ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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お久しぶりです…
長らく更新できていませんでしたが、少し身の回りが忙しくなっているので更新頻度が落ちると思います。

次回から長めにしようと思いますが、今回は更新やめたわけではないという連絡を兼ねての更新なので短めです。



第39話

古城は、雪菜と紗矢華を抱えながら自宅の前でなにをするでもなく立っていた。

何も2人が重すぎたとか古城の体力が尽きたとかそんなことではない。

雪菜と紗矢華の身体はよく鍛えられているが抜群のスタイルを誇っているため、同年代の平均体重よりかなり軽い。

さらに、吸血鬼である古城には細身の女の子2人を抱えるくらい造作もないことである。

では彼は何故自宅の前で突っ立っているのか──

 

単純なことだ、凪沙になにがあったか真実を話すべきか否かという問題だ。

 

大きく深呼吸をした古城はドアノブに手をかけ玄関へと入る。

すぐに凪沙が走ってくる。

 

「古城くん!?え、2人ともどうしたの!?」

「ちょっと色々あってな、2人ともとりあえず大丈夫だ。今は寝かせてやってくれ」

 

凪沙は古城の心中を察してか、すぐにソファーの上を片付け2人が横になれる場所を確保する。

古城もそれに感謝し2人を凪沙が作ったスペースへと寝かせてやる。

 

「古城くん、何も聞かないけど雪菜ちゃんたちのことちゃんと見てあげてね。私はお風呂入って寝るから」

「分かった、悪いな」

「いいよいいよ、晩ご飯の残りは冷蔵庫の中だからね。お皿洗いはよろしくーっ」

 

深刻な顔をする自分に気を遣ってわざわざ明るく振る舞うなんて我ながらよくできた妹だな と古城は微笑み、途中だった夕飯を温め直し口に運ぶ。

寝ている凪沙を起こさないよう静かに風呂と皿洗いを済ました古城はすやすやと眠る雪菜と紗矢華の間に腰を下ろした。

 

特にすることもなく数時間ほど過ぎたときだった。

 

「ん…はっ!?」

「煌坂、起きたのか」

「は?」

 

目を覚まし飛び起きた紗矢華は目の前で眠そうに欠伸する古城を見て気の抜けた声を上げた。

 

「もう、大丈夫だぞ」

「幻覚…?幻術の類なの?」

「いやいや待て待て、落ち着けって!」

 

紗矢華は状況が理解できないまま、古城に煌華鱗を向けようと楽器ケースに手を伸ばした。

 

「冗談よ、あなた以外の男がこの距離にいたら問答無用で斬ってるわ」

「それもどうかと思うけどな…」

 

身の安全を確保した古城は基樹から聞いたことを紗矢華へと伝える。

 

それを聞き、しばらく何かを考えていた紗矢華が口を開いた。

 

「ねえ古城?私たちここにいていいのかな」

「へ?」

「獅子王機関には雪菜と2人で辞表を出しに行ったの、だからもう私たちはあそこには帰れなくて…」

「なんだ、そんなことか。前も言っただろオレは姫柊と煌坂2人がいないと困るんだ」

 

古城は俯く紗矢華の頭を撫でながら続けた。

 

「それに今までオレが自分の勝手で好きなことしてきたとき、助けてくれただろ?だから煌坂が好きなことを選べばいい。それでなにかあったら今度はオレが助ける番だ」

「どうして?」

「どうしてか…、まあ、ほら、あれだ夫婦ってそういうもんだろ?」

「そっか、そういうものなのかな」

「多分な」

 

少し照れくさくなった古城は紗矢華の頭をもう一度強く撫でてから自室へと戻りベッドへと横になる。

雪菜と紗矢華を気にしてなかなか眠れない日々が続いていたためか、急激な眠気に襲われすぐに古城はスヤスヤと眠ってしまった。

 

 

翌朝、いつものように雪菜が古城を起こしにやってくる。

 

「先輩、起きてください」

「久しぶりだな。もういいのか?」

「はい、お陰様ですっかり」

 

古城はベッドの側に立つ雪菜を思わず抱きしめてしまう。

 

「先…輩…?」

 

いきなり古城に抱きしめられた雪菜は固まった。

しかし、頬を赤らめ古城の方を見つめる雪菜の顔はすぐに冷たいものへと変わる。

 

「先輩?人の髪の毛に顔を近づけて、深呼吸なんて何をなさってるんですか?」

「え、いやその姫柊の匂いはやっぱり落ち着くなって──」

「先輩のバカ!」

 

獣人をも一撃で気絶させる雪菜の拳が古城の鳩尾に突き刺さる。

古城が倒れたのを見て雪菜は部屋から出ていった。

 

「古城くん、雪菜ちゃんに変なことしちゃダメだよ?私、学校行ってくるから行かないなら掃除とかよろしくねー」

 

蹲る古城を見て笑いながら凪沙が外へと出て行き、少しして基樹と浅葱が入ってくる。

 

「お前ら何しにきたんだよ…」

 

なんとか身体を起こした古城は馴染みの深い顔に用を尋ねた。

 

「何ってこれからどうするかに決まってるでしょ、獅子王機関を敵に回したのよ?ほんと古城も色々後先考えてやってくれないかな」

「悪い…」

「別に怒ってないわよ。姫柊さんと煌坂さん見捨てたとか言う方が怒るし」

「そういうことだ、古城は皇帝らしくどっしり構えとけ。尻拭いはオレらの仕事だからな。それが汚い古城のケツでもな」

 

2人の言葉に感動しかけていた古城だが最後の一言が引っかかったのか基樹を睨む。

そんな古城の鋭い視線も軽々と躱し基樹は本題について話し始めた。

 

「とりあえず、現時点での問題を挙げていくとだ。日本からの輸入が困難になった」

 

絃神島は日本から独立後もあらゆる機能を独立以前のまま日本に委託しているケースが多い。

獅子王機関を敵に回したことでそのほとんどが機能しなくなってしまっのだ。

 

「それならラ・フォリアさんに言ってアルディギアに支援してもらうことに決定したわよ」

「マジで?」

「マジで」

 

浅葱と基樹の漫才のようなやり取りを見ていた古城はため息を付きながら先を促す。

 

「悪い、それでだ。こっからはオレ達の問題で、姫柊ちゃんの奪還阻止と煌坂の保護だ」

「姫柊は分かる。けど煌坂は?」

「本気で言ってるか?ほっとけば煌坂は殺されるぜ?」

「矢瀬、どういうことが説明しろ」

「そんな怖い顔するなよ、単純な話だ。獅子王機関には基本的に除籍って制度がないんだ、歴史がある組織には知られたくないことが多いしな。辞めるって言ったやつ、あいつらにとって不利益になると判断されたやつはほぼ例外なく殺されてんだよ」

「だから煌坂のことも殺しにくるってことか?」

「その可能性は高い」

「向こうも大勢攻めてきたりはしないだろうがこっちは戦えるやつが少ない。姫柊ちゃんと煌坂を出せない以上古城と那月ちゃんしかいないんだよ──」

 

それまで黙って話を聞いていた雪菜と紗矢華が基樹の言葉を遮った。

 

「自分の身くらい自分で守れます」

「雪菜はともかく私は戦うつもりなんだけど?」

 

「分かってないなら言っとくが、お前ら2人がやられたら終わりなんだよ。この国的にはお前らの戦力がなくなるより獅子王機関と争わない方がいいんだ、そこ履き違えるなよ?」

 

古城のためにやってるだけだ。

基樹はそう言ったのだ。

 

「矢瀬、お前──」

「待てよ、オレもそこまで鬼じゃないからこうして話を通しに来たんだ。古城、お前はこの2人のために日本との縁を切る覚悟があるか?」

「なっ…」

「あるのか、ないのか早く答えろ」

「基樹…もうちょっと言い方があるでしょ!」

「浅葱黙ってろ、どっちだ古城」

 

 

「あるって言うに決まってるだろ…」

「そうか、ならいい仙都木 優麻を戦線に出す。それで決まりだ」

「優麻を!?」

「あいつをどうこうする権利は日本にある。今はオレ達公社が前の事件の参考人として預かってるが、明日の午後に身柄を返さなきゃならない約束なんだが、どうせ敵に回すんだ、土産の一つでも貰っておこうぜ」

「そうだな…」

 

基樹の思い通りにハメられたらことが少し気に食わない古城だが、一応は納得したらしい。

 

「それだけなのか?」

「ああ、あとはうまいことやっとくよ。お前は今は休んでてくれ」

 

それで話は終わりと言わんばかりに基樹は浅葱を引っ張り帰っていった──




久々なのでグダってるかも知れませんが、感想評価いただけたらなと思います。
その方が更新頻度も上がると思うので笑


では、また次回!
次次回くらいから話が進む予定。(今回多分長くなります)

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