ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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2ヶ月振りです!

なんとお詫びすればいいのかわかりませんが…空白の20年が帰ってきました…

もう読む気ない方もいるかもしれませんが、更新したので是非読んでください。日常回なのと久々で文が安定しないのが申し訳ないです。


第65話

紗矢華に連れられ、学校敷設の食堂へとやって来た雪菜はあまりの人の多さに倒れそうになっていた。

 

「あっちゃー…、さすがに人が多いわね…」

「お昼時ですから…きっと少し待てば空きますよ」

 

そんな雪菜の言葉で待つこと10分、痺れを切らした紗矢華が睨みをきかせ、何とかテーブルを1つ確保することに成功した。

 

「何か買ってくるけど、食べたいものある?」

「そうですね…では、紗矢華さんと同じものを」

「雪菜?もう少し自分の意見を持った方がいいわよ?」

 

その容姿故か小さい頃からあまり友達のいない雪菜を紗矢華は密かに心配している。

もちろん、紗矢華としては雪菜を独占できるというのはそれはそれで美味しいのだが、このままでは彼女のためにならないことも理解していた。

 

「なら、紗矢華さんにお任せします」

「わかった。変なやつに絡まれたらすぐに呼ぶのよ?」

 

そう釘を刺した紗矢華は長いポニーテールを揺らしながら人集りの中へと消えていく。

紗矢華がいなくなれば雪菜は途端に手持ち無沙汰になってしまう。

それが寂しいと思ったりはしない雪菜だったが、暇潰しに読書をしようかと鞄から本を取り出した時だった。

 

「それでね、クラスにすごく美人のお人形さんみたいな女の子がいてね!それでそれで──」

「その話はさっきも聞いただろ…それより座る場所を…」

 

そんな男女の会話が雪菜の耳に聞こえてきた。

 

(とても仲が良さそうですが、カップル…とかでしょうか…)

 

仲のいい男女=カップルという歳相応な考えを浮かべ、ページをめくろうとした雪菜へ背後から突然大きな声がかけられた。

 

「雪菜ちゃん!そこ、座ってもいいかな?」

「──っ!?ど、どうぞ…?」

 

声の主は活発な黒髪の少女。

驚き、弱々しく放たれた雪菜の言葉が聞こえなかったのか、少女は猫のように可愛らしい顔で雪菜の方を見つめていた。

 

(確か同じクラスの…)

 

「す、好きに使ってください。私達は2席しか使わないので…」

 

雪菜がそう改めて言い直すと安心したのか、少女は机にお盆を置くとゆっくり雪菜の前へと座った。

状況から察するに席を確保する前に、食券を引換に行ってしまい困っていたというところだろうか。

 

「ごめんね、食べたらすぐに空けるから」

「いえ…遠慮せずごゆっくり…」

 

本当に申し訳なさそうに顔の前で手を合わせる少女の勢いに圧され、雪菜は同席を承諾するしかなかった。

クラスメイトであり、女同士であればそう気にすることもないかと思った矢先、雪菜はついさっきこの少女が誰か男と話していたのを思い出した。

雪菜がその事に気づいたと同時に、ひどくバツの悪そうな声が響く。

 

「凪沙はそれでいいかもだろうが…、さすがにクラスメイトでもない見知らぬ男がそこに座るわけには…だな」

「そう?」

 

2人の中で完結していた話が突然雪菜に振られる。

急に沢山のことが起こりすぎたのと目の前の2人の関係が気になったりと、なかなか答えを出せない雪菜はとりあえず

 

「紗矢華さんに聞いてみましょうか?」

 

と一言口にした。

その何気ない言葉で凪沙の隣に立っていた銀髪の少年の顔が一気に青ざめていく。

 

「ど、どうかしましたか…?」

「紗矢華って…煌坂か…?」

「ええ、まあ…」

 

どうやらこの少年は紗矢華のことを知っているらしい。

それならば聞くまでもないと判断した雪菜は目線で着席を促す。

 

「いや、煌坂と同席はやばい…。オレは誰か知り合いを探してくるから、凪沙と仲良くしてやって──っ!?」

 

どこか慌てている少年の言葉はそこで途切れ、不自然に身体が降り曲がった。

見れば男の股の下から1本の細い脚が生えていた。

 

「暁 古城?私の雪菜に何しようとしてるの?」

 

古城と呼ばれた男が手にもつ盆をゆっくりと机の上に置いたことを確認した紗矢華は、無慈悲にも力強く脚を古城の股下から引き抜く。

そして支えを失った古城はバタりと地面に倒れ込み、悶絶。

 

「さて、色々買ってきたけど何食べる?」

 

足元の古城には目もくれず、紗矢華は雪菜へと笑顔を向けそんなことを聞いてくる。

紗矢華が雪菜へと擦り寄る男を睨んだり、脅したり、最悪の場合暴力も辞さないことはもはや雪菜はよく知っているが、さすがに今のはやりすぎではないかと思ってしまう。

 

(というか…明らかに私怨が入ってる気が…)

 

紗矢華の後ろで転がっている古城へと向く雪菜の視線に、紗矢華も自分が少しやりすぎたのを気づいたのか、少し気まずそうな顔になる。

よく見ると雪菜の前に座る凪沙もなにか恐ろしいものを目にしたような顔をしていた。

 

「こ、こいつは女の子に股間を蹴られて喜ぶ変態ドM男だから……!」

「んなわけあるかっ!?」

 

名誉毀損も甚だしい紗矢華の言い訳にツッコめる程度には良くなったらしく、古城はゆっくりと凪沙の隣へと座る。

罪悪感と周りの空気のせいでもはや何も言えなくなった紗矢華も、最後の抵抗と言わんばかりに古城を冷たい目で見ながら雪菜の隣へ。

 

「ご飯も冷めちゃいますし、早く食べませんか…?」

 

微妙な雰囲気が長く続くことを恐れた雪菜の言葉で4人は各々、昼食を取り始める。

紗矢華以外の人間とはあまり話すことのない雪菜はもちろんのこと、つい数分前の光景を見た凪沙もいつものようにマシンガントークを展開する気にはならないらしい。

 

そんな沈黙を破ったのは紗矢華でも古城でもなく、第3者の声だった。

 

「古城、那月ちゃんが春休みの課題について……ってなんで…煌坂さんと楽しそうにしてるの?」

「お前にはこの通夜みたいな状況が楽しそうに見えるのか!?」「藍羽 浅葱!?」

 

古城と紗矢華はほぼ同時に、改造制服を着た金髪美女に向かって外にまで聞こえるほど大きな声を返した。

 

「ちょっとこいつ借りていくから」

 

鬼のような形相で有無を言わさず、古城の首を掴んだ浅葱はそのままズルズルと食堂の外へと向かって行く。

 

「ゆ、雪菜?私少し用事思い出したから…す、すぐ戻るから!」

 

おろおろと雪菜と古城が連れていかれた方向を見ながら、紗矢華はそう言うと人混みを掻き分けものすごいスピードで浅葱を追いかけて行った。

 

「あはは…なんだか変なことになってるね…」

「そ、そうですね…とりあえずご飯…食べちゃいましょうか…」

 

机の上に放置された4人分の食事を前に、雪菜と凪沙は半ば呆れた顔で苦笑し合った。

雪菜にとって、暁兄妹との出会いはこんな波乱のものだった──




元々、この作品は原作1章が終わり2章がどうなるか分からないとのことだったのでどうせ出ないなら自分で書くかと始めたものです。

しかし…原作が思ったより早く復帰してしまい(嬉しいことではありますが笑)特に書く必要がなくなったような気がしていました。
ですが、お気に入りが徐々に増えるのを見たり、Twitterで更新は?と聞かれることがありなんとか原作からの分岐IFルートとして書き続けることを決めさせていただきました。

勝手な都合でなかなか更新せず、本当に申し訳ないですがゆっくりと更新していくので是非応援していただければと思います!

励みにもなりますし、久々に皆様の意見も聞きたいので是非感想、評価などお願い致します。

Twitterはこちら(‪@kokuren_hameln‬)よければフォローお願いします。

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