総武高校男子生徒がサイゼで駄弁るお話し   作:カシム0

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 ちと時間がかかり申し訳ない。
 自分で小説を書いていると他人の書き方が気になります。
 私の書き方が一番なんて思っていませんし、小説内でこけおろしているのはあくまでもダメな一例です。
 じゃあどうぞ。



小説・二次創作

 

 

 

 

「材木座くんの小説ってどんな感じなの?」

「おほん!?」

 

 戸塚の純粋な瞳が付随した質問に材木座が跳ねる。そう、物理的に跳ねたのだ。テーブルの反対側が非常にうざったい。サイゼのテーブルはそんなにでかくなく、材木座はでかい。ぶつかってコップからジュースがこぼれた。つまり、さらにうざい。

 

「僕も読んでみたいんだけど、いいかな材木座くん?」

「う、うむう。い、今書き直している最中なのでな。まだしばし時がかかると思うが」

「ほんと? やった! 時々八幡とそんな話してるから、ちょっぴり仲間はずれで寂しかったんだ」

 

 ニコッと太陽のように笑う戸塚。まさに天使のようである。トツカエル、サイカエル、どちらが語呂がいいだろうか。

 しかし、天使の笑顔を曇らせるわけにはいかないし、見えている地雷に突っ込ませることもないだろう。

 

「本気か戸塚。悪いことは言わないから、やめといたほうがいいぞ?」

 

 戸塚の読書レベルは知らないが、読書家であればあるほどに苦痛だ。

 

「え、えっと、そうなの?」

「失礼であるぞ八幡よ! 我の小説のどこに文句があると言うのだ!」

「お? 言うぞ? いくらでも言えるぞ」

 

 材木座の作品(?)への欠点なんてポコポコ出てくるぞ。文の書き方から作風まで、それこそ一時間あっても足りない。

 

「ぐ、ぬぬ……批評自体受けたくない、のだが……ネットの有象無象や部長殿よりかはマシと考えるか」

「批評受けたくないのは作家志望としてはよくないんじゃないのかな?」

「書いた作品をパソコンの中にしまっておくだけなら、それでいいんだろうけどな」

 

 自分が気持ちよくなるだけならそれで事足りるだろう。

 仮に自分一人で作った作品が良いものであったとしても、他者の目に触れなければ評価するのも楽しむのも自分のみだ。より良い作品を作りたいなら他者の目に晒されなければならない。

 だが、材木座に批評をフィードバックできるのかと言えば、できないだろうとは思っている。だってこいつ無駄に自分の作品に自信満々なんだもの。評価をされるのは嫌がるのにな。

 

「八幡よ。我の作品を評価することを許可するぞ!」

「どんだけ上から目線だ、お前は」

 

 とはいえ、ちょっとした休憩に話すくらいならいいかと思い直し、材木座の作品(?)を思い返す。感想というか批評というか酷評というか、自分でも驚くほどポンポン出てくる。

 とにかく褒めるところのない文章、というか文字の羅列だ。

 

「まず、相変わらずてにをはがなってない。雪ノ下に言われたの全く直ってないぞ」

「ふぐぅ……とはいうが、意識しておるのだぞ?」

「できてなきゃ一緒だ」

「てにをは、って何だっけ? 助詞の使い方だった記憶はあるんだけど」

「それで合ってるよ。簡単に言うと強調とか比較の文を書く時の使い方だな。本を読むのが好きです、本を読むのは好きです、とか」

「わかりやすい例えだね」

「むう、わかればいいと思うのだが」

「わかりづれえんだよ」

「ぐむ」

 

 なんでこう、こいつは自信満々なんだろうか。やっぱメンタル強いと思うんだがなあ。

 

「あと三人称の視点をころころ変えるな」

「む? 三人称は神の視点。視点移動こそが三人称の特徴だろうが」

「単元ごとに変えるならいいけど、一文で視点変えるなっつうの。Aが話をしていたのに文末でBが話していた時、行飛ばしたのかと思ったぞ」

「それは読みづらそうだね」

「む、いや、それはそういう手法であってだな」

「ブレてんのを手法のせいにしようとすんなよ。三人称でも主人公、俯瞰、神と視点が色々あるんだよ。描写は統一しろ。お前のキャラと一緒なんだよ」

「はぽん」

 

 ぐふっとばかりに胸を抑える材木座。いちいち反応が大げさなのが腹立つ。

 

「他にも、一人称で読者に語り掛けてくるのやめろ」

「む? だが、メタ発言するキャラなぞ多々おるではないか。賢明なる読者諸君! などあるではないか」

「二人称っていうのな。それだって頭から終わりまで二人称で統一してんぞ。メタネタやっても大丈夫なキャラならともかく、普通のキャラにやらせんな。デップーとか安心院さんくらいだぞ、そういうの」

「うむう。結構好きなのだが」

「ギャグ回とかでやるならともかく頻度がありすぎんだよ」

「たまにならいいけど、同じネタ使われすぎて食傷気味になるのってあるよね」

 

 そういうことだ。

 こころなしか材木座が萎れてきた気がするが、知ったことではないので続ける。

 

「倒置法を多用しすぎるのもそうだけど、地の文が単調すぎる。なんとかした、なんとかと言ったばっかだぞ」

「そ、そうだろうか? あまり意識していないが」

「だからだろ。意識して書いて、ちょっとは読み直して推敲しろ」

「うーん、でも僕もあんまり思いつかないな。ねえ八幡。例えばどんな表現があるの?」

「そうだな……呆れたなら肩をすくめた、怒ったなら腰を上げたとかこぶしを握り締めた。コーヒーを飲んだとか唇を湿らせたとか、かな」

「すごいね、八幡。そんなにすぐスラスラでてくるなんて」

「ふむう。なるほどなるほど」

 

 戸塚の尊敬の眼差しが心地よい。そして材木座の態度がむかつく。

 

「小説読めば色んな表現出てくるだろうが。読んでねえのか、お前?」

「パクリはいかんとおぬしよく言うではないか」

「模倣から学ぶことはあるぞ。パクリになるかはお前次第だが」

 

 ま、パクリにしかならないから材木座なんだろう。

 

「総じて、お前の書く文章は読みづらい」

「ふひっ」

「文も内容も、作者のお前にしかわかっていないことを読者に説明するんだからはぶくな。かと言って、説明台詞を無駄に入れるな」

「どうせよと言うのだ。矛盾しておるではないか」

「小説はマンガと違って絵で表現できないんだから、地の文で説明しろ。なんでこいつらこんな話してんだってところが多々あったぞ。せっかく作った設定を披露したいんだろうけど、関係あるんだかないんだかわからん話を延々されてもだれる」

「ぐぬぬ」

「あとな、戦闘シーンですごい体さばきなのを表現したいんだろうけど、実際には盆踊りみたいになってたぞ」

「なんとぉーっ!」

 

 大げさにのけ反る材木座がまたもやテーブルにぶつかる。あ、戸塚のジュースが零れた。万死に値するぞ、この野郎。

 

「ただでさえわかりづらいお前の文章を、少しでもわかりやすくする努力をしろ。文章に関してはそんくらいか」

「文章に関してはって他にもあるの? っていうか、まだあるんだ。さすがに材木座くんがかわいそうになってきたんだけど」

「うむ、むう。いや、我に同情などいらぬ! ガンガン来るがいい!」

「ああ、そろそろとどめを刺してやろうかと思っていたところだ」

「ふひっ!?」

 

 いつまでも材木座の読め読め攻撃にも辟易していたところだ。ここでしっかりと説明して当分の間の平穏を勝ち取ろうか。いや、どうせしばらくしたらまた言ってくるんだろうが、そこはもう諦めている。

 

「ストーリーもキャラクターも、どっかで見たような展開だったり既存のキャラの組み合わせだったりだな」

「な、何を言うでござるか!? 我の脳内より出でし、オリジナルキャラクターの繰り広げるオリジナル展開にケチをつけるつもりでおじゃるか!?」

「さっきまでと口調が変わりすぎだろ。お前が持ってくる小説? って、だいたい主人公はクールっぽい奴で、主人公の行動を仲間が褒めたたえるとか、それでヒロインに惚れられてんだよな」

「う、うむ。まあ我の作風はいまだ未完成故同じ展開に見えるやもしれぬが、昇華していくことで進歩しているのだ」

 

 物は言いようである。似たようなキャラで似たような展開しかできないだけじゃねえか。

 

「こっちは消化不良起こしそうだっての。お前のクールはクールに見えないんだよ。クールぶってるようにしか見えないから痛々しい」

「な、なんだとう!?」

「スリの被害者が犯人の少女を乱暴に捕まえてるからって、問答無用で被害者をぶちのめすのはクールじゃないだろ。仲間の誰もそこんとこ非難しないし」

「それは、うーん……女の子に目がないキャラクターの主人公だったら、あるかもしれない、かな?」

「主人公はそのような軟派なキャラではないぞ! 冷静沈着で感情を表に出さず、しかして義に厚く仲間を大切にする、根は熱いキャラなのだ!」

「そう見えねえって言ってんだよ。決め台詞は何だ?」

「罪過斬奸せしめん、が決め台詞である」

「あー、うー、ん……カッコいい、のかな?」

「狙いすぎて恥ずかしいでいいと思うぞ」

 

 厨二過ぎて何とも言えんレベルだ。なんでこう、罪とか古臭い言い方とか好きなんだろうな厨二病の奴らって。

 

「そんなのに惚れるヒロインは頭おかしいか、魅了でもされてるんじゃねえかとしか思えん。そもそも惚れるに至る経緯が雑で、チョロインってレベルじゃねえぞ」

「ヒロインが主人公に惚れなくてどうするのだ。出てくる味方キャラクターは主人公に好意を抱いていなくてはいかんだろう! ルート確定後に選ばれなかったヒロインを他の男にとられるのは言語道断である!!」

「な、なんか材木座くんの様子がおかしいよ?」

「ああ、ひょっとしたら材木座の地雷を踏んだのかもしれん」

 

 材木座のいう主人公はマンセーされてなきゃならないらしい。しかしながら、材木座の主人公は口でご立派なことを言っておきながら自分ではやらないダブルスタンダードで、ナチュラルに他人を煽り、他人からそうとわからないよう高度な自画自賛する奴なのだ。正直言って他者から好感を得るような人物には思えん。俺が言えた話ではないが。

 

「ストーリーはそんな奴らが旅してトラブルに巻き込まれて解決、ってのが流れだな。何パターンかあっても結局やってることは毎回同じで、結末も大体ヒロインを助けて惚れられて終わり。以上のことから主人公もサブキャラクターにも魅力を感じない」

「ぐぬぬ。言わせておけば、八幡! ならば、我はどうすればいいのか教えてください」

「とうとう材木座くんが低姿勢になったよ、八幡」

 

 いじめすぎただろうか。いや、でも真実を告げただけでいじめになるだろうか、いやない。本人が望んでやったことだからセーフだセーフ。

 

「お前が好きなキャラクターを参考にでもすりゃいいだろうが。パクリにならない程度に改変したり混ぜればばれないんじゃねえの? んで後はぶれないでキャラ貫き通せばとりあえずは炎上することはないだろ」

「なんだそのハイブリッドパクリは!」

「確かにパクリはいけないと思うけど、キャラクターの性格ってどこか似てるところはあるよね」

「まあ、商業もネットも含めりゃ相当な数の作品があって、キャラクターがいるからな。今までにいないタイプの主人公っつーと……ガチのクズとかチンピラとか、とても主人公に思えないやつくらいか?」

「むう、確かに見たことはないが……」

「うまく書くことができたらブレイクスルーだぞ。これまでの主人公観に楔を打ち込むかもな」

「人気は出そうにないと思うよ」

 

 作者が真っ当に書こうとした末にクズになったのではなく真正のクズや、チンピラみたいな性格と話し方だけど実は親分よりも強いとか、斬新かもしれん。マンガではすでにいるだろうけども、ラノベではそうそう見ないキャラクターであるとは思う。

 

 

 

 

 

 さて、話し込んだ結果飲み物が空になり、そろそろ休憩を終わらせようかという雰囲気になりつつも材木座はまだ話足りないようである。雪ノ下がいればまた別の切り口で材木座を罵ってくれただろうがいないのでどうしようもない。

 勉強のために来たのだが、そもそもサイゼで勉強すること自体が間違いだったか。ともあれもはや当初の目的はすでにどこかへ行ってしまい、勉強する雰囲気は跡形もなく消えてなくなってしまった。

 というわけで一息ついていたところ、ふと思いついたことがある。

 

「そういや材木座。お前、二次創作には手を出さんのか?」

「にじそうさく?」

「むう、考えなかったわけではないが、そちらはROM専である。それよりもオリジナルをかき上げたいと思ってな」

「キャラクターや設定を一から考えなくてすむ分、ストーリーに力を注げるだろ。キャラを動かすイメージもつかめるんじゃねえか?」

「むむむ……」

「ねえ八幡?」

 

 腕を組み唸り声をあげている材木座を尻目にジュースを飲んでいると、横から戸塚がくいくいと袖を引っ張ってきた。

 なんか、久しぶりな感じだ。可愛い。

 

「コホン。なんだ戸塚?」

「うん。にじそうさく? って何かな」

 

 ひらがなで言ってそうな戸塚の言い方が可愛い。わざわざ言うまでもないことだが仕草ももちろんのこと。

 

「えーっと二次創作ってのはだな。すでにある作品を一次として、その設定やキャラクターや世界観を流用した作品のことだ」

「えっと、それはパクリ、ではないの?」

「パクリというかファンフィクションだな。コミケってあるだろ? ああいうのに参加して同人誌とかで金をとる場合には著作権者に許可を取ったりするらしいけど、ネット上で無料で公開しているだけなら、黙認されているみたいだな」

「ああ、夏休みとか冬休みですっごい人が集まったりしてるよね。ちょっと興味はあるんだけど、行こうとまでは思えなくって」

「戦士が集いし熱き聖地。生半な覚悟で赴いては命取りになるぞ」

「そんな大げさな」

 

 これがいつもの材木座の大げさな物言いとは違い、本当に下手をすれば死に至りそうだから困る。戸塚の言うような物見遊山で行こうものなら、何もできずに熱気むんむんの会場を彷徨うだけで終わることだろう。ガチ勢以外お断りの場所だ。

 

「それで、二次創作ってどんなのがあるの?」

「俺はそんなに詳しくないから。材木座、頼む」

「ふむん。どうしてもというのであれば教えてやらんでもないが」

「あ?」

「……まあ八幡の頼みであるし、よかろう! しかと謹聴するがよい」

 

 ジロリとひと睨みで黙ったがうぜえの一言だ。グダグダ言わんととっとと喋ればいいものを。戸塚が乾いた笑いを浮かべている。

 

「二次創作には数多くのジャンルがある。だが、特に重要なのはオリ主がいるかどうかである」

「おりしゅ?」

「オリジナル主人公の略だな。オリぬしとも言われるみたいだけど、作品の本来の主人公とは別の作者が考えた主人公のことだ」

「へー、でもなんでそんなことするの?」

「うむ。主人公の友人であったり、兄弟であったり、はたまた主人公の立場に別の者がいたら、といわゆる設定の捏造であるな。そういった立ち位置の者がいたら作品はどう変わるのかというのを楽しむためである」

 

 メアリー・スーとも言われるキャラで、主人公の上位互換だとかヒロインが主人公に惚れる前に惚れさせる、みたいな主人公をかませ犬にするようなのをよく見かける。が、俺は主人公を食わないでちょうどいい活躍をするのが好きだ。

 

「さて、これから二次創作のジャンルについて語るが、オリ主が主人公であったりなかったりするのを念頭に聞くがよい」

「うん、わかったよ」

「大雑把にジャンルを分けると、過去、現在、未来、パラレルといったところか」

「……うん、わからないよ」

「材木座。それじゃわけわからんだろうが。人に伝えるときはもっとわかりやすくしろって言ったばかりだろうが」

 

 なんとなくわかってしまう俺が言うのもなんだが、材木座の説明はもったいぶっておりわかりづらい。演技がかった話し方をやめればいいのに、こいつは多分やめることはしないだろう。

 

「これより詳細に語る故待つが良い。先に言った過去とは逆行展開を言う」

「ぎゃっこう? 逆に行くの逆行?」

「うむ。記憶を持ったまま過去に跳んだキャラクターが、未来の知識を生かして原作での悲劇を回避しようとするものが多い。途中で退場するキャラクターを生存させたりなどだな」

「へー、例えばどんなのがあるのかな?」

「そうだな。原作終了後のア〇トがボソンジャンプで原作開始時の地球に飛んでしまったとか、シ〇ジが謎の力で第三新東京市に到着した時に飛んできたとか、でわかるか?」

「あ、わかりやすいね」

「ちょうどそのころに流行ってたらしいな」

 

 今ではもう読めない作品が多々あるらしい。俺tueeeの始まりはここら辺の作品が多いのだとか。

 

「逆行にも種類があり、転生と憑依が大半であるな」

「転生って異世界転生とかの転生だよね? 憑依っていうのは?」

「転生はその作品を見たり読んだりした者が物語の世界に生まれるので、まあオリ主であろう。憑依は未来の自分の魂が乗り移り記憶が蘇る。これはその作品のキャラクターであったりオリ主であったり様々であるな」

「うーん……言い方悪いけど、カンニングしてるような感じなのかな?」

「まあ、大体それで合ってる。現実に起きたら記憶通りに物事が運ぶなんてことはないだろうけど、二次創作を楽しむこつは多少の粗は流して適当に読むことらしいぞ」

 

 言っちゃなんだが、プロの作家でさえ粗があるんだから趣味で書いている連中が完璧な文章を書けるわけがないのである。

 

「現在は原作再構成やオリジナル展開を指す。再構成は原作のある部分を変えたもので、あの時にこうしていたらどうなったのか、あの時にあのキャラクターがいればどうなったのか、などであるな。そしてオリジナル展開は物語が進行している裏ではこういうことが起きていた、裏展開とも呼ばれるものがそうか」

「うーん。よくわからないや。八幡、例えば?」

「あー、キ〇が連邦じゃなくてザフトに所属しているとか、オ〇ブが襲撃されたときに死んでしまったのが妹でなくシ〇だったら、とかか? オリジナル展開はまんまア〇トレイがそうだな」

「ああ、わかりやすいね。ありがとう八幡」

「うむ。さすが我が相棒であるな八幡! さす八! ナイスフォローである」

 

 うぜえ。その言葉しか出ない。

 しかし、戸塚への説明はこれでいいのだろうか。ロボットアニメに偏っている気がするが、二次創作の説明じゃこれが無難か。決して俺と戸塚の共通の話題が思い浮かばなかったわけではない。

 

「そして未来。これはアフター物と呼ばれるジャンルである。本編終了後の作品のその後を書き綴ったものであるな」

「その後かぁ。ねえ八幡、クロ〇ボーンってアフター物かな?」

「その通りだな。俺がアニメ化を望んでいる作品だ」

「僕もだよ。ふふ、一緒だね」

「そ、そうだな」

「わ、我もだぞ!」

 

 長谷川〇一先生の作品はいちいち俺の琴線に触れるから困る。でも、戸塚とお揃いだから困らない。だけど材木座がうざくて困る。

 

「そしてパラレルであるが、これはTSやクロス、アンチヘイトなどがあたるか」

「TS? って、何かの略?」

「うむ。八幡。TSとは何の略であったかな?」

「知らねえのかよ。えーっと、トランスセクシャルとかそんなんじゃなかったか?」

「トランスセクシャル……性転換のこと?」

「うむ。主人公が女になったり、男女性別が逆転していたりするものだ」

「うーん、ら〇まとか転〇生みたいなの?」

「チョイスが渋いな」

 

 俺たちが生まれる前の作品だぞ。まあ、俺も知ってる名作だけど。戸塚の守備範囲が漫画やアニメ以外にどこまでなのか結構気になってきた。

 

「いや、そういうのじゃなくてな。男だったキャラが女になってるんだ。体は女、心は男。変身とかじゃなくてそもそも女として生まれている」

「へー、そんなのもあるんだ。それってどう面白いのか、よくわからないけど」

「うむ。我も以前はそう思っていたが、男ではうざいキャラも女となれば可憐なヒロインになったりもするようなのだ。他には、キャラクター間での友情やら愛情に変化ができるであろう?」

「んー、そうなんだ?」

 

 戸塚はどうにも納得いっていなそうだ。

 よく言われているところでは、ハ〇ヒは女子だから可愛いけど男だったらただのうざい男で、キ〇ンが女子ならクオリティの高いダルデレになるだとか。キャラデザの問題だとは思うがね。

 他にもF〇teの主人公は女子力が伴った美少女になり、ワカメの愛称の彼は女であれば主人公に素直になれないヒロインとなるだとか。最近では以〇さんが可愛いと言われてるが、TSしなくても可愛いんだよな、あの人。

 

「例えば僕が女の子で……八幡と恋人になるとか、そういう話、かな?」

「……そ、そうだな。うん、そんな感じだ」

 

 ちょっと赤面し小首をかしげる戸塚はやはりどこから見ても可愛い。俺も赤面しちゃう。可愛いが戸塚は男。戸塚が女の子だったら? それはもう完全無欠のヒロインといっていいんじゃないだろうか。

 だがまあ、戸塚が女の子だったら俺と友達になってくれなかっただろうし、戸塚が男の子でよかった……とも言いづらいんだよなあ。

 

「クロスはクロスオーバーが正式名称であるな」

「あ、知ってる。ア〇ンジャーズとかジャス〇ィスリーグとかでしょ?」

「スパ〇ボなんかもそうだし、あとル〇ン対ホー〇ズとか有名だな」

「うむ。つまり作品の壁を越え、別作品のキャラクターが共演するのだ。似たような設定の作品同士とか、はたまた共通項はなくともこの作品の中にこのキャラクターがいたら、とか」

「へー。高校が舞台のアニメでみんな同じ学校にいて、ドタバタ大騒ぎとか?」

「そういうのもあるだろうな」

 

 千葉が舞台のアニメってどんだけあったかな。千葉ネタが盛りだくさんで面白いかもしれん。久々に掘ってみようか。俺のスコップは材木座のせいで中々頑丈だ。

 

「最後にアンチ・ヘイト。これはその名のとおりであるな」

「あんまりいい意味じゃないよね。反対とか憎悪とかって」

「そうだな。作中のキャラクターの行動に納得いかない作者が、オリ主に説教やら断罪やらをさせて上から目線で自分勝手な論理や常識を押し付けるのが多いか?」

「うむ。今のお主の言葉に若干の偏りを感じるが、言っていることに間違いはないな」

 

 作品愛を感じられない物が多いことからあまり評判のいいジャンルとは言えない。しかし、キャラクターの行動を完全に客観的にみるとこうなるのか、と気づかされる場面もあったりして面白い部分もある。アハ体験的な意味で。

 

 

 

 

 

「とまあ、ざっとこれくらいであるかな」

「うん、ありがとう材木座くん。ちゃんとではないけどよくわかったよ」

「なんかすげえ疲れたな」

 

 材木座の小説の話から二次創作まで延々と語り続けてしまった。というか、勉強の一息のつもりが休憩の方が長くなってしまった。よくあることとは言え。

 

「それじゃ帰るか?」

「うん、そだね」

「うむ。帰宅するとしよう」

 

 さて、ここ最近は材木座も受験勉強に力を入れているとはいえ、いつまた生み出してくるとも限らん。せめて直視に耐える物であればまだいいんだけどもな。

 ま、多少付き合ってやるくらいなら、ま、いいかなとは思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、海老名大丈夫!? なんでいきなり鼻血噴いてんの!?」

「ぐ腐っ、まさかの戸塚くんがヒキタニくんに攻め。ハチ×トツだと思ってたけど、弱気攻めのトツ×ハチもまた」

「擬態しろし」

 

 八幡らが退店した後、すぱんと音が店内に鳴った。

 

 




 最初に二次創作ssを読み漁り始めたのは、GS美神からでした。
 そこからナデシコやエヴァ、そしてkanonなどに行き、そこからは雑食でした。
 当時はいわゆる最強系が流行っていました。今ではただの俺tueeかsekkyouか。
 自分の予想もつかない作品があって、インスピレーションを刺激されたり心折られたりして、面白いのを探すのは大変だけどその行為自体が面白かったりしますよね。
 次は何にしようかな。活動報告を見ていただけると助かります。
 じゃあまた。

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