やはり俺の異世界転生は命がけだ   作:ピーターパンシンドローム

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魔獣の頭を「牛のような頭」から「山羊のような頭」に変更しました。


第6話

sideガイウス

 

私が少し目を離している間に、悲劇が起こった。私は男声のものと思われる悲鳴のする方向へ走る。ああ、こっちは行くなといったのに…!勝手な行動をする人たちに腹を立てていたが、広間に出ると私は言葉が出なかった。山羊の頭の魔獣が4つの玉でお手玉をしていたのだ。しかし、私が絶句したのはお手玉をしている事ではない。そのお手玉とは、

 

 

 

 

 

 

ーー生徒の頭だった。

 

 

 

 

私は我を忘れて魔獣に向かっていった。

 

 

 

 

side八幡

 

声のする方向へ走っていると、途中で葉山と合流した。

 

「今の声、あの広間からか!?」

 

「ああ、たぶんな!」

 

「間に合うといいが…」

 

広前へ抜けると、ガイウスが魔獣と戦っていた。魔獣は杖のようなものの先きで突きを放ち、ガイウスはそれを剣でそらすのが精一杯であるように見える。防戦一方だ。

「葉山!お前は後ろからあの魔法、撃てるか?」

 

「ああ、あれだけ練習したんだ!やってみせるさ!」

 

「分かった。あとで合図をくれ!俺はガイウスのところに行って時間を稼ぐ!」

 

葉山はそれを聞くと、右手を前に出し詠唱を始める。俺が走ってガイウスの元へ行くと、魔獣は俺の頭に向かって左手を薙ぎ払うように振った。間一髪でしゃがみそれを避ける。

 

2対1に持ち込んでも魔獣の手は緩まず、俺たちは身体を右へ、左へと捻り、ときには上に飛び、何とか攻撃をかわすが、少しずつ体力が奪われていき呼吸も荒くなる。

 

クソ、このままじゃジリ貧だ!葉山はまだかよ!?

 

魔獣が拳を俺に降り下げる。サイドステップで避けようとしとき、

 

「ーーッ!?」

 

体力の限界か俺は足を持つらせた。正面には魔獣が拳を振り上げている。俺は腹に強い衝撃をくらい後方に吹っ飛んだ。

 

「「比企谷!?」」

 

 

ガイウスと葉山は声を上げる。

なんだこれ、めちゃくちゃいてえよ…

 

俺は何とか立とうと、剣を地面に刺し力を入れる。

 

そんな俺を見て葉山はさらにこう続けた。

 

「比企谷、よくやった!」

 

「ガイウス、横に飛んでくれ!」

 

その声に反応して、ガイウスが横に飛んだ。

 

次の瞬間、強烈な光線が辺りを包んだ。

 

光が消え、薄っすら目を開けると魔獣の右半身に円状の大きな穴が空いており、右腕は杖ごと消滅していた。

 

「ギャァァァァァ‼︎‼︎」

 

魔獣が初めて悲鳴をあげたが、致命傷とまではいかないようだ。

 

魔獣は怒りに身を任せて左腕でガイウスを引き裂こうとする。

 

俺はまだ上手く立ち上がれない。葉山はすぐにガイウスの元に向かおうとするが、後方にいたためにタイムラグが発生した。魔獣の猛攻は先ほどよりさらに速度が上がっており、ガイウスもよけきれずにかすり始めた。

そして次の瞬間、

 

ーーガイウスの右腕が宙にまった。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

さらに悲劇は続く。

 

魔獣の左腕が上からガイウスの左腕を切り裂く。

 

ーー鈍い音を立ててガイウスの左腕が落ちる。

 

 

文字通り棒立ちのガイウスに魔獣が手を振り降ろすと、甲高い金属音が鳴った。

 

葉山が剣で受け止めていたのだ。

 

「比企谷‼︎ 魔法を使え!」

 

俺は数回呼吸をすると、詠唱を始める。一気に身体が気だるくなるのと同時に俺の陰から無数の黒い手が飛び出し、魔獣を地面に押さえつけた。

 

「グルルルルルァァァァ‼︎」

 

地面でもがいている魔獣の前で剣を振り上げ、それを魔獣の首に叩きつけた。赤黒い血が噴き出し俺と葉山を染め上げ、魔獣は息絶えた。

 

 

「ガイウス‼︎」

 

俺たちはすぐに倒れていたガイウスの元へ向かうが、ガイウスは返事をせず、ただ荒い呼吸を繰り返しているだけであった。

 

「由比ヶ浜を呼ぼう!あいつは回復魔法を使える!」

 

「分かった!君は結衣をよんで来てくれ!俺は少しでも止血してみる!」

 

この場は葉山に任せて、俺は由比ヶ浜を呼ぶために走り出しすと、程なくしてこちらに向かっていた由比ヶ浜達と合流した。

 

 

ーーーー

 

「由比ヶ浜、どうだ?」

 

「もう命に別状はないと思う…けど…」

 

そう言って由比ヶ浜は腕のないガイウスから目を背ける。

 

「そうか…」

 

俺は由比ヶ浜の言葉の続きを敢えて聞かなかった。

 

由比ヶ浜達と合流してから、しばらくすると続々とクラスメイトが集まってきた。だが、泣き出すものや吐くものが多出した。無理もないだろう。辺りには大量の血と、同級生の頭、そして首なしの胴体、極めつけはガイウスの両腕が床に散らばっているのだ。

 

俺は殴られた自分の腹も由比ヶ浜に治療してもらったあと、生徒達の死体の前で俯いていた葉山の元へ歩いて行った。

 

「葉山、お前、こいつらの名前分かるか」

 

「ああ、佐々木、佐藤、藤本、山田だ。明るいやつらだったよ…」

 

俺たちの初の実践訓練は4人の死者と1人の重傷者を出して終了した。

 

 

 

 

 

 

side小町

 

「次のニュースです。沖縄への飛行機が墜落したテロについて、4人の元総武高生の死体が発見されました。佐々木さん、佐藤さん、藤本さん、山田さんです。他の総武高校生は行方不明のままで、依然として捜索は続けられるもようです。」

 

お兄ちゃんが卒業旅行に行ってから一夜明けた。まだお兄ちゃんは行方不明のままだった。

 


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