ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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週末は多分更新頻度遅くなると思うので書きだめ書きだめ…。

深夜に投稿しても結構皆さん読んでくださってびっくりしている作者です。良ければ活動報告の方なども覗いて見てください。

たまーに更新します。

それは、さておきどうぞ!


第8話

昼時を周り日中一番暑くなる時間帯にあまり外を出歩く者はいない。

そんな中二人の男女は島の中心部キーストーンゲートに向かって歩いていた。

「暑い…溶ける…」

「だらしないわね、これくらいで」

「吸血鬼に日光はダメだろ日光は」

そんな時ビルに備え付けられた液晶画面に吸血鬼用日焼け止めなるもののCMが流れ始める。

「あれ、使ってみたら?」紗矢華は液晶の方を指さした。

「あれか…」

「なによ、その顔」

「いや、なんでもない…」古城は基樹にもらったCMと同じ日焼け止めを貰って使ったことを思い出した。

あの商品は効果こそ本物なのだが、塗ってから2時間ほど乾燥させなければならずそんなことを知らなかった古城は塗ってすぐに色々な物を触ってしまい身体中に物が引っ付いてしまい取る時にとても痛い思いをしたのだった。

意味深な古城の顔を見た紗矢華は何か話題を変えなければと当たりを見回した時だった。

ぐぅ〜……。

隣から酷く情けない音が聞こえてきた。

「ぷっ…、あなた、もしかしてお腹すいてるの?」吹き出しそうになるのを辛うじて堪えた紗矢華が古城に問う。

「笑うなよ…腹くらい誰でも鳴るだろ」

「まあ、あれだけラーメン屋を回ったのに朝から何も食べてないしね。どうする?お昼にする?」

「ああ、煌坂がよければすぐにでもそうしたいんだが」

「なら、とりあえずあそこに入りましょ」そう言って紗矢華が入っていったのはいつも浅葱や基樹と使うファミレスと同じ店だった。

昼時を過ぎた店内は客足もまばらで待つことなく席につくことが出来た。

「ご注文はお決まりですか?」飲み水とお絞りそしてカトラリーが入ったケースを置いたウエイトレスはマニュアル通りの言葉で接客をしてくれる。

「あとでまた呼ぶんで、今は大丈夫です」

「では、ご注文が決まった頃にまた来ます。ランチでしたら、カップル限定のそこのペアセットがお安くてオススメですよ」

「べ、別にカップルじゃな!」ウエイトレスの最後の言葉に反応しようとする紗矢華の口を塞いで黙らせ古城が苦笑いでやり過ごすことで事なきを得る。

「なにするのよ!」

「こんな所で叫ばれて周りにオレがいることがバレると困るんだよ」

第四真祖であることを公表して以来、この国では古城以上の有名人はいないのだ。彼の持つ生来の見た目の良さに連日のワイドショーによる様々な憶測を主とした報道で噂に尾ひれがつき、古城の株はこの国の女性達の中ではとても上がっているのだった。

数日前にたまたま古城が外に出ていると知られた時には大変な人だかりができたことも記憶に新しい。

それ以降、外に出かける時には雪菜か紗矢華が認識阻害の術式を古城にかけているため、余程古城のことを知っている仲か魔術や呪術に特化しているものでない限り古城を認識するのは不可能になっている。

「ごめんなさい、暁 古城」

「まあ、いいけどさ」紗矢華は未だに謝る時や緊急時の時は古城のことをフルネームで呼ぶ癖が抜けていない。そのことにイタズラ心を刺激された古城はにやりと笑った。

「注文はどうする?店員さんのオススメだしこのペアセットにするか?」

「え…その…でも…」

「反論しないってことはいいんだな」赤くなって下を向く紗矢華に満足したのか古城は店員を呼んでペアセットの注文を通す。

「暁 古城…カップル…暁 古城…カップル…」2つの単語をひたすら呟き続ける紗矢華を見てやりすぎたと反省した古城は話を変える。

「それで、夕方の会議の件はやっぱり吸血鬼暴走事件の話なのか?」

「多分そうだと思う。街に被害が出たから何かしら対策は取らないといけないでしょうし」

「相手が吸血鬼だっていうのに、姫柊がいないのは痛いな」雪菜の雪霞狼は破魔の槍であり、吸血鬼にとっての天敵のような武器である。

そのためその使い手の雪菜がいないというのはなかなかに辛いものなのだった。

そうこうしているうちにウエイトレスが前菜を運んでくる。

「このセットなかなかにちゃんとしてるのね」最初こそ文句を言っていた紗矢華だったが料理の内容はお気に召したらしい。それからはポタージュ、肉料理、チーズ、デザートと黙々と食べ進めた2人であった。

店を出た2人は時間まで特にすることもなく高校生らしく休みを楽しんだのだった──

 

時間になりキーストーンゲートについた2人は広めの会議室へと向かい、古城は部屋の中へと入り紗矢華は外の扉の横で待機する。

「みんな、遅くなって悪い。始めてくれ」それなりに公務にも慣れ始めた古城が本題に入ることを促した。

「暁様、今回は外の獅子王機関の監視役もご一緒に」

「珍しいな、連れてきてくれ」普段の会議では古城以外には参加することができないはずなのだが今回は紗矢華も中へと通される。

部屋に入った紗矢華は大事な場所だというのにまたしても吹き出しそうになるのを必死に堪え、古城の座る席の横に立つ。

「どうした?煌坂」

「スーツの男達の中に1人パーカーがいたら笑っちゃうでしょ!」周りに聞こえないくらいの音量で話していた2人だったが前で男が話しだすとそれもやめた。

「今回の議題は昨今頻発している吸血鬼暴走事件についてです。この国の独立から今日にかけて9件。そのうち被害者が出たケースは未だありませんが徐々に高いレベルの吸血鬼が犯行を犯しており、近いうちに特区警備隊では追いつかなくなる危険性があり、早々に解決策を出した方がいいかと」

「やっぱりその件か、それで煌坂には昨日のことを詳しく聞こうっていうことか?」

「その通りです」

「それなら、分かったことがある。吸血鬼を暴走させている犯人は滅びの王朝の吸血鬼レイハーネってやつだ」

「滅びの王朝の貴族で、それなりの名家の娘であることは分かっています」古城の足らない説明を紗矢華が引き継いだ。

「滅びの王朝、アシュラー家の現当主ですか。そんな方が何故この街に?」

「そこなんだ、あいつがなんでこの島に来たのかが分からない」

「滅びの王朝と我が国との間で戦争を起こそうとしている?」

「いや、存外もっと単純な理由かも知れませぬ」古城の疑問に口々に答える男達。

「今は動機よりも対策です。後手に回っていては相手のいいようにされるだけです」前に立つ男がするべきことを明らかにする。

「特区警備隊の力でレイハーネの居場所を探すことは出来ないのか?」

「難しいかと、仮に見つけられたとしても霧になって逃げられてしまえばそれまでなので」改めてこの国の防衛力の低さに気付かされる。

「とりあえず、特区警備隊に厳戒態勢を敷かせます」

「そうしてくれ、もしものときはオレが出る」古城は自分が国民に言ったことを思い出しながらそう言った。

「私も出来るだけ協力します」古城の心を知ってか紗矢華もそう続く。

「では、詳しい調査は我々に任せてください。なにか新しいことがあれば連絡しますので」

「分かった」それを最後に部屋の外に出て行こうとする古城。

「暁様、これを」古城を呼び止めた男の手には携帯が握られていた。

「ああ、悪い。もらっとくよ。出来ることなら姫柊のやつを出来るだけ早く呼び戻してくれ」

「分かりました」

そのやり取りを最後に会議は終わり古城は解放された。

「お疲れ様」大したことはしていないのだが労いの言葉をかけてくれる紗矢華とキーストーンゲートの外に出た古城はさっき貰った新しい携帯で凪沙に電話をかける。

実を言うと、真祖大戦で携帯を壊してから忙しい日々が続いていたのと面倒くさかったこともあり、新しい携帯を買っていなかった古城にはありがたいことだった。

「もしもし?古城くん?新しい携帯買ったんだねー」凪沙はすぐに電話に出た。

「そうなんだ、もう少ししたら帰るから」

「それだけのためにかけてきたの?LINEしてくれたらいいのに。あ、牛乳とアイス忘れないでねー」そう言うと電話は切れてしまった。

たかだかそれだけの内容で電話をする古城の筋金入りのシスコンぶりに紗矢華は呆れていたが、そんなことは知らずすっかり妹のおつかいを忘れていた古城は近くのコンビニに走っていく。

 

「ほら、終わったなら帰るわよ」目当てのものを買いコンビニから出てきた古城を見て紗矢華は笑いながらそう言う。

「ああ、そうだな」夕暮れを背にし映える彼女の笑顔に見とれそうになりながらもなんとかそう返す古城。

「暁 古城?」

「ん?なんだ煌坂」

「目が赤くなってるんだけど…」

「いや、これは違うんだ!ほら、夕焼けの色が映って!」

「この変態!淫獣!淫魔!」二人の叫び声が夕暮れの街に谺響した。

 

平和な1日だったが終始締まらないなんとも古城らしい1日も終わろうとしていた──




個人的にバトルパートというものは日常パートがあってこそ映えるものだと思っているので、割と日常パートを多めに書く傾向にあります。日常パートでキャラを掘り下げたいというのもありますし。
退屈かも知れませんが日常パートの方もお付き合い下さい。

次回はガチガチのバトルパートの予定ですので期待して待っていてください(レイハーネの眷獣が早く知りたい方はキャラ紹介の方へどうぞ)

一応補足しておくと最後の古城の目の色についての描写ですが
古城は吸血衝動を引き起こすと目の色が青→赤へと変わります。(ストブラがお好きな皆さんなら知っているとは思いますが汗)

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