ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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昨日にも増して体調が悪いため今日も文字数が少なくて申し訳ないです…。

とりあえず更新しましたので短いですがお読みください。


第22話

暗く狭い部屋の中で1人の少女が休む間もなく指を動かし続けている。

「あー!もう!なんなのよ!」

「ど、どうしたの?浅葱ちゃん」

「大丈夫大丈夫、凪沙ちゃんは気にしなくても大丈夫よ」

「古城くん大丈夫?」凪沙はどうやら古城の心配をしているらしい。

「うん、もう1人倒しちゃったわよ」

「そっかー、さすが古城くんやる時はやるね!」

凪沙とは正反対に画面を見つめる浅葱の顔には厳しい色が浮かんでいる。

古城と雪菜が1人ずつ倒したとはいえ相手はまだ7人もいるのだ。その上雪菜はしばらくは動けないとなればどちらが優勢かは子供が見ても明らかだった。

「基樹、那月ちゃんは?」

「今迎えに行ったとこだ」

「そろそろ那月ちゃんを…」

「いやまだだ那月ちゃんを出せばこっちはマジで余裕が無くなる。向こうのトップが後ろで控えてるんだ、極力温存したい」

「そう…基樹?」

「なんだ?」

「1つ反応が消えて後ろに控えてるやつの横に」

「後々面倒くさそうだが1人減ったのはありがたいな…」

2人の間には不穏な空気が流れていた──

 

 

新たな戦場に降り立った古城は目の前の光景を見て、考えるより先に動いていた。

アルディギアの聖環騎士団の一部隊を目掛けて仮面の男が大量の細く鋭い岩の槍を放った。

双角の深緋(アルナスル・ミニウム)!」

古城の呼び出した緋色の双角獣の撒き散らす高周波振動によって全ての岩槍が砂塵へと変わる。

「暁様!?」

「悪い、遅くなった。あんたたちは負傷者を担いで下がってくれ」

「しかし…」

「大丈夫だ、すぐに終わらせる」

「では1つだけ、あれはおそらく大地の神ゲブを司る者かと…」

「そうか、ありがとう」

古城は聖環騎士団が撤退していくのを横目に見ながらゲブだと思われる男の方を向く。

「あなたがここに来たということは誰かがやられたのですか、誰ですか?参考までに教えていただけると嬉しいのですが」

「ああ、シューとかいうやつだ」

「ほう、シューを倒しましたか。では私も初めから本気を出さなければいけませんね」

「すぐに終わらせてやるよ」その言葉を最後に古城の立つ地面が膨れ上がり全方位から岩槍が古城を狙う。

古城は重力制御により上へと跳ぶことで全ての攻撃を回避する。

地面から離れれば離れるほど自分にとって有利になると考えた古城の上から大小様々な岩槍が飛んでくる。

「なっ…」反応の遅れた古城は咄嗟に金剛石の盾を展開したが、一瞬間に合わず身体に切り傷を作り、地面へと叩き落とされた──

 

 

「どこからでも1回、好きな場所に攻撃してくるがよい!」

そんな言葉を相手に言われたのも、もはや遥か昔のことのように思える。

紗矢華が那月の空間転移魔術によって転移させられた場所には1人の屈強な男が立っていた。

見るからに力だけで闘う脳筋タイプのその男を見た瞬間、紗矢華はおそらく自分が1番のハズレを引いたということを理解した。

そんなことを思った矢先、相手の口からそんな言葉が飛び出たのだった。

紗矢華はこの機会を逃せば自分が勝てる見込みは限りなく少ないと直感で悟り、言葉通り全力で相手の分厚い胸板に煌華鱗を振り下ろしたのだ。煌華鱗の擬似空間断裂には理論上切断できないものはないとされているが、男の身体には細い切れ目が入っているだけだった。

「この身体に傷を付けられたのは何十年ぶりか…小娘存分に我を楽しませよ!」

どうやらサービスは初撃だけだったようで男は紗矢華に痛烈な蹴りを放ってくる。

なんとか煌華鱗で受け止めるが軽く10メートルほども遠くへと飛ばされてしまう。

「なんの能力なのよ、これ」

「教えてやろう、我は力の神セトを司る者だ。単に力が強い。それ以上でもそれ以下でもないただそれだけの能力だ」

男の言葉とは裏腹に絶対的な防御を誇る鋼の肉体とそこから繰り出されるとてつもない威力の蹴りや拳は十分に恐ろしいものだった。

それからの紗矢華はただの消耗戦となった。

反応できる限界ギリギリで攻撃を重ねてくるセト相手に距離をとることもままならず、あまり得意ではない近接戦闘を強いられる。

煌華鱗の擬似空間断裂による防御を試みても殺せるのは威力だけで風圧によって吹き飛ばされてしまい反撃の機会を得ることさえ難しい。

セトは力を司る神というだけあって未だ疲労の色は見えない、それどころかむしろ動きのキレが上がっているかのようにさえ感じられる。

「獅子王機関の舞威媛よ、もう限界か?」

「限界なわけないでしょ!――獅子の舞女たる高神の真射姫が讃え奉る 極光の炎駒、煌華の麒麟、其は天樂と轟雷を統べ、憤焔をまといて妖霊冥鬼を射貫く者なり――!」

紗矢華は距離をとることが出来なかかったため使わなかった鏑矢を無理やり弓に番え、術式を展開するため上空へと矢を放った。

しかし、凄まじい膂力にものを言わせ飛び上がったセトに術式を展開し始める前の鏑矢が受け止められてしまう。

「ちょっと、なによめちゃくちゃな…」

「ほれ、お返しだ」

空中で身体を小さく丸めたセトは手に持った鏑矢を紗矢華の方へと投げ返してくる。

煌華鱗で射出する数倍の速さにもなった鏑矢を避けることが出来ないと判断した紗矢華は擬似空間断裂の盾により攻撃を防いだが、セトに背後を取られる形になる。

セトの腕から放たれる凄まじい拳に回避が間に合わなかった紗矢華は遠くへと飛んでいく。

「決まったか」

「あんまり調子にのらないでくれる?」瓦礫の中から出てきた紗矢華の左手は肩が外れ真っ直ぐ下へと垂れていた。

咄嗟に身を捻りセトの拳を左手に受けたのだが、予想以上にダメージが大きく意識があるのが信じられない状態だ。

「そのまま倒れていれば死なずに済んだものを、小娘を手にかけるのはあまり気は乗らぬが素直に倒れておいてはくれぬのだろう?」

「その余裕を今からへし折ってやるわよ」

「この状況で笑っていられるとは頭を打って気でも違えたか?」

紗矢華もまた雪菜との会話を思い出していた。

「古城のために、1人も倒さずに私が倒れるわけにはいかないのよ…」

紗矢華は意識が朦朧とする中、太股に手をやり煌華鱗に鏑矢を番え上空へと矢を放つ。

「何度やっても同じことよ」術式が展開するより早くセトは空中へと飛び上がり矢を粉砕してしまう。

「それは囮、舞威媛は呪詛と暗殺の専門家」

紗矢華はそう言いながら2本目の矢を放つ。

「呪詛って言うのはね『呪』も『詛』も呪うっていう意味の言葉なの」

3本目。

「つまりね、呪いって重なり合えば重なり合うほど効果を増すの」

4本目。

「人が詠唱できないほど高度な術式が、幾重にも重なり合い複雑になれば」

5本目。

「どうなると思う?」

1本目の矢を囮にし、セトを空中へとおびき寄せた紗矢華は最後の魔力を振り絞り地面へと5本の矢を放ち、大きく綺麗な正五角形を作り上げる。

矢の刺さった位置から巨大な魔法陣が展開されその全てが複雑に絡み合い始める。

「なんと、そんな隠し玉を持っていたか」

「これであなたを倒せるかは分からないけど、今の私にはこれ以上の術式は使えないから」空中からやっと落下を始めたセトの方を向きながら紗矢華は傷口から滴る自らの血を魔法陣の中へとゆっくりと垂らす。

紗矢華の美しい紅の血が地面へと触れた瞬間、5本の鏑矢から凄まじい音と魔力が溢れ出し、正五角形に区切られた地面の中心から真っ直ぐ上空へと向かって水縹色の魔力波が噴出しセトの身体を捉えた─

 

地面から魔法陣が消え当たりが元の静けさを取り戻し、四肢の無くなったセトが地面へと落下してくる。

「見事だな、獅子王機関の舞威媛よ」

「やっぱり倒せなかったのね…」動ける状態ではないものの息一つ乱さないセトを見て紗矢華は悔しそうな顔をしながらその場に倒れ込んだ。

「小娘にこれだけやられれば倒されたも同然よ…」自分を倒した女の方を向きながらセトは心からの賛辞を送った。

紗矢華の身体を紫色の魔法陣が包み込む──




次回はラ・フォリアを出そうかなと思っています。
皆さんもお身体には本当に気をつけて!

キャラ紹介の方も19時頃までには更新する予定ですので合わせてお読みください^^*

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