総武高校男子生徒がサイゼで駄弁るお話し   作:カシム0

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 ふと思いついたお話し。
 八幡は魅力あるキャラなので、色んな作品にお邪魔することが多々見受けられます。
 俺ガイルのキャラがファンタジー世界に召喚されたら、というのを妄想していたらこんなん書いてました。
 じゃあどうぞ。


異世界召喚

 

 

「異世界召喚されたい」

「何言ってんだお前?」

 

 俺の対面に鎮座している暑苦しい男、材木座義輝がわけのわからないことを言い出した。

 ここは学生の味方にして楽園たるサイゼである。そんな場所に、室内だというのに季節外れのコートと指出しグローブを外さない、高校生にもなって厨二を患う手遅れ患者がありていに言って阿呆なことを言い出したのだ。俺の返答もむべなるかな。

 

「うむ。以前から考えていたのだ。現代日本では我の剣の腕を振るう機会はない」

 

 逃げることが悪いことだとは思わない。現状の分が悪ければ一旦退いて仕切り直しすることに何の非があろう。戦略的撤退という言葉もある。

 だが、材木座のセリフは逃げどころか現実逃避である。さすがの俺でも現実からは逃げようとは思わない。現実とはちゃんと向き合って、迫りくるならば回避するのが俺の心情だ。戦わなきゃ、現実と。

 ってーか、剣豪将軍を自称する材木座はどれほどの剣の腕を持っているのだか。剣道習っているとか聞いた記憶はないが。

 

「さよか」

「うむ。我の隠された実力を発揮させるには、この世界は不自由に過ぎる」

 

 それしか言うことができなかった俺は何も悪くない。隠されたまま出てこない実力なんて、意味がない。そもそも妄言なのだから実在するかもわからんが。

 呆れてため息をついた俺は服の裾をくいくいと引かれる感触に気づく。そちらを向くと、天使がいた。

 

「ねえ八幡」

「お、おう。どうした戸塚?」

 

 戸塚彩加。小柄な体に透けるような肌、サラサラの髪。物腰は柔らかく、しかして芯は強い。一言でいえば天使。二言で言えば可愛いの代名詞。だが男だ。

 戸塚は意識してではないのだろうが、上目づかいで俺を見ていた。その様に俺の胸はキュンキュンしだしている。

 

「材木座くんの言っていることがよくわからないんだけど、イセカイショウカン? って、何のことかな?」

 

 戸塚はガンプラとかミニ四駆とか、男の子の遊びにはそこそこ詳しいけど、アニメはそれほどでもないもんな。というか、異世界召喚という言葉自体、ネット小説でも読み漁らないと普段の生活で聞くことはない言葉だ。

 さて、そういう人に異世界召喚を説明するには……

 

「簡単に言うと、現代日本から剣と魔法の世界に召喚される話だな。大体物語の初めは王様とかお姫様が『よくぞ召喚に応じてくれた勇者よ。世界に仇成す魔王を退治してくれ』とか、そんな感じか」

「ああ、なんとなくわかった。けど、どんな話があったっけ?」

 

 結構昔からあるジャンルではあるが、いざ例を上げろと言われてもすぐには思いつかないものである。最近の作品だとリゼロとかノゲノラとか、オーバーロードやログホラはカウントしていいものだろうか。

 いや、最近の作品はテンプレ外しが多いからな。先の例に沿った作品を上げるなら、戸塚にもわかりやすい作品を選ぶならば……

 

「ワタルとかラムネとか、かな」

「あ、再放送で見たことがある!」

 

 例が見事にロボットアニメに偏った上古いものになってしまったが、わかりやすかったようだ。もっと言うならばレイアースやエスカフローネも当てはまるだろう。こう考えると異世界召喚とロボットって親和性が高いんだな。

 

「ダンバインもそんな感じだよね」

 

 やはり戸塚のチョイスは渋い。戸塚の知識はひょっとしてスパロボから来ているのだろうか。

 

「いや、ロボットも悪くはないが、やはり自ら剣をふるい魔法を以て戦いたいものよのう。ゼロ使のような」

「お前はチートハーレムしたいだけだろ」

「な、何を言うか! 我は剣豪将軍、女に現を抜かすなど……まあ、あちらから来るというのであればやぶさかではないが」

「さよか」

 

 まさに童貞乙な材木座のセリフである。そうして呆れる俺の裾を、またもや戸塚がくいくいと引いてくる。いや、俺はすでに戸塚に惹かれているが。

 

「八幡、ちいと? って、何?」

 

 戸塚の可愛さはもはやチートかもしれん。いやいや、天然ものの戸塚にそんなことを思ったら失礼か。

 

「厳密には違うんだが、ゲームでズルをすることをチートっていうことが多いな。ステータスをいじったり、レアアイテムをゲットしたり、そういう行為をチートという」

「へー、そうなんだ。それで、何で材木座くんがチートをしたいの?」

「理屈はそれぞれあるけど、異世界召喚されると何らかの特別な能力が与えられることがある。使ったことない武器の使い方がわかったり、強い魔力を持ってたりな」

 

 ニコポナデポなんかもあるが、説明しづらいし割愛する。

 

「ふーん……自分の力で得た能力じゃなくて、誰かから与えられた能力で活躍するってこと?」

「まあ、そんな感じだ。例えば、戸塚がある日突然テニスが上手くなる、とかな」

「えー、それって何が楽しいの?」

「ぐふっ!」

 

 戸塚の清廉潔白な返答により材木座に多大なダメージ。闇属性に光属性は効果抜群だ。

 

「……ええい、夢のない奴らめ。というか八幡! 貴様も全く考えなかったなど言わせぬぞ。貴様も我と同じように想像したことがあるはずだ!」

「うっ……否定はできんが」

 

 黒い歴史を紐解くに、中二病を患っていた俺は永久欠神『名もなき神』の転生体であると信じていたし、親父のコートとお袋のファーでコスプレをしていたこともある。

 ここで重要なのは、こともある、の部分である。卒業しているのだ。貴様のいるところはすでに三年前に通過している!

 

「僕も昔、お姫様を助ける冒険にあこがれたことあったなぁ」

「そうだよな! 男の子なら誰だって一回はあるよな!」

「う、うん……材木座くんはまだ憧れてるんだね?」

「モハハ。我は童心をいつまでも忘れぬ男であるからな」

 

 童心しかないような気がするが。まあ、本人がそれでいいなら何も言うまい。

 鼻の穴をぴくぴくさせながら、材木座は踏ん反りかえって語りだす。

 

「そう。いつもと変わらぬ日常。ある日、帰宅途中の我の眼前に魔法陣が浮かび上がる」

「それが異世界からの召喚魔法?」

「うむ。我は異世界の民の助けを求める声に応え、ゲートに飛び込むのだ」

 

 心優しい戸塚が材木座の妄言に反応してしまったため、いい気になって設定を語りだす材木座。すでに手垢のついた設定だが、詳しくない戸塚には新鮮に聞こえるのだろうか。 無垢な戸塚に悪影響が出ないか不安になる。

 

「落下する感覚が終わり、目を開けると石造りの広間。目の前に桃色髪の姫が潤んだ目で我を見ている」

「桃色ガミ?」

「異世界だから髪の色も違うんだろ」

「ああ、神様じゃなくて髪の毛か」

 

 すでに材木座の妄想垂れ流しになっているのだが、なんとなく止めるタイミングを失ってしまった。周りに聞こえたら恥ずかしいが、サイゼで周りを気にする奴もいないだろうから放置する。

 

「姫は我に、勇者様世界をお救いくださいと頼み、我はそれを承諾する。そうして我の冒険が幕を開けるのだ」

「そんであれか? 岩か何かに刺さった聖剣を抜くんだろ。んで、私は男を捨てたとか言ってる男勝りの女騎士から剣を教わって、女扱いして惚れられる。優秀すぎて周りから浮いている女の宮廷魔術師から魔法を教わって、現代知識で魔術の改良して惚れられる。崇め奉られる聖女様と対等な付き合いして惚れられるんだろ?」

「ぬぐっ!」

 

 材木座の考えそうなことだ。オリジナリティがなくパクリまくり、細部を変えてこれはオリジナルだと主張する。マルパクリじゃなければパクリじゃないと考える様な奴だからな。

 俺たちのやり取りが分からなかったのか、戸塚が首を傾げている。その様も可愛い。

 

「えーっと、今のが異世界召喚のお約束、って奴なのかな?」

「そうだな。テンプレともいう」

「ぐはっ!」

 

 無垢なる戸塚の純粋なる疑問に、自分でも自覚していたのであろう材木座が崩れ落ちる。

 テンプレから脱却しない限り、作家材木座はいつまでも生まれることなくワナビのままだ。

 ちなみに、商業作品でテンプレをことごとく採用した強者がいる。

 

「八幡だったら違う行動しそうだね」

「ま、そうだな。人から与えられた情報を鵜吞みにするようなことはしないだろうな」

「フン。捻くれ者の八幡らしいではないか」

 

 正直者が馬鹿を見る世の中だ。捻くれているくらいがちょうどいいだろうと思うのだが、ふんぞり返る材木座を見て少しイラッとする。

 うむ。自称正直者の材木座に現実を突きつけてやるのもいいかもしれん。

 

「現実に当てはめてみればわかると思うぞ? そうだな……俺が召喚した神官で、材木座が勇者だ。戸塚がその国のお姫様だ」

「うむ。当然だな」

「僕お姫様なんだ……」

「俺と戸塚が材木座に我が国を攻め、王を惨殺した魔王を神から与えられし聖剣で退治してくれと頼む。材木座はそれを受けるか?」

「無論だ。可憐なる姫の憂いを晴らすなら、我は何でもやって見せよう」

「可憐なんだ……」

 

 予想通りの答えだな。少しは物を考えるということをしてはどうだろうか。

 

「ちなみに、俺はテロリストの一員でア○リカに殲滅されたグループの生き残り。戸塚はテロリストのリーダーの娘。魔王はアメ○カの大統領」

「な、なんと……剣で大国に立ち向かえと!? そんなことできるわけがないではないか!」

「大丈夫。勇者殿には我らが神から与えられし不思議な力が宿っております。神殿の外には魔王の手下、ア〇リカ陸軍が徘徊しておりますが、勇者殿ならば大丈夫」

「勇者様、我が民をお救いください。姫は勇者様の武運を祈っております」

「ぐ、ぬぬ」

 

 戸塚も俺の言いたいことを理解したのか、手を組み祈るような仕草を材木座に向ける。ハニートラップのようだが、戸塚にこんなことされたら俺も二つ返事で受けちゃうかもしれん。

 

「とまあ、召喚された世界、召喚した人が心優しいとは限らないだろ」

「そうだね。神様から与えられた力っていうのもよくわからないし、相手が同じ人間ってこともあるのか。やっぱり八幡みたいに少しは疑った方がいいのかな?」

「後出しは卑怯だぞ八幡」

「何も聞かないのが悪い」

「ぐぬぬ」

 

 何がぐぬぬだ。

 テーブルに突っ伏した材木座は放っておき、俺と戸塚はドリンクバーのおかわりに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 ついでに材木座の分も入れてテーブルに戻ると、材木座は復活していた。相変わらず打たれ弱くとも立ち直りが早い奴だ。

 

「うむ、ご苦労。ところでな。いざ異世界に召喚されたとして、八幡はどんな武器を使うのだ?」

「あ? まだその話続いていたのかよ」

「よいではないか。こういう話ができる者が周りにいないのだ」

「あっ(察し)」

「あ、あはは」

 

 情けないことを堂々と言う材木座。同好の士ならネットに多々いそうではあるが、煽られ罵られ会話にならなそうでもあるな。

 まあ、たまにはこういうバカ話をするのもいいだろうか。

 

「武器かあ。縁遠くて何がいいのか想像もつかないや」

「だったら、職業で考えてみるといいんじゃないか? 材木座は勇者だから刀か剣だろ、どうせ」

「無論だ。世界を救う勇者は聖剣を携えるが当然!」

「じゃあ八幡は?」

「俺は……シーフとか忍者かな。影でこそこそしてるのが俺には似合ってんだろ」

 

 昔なら黒ずくめの格好でマスクつけて大鎌構えて死神ロールとかしそうだが、俺の影の薄さを有効活用して情報収集とかいいかもしれん。というか、モンスターの矢面に立つとか怖くてヤダ。

 

「ならばナイフの二刀流だな」

「あ、格好いいねそれ」

「弓矢とかもいいな。それで陰からチマチマ削る」

「影から助けてくれるのも八幡らしいね」

 

 肯定的に見てくれる戸塚の笑顔が心に痛い。そうか、俺も闇属性だったか。

 

「僕はどうだろう? やっぱり直接攻撃するのはちょっと怖いな」

「魔法使いでいいんじゃないか。戸塚が後方支援してくれたら俺が体を張って守ってやる」

「えへへ、ありがとう。じゃあ僕は杖かな」

 

 林間学校の肝試しでも魔女のコスプレしていたし。それに戸塚に泥臭いのは似合わない。テニスは別だが。

 戸塚の笑顔は癒されるから僧侶でもいいかもしれないな。

 

「勇者、盗賊、魔法使いか。戦力的にバランスはよいが、やはり戦力不足は否めんな」

「他の人も考えてみようよ。一人だけじゃなくて複数が召喚されたら、みたいな」

「うむ。最近ではクラス全体で召喚される作品もあるからな」

 

 その場合、クラスでぼっちとかいじめられてるのがハブられて、強くなって見返すのがパターンなんだが。つまり俺が当てはまりそうなんだが。

 というか、戸塚が話に乗ってしまっているな。まあ、戸塚も男の子なんだし、こういう話に適正はあるのかもしれん。

 

「じゃあ、由比ヶ浜さんなんかどうかな」

「由比ヶ浜か。あいつは優しいからな。戦うところなんて全く想像もつかんけど、かといって後ろでじっともしていなさそうだな」

「うむ。ならば後方支援ということでやはり魔法使いか僧侶ではないか? それか錬金術師」

「あいつは物づくり不器用だぞ。あ、ポイズンクッキングなんかできそうだな」

「ひどいなぁ八幡は。それなら、包丁とか?」

 

 戦場の料理人。ただしバフ効果はなくデバフのみ。そういう縛りプレイをしてるやついるか?

 

「あの怖い部長殿はどうだ? 戦闘得意そうだが」

「あー、自分よりでかい男投げ飛ばせるのは確かだが、モンスター相手だとどうだろうな」

「えっと……もしかして雪ノ下さんのこと?」

「あの女帝ならなんとかしてしまいそうだが」

「いや、納得しちまいそうだけど、体力ないからな。薙刀とかレイピアとか使えそうだな。姫騎士なんて呼ばれそう」

「くっ殺」

「おいやめろ。気高く気丈な雰囲気とかぴったりだけど」

 

 似合いそうだけどそれはマジでやめろ。似合いそうだけど。

 首を傾げている戸塚はそのまま純粋でいてくれ。

 

「あと氷属性の魔法が得意だろうな」

「リアルに使えるぞ、あいつは」

 

 背筋がゾクッとすること何回かあるしな、うん。

 ミニスカでブレストプレートつけて、レイピアと氷魔法で大暴れする姿が似合うな。

 

「じゃあ三浦さんは炎かな」

「対の勇者ってか?」

 

 イメージとしては対照的なんだが、実力的に三浦が雪ノ下に対抗できるかと聞かれると疑問符がついてしまう。

 

「えっと、じゃあ葉山くんは?」

「光魔法と白い鎧で剣。材木座みたいな似非勇者じゃないマジモンの勇者」

「っく、妄想の世界でもやはり立ちふさがるかリア充!」

 

 あいつは想像しやすいな。材木座みたいに騙されてるふりして裏を探る腹黒勇者かもしれんけど、材木座よりはまともな勇者をやってくれそうだ。

 

「逆に、職業に合いそうな人ってどうかな? 格闘家とか神官とか?」

「格闘家っつーか、殴るのが似合うのは川……崎とか?」

「あの女傑か。顔はやめなボディーにしなの」

「川崎さん? 川崎さんって別に不良じゃないけど」

「いや、あいつは、まあ、うん。とにかく、格闘家は川崎だな」

 

 確かに不良っぽいだけで真面目な奴だからな。大志関連になると一気に荒っぽくなるけども。

 

「神官と僧侶はどう違うのだ?」

「知らんけど、海老名さんでいいんじゃねえの?」

「ああ、巫女服着てたことあるね、そういえば」

 

 それもあるが、邪教を腐教しようとしている邪神官だ。近寄らないが吉。

 

「他にファンタジーな職業って何かあったかな?」

「狩人とか、踊り子とかか?」

「はぽん。八幡の妹御など狩人が似合うのではないか?」

「あ、そうだね。小町ちゃん器用そうだし、剣も弓も魔法もなんでもこなせそうなイメージが」

「言われてみると、そんな気がしてくるな」

 

 歌いながら戦ったり、アルティメット化しそうだな。う、頭が。

 

「踊り子……留美、かな。体操やってるし」

「ファンタジーの踊り子と言えば扇情的な衣装でエキゾチックに踊るあれではないか?」

「そういえば、何でかアラビア系のイメージがあるね。薄布とターバンで踊るような」

「いや、別に留美にそういう服を着せたいわけじゃないぞ」

 

 つるぺったんだしな。……それはそれで似合いそうな気もするが。いや、似合うだろうな、うん。最近成長期みたいだし。

 

「あとは、誰だろう。あ、生徒会長は?」

「生徒会長って、一色か」

「あのきゃぴきゃぴしたリア充の権化のような女子か。我には戦う様子が全く思い浮かばんが」

「ああ、あいつは戦うより戦わせるっつーか、それこそ姫様が似合ってんじゃねえの? あいつのために戦う軍団とか作ってさ。俺は参加せんけど」

 

 ネトゲだったら姫プレイやってそう。

 

「いや、しかし。結構思いつくもんだな」

「そうだね。なんか、途中から面白くなってきちゃったよ」

「うむ。これでいつ召喚されても大丈夫だな」

 

 こんな話だけで大丈夫な異世界召喚は簡単だろう。シリアスも何もないギャグストーリーに決まっている。

 

 

 

 

 

 くだらない話をし続けることしばし、さすがにネタが切れてくる。というか、こんなネタでよくもこれだけ時間を潰せたものだ。

 

「そろそろ帰ろうか?」

「うむ。間もなく夕餉の時間になってしまったな」

「少し気分転換のつもりだったのに、結構居座っちまったな」

 

 入店時は外はまだ明るかったのに、すでに暗くなっている。もう小町は家に帰っているだろうか。

 

「それじゃ、またね」

「うむ。またこのような話をしたいものだ」

「もうネタねえだろうけど、ま、時間があればな」

 

 それぞれに会計をすませ別れる。

 たまには、こんなバカ話をするのもいいのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男子高校生三名が退店してすぐ、彼らが座っていた席の反対側から身を起こす女生徒集団があった。

 

「帰った?」

「みたいですね」

 

 ひょっこりと顔を上げたのは五名の女子。うち四名は総武高校の制服を着ており、一名は付近の中学校の制服を着ている。

 お団子頭の、童顔ながら豊満なスタイルの由比ヶ浜結衣。

 肩までの髪に華奢な体つきの一色いろは。

 

「いやー、まさかお兄ちゃんたちとばったり出くわすとは」

「そもそも、なぜ身を隠すような真似をしたのかしら?」

「小町さんが盗み聞きしようとか言いだしたから、ですかね」

 

 八重歯が特徴的な、先ほどまで隣席にいた比企谷八幡の妹比企谷小町。

 長く艶やかな髪とスレンダーな体つきの雪ノ下雪乃。

 同じく長く艶やかな髪とスレンダーな体つきの、ただ一人中学生の鶴見留美。

 彼女らは、身を起こしてふうと一息ついていた。

 

「それで、言われるがままに息をひそめていたけれど、なぜ小町さんはこんなマネを?」

「お兄ちゃんが男の人と、普段どんな話をしてるのかなーって、気になりまして」

「普段の話じゃなかったみたいだけど」

「そだね。なんか、アニメとかゲーム? の話みたいだったし」

「最初の方、何言ってるのかわかりませんでしたけど、どうでした?」

 

 留美の問いに、全員が縦に首を振る。確かに最初の話はディープにも程がある話であったので無理もない。

 

「あ、でも後半はわかりやすかったかも。優しいから戦うところ想像つかない、ってところは嬉しかったけど。うう……最近お料理頑張ってるのにな」

「まあまあ結衣さん。小町なんか大したコメントなかったんですから、なんか言ってくれてるだけましってもんですよ」

「八幡、私が露出の多い服着るの想像してませんでした?」

「留美ちゃん!? いや、ヒッキーはそんな、ほら、……して、なかったと、思うよ? ちゃんと顔見てなかったけど」

「……小町さん、今度の日曜日なんですけど」

「お? なんだったら小町は友達の家に行っちゃうよ?」

「小町ちゃん! 何でそそのかしてるの!」

 

 留美が決意を固め、小町が後押しをし、結衣がそれを止めている最中、反対側のシートでは女同士の戦いが行われていた。 

 

「いやー、先輩ったら、私のことお姫様だって。まったくもー。ねー、雪ノ下先輩」

「痛いわ一色さん。それに、比企谷くんは私のことを姫騎士と称していたわよ。ただのお姫様ではないわ」

「ゆきのん、そんな張り合わなくても……」

 

 隣に座る雪乃の背中をバシバシと叩く命知らずないろはに、少しイラつき気味に雪乃が髪をかき上げる。

 テンションがダダ上がりのいろはと、いつもの負けず嫌いを発揮させた雪乃を結衣が宥めるが、どうにも収まりがつかない様子である。

 

「ところで、木材屋さんが何か言ってましたよね、くっ、なんとか」

「そうね。くっころ、だったかしら?」

「いつものネタなんでしょうけど、調べてみましょうかねーっと」

 

 言って、いろははスマホで検索を始める。雪乃も、反対側に座っていた三人も覗き込む。

 

「あ、一番上に出てきた……『くっ殺せ』? なんだか不穏な感じですけど……」

「……留美さんはこれ以上見てはダメよ」

「と言われても、こっちからだとよくわからなかったんですけど」

「調べてもダメ。いいわね、約束よ?」

「はあ……」

 

 検索ワード『くっ殺せ』の意味を把握できたのは、正規の位置で見ていた雪乃といろはのみ。ページを読み始めてすぐ、スマホを隠す。

 

「……うわー、こんな話をしていたんですね」

「……下劣なことを。どうしてくれようかしら」

「気高く気丈な女騎士とか言ってましたけど」

「それは、……それはそれとして、人を下劣な対象に見たのだから許しておけるわけないでしょう?」

 

 言い出したのは材木座であるが、雪乃の怒りは八幡に向かっている。非常に理不尽ながら。

 しかし、この後いろはに宥められ、盗み聞きのような真似をしていたのだから、と怒りを飲み込むのだった。

 後日、雪乃と八幡が出会ったときに、雪乃の八つ当たりがあったのかどうかは定かではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 書いてみてまとまりがない様な気もしましたが、たまにはこんなバカ話もいいのではないかなーっと。
 今後も似たような形で思いついたネタを上げていく予定です。
 ちなみに八幡たちの職業なですが、そのキャラのイメージと、中の人たちが演じてきたのを参考に適当に挙げてみました。

 気が向いたら、俺ガイルのキャラがファンタジー世界に召喚された話を書いたり、は多分しないですね。
 誰か書いてー。
 次は異世界転生のお話?
 じゃあまた。

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