ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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新章は微妙にまだ話が固まりきっていないので更新が遅くなるかもです。

短いですがどうぞ^^*


幽寂の魔女篇
第32話


「どうしたんですか、騒がしい人ですね先輩は」

正気へと戻った雪菜はなんとか大丈夫そうだ。

「なんか皆の様子がおかしい、さっきまで姫柊もぼーっとしてたし」

雪菜の反応に安堵した古城は状況を説明する。

古城の言葉に虚ろな目をする紗矢華を見て雪菜はなにか異常なことが起きていると理解した。

「雪霞狼が反応したということはなんらかの魔術ですね…」

「ああ、とりあえずここから離れよう。矢瀬のやつが──」

古城は雪菜が紗矢華の身体をいきなり縛り始めて言葉を止めた。

「いやいやいや、なにやってんだよ姫柊!」

「ケース057です」

「は?」

「いえ、だからケース057なので」

雪菜は紗矢華だけでなく浅葱や凪沙、結瞳の身体までシートに縛り付けていく。

「だからじゃなくて、なんなんだそのケースなんとかっていうのは」

「高神の杜にいるときに学んだんです。獅子王機関が魔導災害時に想定する約750あるうちの1つが今回のケース057です」

「お、おう…」

「集団的催眠、あるいはなんらかの影響で意識のない者が多数いる場合一定の戦力を持つ者を即座に拘束すべき」

教科書を読み上げるような口調で雪菜はケース057の説明をした。

「あー…、つまり煌坂たちが起きて暴れださないようにってことか?」

「はい、一応紗矢華さんの目の前に書き置きを置いておきます。下手に動かれるよりも、ここで目を覚ますまでじっとしておいてもらう方が私たちも紗矢華さんたちも安全ですから」

「そう…だな」

無理やり自分を納得させた古城は作業を終わらせ機外へと出ていく雪菜に続く。

「矢瀬先輩は、島から立ち去るようにと仰ったんですよね?」

「ああ、オレ達がいるのはやばいからって」

「そうですか…」

「獅子王機関に連絡とか出来ないのか?」

「獅子王機関…、今はあまり頼りたくないですね」

雪菜の顔が暗くなる。

自分がなにか雪菜に悪いことを言ったことを察し古城は獅子王機関を頼るという案を捨てた。

「そうだ、ラ・フォリアは?」

「アルディギア王国ですか…、確かにそれが1番いいかもしれませんね。先輩、連絡をお願いします」

「わかった。──ってあれ?」

「どうかしましたか?」

「さっき使えたはずの携帯がなんか画面が白く光るだけで動かなくなってる」

古城はただ白く光る画面を雪菜に向ける。

「そうですか…、とりあえず危険かも知れませんが島の中心部に行ってみましょう。何か分かるかも知れませんし」

「仕方ない、そうするか」

雪菜と古城は島の外れにある空港から徒歩で人の多そうな場所へと移動した。

「おいおい、バイオハザードかよ…」

2人の前には虚ろな目をしながら歩き惑う人たちがいた。

「先輩…、何が起きているのかはいまいちまだ分からないですが少しまずいかもしれません」

「どういうことだ?」

「このままだと意識を失った魔族同士が衝突する可能性も…」

「そうか。姫柊、しっかり雪霞狼握っとけよ」

「え、先輩…?」

焔光の夜伯(カレイド・ブラッド)の血脈を継ぎし者、暁 古城が汝の枷を解き放つ―――! 疾く在れ(きやがれ)10番目の眷獣麿羯の瞳晶(ダビ・クリュスタルス)!!」

水晶柱でできた山羊に似た角を持つ魚龍が姿を現す。

島全体を怪しげな光が包み、眷獣が消えると同時にその光も消え失せる。

「先輩…一体何を?」

「ああ、暴れられたらやばいんだろ?だからこの島全体の人間や魔族、多分動物もオレの眷獣の力で大人しくしてもらえるようにした」

「魅了を司る眷獣ですか…、確かにそれなら大丈夫だとは思いますけど先輩の魔力が…」

「多分大丈夫だ、意識がない分楽だからな。半日はいけると思う」

「そうですか。でもとりあえずここからは離れた方がいいですね」

「どうかしたのか?」

「後ろのビルの上からこちらを見ている人がいます」

雪菜はいきなり古城の手を引き路地裏へと飛び込むと人気のない倉庫街へ向かって走っていく。

吸血鬼の古城とその伴侶であり呪術による身体強化を施している雪菜は普通の人間が走るよりもかなり早い速度で移動ができる。

しかし、それに劣らず視線の主は2人を追ってくる。

「誰ですか、姿を見せなさい!」

人気のない所へと出た雪菜が後ろの暗がりへと雪霞狼を向ける。

「喋れる方がまーだいやがりましたか」

「これはあなたが?」

「上のことは特に知らねぇですよ」

乱暴な言葉使いの女は胸元から魔導書を取り出す。

その動作より早く雪菜が距離を詰めた。

「若雷──!!」

雪菜の左手による掌打が女の身体を折るように鳩尾へと入る。

「おい、姫柊…さすがにやりすぎじゃ…」

「あ……、すみません」

獣人さえ素手で倒すことが出来る雪菜の掌打を受けた女はすっかり意識が飛んでいた。

「まあ、死んでないならセーフだろ。でも珍しいな、姫柊がいきなり攻撃するなんて」

「少し考え事が多くて、判断を誤っただけです」

「そっか、それでどうする?その子」

「とりあえず武器になりそうなものは預からせてもらいます」

雪菜は意識のない女の子の身体から色々なものを取り上げ拘束していく。

「なんか、今日の姫柊は人身売買のプロみたいだな…」

「どういうことですかそれ…」

「さっきから縛ってば──」

「いえ、いいです。聞いても不快な気分になるだけな気がするので…」

「それで、魔導書ってことは魔女なのか?」

「そうだと思います。この状況も魔導書によるものと考えれば不自然ではないですし」

古城は仙都木阿夜のことを思い出した──

 

 

そんな頃、雪菜たちが乗っていた飛行機の中で目を覚ました少女が1人いた。

『血の伴侶』である紗矢華には古城から魔力を受け取る霊的パスが通っている。

古城が眷獣の力をかなりの規模で解放したことにより、供給される魔力量が増え紗矢華は目を覚ましたのだ。

「ん…、あれ…身体が動かない…。え?なんじゃこりゃァァァァァァァァァ」

目を覚まして自分の身体が縛られているのを見た紗矢華は大きな声をあげた。

「頭も痛いし、身体は縛られてるしなんなのよこれ…」

なんとか、拘束を解き這い出た紗矢華は目の前に貼られていたメモに気づく。

『ケース057に則って紗矢華さんの身体を拘束させていただきました。もし意識が戻ったら式神を使ってご連絡お願いします』

「ケース057ってなんのこと…?まあいいわ、とりあえず異常事態なのは分かったことだし私も動かないと…」

紗矢華は機外へと出てから雪菜へ連絡用の式神を飛ばし、1人古城たちのいる方ではなく海沿いを歩いていく──




昨日の夜頃、久々に日間ランキングに掲載していただきました!
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