とりあえずどうぞ!
「先輩…?どうしたんですか?」どうやら雪菜は少し自分が怒りすぎたと気にしているらしい。
「どうってこともないんだけどな?その…少し渡したいものがあってさ」
「渡したいもの?」
「ああ、この前さ姫柊の指輪がオレのせいで壊れただろ?」
「はい…先輩。そのことについてお話が、、」
「どうかしたか?」
「その…簡易キットで調べてみたら…陽性で…やっぱり先輩の『血の伴侶』になってしまったみたいで…」
「姫柊…?その、わるい!ほんとにあのときのことは謝らなきゃいけないと思っ─」
「いいんです、先輩は私がいないと無茶ばっかりしますから。ずっと隣で見ておいてあげます」
「そっか…姫柊をがっかりさせないようにしないとな、それで渡したいものなんだけどさ」
「はい、なんなんですか?その渡したいものって」
「だから、指輪が壊れたからさ、これを」そう言うと古城は雪菜に綺麗な小さい箱を渡した。
「なんですか?この箱…」
「開けてみてくれ、いらなかったらいらないでいいからさ」
「はい…じゃあ…」雪菜が箱に器用に結ばれたリボンを解き箱を開けた。
「気に入らないか…?」
「せ、先輩。これって…」雪菜の視線は箱の中の指輪と古城の顔を行ったり来たりしている。
「指輪だけど、やっぱり気に入らないか?」
「い、いえそんなことは無いんですけど…そんな…」
「姫柊…?あー…そういうことか?」雪菜の反応がよく分からない古城は紗矢華とのやり取りを思い出し指輪を姫柊の指に付けようとする。
「せ、先輩!?」
「ん?」
「私まだそんな年齢じゃないですし…それにまだ…そんないきなり…!」
「とりあえず付けるぞ?」雪菜の言うことが相変わらず分からない古城は彼女の言葉を無視して左手の薬指に指輪をつけてやる。
「だから…そんな…先輩…」古城がなんとなく指輪を嵌めた指の位置も災いし雪菜の頭の中でどんどん事が大きくなっていく。
「まあ、気に入らなかったら捨てるなりしてくれ」
「先輩…」
「どうしたんだ?」
「私が貰ってもいいんですか…?」
「ああ、もちろん。姫柊のために選んだんだからな」
「私の…ためにですか…、そう…ですか…」
「ああ、これからもずっとよろしくな姫柊」
「はい…ずっと…」
「じゃあ、オレはちょっと出かけないといけないからこれで──」古城が浅葱に会いに行く用意をしようとしたとき雪菜が古城の服の袖を掴んだ。
「どうした?」
「その…私にはこんなことしか今はできないので…」そう言うと古城の方へと綺麗な首を向けてくる。
「いや、待て姫柊。いきなりどうした?」
「先輩がこれだけしてくれているのに、私もなにかしないとって…嫌ならいいですよ…嫌なら」
「嫌じゃないけどさ、いいのか…?」どんどん拗ねていく雪菜に困った古城は雪菜に一応確認をする。
「はい…恥ずかしいので早く…」雪菜は古城の方へと歩み寄り彼の前に首元を持ってくる。
雪菜との吸血ももうかなりの回数を越えたためかこれ以上2人の間にはもはや言葉など必要なかった。
雪菜は自分の首に牙を埋め血を吸うことに夢中になる古城の顔を愛おしむように抱く。
「あ…ん…う…」静かな部屋に雪菜の艶かしい声が響き渡り古城が首元から口を離した瞬間雪菜の身体が崩れ落ち古城に覆い被さった。
「先輩…激しいですよ」
「悪い…つい…」
「まったく…先輩は本当にいやらしい人ですね」そう言いながら雪菜は古城に微笑み、くっついていた身体を離した。
「出かけるんでしたよね?今日までは1人で外に出ても大丈夫ですし、ゆっくりしてきてください。じゃあ、私はこれで。あと…その…嬉しかったです」雪菜はそれだけ言うと古城の部屋から出て行った。
「最近やたらと血を吸ってる気がするな…」古城は最近のことを思い出し自分が吸血行為に徐々に慣れてきていることを不安に思いながら時計を見た。
まだ浅葱との約束までは時間が少しあるが雪菜の言うように自由に1人で出歩ける貴重な休みということもあり早めに出ることにする。
浅葱のためのプレゼントを持ちいつものパーカーを羽織った古城は外に出た。
古城は一応時間まで一時間半ほどあるが、もしものことがあってはと思い1度待ち合わせ場所に顔を出した。
「古城?」案の定後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。
浅葱は古城と待ち合わせをするとかなり早く待ち合わせ場所にいることが多いのだ。
「やっぱりいたか」
「たまたまだから、買いたいものもあったし、ほんとたまたま」
「そ、そうか。なら暇だし付き合う」
「いいの?」
「外は暑いし行くなら早く行こうぜ」
一昨日に続き古城と2人で過ごせることに喜ぶ浅葱が足早に道を歩いていく──
ほんとに短いですが新章入れば結構長々する予定なのでご勘弁を!
気づけばUA軽く5000越え…そしてお気に入りも65件ほど…ありがたいですほんとに。
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それでは次回最後?の幕間浅葱回です!