ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

65 / 68
遅くなりました…
昨日でこの作品(初めて小説を書き始めて)ちょうど5ヶ月。
ここまで続けれてるのも皆さんのおかげです。ありがとうございます!


第62話 幕間Ⅱ

夜の街の賑やかさが新鮮なのか興味津々といった様子で周りをきょろきょろと見渡すアスタルテを隣で見ながら古城はその顔に笑みを浮かべていた。

雪菜のことは気がかりで仕方が無いが、古城は久しぶりに歩く懐かしい街と近頃どんどん人間味を増すアスタルテの姿が嬉しかった。

 

そんな姿に少し元気をもらった古城の目の前から豪奢なドレスに身を包む女性が近づいてくる。

絃神島には数多くの魔族、人種が居住しているがこの暑い中そんな姿をする者は1人だけ。南宮 那月以外はいないだろう。

 

「夜間徘徊は感心しないな」

 

ゆっくりと古城とアスタルテの前で脚を止めた那月は一言そう告げた。

 

「いやでもオレもう高校卒業したし…痛って!」

「お前に保護者の権利はない。幼いアスタルテを連れて夜間徘徊したいならあと2年待つんだな」

 

体感した時間なら優に20年を越えている古城は那月の言い分に文句を言おうと思ったがそんなことで那月が許す訳がない。

もし許してくれるなら最初からこんな所までわざわざやって来るはずがないのだ。

 

「アスタルテ先に帰っていろ」

「…」

 

珍しくアスタルテは那月に反抗的だ。

そしてその顔は古城と2人でいる時間を邪魔されたのが気に入らないのか口を尖らせ不満そうに見える。

 

だが彼女の可愛らしい抵抗など空隙の魔女、南宮 那月には効果がないらしい。すぐにその身が紫の魔法陣に包み込まれ、彼女はその場から姿を消してしまう。

 

「相変わらず容赦ねぇな…」

「保護者として当然だ」

 

那月は機嫌を損ねたのか腕を組む。

その動作のせいで今までは崖に等しかった胸の膨らみが強調され古城の視線は思わずそこへ吸い寄せられてしまった。

 

「お前はどこを見ている」

「痛ってぇ…そんなに何回も叩くなよ馬鹿になったらどうすんだ!?」

「そんなことなら心配はないお前は私の生徒史上最高の馬鹿…いや、2番目か」

「え?」

 

てっきりいつものように馬鹿にされるだけかと思っていた古城は言葉の最後が那月らしくない気弱なものとなったことに驚いた。

 

「懐かしいな」

「ああ…」

 

那月が懐かしんでいるのは雪菜がこの島に来た当初のことだろう。

古城と雪菜がゲームセンターの前で那月に夜間徘徊について注意されたのだ。

 

「那月ちゃんが気に病むことはないんじゃないか?姫柊がいないことで色々と困ることもあるだろうし、これから問題が起こるのかもしれない。でもオレは姫柊の意思を尊重したい」

「意思を尊重…か。無理やりにでも見つけて連れ戻そうとするやつのセリフとは思えんな」

 

那月の身なりと容姿はいくら気配を殺しても隠せるものでは無い。

徐々に周囲からの注目を浴び始めた2人は話しながら裏路地へと入りキーストーンゲートの屋上へと転移した。

 

「とりあえずオレの心配はいいよ。もう大丈夫だ」

「誰が誰の心配をした?」

「痛い痛い痛い痛いっ!」

 

冷たい目で脚を踏んでくる那月のそれは完全に照れ隠しだろう。

普段は表に出さないが彼女は結局のところ優しいのだ。

 

「まあいい。とりあえずお前に言っておくことがある」

「オレに?」

「暁 古城としてではなく夜の帝国(ドミニオン)の領主としてのお前にな」

 

その言葉の重みに古城の顔は一瞬にして真面目なものへと変わる。

 

「姫柊 雪菜の眷獣に殺された牧師はよく出来た人形(パペット)だった。死体は消え、ただ1枚の暗号が書かれた紙が落ちていた」

 

那月は様々な形の図形が乱雑に並べられた、一見子供のいたずら書きのような紙を古城へと見せてきた。

 

人形(パペット)の出来からしてかなりの使い手だ。魔術の他に錬金術や様々な力の痕跡を感じる。かなり大きな敵がいるだろうな」

「そいつは姫柊を狙ってるんだよな?」

「それは分からん。1つ分かることはこのレベルの術者ならあらゆる場所、組織に人形(パペット)を忍び込ませることが可能ということだ。案外近くに潜んでいるのかもしれん」

 

那月の言葉は古城に重くのしかかった。身内に未知なる敵が潜んでいるなどとは考えたくはないが、あらゆる経験をしてきた那月が警戒しろと言っているのだから無視はできない。

 

「どう対策を取るのか、正体もわからない相手を追うのか無いものとして無視するのかしっかり考えるんだな」

 

それは那月なりの助言なのだろう。

ヒントを与え決断を委ねる。やはり彼女は優しすぎた。

 

「ああ。その紙浅葱に回すんだよな?」

「それしかないだろう」

「なら明日以降にしてやってくれ、あいつ多分今はまだ泣いてるだろうから」

 

初めて古城が浅葱と出会った時、そして真祖大戦のとき…彼女が涙を流すことは少ない。だからこそ古城はそっとしておいてやりたかった。自分のせいで彼女を泣かせた負い目もあるのだろうが彼もまた優しすぎるのだ。

 

「お互い他人に甘いな」

「え?」

「いや、なんでもない。明日帝国評議会がある。そこでお前の決断を聞かせてもらおう」

 

そう言い残し那月はその場から姿を消した。

 

屋上へと残された古城は夜風に吹かれながら空に広がる星を眺めている。

そんな姿を遠くから楽しそうに眺める者が1人。

 

「空隙の魔女、南宮 那月。第四真祖、暁 古城。その優しさと甘さが仇にならなければいいのですが。次はどう切り抜けるのでしょう…」

 

月光に映える銀色の髪を持つ彼女は笑みをこぼした──




長かった序章も今回で終わりです。
次回は久しぶりに日常パート(詳しくは最新の活動報告を)になります。
お付き合い下さい。

さて、ストブラ原作の新刊が出ましたね。昼に読み終わり色々頭を悩ましているんですが…(カス子どうやってねじ込もうかとか…)

まだ読んでない方もいらっしゃると思うので感想はやめておきますが九式が本当に殲滅戦特化みたいで…ちょっと感動したり、色々とこれから使う予定だった設定なども出てきて1人興奮してたりします汗
これだけ長く書いていれば多少被るのも当たり前かなとは思いますが…
いやでもしかし!前巻と違い今巻はストブラらしくてよかったですね。(自分の作品の存在意義が無くなった感ありますが笑)

長くなりましたがこの作品は真祖大戦以降のパラレルワールドとして、原作は原作で楽しんでもらえれば嬉しいです^^*
最新の活動報告是非ご意見ください!

Twitterはこちら(‪@kokuren_hameln‬)よければフォローお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。