇した。

 

「あら、ごきげんよう」

「どもども~」

「あなたたちも買い物?」

「ええ、そんなところです」

「しかし、豪華な連れね」

「むしろ私がつき合わされてる方が状況的に近いですかね。ところで、何してるんですか?」

「見ての通り、買い物よ。あとアレ」

「ん?」

私たちは凰さんが指さした方を見る。するとそこには篠ノ之さんとデュノアさんに挟まれてる織斑一夏の姿が!

 

「なんだ、あのメンツ・・・」

ゆかりさんが少しびっくりしたような表情をしながら言った。うん、実際その通りだから困るね。

 

「しかし、うまくいくのかしら?」

「私はうまくいくとは思いませんわ」

「その心は?」

「あの人、鈍感ですもの」

「左様で」

「で、ついていってるんですか?」

「ええ、そうね」

「なんでそんなことを?」

「"人の振り見て我が振り直せ"ってことわざ知ってる?」

「ええ、もちろん」

「だったらあの子たちの行為を見て自分で当てはまるところを改善すればいいんじゃないかって思ったのよ!」

「なるほど。だからストーカーまがいのことを」

「そうよ。だからお先に失礼させてもらうわ」

「で、セシリアさんはなんでいるんですか?」

「面白そうだったからですわ」

「恋愛感情とかは」

「ないですわね」

「そうですか」

「じゃわたくしは鈴さんを追いかけるので」

「じゃまたどっかでお会いしましょう」

「またどこかですぐに会いそうですわね」

そう言いながらセシリアさんは凰さんを追ってどこかへ行ってしまった。

 

「さて」

そう言いながらゆかりさんは帽子を深くかぶりなおした。やっぱり似合うね、その恰好。

 

「行きますか」

「ストーカーしに?」

「買い物に」

「ああ、よかったわ。さすがにそういうことはしないわよね」

「・・・なんとなくあなたの中での私のポジションがわかった気がしましたよ」

そう言いながらゆかりさんはとことこと歩き始めました。そして私たちはその後ろについていきました。

すごく周りからの視線を受けてるけど全然気にしないのはさすがだと思う。

 

「しかし、どんな水着を買うつもりなんですか?」

「おしゃれなものがいいわ」

「かわいいものがいいです!」

「私もかわいい系がいいかな。ゆかりさんは?」

「さっぱりした系がいいです」

「「「さっぱり?!!」」」

なんか今日ゆかりさん発言がフリーダム過ぎない?!

そんなことを話したり思ったりするうちに水着コーナーにたどり着きました。

 

「…しかし、何年ぶりですかね。水着買いに行くの」

すると急にゆかりさんはそうつぶやいた。帽子のせいで目元がよく見えなかったけどなんか雰囲気はしんみりとした感じだった。

 

 

 

 

しばらくして。&視点変更。

 

 

 

 

「ねぇねぇ、ゆかりさん」

「なんですか? 簪ちゃん」

「これ、似合うと思う?」

「ちょっと試着したらどうですか?」

「うん、行ってくるね」

そう言って簪ちゃんは試着室へ入って行きました。ちなみに月影さんとラウラさんは二人で試着しあっています。

するとそこにデュノアさんがやってきました。

 

「あれ? 結月さん」

「どうも」

「1人?」

「いや、4人ですよ」

「誰がいるの?」

「私に簪ちゃんにラウラさんに月影さん」

「そうなんだ」

「ところで、織斑さんはどうしたんですか? デートしてたんですよね?」

「あ、聞いてよ結月さん!」

「はい、なんでしょう?」

「一夏ったらホント甲斐性無しな上にすごい鈍感なんだよ!」

「へぇ、それで?」

「1回でいいから結月さんからガツンと言ってやってよ」

「いやですよめんどくさい」

「そこを何とか…」

「自分から言ってください。私はそういうのには首を突っ込まないと決めてるんです」

そう言いながら私はデュノアさんの後方を指さしました。

 

「それに、迎えに来てるじゃないですか。アレ」

「え?」

「おい、シャル! 急にどっかいくから心配したんだぞ!」

「一夏こそ、なんであそこで買い物とか言えるのさ!」

「え? 違うのか?」

「それは、えっと・・・」

そんな会話を見ていたら急に織斑さんがこっちを見て言いました。

 

「あんた誰だ?」

「声を聞いてわからないか」

「・・・?」

「・・・鈍感もここまで行くと一種の才能ですね」

私はそう言いながらハァとため息をついた。なんとなくだがデュノアさんの気持ちがわかる気がする。

 

「ああ、結月さんか!」

「あなたは何で私を判断した」

「でさ、結月さん。訊いてくれよ」

「あぁ?」

「なんか買い物に付き合ったらさ、途中で箒が怒り出してさ、困ってんだよ」

「なんか悪いことしたんじゃないですか?」

「いや、心当たりがねぇんだよ・・・」

「だったら聞けばいいだろうがこの愚図」

「さりげなくバカにするのやめろ。あと聞いたらなんかキレられるから無理なんだよ」

「だったらこの人に訊けばいいじゃないですか」

「だからさっきから聞いてるんだけど答えてくれねぇんだよ・・・」

「・・・」

もうここまで鈍感だと二人も浮かばれないですね・・・。仕方ないですから助け舟でも出しましょうか。私も結構な甘ちゃんですね。

私は右人差し指を天に向かって突き上げながら言った。

 

「天道さんが言っていた・・・」

「え?」

 

 

「"人の恋心を理解できないやつは馬に蹴られるべきだ"ってね」

 

 

「え? 俺に恋してる? 誰が?」

「二人が。いや、もう少しいるかな」

「え? ありえねぇだろ。なんで俺なんかに惚れるんだよ」(ヾノ・∀・`)ナイナイ

やばい。今一瞬このアホみたいにぽかんとした顔にこぶしをぶつけたくなった。

拳を握りしめてそう思った私を責める人は多分いないだろうと自分で思う。

 

「もうこいつ救いようがないな・・・」

「・・・うん、僕もそう思うよ」

「え? どうしたんだよ?」

「もうあっち行け。この野郎」

「さ、行くよ」

「え、ちょっ」

そのまま織斑さんはデュノアさんに引きずられてあっちに行きました。

 

「やぁやぁ」

すると入れ違いのごとく誰かが声をかけてきました。私は声をかけられた方を向きます。

 

「誰だ。・・・ってなんだ束さんか」

「そだよ~人気者の束さんだよ~」

「( ^ω^)・・・」

「笑顔で、しかも無言で押し通すのやめてくれない?」

「ああ、すいません。どう反応すればわからなかったので」

「あ、篠ノ之博士」

私たちが話していると着替えを終えた簪ちゃんが入ってきました。

 

「はろはろ~簪ちゃん」

「どうしてここに来たんですか?」

「暇だったから」

「結構普通の理由だった」

「いや~なんかゆかりちゃんがおもしろい格好してたからさ~」

「そういうあなたの服装もなかなかにふざけているようで」

束さんの衣装は以前出会った時よりかマシになったがそれでも中々に派手な服装であることに間違いなかった。というより指名手配されている自覚はあるんだろうか。

 

「いや~、これでも自重したほうなんだよ?」

「もっと自重したほうがいいですよ。逃亡生活を続けたいならね」

そう言いながら私はソフト帽を束さんの頭の上にのせる。

 

「なにさ」

「それあげますよ。かぶってた方がまだましですからね」

そう言いながら私は代わりにサングラスをかける。

 

「で、これからどうします?」

「近いうちにまた会うだろうけど、今はサヨナラだよ~じゃあね~」

そう言いながら束さんはどっかへ行ってしまいました。

 

「・・・ところでさ」

「なんですか?」

「私の水着、似合ってる?」

私は簪ちゃんを見る。彼女は水色のビキニを着ていた。・・・ふむ。

 

「なかなか似合ってますよ」

「ホント?! よかった~、悩んだかいがあった~」

そう言いながら簪ちゃんははにかんだ。するとそこに月影さんとラウラさんがやってきた。

 

「あら、終わった?」

「ええ、これに決めたそうです」

「・・・あれ?」

「どうしたんですか? 月影さん」

「あなたの帽子、どこ行ったの?」

「あれ? いつの間になくなったんでしょう?」

私はしらを切った。

 

 

続く




帰宅後

「ところで帽子あげてもよかったの?」
「あれの予備はまだありますから一個ぐらいは大丈夫ですよ」




おまけ≪簪ちゃんのIS≫
打鉄弐式
・名前こそ打鉄だが、実態はISとM.R.Sのハイブリッド。容姿は仮面ライダー555に出てくるバイク、"オートバジン・バトルモード"を想像してくれれば。
・装甲がZECT製でしかも全身装甲で守りが従来のISよりもすごく頑丈。しかも重さも(ISと比べれば)だいぶ軽い。
・武器は剣にもランチャーにもなる専用火器とZECT製マシンガンにクナイガン。ちなみに専用火器は"ファイズブラスター"を想像していただければ。ちなみにその専用火器は右腕に内蔵されている数字パネルに"555"と入力し、Enterを押せば召喚される。
・ちなみにクロックアップも使えるが元のベースがM.R.Sではないため、1回発動につき6秒しか続かない。





次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「ゴミ一つもないなんて今頃じゃ珍しいですね。とてもきれいです」

「コラ、日焼け止め塗ってからですよ」

「だから素肌を見せるのは嫌いなんですよ・・・」

「うめぇ!」


次回、『臨海』

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。