ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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お気に入りがもう少しで200を越えそうでなんとお礼を言っていいのやら…

今回で眷属たちの休暇篇も終わりです。
最後は少しシリアス展開ですが我慢して読んでやってください。




第30話

紗矢華と別れ自室へと戻った古城は朝からの疲れですぐに深い眠りについた。

翌朝、結瞳を待たせるのも悪いと思った古城はなんとか重い体を起こし眩しい朝日と共に目を覚ました。

「やばい、風呂入るの忘れてた…」

昨夜部屋に帰るなりベッドの上で眠りこけた古城は風呂に入っていなかったことを思い出した。

まだ早いこともあり結瞳も起きていないと考えた古城はホテルの楽しみの一つでもある朝風呂へと向かう。

脱衣場で服を脱ぎタオルを腰に巻き浴場へと入っていき、面倒なかけ湯を終えて中を見渡した古城の前には薬湯や機能湯など様々な風呂が用意されている。

とりあえず身体を洗いその数ある風呂を全てスルーし古城は外にある露天風呂へと身を沈める。

「朝日もいつもは憎たらしいけど今は綺麗だな」

水平線から顔を出す太陽を見ながら古城は1人そんな言葉を漏らす。

のぼせるギリギリまで景色と露天風呂を堪能した古城は脱衣場へと戻りお気に入りのコーヒー牛乳を飲んで少し涼んでから自室へと戻ることにした。

エレベーターを降り角を曲がった古城の目に部屋の前で不貞腐れながら立っている結瞳が映った。

「あ、古城さん!」

「おう、結瞳。もしかして待たせたか?」

「そんなことないですよ」

古城を見るなり喜びに満ち溢れた笑顔をする結瞳は、珍しく年相応の小学生らしい女の子だった。

「ちょっと朝風呂に行っててな」

「それで呼んでも返事すらしてくれなかったんですか」

「悪い悪い、でも早起きなんだな。まだ6時頃のはずだぞ」

「古城さんと2人だと思うと夜眠れなくて…」

「ははは…じゃあ朝飯でも食いに行くか」

自分も遠足前はなかなか眠れなかったことを思い出した古城は結瞳の手を引きながら朝食会場へと向かう。

「すごいですね!料理がいっぱい」

「ホテルの朝食ってバイキング形式が多いもんな。オレ達のためだけにこれだけ用意してくれるのは申し訳ない気もするけどな」

「古城さんの広告効果がそれを上回るくらい凄いんですよ」

「そういうもんか…?」

とりあえず料理に近い席へと座った2人はまず飲み物から、そして自分の好みの料理を皿に盛り早めの朝食をとる。

「結瞳は朝は米派か」

「はい、ご飯を朝に食べるのは身体にいいらしいですよ」

「そ、そうか…」

予想外のしっかりとした返答に古城は自分の皿に盛られている和洋折衷甚だしい特製古城の好物プレートに目を落とした。

「古城さんも、身体には気をつけた方がいいですよ。若くても生活習慣病に──」

「いや、オレ吸血鬼だからな」

「そ、そうでした…」

結瞳は顔を赤らめて下を向いてしまう。

古城もそれ以上彼女に話しかけるのはどうかと思ったのか黙々と朝食を食べ進める。

ある程度朝の空腹を満たした2人は屋外へと移動し、昨日、浅葱と古城が2人で行った小規模な方ではなくブルーエリジアムのCMやパンフレットで度々紹介されているメインのウォーターパークへと結瞳に連れていかれる。

「さすがに広いな」

「古城さん、スライダーがありますよ!」

結瞳はそう言うとスライダーの方へと走っていく。

ほかの客がいたならロリコンや高校生で彼女を孕ませた最低な男と見られるのだろうが幸いここにほかの客はいない。

そんなことを思いながら古城は結瞳の後を追った。

結瞳に付き合い2人で色んなスライダーへと乗った古城は、一番奥にあった長めのスライダーへと歩いていく。

「古城さん!?」

「どうした?」

「そっちは…ちょっと…」

「あれだけ乗ってなかっただろ?」

「そうなんですけど…」

様子のおかしい結瞳の手を引き古城は目当てのスライダーに続く階段を登っていく。

係員に連れられて滑り口へと着いた古城たちの前には四角い箱があるだけだった。

「当スライダーはお1人様専用ですのでお1人ずつご案内します」

そんなことを言いながら係員は古城たちの前にあった箱を開けた。

中にはちょうど人が1人入るくらいのスペースが空いている。

「この中に入るのか?」

「はい」

「古城さん…先にどうぞ…」

係員と結瞳が先に行けという目をしていたため古城は箱の中へと入っていく。

「3.2.1いってらっしゃーい」

係員の軽快なカウントダウンと共に古城の入っている箱の床が抜ける。

「なんじゃコリャァァァァァァァァ!!!」

ほぼ垂直なコースに沿って古城の身体が自然落下気味に滑り落ちていく。

どれくらいの距離を落下したかも分からなくなった頃古城は急に宙へと投げ出され最後に盛大に頭からプールの水面へと突っ込んだ。

「かはっ……、鼻に水が…」

少し間を開けて後ろから少女の叫び声が聞こえてくる。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、古城さんーーー!どいてくださいぃぃぃー!」

宙へと投げ出された少女は古城の頭の上へと落下した。

「す、すみません古城さん!!」

結瞳は自分の下敷きになって溺死しかけている古城をなんとかプールサイドに引き摺りあげた。

「う…死ぬかと思った…。大丈夫か?結瞳」

「はい、私は大丈夫です…」

「気にしなくていいよ、少し休ませては欲しいけどな」

古城は、プールサイドで冷たい飲み物を飲みながら少し休み、そのままその場で手頃なものを購入し結瞳と2人で談笑しながら昼食を済ませた。

「ごめんな?オレがへばってあんまり色々回れなくて」

「だ、大丈夫です。私が悪いので…」

「また暇なときがあったら連絡してこいよ、2人でどっか行こう」

「はい!じゃあ私はこれで…」

「おう、楽しかったぞ結瞳」

古城を溺死させかけたことを気にしていた結瞳も思いがけず次の約束をとりつけれたことで機嫌がよくなったらしく手を振ってホテルへと戻っていく。

昼食を終え結瞳と別れた古城はトイレへと向かって用を足す。

「先輩、お久しぶりです」

トイレの外にはいつの間にか雪菜が立っていた。

「ああ、なんだか久々な気分だな。いつも一緒にいるのが当たり前になってたし」

「そうですね、先輩はその…寂しかったりしましたか…?」

「少しな」

「そう…ですか…」

何やら雪菜は身体をもじもじとさせている。

「どうした?トイレに行きたいなら早く──」

「先輩のバカ!」

古城の脛に雪菜の強烈な蹴りがはいった。

痛がる古城に見向きもせず雪菜はどこかへ歩いていく。

「おい、姫柊どこ行くんだよ」

「先輩は黙ってついてきてください」

古城が雪菜に連れられてきた場所はホテル内のカラオケルームだった。

「姫柊と2人でこういう場所に来るのは初めてだな、歌とか歌うのか?」

「いえ、今日は少しお話があるんです」

そう言うと雪菜はカラオケの機械をいじり全く音が出ないようにする。

「話って?」

「ちょっと待ってください、心の準備ができていないので…」

「ああ…」

なにか改まって雪菜が話をしようとしていることに不安を覚えた古城はかなり長い間、雪菜の言葉を待って黙っていた。

少し雪菜の様子が気になって古城が彼女の方を見た時ちょうど彼女の目から涙が零れたところだった。

「姫…柊…?なにかあったのか?」

「先輩…」

珍しく雪菜は古城へと抱きついてくる。

泣いているのを見られたくないのか古城の方へ顔を向けることはないが明らかに背中が波打っていた。

「言いたくないか?なら言わなくていい」

どうすればいいか分からない古城はただ頭を撫でてやりそう言った。

「はい…」

「オレは姫柊のことを信じてる。だから言いたくないことは無理に言おうとしなくていい、言いたくなった時にまた教えてくれ」

「すみません…急にこんな…、先輩も疲れていると思いますし今日はもう休みませんか?」

「それでいいなら、オレも助かるよ」

「はい…」

雪菜は古城から離れると部屋を出ていこうとする。

「姫柊、行きたいところがあるんだけどさ元気になったら付き合ってくれるか?」

「もちろんですよ」

それを最後に雪菜は部屋を出ていった──




雪菜回を待ってた方すみません!
おいおい、この理由も説明すると思いますのでどうか静粛に…なんて

幕間を挟んで新章へと入る予定です。

以前も言いましたがボーイッシュなあの子が出る予定です。

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