総武高校男子生徒がサイゼで駄弁るお話し   作:カシム0

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 皆さんが忘れずにいてくれたことが非常に嬉しいです。
 久しぶりに投稿したのにランキングに乗ったりしてね。
 嬉しいから書いちゃいました。
 じゃあどうぞ。


声優

 

 

 

 

「声優さんと結婚したい」

「さよか」

 

 今日も今日とて勉強に飽きた材木座が阿呆なことをのたまっている。常日頃から(材木座も友達がいないので俺くらいにしか言ってないんだろうが)夢見ている材木座だが、天井を見上げしみじみと吐き出しているあたり相当キているようにしか見えない。

 

「材木座くん。好きな声優さんと結婚したいの?」

「うむう。それができれば万々歳だが、贅沢は言わぬので職業声優であれば文句は言わぬ」

「そうとう贅沢言ってる気がするが」

「お主とてこのご時世に専業主夫志望などと相当な贅沢ではないか」

「材木座くん、相手のことを見ないでただ声優さんだってだけで結婚したいって、失礼なことじゃないかな?」

「ふぐぅっ!」

 

 胸を押さえて悶える材木座である。

 こいつがラノベ作家になりたいのは、アニメ化してアフレコ現場でお近づきになって、そして声優さんと結婚するためなのだったか。材木座がそういうステータスが欲しいだけなのか、それともアニメ声の奥さんが欲しいだけなのか、どちらかは知らんし興味はないが、戸塚の言う通り相手の女性に失礼なことだ。

 俺は専業主夫でも可な人が好きになる人だからセーフ。

 

「そもそも何で声優さんと結婚したいの?」

「うむ。仕事で疲れて帰宅し、お帰りなさい♡と言ってくれたら、我は頑張れると思うのだ」

「気持ち悪いな」

「ふひっ」

 

 材木座の野太い裏声で言われても全く想像できん。だがまあ、わからなくもない、けどもな。いや、俺は言う方か。

 

「別に声優じゃなくても、声の可愛い子と結婚すりゃいいだろ」

「ふむう。だが、作家になれば出版会社か編集か声優さんとしか関わることもなくなるだろうと思うのだ。ならば声優さんの方が声がいいだろう?」

「声の可愛い編集さんがいたらいいんじゃない?」

「む、それは……アリだな」

「そもそも未だに雪ノ下や由比ヶ浜とまともに話すこともできないんだから無理だろ。まず人付き合い治す方から考えろよ」

「お主に言われたくないわ!」

「くっ」

 

 いや、俺はお前ほどひどくはない、と思うけどもな。俺はそこそこ喋ることはできる、うん。ドングリの背比べかもしれん。

 

「そういや、お前自身が声優になるっていう方法は選ばないのか? 作家より一緒にいる時間増えると思うけど」

「むう。声優になりたいというのは、ちょっと恥ずかしいし」

「ラノベ作家は恥ずかしくないの?」

「声優同士で結婚もしてるんだろ? ほれ、機動戦士とか伝記ものの作中でカップルでリアルでも結婚してる声優とかいるじゃねえか」

「やめろ、八幡。その話は我に効く。我が二十年ほど早く生まれていれば……くっ!」

 

 お前が早く生まれてもうまくいくとも思えんけどな。

 

「一緒の職場で一緒の仕事をしたら仲良くなりやすいんじゃない?」

「我、演技とかできぬしのう」

「普段から芝居がかった話し方してるじゃねえか。養成校だの専門だのあるだろうし、そこいらで勉強できるだろ」

「CMで結構見るよね。代々木とか大原とか」

「むう。ラジオなど聞くに我でもできそうな気はするが。キャラソンうまく歌えるかわからぬ」

「そこは売れっ子になってから考えろよ」

 

 俺も中学生のころDJのマネをしたものだ。小粋なトークに曲紹介など、タイムラインを書いたりなんかしてな。小町に『お兄ちゃん。夜にブツブツうるさいよ』と言われてやめてしまったが。

 

「実際生活できるのかのう。今声優の数やたら多いではないか。聞いたこともない名前もチラホラ見るし」

「僕あんまりアニメ見なくなったけど、声優さんって入れ替わってるの? えーと、メインの役をやるベテランと新人の割合というか」

「作品による、としか言えないな。俺も昔ほど見なくなったけど、昔っから主役級やってる人もいるし、最近はわき役に落ち着いている人もいる。年食ってから華咲く人もいるだろうし、新人からビックタイトルとるのもいるだろうし」

「世代交代はある程度されている感はあるのう。アニメが昔よりも多く作られているものの、有名どころや力を入れて作っているものはやはり有名声優が多いようだが」

「声優だけで生きていけないからバイトしてるなんて話も聞くしな」

「俳優さんとかお笑いの人もそんな話するよね。雑草にマヨネーズかけて食べてたとか、私服一枚しかなかったとか」

「むう……やはり我はラノベ作家を目指すぞ!」

「それだって売れなきゃ食ってけねえだろ」

 

 結局、材木座は相変わらずラノベ作家を目指すようだ。だったらプロット考えるだけじゃなくて一つでもいいから書き上げろと言いたい。

 

「お前は声優の恋愛とか結婚とかどう思ってんだ? 熱狂的なファンは怖い連中いるみたいだけど」

「怖いってどういう?」

「殺害予告だとか呪われろだとか、そういうの」

「そんな人がいるの!?」

「ふん、我をそこいらの連中と一緒にするでないわ。声優とて人間。恋もすれば結婚、出産、も……するであろう、よ。いたって、普通の、ことである」

「声と顔が一致してねえぞ」

 

 ぐぬぬと歯を食いしばっている材木座は、多分好きな声優の朗報を素直に喜べないんだろうな。

 

 

 

 

 

 材木座が難癖付けて逃げているようにしか思えなかったが、奴の人生だし好きにすればいい。俺には全く関係のないことであるし。

 ほっと一息ついていたところ、戸塚が口を開く。

 

「ところで、材木座くんの好きな声優さんって、どんな役をやってる人なの?」

「むう……我の嫁たるキャラクターは多々おるでのう。萩風、金剛、いや、高垣、川島」

「節操ねえなおい。とりあえずその二人が好きなのはわかった。俺も好きだし」

 

 上手いし可愛い声だし。そういえばあいつらの声って……まあいいか。

 

「えっと、じゃあ男性声優だと誰?」

「男性であるか。そうさな、檜〇修之氏かのう。爽やか熱血漢、クールな二枚目、チンピラなど、幅広い役をこなせる実力派声優である」

「お前勇者シリーズ好きだもんな。ライダーの敵モンスターで出演しててビビったことあるけど」

 

 実力派でも端役もしなければいけないんだろうかと思ったものだ。実際には本人の希望で出演したりしてるかもしれんけど。

 

「八幡は?」

「俺は特に好きな声優ってのはいないな。上手いなって思う人はいるけど。ディスティニーの子役とか」

「ふん。アニメ好きの風上にも置けんな」

「置かれたいと思ってねえから」

 

 なぜ材木座にキレられなければならんのか。

 

「ところで、声優の演技力についてどう思う?」

「どうって、必要不可欠じゃない?」

「可愛い、カッコいい声でも棒読みであればやっていけまいて」

「ああ、言い方が悪かったな。えーと、山〇宏一って、戸塚わかるか?」

「山ちゃん、だよね。渋い役からひょうきんな役までやってる人。映画の吹き替えの主役が多いイメージだけど。あ、ディスティニーの吹き替えでよく聞くかな」

「レジェンドであるな。ある映画では一人十六役をやっていたとか」

「そう、そんだけの幅広い役をこなしても聞けばすぐ山ちゃんだってわかるだろ?」

「あ、八幡の言いたいことわかった。声質に印象ありすぎてどんな役やっても印象が一緒になっちゃわないかってこと?」

「その通り」

 

 戸塚が俺の言いたいことをわかってくれると嬉しいのはなんでだろう。わかりあえているというか、心が温かくなる。

 

「むう。確かにツンデレ美少女というとある方が思い浮かぶな。無論、そういう役しかしていないわけでなし」

「正直なところ最近の女性声優の声が聞き分けられん。みんな可愛い声だけど似たり寄ったりというか」

「ほほう、それは我に対する挑戦と受け取るぞ?」

「勝手に受け取ってろ」

 

 別に困らん。

 

「まあ、女性に限らずなんだけどな。江〇拓也って声優がいるんだけど、引きこもりのニートとかひねくれ者の声をやったかと思えば陽気な役やったりな。エンディングで声の出演見て、え、この人なの!? って思うことがあった」

「ふむう。確かに奴は若手実力派と言っていいかもしれんのう。多くの作品に様々な役で出演しておるし」

「あ、僕が知ってる声優さんだと、小〇未可子さんもそうかな。女の子の役もやるし少年の声もやるんだけど、演じ分けが上手いのか聞き分けられないよ。もちろん、演技はうまいんだけど」

「ベテランに多いのではないか? 声のイメージが脳に焼き付いているから補完しているのだろう。ちなみに我の聞き分けはかなり高水準であるぞ」

 

 どっちが良くてどっちがダメってわけじゃないから、どうでもいい話といえばいい話ではある。

 材木座のドヤ顔並みにどうでもいい、は言い過ぎか。材木座がどうでもいい。

 

 

 

 

 

 さて、毎度のことながら三人が退店した後に身を起こした二人の女性がいる。

 奉仕部の二人、雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣である。

 

「本気でわけのわからない話をしていたわね」

「アニメの話なんだろうけど、声優さんがどうのって言ってたね」

「映画の吹き替えやテレビ番組のナレーターくらいしか知らないけれど、芸能人は大変よね。ああいうのに好かれてもファンとして対応しなければならないのだから」

「い、言い方がひどいよ」

「ファンがいなければ成り立たない職業なのだし、折り合いは付けているのでしょうけれど」

「ゆきのん、そこまで。色んなところ敵に回しそうだから、そこまでで」

「……そうね」

 

 真顔の由比ヶ浜に若干気圧される雪ノ下。危うきに近寄らずである。

 

「そういえば、ヒッキーの言ってた好きな声優さん? なのかな。中二が何個か名前上げていたけど」

「よくはわからないけれど、比企谷くんのことだから透明感のある声が好きなのではないかしら?」

「そ、そうかなぁ? ヒッキーも男の子なんだし可愛らしい声が好きなんじゃないかな?」

「何を言っているの由比ヶ浜さん。専業主夫志望なのだし、そんな彼を養えるということは聡明でしっかりとした女性でしょう? 誰のようなとは言わないけれど」

「そうかもしれないけど、年頃の男の子ならキャピっとした可愛い声に惹かれるんじゃないかな? 誰のようなとは言わないけど」

「……」

「……」

 

 にこやかに笑顔を向けあう二人の対峙は、しばらく続くのであった。

 

 

 




 昔は馬鹿みたいにアニメ見てましたけど、最近は量が多いし、時間もないしでめっきり見る量が減りました。
 声の聞き分けなんかも簡単だったんですけど、歳ですかねえ。
 次回は小説です。
 じゃあまた。

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