20時半までにはキャラ紹介の方も更新します!
今回少しグロいかもですが…
とりあえずどうぞ!
古城が大気の神シューを司る
雪菜もまた那月の空間転移魔術によって戦場へと降り立ったところだった。
雪菜の前には悠々と戦場を駆け抜ける神の長い仮面の女がいた。
「止まりなさい!!」
「あら、私のところには誰も来ないのかと思ったじゃない」
「藍羽先輩、敵と交戦します。もしお暇があれば能力の予想をお願いします!!」そう言うと雪菜は目の前に立つ仮面の女に向かって雪霞狼を向け飛び込んでいく。
「私の話は無視?」仮面の女は背中から異様に長い刀を取り出し雪菜の槍を迎え受ける。
「えっ!?」能力を用いて防御されると踏んでいた雪菜は虚を突かれ空中で体勢を崩してしまう。
背中に仮面の女の痛烈な蹴りが炸裂する。
「物干し竿…ですか?」大きく吹き飛ばされながら辛うじて受け身を取った雪菜は相手の異様に長い太刀の名前を言い当てた。
「よく知ってるのね、知っていたところでどうなるという訳でもないのだけど」
物干し竿は普通の刀が75cm程度であるのに対し約1mほどの長さを誇る刀だ。当時まだ剣術と呼べるようなものが確立されていなかった時代刀は長い方が強いとされていた。そんな時代に刀の長さを極めたのが物干し竿だ。
雪菜は自分の槍のリーチよりも長い相手の刀を睨み、間合いを普段より遠目に取ることを意識し2度目の攻撃を試みた。
またしてもかなり相手より遠い場所で攻撃を止められた雪菜は身体を地面にすべらせ女に肉薄する。
刀が長ければ下からの攻撃への防御は手薄になると考えたのだ。
雪菜の狙いは正しく仮面の女の反応は一瞬遅れ雪菜の槍が足を捕らえるかと思われたが、女は長い刀を地面に突き刺しそれを軸に器用に身体を持ち上げて危なげなく躱す。
そして間髪入れずに雪菜へと大きな上段切りを放ってくる。雪菜は間合いを大きく取っていたため後方への少しの移動で強烈な斬撃を難なく躱しガラ空きになった女の頭へと槍を突き立てようとする。
「あらら、ガラ空きなのはあなたの方よ。──燕返し──」
女の頭へと槍を突き立てようとした雪菜の首から下はこれまでに無いほど無防備だった。そこに地面から這い上がるように太刀が雪菜の上半身を斜めに真っ二つにしようと迫ってくる。
雪菜の霊視による未来視に自らの身体が呆気なく2つに引き裂かれる映像が映り──
雪菜が自分の死を覚悟した時だった。身体から凄まじい熱量の雷撃が放出され迫り来る刃を弾き返した。
「え!?この雷撃は…」
雪菜は自分でもどう防御したのか分からず一瞬戸惑ったがすぐに不思議と安堵を感じ、すぐさま体勢を立て直す。
「あなたにそんな能力はないはずだけど?なにをしたの?」
「秘密ですよ!それより!」雪菜はふっ切れたように3度目の突撃をする。またしても仮面の女に初撃を受け止められ流される。
2回目のときと同じように女が大きな動きで上段切りを放ってくる。
「その技には後退より前進が答えです!」
燕返しとは佐々木小次郎の必殺技として有名である。
その技の原理は簡単で相手よりも長い刀を使うことにより、相手の取る間合いが大きくなる。
そこに大きな動きで上段切りを繰り出すことで相手は多めに取った間合いにより少しの動作で上段切りを避けることができ、生まれた余裕にから頭部へのカウンターを狙ってくる。そうして無防備になった上半身を下から斜め上へと神速の横薙ぎを返すという真のカウンター技なのだ。
雪菜は恐怖を振り払い上段切りを槍で受け流しながら女に肉薄し、地面に突き刺さった太刀を踏みつけ相手の防御手段を奪い仮面の女の左腕を雪霞狼で切り飛ばした。
「ぐっ…まさか2回目で破られるなんて思わなかったわ。少し甘く見ていたようね」
突如女は高らかに笑い声をあげ、周りの地面から怪しげな紫の光が染み出してくる。
魔力でも霊力でもない異常な力を感じ取り雪菜は今までで1番長く距離をとった。
怪しい光を漏らす地面からは黒いオーラを身体中から滲ませる人のような形をしたなにかが大量に溢れ出している。
「それは…」
「ゾンビ?傀儡?まあ、好きに呼んでくれたらいいわ。そして、もっと私を楽しませてよ!!」女は無くなった左腕を抑えながら笑っている。
どうやら戦いの中で血を流すことに興奮するタイプらしい。
「この量…さすがに捌ききれない…」そんな雪菜に耳元から頼りになる先輩の声が聞こえてくる。
「姫柊さん、大丈夫?やばそうなら那月ちゃんを…」
「心配していただいてありがとうございます。でも、私がこの程度で弱音を吐くわけにはいきませんから。先輩だって今必死に闘っているところですから」古城の眷獣が放つ膨大な魔力を肌に感じながら雪菜は雪霞狼を握り直す。
「そっか、じゃあこれだけ。多分あの力はネフティスよ、詳しいことは分からないけど死者の守護神だって。何をしてくるかは分からないから気をつけてね」
「それだけ分かれば後はこちらでなんとかします、では」通信を切ると雪菜は朽ちた傀儡の群れの中へと身を投じる。
雪霞狼のお陰かその身に一撃を加えられれば相手は崩壊するが一体一体が相当の手練であるためなかなか身体に一撃を加えることが出来ない。
「ほらほら、まだまだ増えるわよ。今までに私が切り殺した強者達全員をあなた1人で倒せるかしら?」そんなことを言いながらネフティスは傀儡の1人の背中に座りながら優雅に1人奮戦する雪菜を眺めて笑っている。
「この程度で─!」
大きな戦斧を弾き返し後方へと蹴りを放ち横から迫り来る長槍に雪霞狼を引っ掛け空中へと相手を投げ飛ばしすぐに体勢を立て直す。
そんな終わりが見えない攻防を繰り返し続け何分が経ったのだろうか、雪菜の周りにはもう50体ほどの動かなくなった傀儡だったものが転がっている。
「はぁ…はぁ…」
「そろそろ限界?私に斬られるのと傀儡に押しつぶされて死ぬのとどちらがいいか選ばせてあげましょうか?」
「どちらも遠慮させていただきます、あなたのおもちゃになるつもりはありませんから─」そう言うと雪菜はまた自らの身を傀儡の群れへと投じる。
しかし雪菜も限界なのか次々と身体を切り傷が埋めていく。
飛びかかってくる2体の傀儡をなんとか重ねて切り飛ばした雪菜はついに地面に膝をついてしまう。
耳元へと手を伸ばし浅葱を呼び出した。
「藍羽先輩、先輩の魔力が感じられなくなったということは勝ったんですか?」
「うん、今古城は次のところに向かったわ」
「そうですか…、なら私も休んでいる暇はなさそうですね…」
「大丈夫?身体傷だらけだけど…」
「大丈夫です、もう全部治りましたから」
「えっ…!?」
雪菜は驚く浅葱を他所に聞くことだけ聞くと通信を切った。
身体中を埋め尽くしていた切り傷ももう擬似吸血鬼の回復力により全て綺麗に無くなっていた。
しかし、身体の傷がなくなっても疲労感までは消えない。
雪菜の疲労はもう限界に近かった。
ゆっくりと近づいてくる傀儡の攻撃を左腕で掴み雪霞狼を突き立てる。
背後から迫る大きな槍に身体を貫かれ、肩に刀が刺さりながらも雪菜は止まらず傀儡を次々と屠っていく。
「何があなたにそこまでさせるの?もう楽になればいいのに」
「先輩に全てを任せるわけにはいきませんから…、先輩が頼ってくださったんです。それに応えるまでは倒れるわけにはいかないんです」
雪菜は身体に刺さった武器を引き抜きながら前日の紗矢華との会話を思い出していた──
「ねえ、雪菜。私たちでせめて1人は倒すわよ」
「先輩はなるべく時間を稼いでくれって…」
「
「そうですか…、なら頑張らないといけませんね」
「ええ、せっかく古城が私たちを頼ってくれたのよ。それに応えないとね」
こうして2人はこの戦いに来る前覚悟を決めたのだ──
雪菜は血が染みでる身体に鞭打ち雪霞狼を握る手に力を入れ、左指の古城から貰った指輪に目を向けた。
「先輩、少しだけ力を貸してください…」
「傀儡になる覚悟を決めたの?」
そんなネフティスの言葉を無視し雪菜は空を見上げながら叫んだ。
「
雪菜の呼び声に応え大きな雷撃でできた獅子が現れ傀儡の群れを薙ぎ払っていく。
血の伴侶は限定的にだが波長の合う主の眷獣を使役することができる。最初に雪菜を斬撃から助けたのも
雪菜を霊媒とし、雪菜と常に古城と戦いを共にした黄金の眷獣が雪菜の願いを叶えないはずがなかった。
「そんな、第四真祖の眷獣が何故ここに!?」
驚くネフティスの前には常人のスピードを遥かに超える速度で雪菜が迫っていた。
自分が座っていた傀儡を盾にし初撃を躱したネフティスは両手を前に出しにやりと笑い、前方に漆黒のオーラを放出した。
「致死の毒霧よ!あと少しだったわね!死になさい!」
「すみませんが、私はもう死ねない身体になってしまったので」
漆黒のオーラから鈴の音のような声とともに雪菜が飛び出してくる。
「――獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る 破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて我に悪神百鬼を討たせ給え!」
「なっ!?」
銀色の槍が貫いた瞬間、ネフティスの身体が一瞬にして朽ちた。
「自分の能力で死を逃れ、若い頃の美貌を保っていたんですか。悪趣味な人ですね」そんな哀れみにも思える言葉とともに雪菜は地面に倒れ込んだ──
燕返しという技には諸説あるそうなのですが、1番ポピュラーなものを参考にさせていただきました。
私事ではあるのですが…今朝から体調を崩してしまい今回もまた短い更新となってしまいました( ̄▽ ̄;)
どこか文章がおかしい所などもあると思いますが察してやってください。
感想評価などいただけると早めに復帰できると思いますのでよろしくお願いします(結局感想評価乞食)
皆さんもお身体にはお気をつけて!
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