ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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もうお気づきの方も多いと思いますが…またやりました。

初期から読んでくださっている方ならまたか…と思うかもしれませんが、恒例の楽しようとしてだいぶ昔考えてた設定引っ張ってきて原作ガン無視しちゃうやつです…

改訂前の話は明日消しておきます、めんどくさいとは思いますがこちらもお読みください…


第46話 改訂版

古城が自室へ籠り始めてから早くも2週間が経った。

自分が肉体的にも精神的にも日に日に衰弱していくのが分かるが古城は何もする気にならない。

何か自分の中の大事なものがゴッソリと抜け落ちてしまった喪失感に苛まれ続けて1週間ほど経った頃、彼は毎夜奇妙な夢を見るようになった。

 

「鎖…」

 

ベッドへと寝転び天井を見つめながら古城は夢の内容を思い出そうとする。

どういう訳か起きた瞬間に夢のほとんどの内容を忘れてしまうのだ。

それが悪夢の類いであることだけは分かっても断片的な記憶だけでは夢の内容全てを思い出すことは出来ない。

1週間毎晩同じ夢を見続けて集めたそのちぐはぐな記憶を口に出し整理していく。

 

「黒い影…、金…黄金の鎧…」

 

あとほんの少しで答えに触れそうな感覚を覚え古城は必死に記憶を掻き集める。

 

「黄金の鎧…守護者…、確か名前は…輪環王(ラインゴルト)──」

 

長い時間をかけて古城はようやく答えへとたどり着いた。

 

「鎖に縛られた黒い影の出した守護者にひたすら切り刻まれる夢…あれは一体なんだ?」

「この世の魔を統べる者、汝は我が力を欲するか──?」

 

聞き慣れない声に古城はベッドから飛び起きる。

突如背後に気配を感じ振り向くとそこには古城がよく見知った黄金の鎧騎士が浮かんでいた。

 

「那月ちゃんの守護者!?生きてるのか!?」

 

黄金の鎧騎士は何も応えない。

しかし古城は守護者が放つ魔力の質が変わっていることに気がついた。

 

「お前はオレの魔力で…ってことは那月ちゃんは…」

「この世の魔を統べる者、汝は我が力を欲するか──?」

 

古城の言葉等気にもせず黄金の鎧騎士は同じ言葉を放ち続ける。

 

「それしか言う事ないのかよ…いいよ契約してやる」

 

呆れながらも古城には那月の形見の様な存在である守護者を捨てる選択肢はなく、簡単に受け入れてしまう。

古城が契約する意思を示した瞬間に守護者は消えてしまった。

 

「疲れすぎて幻覚でも見たか?」

 

再び古城がベッドへと寝転がろうとした瞬間、頭の中に膨大な量の知識が流れ込みそれに呼応するかのように魔力が暴走を始める。

 

「先輩──!すみませんが入らせていただきます!」

 

古城の監視役として1人家に残っていた雪菜が雪霞狼で扉を打ち破り古城の元へと飛んでくる。

 

「姫柊、どいてろ!」

 

雪菜は古城の中で暴れる得体の知れない魔力に危機感を覚える。

 

「眷獣とは質の違う魔力…」

 

時間が経つごとに強くなる古城の魔力に危険を感じた雪菜は雪霞狼を見つめる。

 

「姫柊それでいい、早くしてくれ!」

 

苦しそうな顔をしながら魔力を抑え込む古城を見て雪菜も心を決め銀色の破魔の槍を古城の胸元へと突き刺す。

 

「ぐっ…がぁぁぁぁぁっ!」

 

古城が身を焼かれるような叫び声をあげなんとか魔力の暴走は止まる。

 

「すみません…、あとで私の血をあげますから…」

「悪いな…」

「それよりいきなりどうしたんですか?」

 

2週間も引き篭もっていた自分を責める様子がない雪菜に感謝しつつ古城は自分が那月の守護者と契約したことを伝えた。

 

「本来守護者はなんの能力も持たない人間としか契約出来ないはずですけど…」

「契約というより無理やり押さえつけてる感じの方が近い」

「守護者というからには何らかの代償を先輩が払わないといけないはずです。眷獣を従えるのに血が必要なように…」

 

雪菜は自分の推測を続ける。

 

「多分ですけど、先輩の中に流れる南宮先生の血が辛うじて守護者と先輩を繋ぎ止めている状態なんじゃないでしょうか…」

「なら、どうしたらいい?」

「確証はないですけど…魔女よりも吸血鬼の方が生物種的に高位の存在であることは確かなので吸血鬼のルールが適用されると思います」

 

古城は少し考えて口を開く。

 

「つまり強力な霊媒が必要ってことか?」

「はい。推論の域を出ませんけど」

「じゃあ、あとで姫柊の血を貰うからいいか」

 

雪菜は古城の雰囲気が変わったことに気づき気を引き締める。

 

「那月ちゃんのことなんだけどさ──」

「その…南宮先生を助けることはもう…」

 

雪菜は言いづらそうに顔を俯かせていく。

 

「それがさ、那月ちゃんを助けれるかもしれない方法はあるんだ」

「え?」

「そんな驚く顔する必要ないだろ?ただそれがオレに出来るのかそれを迷ってた」

 

返事がないことを確認して古城は那月が監獄結界の中で話した昔話を雪菜へと思い出しながら伝える。

 

「那月ちゃんには師匠が2人いて1人は千賀、魔術を教えてもらった人。もう1人は空隙の魔女として15年前に欧州の魔族を虐殺してた時の恩人」

「その人がどうしたんですか?」

「那月ちゃんは用があるならその人に会いに行けって言ってたんだ。だから会いに行こうと思う…」

「まだ自信ありませんか?」

 

古城の暗い表情を見て雪菜が首を傾げる。

 

「いや、那月ちゃんを助けれるまで何年かかるか分からないしさ、今回の件は1人でやりたいんだ…」

「そうですか。気にすることありませんよ、私達には幸い時間ならいくらでもありますから先輩のこと待ってますよ」

「姫柊…」

「その代わり──」

 

雪菜は突然古城へと抱きつく。

 

「私のこと忘れないでくださいね?外国で他の女の子と仲良くするのもダメです」

「分かったから!離してくれないか?」

「嫌です、離しません」

「その…オレずっと風呂入ってなかったし臭いだろうからな?」

「先輩の匂い好きだから構いません、これ以上抵抗すると私の血あげませんよ?」

 

ここまで言われては古城ももう抵抗することが出来ない。

自分の方へと綺麗な首筋を向けてくる雪菜を強く抱き締めその首元へ牙を突き立てる。

 

「先輩…、あっ…ん……」

 

久しぶりに古城から血を吸われ雪菜は嬉しそうに声をあげる。

雪菜の中に流れる良質な血を存分に吸い、胸の傷も癒えた古城は力が抜けて寄りかかってくる雪菜の身体を抱きしめた。

 

そのまま静かな時が流れ古城は気まずくなり雪菜から離れようとする。

 

「先輩…どこ行くんですか?」

「どこって…ちょっと風呂にでも」

「背中流しましょうか?」

「え?いやいやいやいや、いいって!」

 

逃げるように古城は風呂場へと駆け込み湯船へと身を沈める。

入ってしまえば追ってこないと考えた古城の耳に風呂場の扉が開けられる音が聞こえた。

 

「姫柊さん?」

 

目の前にはタオルも巻かずあられもない姿の雪菜が立っていた。

 

「恥ずかしいのであまり見ないでもらえると嬉しいです…。あと、背中流すのでここに座ってください…」

「わかったから!」

 

古城は流れに乗せられるまま雪菜の前へと座る。

ぎこちない手つきで雪菜の手に握られた石鹸が古城の背中を這うように滑る。

 

「どうですか…?」

「ああ、いい感じだ。すごくいい」

「よかったです」

 

雪菜がシャワーで古城の背中についた泡を流し、元あった場所へシャワーヘッドを戻そうとしたときだった。

古城の背中に柔らかなものが当たる。

 

「……っ!」

「先輩?」

 

古城の反応を見て雪菜の声が急に冷ややかなものへと変わる。

 

「姫柊、すごくよかった。ありがとう」

 

古城は手短に礼を述べると鼻血を出しながらダッシュで風呂場から自室へと走った。

 

「先輩…やっぱりいやらしい人ですね…」

 

怒る気にもなれずため息をついた雪菜は自分の体を拭いてから古城の元へと向かう。

 

「…、姫柊?その悪かった、そういうつもりはなくてだな?」

「もういいですよ、でも2人だけの秘密にしてくださいね」

「ああ…」

「そろそろ行ったほうがいいですよ、紗矢華さんも凪沙ちゃんも帰ってくる頃ですし引き止められたら辛くなるだけだと思いますし」

 

一瞬迷ってから古城は雪菜の言う通りにすることにした。

 

「じゃあ、説明とか頼めるか?いつ帰るかわからないことも含めて」

「はい。分かりました」

「じゃあ、行ってくる──」

「先輩、忘れ物ですよ」

 

雪菜が後ろから取り出したのは古城がいつも着ていた白いパーカーだった。

 

「それが一番似合いますよ、勝手に刺繍しちゃったんですけど大丈夫でしたか?」

「え?」

 

古城が雪菜の言葉で自分の着たパーカーへと顔を下ろす。

 

「あ…これ猫叉の…」

「ネコマタんです!」

「はは、ありがとな。なるべく早く帰ってくるようにするから待っててくれ」

「はい…帰ってきたらさっきのサービスの続きしましょうね」

 

悪戯に笑う雪菜の可愛らしい顔に胸の高鳴りを感じながら古城はしばらくの間、雪菜や仲間と離れる旅へと歩き出した──




お詫び?にネタバレを少々…

続きを連載するとすれば古城の旅には女性陣の中から1人連れていくつもりです。
雪菜ではないので誰か考えてみてください^^*

Twitterでは少し言いましたがなろうの方にオリジナル作品を投稿してみようかと思っています。
その影響としてこの作品がどうなるかは分かりませんが読んでくださる方がいる限り何らかの形で続けていくつもりなので応援よろしくお願いします!

Twitterはこちら(‪@kokuren_hameln‬)よければフォローお願いします。

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