雪菜と古城の夫婦漫才が個人的にベストシーンかなと。
霧葉ももうすぐ出すのでお待ちください。
偶然、狙った訳でもなくOVAでの話と若干類似する場所がある今話です。
説明回ということもあり、短いですが次回多めにするのでお許しください。
余談ですが、前々話のルビ振りを若干修正しました。
それに従ってキャラ紹介etcの方に2項目ほど付け足したのでこの話を読む前でも後でも読んでもらえたら嬉しいです。
ドーム状の空間の中に1人の少女が囚われている。
少女は天井から滴り落ちる冷たい雨水のおかげでなんとか目を覚ました。
「ここは…?確か紗矢華さんと別れて獣人に…」
少女、雪菜はこんなときでも冷静さを欠くことはない。
ただ今は状況確認だけが自分の役目と言わんばかりに記憶を掘り起こす。
自分が何者で、何をしようとしていたのか。
この2点さえ分かればとりあえず問題ない。
「牧師と獣人」
その2つは雪菜が意識を失う前に見たものだった。
今回の任務は過激な宗教団体の調査。
牧師が存在するということは宗教が絡むことは明白であり、獣人が絡みそうな過激な宗教といえば聖殲や天部絡みだろう。
つまり浅葱の情報は間違いではなかったのだ。
「となると、紗矢華さんたちは外から。私は内から探りを入れたいところですが…どうしましょうか…」
暗い空間にようやく目が慣れ、周囲の状況がようやく理解できるようになった雪菜は自らの身体が何らかの魔具、あるいは聖殲の遺産の中へ囚われていることに気づく。
自由に動くことはできるが、3mほどの筒の中から出ることは出来ない。
破壊を試みるにも雪霞狼は紗矢華を守るため置いてきてしまっており、
「困りましたね…」
「懸命な判断だ、といっても眷獣は使えないはずだがね」
ドーム状の空間に雪菜が最後に出会った牧師の声が谺響する。
その声と共に暗い空間に明かりが灯された。
「これは…祭壇?」
雪菜は壁一面に描かれる壁画と雪菜を閉じ込めるパラボラ状の何かを見てそう結論づけた。
さながら雪菜は生贄といったところか。
「いやはや本当に聡明なようだ。自身のことを分かっていれば当然かもしれないが」
品定めをするような目で雪菜を見る牧師は祭壇の周りをゆっくりと円を描きながら歩いている。
「あなたは何をするつもりなんですか!」
「気づいていないはずはないと思うが?この場所が祭壇であり、そこに鎮座する魔具。もちろんレプリカなんて安いものじゃない、正真正銘の本物だ」
雪菜にはこの男が考えることを理解することはできない。
自らが本来相反する霊力と魔力を身に宿し、およそ神の力と言える神気をも操る稀有な存在ということが分かっていてもだ。
「神格振動波駆動術式。
男はそこで脚を止める。
「しかしだ。魔力を無効化する術式を魔族が行使すればどうなるか、答えは単純。跡形も無く消滅するだろうな?」
「それがどうかしましたか?」
雪菜はあくまでも惚けてみせた。
「ならなぜ君は消滅しないか、それは魔力以外に未だ霊力を保持し続けるからだ。これを神の奇跡と言うことは易いが、私は単に生存本能によるものだと考える」
「つまり、私の身体が生存本能により進化したと?」
「進化であることは間違いないが、そうではない」
生物は皆等しく魔力、あるいは霊力を一定量その身に内包し生きている。その総量が著しく減れば体調を崩し、無くなれば死ぬ。
魔力と霊力をどちらも持つ特異なものは一定数存在するが、その力の総量はたかだか知れている。
雪菜ほど高いレベルで2つの力を両立するものは未だ確認されたことが無いのだ。
「術式が生物と混ざることがある。君の身体にも神格振動波駆動術式が形を変えて混ざっているはずだ」
「形を変えて…?」
「術式の本来の力は魔力の無効化に留まるのだろうか。君が魔力を無くて良いものと考えたからこそ、魔力は無効化されたのではないか?本来の能力は自らの思い描く世界へとこの世の理を書き換えることにあるのではないだろうか」
仙都木阿夜は雪霞狼の能力を世界を本来あるべき姿に戻すものと定義した。
しかし、それでは雪菜の特異な体質が生まれたことに説明がつかない。
神の奇跡、雪菜自身が特異であったとすればそれまでだが牧師の言うように力を定義すれば筋が通らないこともなかった。
「私が『血の伴侶』になった瞬間に霊力は必要なものと考え、自らの身に移る神格振動波駆動術式を用いて今の状態を無理やり作り出したと言いたいんですか?」
「そう考えれば自然だと思うが、どうだろうか。第四真祖の死を無きものにし、
「そうかもしれませんね、仮にそうであったとしてあなたの目的はなんですか?」
「神へと至る鍵。私達はあなたがそうであると信じている。世界の理を書き換える力、それを増幅し維持し続ければ理想の世界を作れるのではないか?」
牧師は手を広げ、神に祈りを捧げるように深々と頭を垂れた──
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古城の血を吸わせてくれという頼みをあろうことか乳を吸わせてくれと勘違いし1人でパニックになっていた紗矢華もようやく落ち着き、古城に吸血をさせていた。
そんな光景をアスタルテと凪沙に見せぬよう、少し離れた場所で那月は手持ちの情報と凪沙から得た情報で事の顛末を推測する。
1通り自らの問いに答えを出した那月はイチャつく古城と紗矢華に鋭い視線を送り、目の前に座らせるとその考えを共有した。
那月の推測は完璧なものであり、雪菜が牧師から聞く話と何ら変わりはない。
この辺りはさすがの一言だ。
「止めなきゃいけないのはよく分かった、今すぐ姫柊のところへ行こう」
「連れていってくれの間違いだと思うが?」
逸る気持ちを抑えきれない古城とは裏腹に那月は今すぐにという雰囲気ではない。
「ダメよ、古城。相手がどこにいるか分からないんだから、まずそれを…」
「腑抜けたな真射姫、相手ならこの真上にいる。複雑な術で隠れてはいるが明らかに大規模な術式が使われた形跡がある」
那月の指摘で紗矢華と古城は初めて微妙な魔力の残滓を感じ取った。
「アスタルテ、凪沙を連れて避難してくれ」
「
「随分と手なずけたようだな」
息を吐くようにアスタルテへ命令をとばす古城とそれを瞬時に遂行するアスタルテ。その2人を見て那月が不満げな顔をした。
「30分。それ以上は保証できん、用意はいいか?」
那月の問いの真意は定かではない。
しかし、雪菜を助けたい古城と紗矢華は覚悟を決める他なかった。
「いくぞ」
その言葉と同時に那月の腕が横へと振るわれる。
そして空中に隠されていた島が1つ、まるごと姿を現した。
「真射姫、地上の獣人、魔具使いはお前に任せたぞ」
「はい?」
紗矢華の素っ頓狂な声に答えるものは目の前にはいない。
古城と那月の2人は紫の魔法陣へと姿を消し、どこかへと消えている。
「地上ってどういう──って何よこれ!私、完全に囮じゃない!」
上空へと浮かぶ島から紗矢華の声に反応して無数の強化獣人と黒フードの魔具使いが現れる。
「もう!あなたたち、悪いけど全員八つ当たりさせてもらうから!」
紗矢華はフラストレーションの全てを迫り来る敵ヘと向け、
毎度説明回はつまらないかつ駄文でよく分からなくて申し訳ないです。
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