ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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また遅くなりました…


とりあえずどうぞ!


第41話 ラ・フォリア・リハヴァイン

「こうして私的に会うのは久しぶりですね、古城」

 

古城の目の前にはアルディギア王国第一王女であるラ・フォリア・リハヴァインが立っていた。

 

「ラ・フォリア!?連絡もしないでどうしてここに──」

「あら、連絡ならしましたよ?」

 

ラ・フォリアはそう言うと笑顔で自分の携帯の画面を古城へと向ける。

 

「あのな、せめて出発する前とかに連絡くれないか?こっち来てからメール送られても困るだろ…」

「そうですね、これからは気をつけることにします」

 

まったく反省の色を見せないラ・フォリアの表情に古城は呆れた。

 

「それで何か用があるんだろ?どうしたんだ?」

「そうでした。夫が獅子王機関に喧嘩を吹っ掛けたという噂を耳にしたもので」

「夫になった覚えはないんだけどそうだな…」

「何か策は?」

「あったら苦労しないな、来たら追い返す。それだけだ」

「古城らしくて安心しました。それでは私はこれで」

「え?それだけなのか?」

 

古城は部屋から出ていこうとするラ・フォリアに思わず声をかけてしまう。

 

「助けてもらえると思いましたか?」

「そんな図々しいことは言わないけどさ、せっかく来たのにすぐ帰るなんてちょっと寂しいっていうかさ」

「それもそうですね」

 

ラ・フォリアはポケットから携帯を取り出しどこかへと電話をかけ始めた。

 

「1日ほど予定を繰り下げます、それでは」

 

「おいおい、強引すぎないか?」

「上に立つ者として時には強引さも大事ですよ?」

「そういうものか…」

「そういうものです」

「なんかありがとな、わざわざ予定調整してもらって」

「なんのことでしょう?」

 

ラ・フォリアにはとぼけられてしまったが、雪菜や紗矢華がいないという状況で色々と考える自分を気遣ってくれたことを察した古城は素直に感謝し好意に甘えることにした。

 

「ここにいても何もないしちょっと出掛けるか、どこか行きたいとこあるか?」

「古城に任せますよ」

「そういうのが1番困るんだけどな…」

 

女性をリードすることが苦手な古城は苦笑しながらラ・フォリアを連れ外へと向かった。

 

「とりあえず昼飯にするか、ラ・フォリアはなにか好きな食べ物とかってあるのか?」

「特に好き嫌いはありませんよ?古城がいつも食べているものが食べてみたいですね」

「口に合わなくても知らないからな…」

 

タクシーを拾い島の外縁部へとやってきた2人は海辺特有の少し錆びれた店へと足を踏み入れた。

 

「よお、兄ちゃん久しぶりだな!」

「ご無沙汰してます」

「今日は凪沙ちゃんの代わりに美人さんと一緒か。彼女か?」

「いやこれは──」

「はい、彼女のラ・フォリア・リハヴァインと申します」

「そうかそうか、汚い店だがゆっくりしてけ」

 

思わぬところで既成事実を作られた古城は頭を抱えてしまう。

 

「すみません、いつものやつ2つで…」

「美人が隣にいるのに元気ないな、シスコンも大概にな」

「余計なお世話ですよ」

 

店の主は注文を聞き終わると厨房の方へと姿を消した。

 

「随分仲がいいんですね」

「ああ、この島に来てすぐくらいから凪沙とお世話になっててな。この島の皇帝になってからでも前と変わらず接してくれる数少ない人だよ」

 

他愛もない話をしているうちに注文した料理が2人の前へと運ばれてきた。

 

「これが絃神島名物ですか…」

「ラ・フォリアちゃんは外国の人か?生魚に抵抗あるなら他のものもあるぞ?」

「待て待て、絃神島名物とか書いてあるのはこのおっさんの自称だからな」

「ふふふ、面白い方ですね。心配なさらず豪に入りては豪に従え、問題ありません」

「ならいいんだけどな」

 

ラ・フォリアは目の前の豪華な海鮮丼に恐る恐る箸を伸ばし、口に運ぶ。

 

「どうだ?」

「美味ですね、生魚に抵抗はありましたがこんなに美味しいものは本国でも滅多にありませんね」

「さすが王女様はよく分かってんなぁ」

「おい、おっさん。アルディギアの王女ってわかってたのか」

「まあ有名だからな、でもここに来たからにはただの客だ。身分なんぞに興味はねぇよ、美味いって言って貰えりゃそれで十分」

「おっさんらしいな」

「海外進出でも考えるかね」

 

高笑いしながら店主が厨房へ戻ろうとしたときラ・フォリアから思いのよらない言葉が放たれた。

 

「そうですか、では我がアルディギア王室がその計画全力でプロデュースさせていただきます」

「は?」

「美味しい料理を我が国にも伝えたい、至極当然なことでしょう?」

「いや、そうだけど…ちょっといきなりすぎないか?」

「兄ちゃんは黙ってな、これは王女さんとオレの問題だ」

 

2人を店に残し、古城が外に出てから30分ほどしてラ・フォリアはやっと外へと出てきた。

 

「遅かったな」

「思いがけないところで素晴らしいものを見つけてしまい思わず興奮してしまいました」

「ラ・フォリアが楽しそうでよかった」

「我が国で開店するときは是非古城にも来ていただきたいものです」

「考えとくけど少し早くないか?そこまで生きてるかも分からないんだが」

「珍しく弱気なのですね」

「珍しい…か、勝てるか分からないのはいつも同じようなものだけどさ今回ばかりは相手が強すぎるっていうかな」

「そうですか」

 

ラ・フォリアはそう冷たく言い放つと足早に古城の前を歩いて行く。

 

「ラ・フォリア?怒ったか…?」

「いいえ」

「じゃあどうしたんだよ」

「あなたの頭はなんのためについているのですか?」

 

鈍い古城はすっかりお手上げというように頭を掻くが彼女は止まる気配がなかった。

 

 

数時間ほど街中を無言で歩くという状況が続いたときだった、ずっと古城の前を歩いていたラ・フォリアが急に立ち止まる。

 

「古城、こうして歩く中で周りを見て何か気づくことは?」

「気づくことか…」

 

しばらく考えて古城は口を開く。

 

「人が多いとかしか言えないかな」

「そうです。ここにはあなたが守らないといけないものがこれだけあります」

「そうだな」

「雪菜や紗矢華だけでなく多くの人があなたを必要としている。それが分かったなら自分がどういう気持ちで何をすべきか考えてください」

 

ラ・フォリアは言いたいことを言い終えたのか古城の家の方へと歩き始める。

 

「ラ・フォリア、少し考えるから先帰っててくれ」

「そうですか。では帰りを待っています」

 

2人はお互いに笑顔を交わし、別々の方向へと別れていった──

 

 

ラ・フォリアと別れてから古城は眷獣の能力で近くのビルの屋上へと座りここ数日のことを思い返していた。

 

「オレがなにをするべきか、どういう気持ちを持てばいいのかか…」

 

誰に言うでもなくそう呟いた古城は陽が落ちるまで街を眺めてから家へと戻る。

玄関のドアを開けると古城の目の前には凪沙が立っていた。

 

「古城くん?少しお出かけしてくるからラ・フォリアさんとしっかりお話するんだよ」

 

そう言い残すと凪沙は外へと出て行く。

夜中に妹が1人で外出することに不安を覚えない訳では無いが彼女の気遣いをありがたく思った古城は靴を脱ぎ奥へと進む。

 

「今日は帰ってこないかと思っていましたよ?」

「連絡もなしに帰らないと凪沙のやつが心配するからな」

「それで、古城。あなたの答えは出ましたか?」

「ああ。オレは──」

 

古城を不自然な感覚が襲い、気づけばラ・フォリアの首元が古城の口に挟まれていた。

 

「なっ…」

 

首元を噛むような形で口が塞がれているため古城は声を上げることが出来ない。

それを見て悪戯な笑みを浮かべながらラ・フォリアは話を始めた。

 

「あなたに期待をしているのは雪菜や紗矢華、そしてこの国の人間だけだと思いますか?私もあなたに期待しています。もちろん我が国のより一層の発展を望む、それも王女という立場上少なからずあります。ですが1人の女として、王女ラ・フォリア・リハヴァインとしてではなくただのラ・フォリア・リハヴァインとして暁 古城という男性の行く末を、あなたの作る未来が国がどうなるのかそれを一番近いところで見ていたい。その気持ちが強くあるのもまた事実です」

 

「ダメですね、何を言っているのか自分でも分からなくなってきます。我ながらなんでも簡単にこなせると思っていましたが恋とは難しいものです」

「ラ・フォリア…」

 

首元から口を離そうとした古城だがすぐにラ・フォリアが古城に迫り口を塞がれる。

 

「古城、酷いことなのかもしれませんが私にはこういうやり方しかできないもので目を瞑ってくれるとありがたいです、もしあなたが1人の男として全てを背負い戦い続ける覚悟がありどんなときでも前へ進むことを諦めないと誓うなら私の首を噛み切り『血の伴侶』としなさい。それが無理ならその口を私の首元から離しなさい」

 

そう言い終わるとラ・フォリアは古城の頭を引き寄せていた腕を解いた──




続きはすぐに更新できると思います!

ラ・フォリアって書きにくいんですよね…
変なところあったら遠慮なく突っ込んでください。

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ここからはもう大体書いてあるので更新早くなりますよ!

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