ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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UA7000越え&お気に入りが80件も…今日全然更新出来なかったのにありがたいです…。
そして!日間ランキング8位!夢見てるみたいです。ほんとにありがとうございます!

幕間と言いながら三話目に入ってしまいましたが…最後までお付き合いください。

それではどうぞ^^*


第17話 幕間 藍羽 浅葱Ⅲ

「ねえ、古城。こっちの服とさっきの服どっちが似合うと思う?」

「うーん…」浅葱は妙に高いテンションでさっきからずっと服を選んで持ってきては古城に感想を聞いている。

美的センスもそれほどある訳でもなく普段から自分の服は動きやすく楽なものを選んでいる古城にはあまり違いが分からないのだが、浅葱が楽しそうにしているため仕方なく付き合ってやる。

「やっぱりこっちかな?」

「正直どっちも似合ってると思うぞ?」

「どっちって聞いてるのに両方は答えにならないでしょ…」浅葱のスタイルはモデルと同じかそれ以上にいい。その上古城の中では顔もかなり綺麗な部類に入る彼女には似合わない服を探せと言われた方がむしろ難しい。

「いや…だから、カレーとハヤシライスの違いを聞かれたら上手くは言えないけどどっちもそれぞれ美味しいだろ?」

「古城の割にはいいこと言うわね…」どうやら古城のよく分からない例えに浅葱は満足したらしい。よく分からない例えを使っても通じるのはやはり2人の仲があってこそのものだ。

「ちょうど春服に困ってたしどうせなら両方買っちゃうか、買ってくるからちょっと待ってて」

「ああ、店の前で待ってるよ」店員を呼びに行く浅葱を置いて古城は店の外に出た。どんなものを売っているにしても女性用を専門に扱う店に男が長居するのはかなり酷だ、その上古城にいたってはいい匂いにあてられて吸血衝動が出ないとも限らない。

店の前にあったベンチに腰をかけ携帯で明日の天気やニュースを眺めていると浅葱はすぐに店から出てきた。

「ごめんね、付き合わせて。なんか用があるんだったっけ、とりあえず喫茶店でも入ろ?付き合ってくれたお礼に奢るからさ」

「ああ、そうだな喉も渇いたしな」

「ならあそこにしよっか、パンケーキがなかなか美味しいのよ」

浅葱に連れられて入ったのは以外にも古風な雰囲気の店だった。1人で利用する人もカップルで利用する人もいたが、幸いにもそれなりに席は空いていた。

店員に案内されて席に座った2人はメニューを開ける。

「古城って、初めてのお店だと無難なものしか頼まないわよね?」

「ああ、よく知ってるな」

「まあ、長い付き合いだしね。じゃあ私がテキトーに頼むんでも文句ないわね」

「任せる、好きにしてくれ」

そんなやり取りから数分が経ち店員が2人のテーブルにアイスカフェラテを2つ、浅葱が言っていたのであろうパンケーキが1皿運ばれてきた。

「なんか意外だな、女子が食べるパンケーキってもっとこう派手で見た目重視みたいなやつかと思ってたんだが」

「ああいうのは私から言わせればパンケーキでもなんでもないわよ。コスパは悪いし美味しくないし無駄にクリーム多くて太りそうだし」

「分かったって…、美味いなこれ」浅葱のヒートアップするパンケーキ論争に恐怖を覚えながら古城は彼女のおすすめらしいカフェラテを飲んでいた。

「そうそう、本土…じゃなかった、日本の有名な養蜂場の高級ハチミツを使ってるの。コーヒー豆も牛乳もなんかよくわからないけどいい所のやつみたい」

「なんか情報がテキトーな気がするけど、浅葱がオススメするだけあって美味いな。甘さの加減が絶妙だ」

「そうでしょ、パンケーキもメープルシロップじゃなくてそのハチミツを使ってるんだけど美味しいのよ。普通はあげないんだけど付き合ってくれたお礼に半分あげる」そう言うと浅葱はパンケーキを半分に切り分け古城にフォークを渡した。

「どう…?美味しい?」

「ああ、すごく美味い。正直あんまりパンケーキにいいイメージがなかったんだけどこれはイケるな」

「でしょ、やっぱり古城は分かってるわね」

そんな話をしながらパンケーキを食べ終えた2人は学校の友達の噂話などに花を咲かせた。

「そういえば、私に用ってなんだったの?」1通り話したあとになにか思い出したように浅葱が本題に話を戻す。

「てっきり忘れたのかと思ってたぞ、今日は浅葱にお返しのプレゼントをさ…持ってきてるんだよ」

「え、いいわよそんなの!古城にあげたのってスーパーの特売品だし」浅葱はこの期に及んでもまだそんな嘘をつく。

「そうだとしてもさ、日頃から色々と世話になってるお礼って意味も兼ねてな」

「そういうことなら…そういうことにしとくけど」

「気に入ってくれるといいんだけどな」古城は浅葱の前に綺麗な装飾が施された箱を置いた。

手に取った浅葱はなぜかかなり驚いている。

「ねえ、古城。この箱ってうちの島にある1番高いブランド品よね…?」

「そうなのか?」流行やファッションといったものにあまり興味の無い古城や雪菜や紗矢華は知らなかったのだが見た目や服にこだわる浅葱はブランド品などにも詳しいのだ。

「知らずに買ったの!?あんたいつからそんな富豪みたいになったのよ」

「いや…一応この島オレのものってことになってるんだけど…、そんなことはいいんだよ開けてみてくれ。開けないなら持って帰るぞ?」

「え、開けないなんて言ってないじゃない、今開けるから」箱をしまおうと古城が箱へと伸ばす手を振りほどき浅葱が箱を開けた。

「これって…」

「ああ、イヤリングだよ。今も付けてる前にやったそれ、もうだいぶ使ってただろ」

「うん…」

「どうした?気に入らなかったか…?」あまり浅葱の反応が古城の思っていたものと違い気に入らなかったのかと心配する。

「そのさ、古城って鈍感だから私のことなんて見てないのかと思ってたらちゃんと見てくれてるんだって分かったから…嬉しくて」

「そっか、いつもお前のことは気にしてるよ」

「古城が私のことを…」長年古城に恋心を抱いている浅葱だが、最近になり雪菜を始めとする絶世の美女クラスの女の子がどんどん古城の周りに現れ、自分は古城には見てもらえないと思っていた彼女には古城の言葉が素直に嬉しかった。

「付けてみるか?」

「ううん、今度古城と2人でどこかに行く時に最初につける。このイヤリングに合う服と一緒にね」

「そっか、楽しみにしてるよ」

「うん、だから空いてる日あったら教えなさいよ?」

「分かったよ」とりあえず喜んでもらえて古城は安心する。

「じゃあ、外暗くなってるしちょっとぶらついて帰ろっか」

「そうだな」2人は喫茶店を出てしばらく街を歩いた。

浅葱の少し後ろを歩いていた古城は自分が知らない場所を歩いていたことに気がついた。

「なあ、浅葱。ここどこなんだ?」

「気づいちゃった?私ここから見る景色が好きなの」足を止めた浅葱が見つめる先に古城もなんとなく目を向けた。

「すごいな、これ」2人が立つ場所には高い建物がなく島の中心部が一望できた。

「綺麗よね、ここからこの島の夜景を見てると色々と思い出すのよね。古城はさ、この景色を見てなにか思う?」

「この島ってこんなに人が住んでるんだな、外から見ることってあんまり無いから実感なかったよ…」

「それで?」

「なんていうか、もっと頑張らないとなって。この前の事件のせいでこの島の人たちの不安は募る一方だしオレがなんとかしないとな」

「そう、それが分かったなら連れてきてよかった。古城、最近どうすればいいか分からなくて迷ってたでしょ?」

「まあな、でもやらなきゃいけない事が分かったよ」

「手伝えることがあれば手伝うからね」

「浅葱はほんとよく分かってるよなオレのこと、いつもありがとな」

「お互い様よ、それより古城?」

「ん?」

「お返しのお礼って言ったらなんだけど…、誰も通らないし…」そう言うと浅葱は古城を道の暗がりへと押しやり身体を近づけてくる。

「はぁ…、いいのか?」

「よくなかったらこんなことしないわよ、他の人には内緒よ?」

「わかったよ」古城は浅葱の服から見える首元に口を近づけていく。

彼女が顔を傾けたことを最後の確認としゆっくりと牙を沈め彼女に負担がかからないようゆっくりと血を吸う。

「っ…、ん…」万が一誰かが通ってもいいように必死で声を抑える浅葱を抱きしめ古城はまたゆっくりと牙を抜いた。

「大丈夫か?」

「うん…」浅葱はまだ吸血された経験が少ないため古城なりにも優しくしているつもりなのだがそれでも彼女にはそれなりに負担をかけてしまうらしい。

「ごめんな、流れでこんな」

「いいわよ、街中で発情されて知らない子に手を出したりしても困るし」

「そんなことしねぇよ…」そうしていつものように軽口を叩きあった2人は途中で別れ家に帰った。

家に帰った古城は凪沙たちと夕飯を食べ、早々と風呂に入り自室に籠り那月から課された課題に手をつけた。

どうやら浅葱との会話やこの休みの間の経験で古城には色々とやるべき事が見えたらしかった。

古城にしてはかなりの時間集中して課題の山の1つを片付け一休みつこうとすると見計らったように雪菜が部屋に入ってきた。

「お疲れ様です、先輩。お茶置いておきますね」

「ああ、悪いな」

「頑張るのもいいですけど、いきなり無茶しないでくださいね」

「分かったよ、そろそろ寝る」

「明日はお昼すぎから人口島管理公社の方達と会議もありますしね」

「そっか…、完全に忘れてた。明日から溜まりに溜まった公務か…」

「そんな落ち込まないでくださいよ、私たちも出来ることは手伝いますから」

「頼む…、でもまあ頑張るよ」

「どうしたんですか?先輩がそんなやる気だなんて」

「オレも一応真祖だからさ、そろそろちゃんとしないとなって思っただけだよ。それに、努力することは案外嫌いじゃないしな」

「そうですか、先輩らしくていいと思いますよ。では私はもう寝ますね、先輩も早めに寝てくださいよ?」

「ああ、わかった。おやすみ姫柊」

「おやすみなさい」

雪菜が部屋から出て行ったあと少し部屋を片付けた古城は寝るためにベッドに寝転がった。

いつもならすぐに寝てしまうのだが、今日は3人から血を吸ったこともあり眠気はあるのだが身体が活力に満ち溢れているためなかなか眠ることが出来ない。

 

結局古城は一睡もすることもなく次の日の朝を迎えてしまったのだった──




長かった幕間も終わりました…。
次回からは新章入ろうと思います!バトル要素ガンガンぶち込む予定です。
新キャラも出すつもりです。

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