ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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連続投稿です。

キャラ紹介の方は20時40分までに更新予定

今回も前書き少なめ後書き多めです。



第35話

優麻の言葉によって3人の思考が戦闘へと切り替わる。

「紗矢華さん!」

剣巫の持つ未来視で自分たちが雷へと貫かれる未来を見た雪菜は紗矢華に防御の指示を出した。

煌華鱗による擬似空間断裂の盾が致死の威力を秘めた落雷を受け止める。

「優麻、どういうことだ!?これ」

「規格外の力を持った魔導書は使う時の制限がキツくてね、星辰の配置の影響を強く受けるんだ。だから基本的に夜しか使えない。ちょうど夜になったから魔導書を起動させたんだよ」

「まだ場所も分かってないってのに…」

古城が舌打ちをしたとき4人を強烈な風が吹き付け宙へと飛ばされそうになる。

夜摩の黒剣(キファ・アーテル)!!」

古城は重力制御の能力を一部だけ解放し4人の身体をその場へと留まらせた。

「優麻さん、この魔導書に思いあたることは?」

「自然災害を引き起こさせる魔導書なんてなかったと思うけど…」

優麻の言葉が終わらないうちに4人に赤いレーザー光のようなものが飛んでくる。

「雪霞狼!」

雪菜の持つ破魔の槍が光を打ち消す。

「聖殲か?今の…」

「そうみたいですね、どうなってるんでしょうか…」

「古城!上!」

紗矢華の叫び声に反応した古城が上を向くとそこに黄金の雷光を纏った獅子が現れた。

獅子の黄金(レグルス・アウルム)!!」

古城は驚きながらも同じ眷獣をぶつけることによって攻撃を相殺する。

「先輩の眷獣まで…?一体どうなって──」

「姫柊!?煌坂!?」

古城は突然隣で倒れた2人の名を呼ぶ。

「古城…、いきなり身体の力が…」

「煌坂、大丈夫か!?」

古城は次の攻撃から2人を守ろうと倒れた2人の間に立った。

「古城、多分もう攻撃は来ないと思うよ」

優麻が倒れる2人を見ながら苦痛の表情を浮かべながら口を開いた。

「どういう──」

「旧記と神文。図書館にある魔導書の中でもかなり上のレベルの魔導書だよ」

「旧記と神文?」

「旧記にはその名の通り過去のことが書いてあるんだ。過去のことならなんだってこの時間軸に持ってくることが出来る。それが例え聖殲でも眷獣でも災害でもね」

優麻は倒れる雪菜の髪を撫でながら推測を続ける。

「神文っていうのは術者に害のある行動を取った者に罰が与えられる。姫柊さんと煌坂さんは武器を持ってアレシアの攻撃から君を守った。彼女達が倒れたのは多分そのせいだ」

優麻は一瞬のうちに雪菜と紗矢華が無力化された現実をまだ受け入れられていない古城の方を向く。

「僕がいながら申し訳ない…。南宮先生に古城を助けるように言われたのに。やっぱり僕はダメなのかもしれないな」

「優麻、姫柊と煌坂は無事なんだな?」

「うん、今のところはね。術者の命を取らない限り命まで奪われることは無いはずだよ」

「アレシアって魔女の居場所は分かるか?」

「今なら分かるよ、古城のことを誘ってるみたいに魔力を放ってる。彼女のところに行くのかい?」

「ああ。優麻、姫柊たちのこと頼めるか?」

「わかった。古城、今の君無茶をするときの顔をしてるよ」

「姫柊と煌坂が倒れたのは好都合かもしれない、こいつらにはまだオレのことを監視してもらわなきゃならないからな」

古城はそう言って優麻の方へ笑いかけるとアレシアのいる方へと歩いて行った──

 

 

島の中心部キーストーンゲートの上に彼女は立っていた。

「なかなか度胸があるじゃない。1人で来るなんて」

「訳あって1人なんだよ」

「獅子王機関の剣巫と舞威媛は神文の罰を受けちゃった?」

「それだけじゃないけどな」

「そう、1ついいことを教えてあげる。獅子王機関はあなたにとって敵となるはずよ」

古城はアレシアになにも言い返さない。

「何事にも裏がある。組織になればなおさらね。ここで死ぬあなたには関係の無いことかしら」

「そうか、あんたはなんでこんなことしてるんだ?下らない組織のトップになるためか?」

「それはプロセス。私はこの世界を魔導によってもっと深くまで知りたい、そのためには地位もある程度必要なのよ」

「そういうもんか」

「そういうものよ」

「それだけのためにこんな大きなことしたのか?」

「誰1人殺してはいないわよ、無用な殺生は私も好まないわ。第一外の空気を吸うのも嫌なの、早くあなたを殺して私は帰る。それだけよ」

「そうか、わかった。どうやらオレの怒りをぶつけるのはあんたしかいないらしいな」

古城は怒りのまま魔力を解放する。

「あなたには神文が効かないみたいなのよね、一体どこで魔女の血なんて吸ったんだか──」

アレシアは旧記と呼ばれる魔導書を開き古城の前へ蛇の眷獣を呼び出した。

無数の剣の鱗を持つ眷獣、ヴァトラーの眷獣だ。

獅子の黄金(レグルス・アウルム)!」

2つの膨大な魔力がぶつかり床が異常な音を上げる。

しかし、2人は互いに無傷だ。

後退するアレシアへ古城が追撃を仕掛ける。

双角の深緋(アルナスル・ミニウム)牛頭王の琥珀(コルタウリ・スキヌム)──!」

緋色の双角獣が放つ衝撃波が床を引き裂き、牛頭神が吐く溶岩が巨大な戦斧となってアレシアを襲う。

「威勢がいいわね、でもあなたそんなことじゃ死んじゃうわよ?」

アレシアは意味深な言葉とともに金剛石の盾を展開した。

古城の眷獣の能力だ。

全ての攻撃を防ぎきりアレシアは金剛石の礫を古城へと飛ばす。

夜摩の黒剣(キファ・アーテル)!」

重力制御により古城は空中へと跳躍し回避する。

しかし、左足に若干被弾し血が滲んでいた。

「案外簡単に傷がついたわね」

「こんな傷すぐに治るさ」

古城はそんなことを言いながら敵対して初めて自らの持つ第四真祖の力がいかに強大かを思い知る。

「治らないわよ?」

アレシアは古城の脚を指さしながら冷ややかに笑っている。

「私の能力、忘れた?言葉を奪う力はあらゆる呪術を無効化するの。それを魔導書No.726の能力拡張と同時に使うとどうなるか…分かる?能力拡張を範囲ではなく、能力そのものに適用すれば神祖のもつ不死の呪いさえも打ち消すことが出来るの」

古城は自分の足から流れる血を見ながら苦しい顔をした──

 

 

 

「古城…」

優麻は雪菜と紗矢華の2人を安全な場所へと移し、古城の眷獣が放つ圧倒的な魔力を感じながら彼のことを思った。

「先…輩…。先輩!!」

雪菜が急に飛び起きた。

「姫柊さん?まだ動いちゃ──」

「雪菜…?」

雪菜の叫び声で紗矢華も目を覚ます。

「優麻さん、先輩は!?」

「君たち2人にはまだ監視役をしてもらわなきゃいけないって1人で行ったよ」

優麻の言葉を聞いた雪菜と紗矢華はすぐに古城の元へと走ろうとする。

「ダメだよ。今の2人は古城の魔力にあてられて目を覚ましただけで回復したわけじゃないんだ。旧記がアレシアの手にある以上行っても足でまといになる」

優麻は2人の手を握り引き止めた。

「優麻さん、先輩は私たちのことを守るために行ったんです」

「じゃあ、古城のことは誰が助けるの?」

「それは私たちしかいないんです」

「そういうことだから」

雪菜と紗矢華は言い合わせたように交互にそう言うと古城の方へと走って行く。

「古城…僕はどうすればいいんだ?何も出来なかった僕は──」

優麻は悲しい顔で夜空を見上げた──

 

 

 

古城が眷獣を出してもアレシアは過去から古城の眷獣を召喚して攻撃を相殺する。

そんなイタチごっこの戦いが続き古城にも疲れが見え始める。

アレシアは魔導書を使う魔力しか消費しないためか全く疲れが見えない。

「そろそろ、終わりにしましょうか」

徐々に増えていく古城の傷を見ながらアレシアは微笑んだ──

 

 

雪菜と紗矢華はキーストーンゲートの階段を駆け上がる。

やっとの思いで最上階へと上がり雪菜が屋上へのドアを蹴破った。

「先輩!」

「古城!」

古城が2人の声に少し振り向いた瞬間──

 

古城の身体が地面から噴き出した膨大な神気によって縦に真っ二つにされた。

 

「──────────!!」

 

雪菜の声にならない叫びが夜空へと吸い込まれていく。

 

 

世界最強であり不死の吸血鬼である古城はこの瞬間、完全に死亡した────




番外編のSSの件ですが、活動報告の方にアンケートを作成しましたのでよければそこにコメントいただければと思います!


感想乞食もこの辺にして、次回で今回の幽寂の魔女篇も短いですが、終わりです。
更新は明後日になると思います、過去話の読み直しなども少し文章変えたりしてるとこもあるのでオススメです。

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