ブーディカさんとガチャを引くだけの話   作:青眼

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どうも~。遂に明日から始まる『Fate/EXTRAccc』との大型コラボ!『BBちゃんの逆襲/電子の海で会いましょう!』が楽しみで眠れない青眼です!

今回は日曜日のネロ(ブライド)と弓ギル様を狙ってガチャの報告となります!これ以降、私はコラボ記念のガチャを回しません!全て、全てコラボに回します!

というか、BBは『ムーンキャンサー』、パッションリップとメルトリリスのクラスが『アルター・エゴ』!ここまで原作通りだと嬉しすぎて狂喜乱舞しちゃいますよ!エリちゃんとロビンのモーション変更もありがとう!
というか何でギル√エンドの名セリフが礼装になってるんですか!?最高かよ馬鹿野郎この野郎!!イベント開始時にいざ行かん!遥か爆死の彼方までェェェ!!!


待ちに待ったコラボの時!でも意外な結果になって俺は絶望した!

『Fate/EXTRA』シリーズ。それは、俺がこの『Fate/』という作品の中で最も愛し、俺が『Fate/』作品へと足を踏み込むきっかけとなったゲームシリーズ。

このシリーズの原点、『Fate/stay night』のノベル要素に加え、RPG要素を加えたこのゲームは、当時流通していたゲームと一線を画していた。この作品をやり始めたからこそ、俺は型月(TYPE−MOON)の世界へとのめり込んだと言ってもいい。

 

第一の作品、『Fate/EXTRA』の舞台は月面。より正確には、『ムーンセル・オートマトン』と呼ばれる、聖杯戦争を行う運営装置が展開する、霊子ネットワークへアクセスし、そこに集まった総勢128名のマスターによるトーナメント形式で物語は進んでいく。全7回に渡るトーナメントを勝ち抜き、願望機たる聖杯を手にする。これが『Fate/EXTRA』の目的だ。

ちなみに、『Fate/』シリーズの噛ませ犬……間桐慎二や、ヒロインである遠坂凛といった人気キャラクターも、『Fate/stay night』とは別人という枠で参戦している。

 

主人公、岸波白野(きしなみはくの)が使役する英霊(サーヴァント)は、彼の騎士王と同じ顔をしたローマの皇帝、ネロ・クラウディウス。『Fate/』シリーズの顔である正義の味方、『EXTRA』シリーズでは無銘と名乗る贋作者。日本における太陽神・天照大神の分霊である玉藻の前の三騎。また、敵として登場するサーヴァントも大勢いて、ロビンやドレイク船長はここが初登場だったりする。

 

次に、物語は二作目である『Fate/EXTRAccc』へと移行する。本編の第5回戦で、聖杯戦争を運営する『ムーンセル・オートマトン』の想定外の事態が発生してしまい、5回戦までの生存者、及び一部の人間が月の裏側、虚数空間という場所に取り込まれてしまう。物語は、この虚数空間の脱出と、事件を引き起こした犯人を突き止める二つの目的を基準として進んでいく。

当然、主人公が使役する英霊は前作と同じ三騎。そして、本ストーリーに新たに一騎、参戦したサーヴァントが存在する。それは、余りにも強力すぎる為、月の裏側へと封印された人類最古の英雄王。ギルガメッシュその人。慢心王と名高い彼の本気(・・)が見れるのも、この作品ならではの要素だろう。

また、前作ではアイテムを渡す事でしか登場しなかった、間桐桜という少女が、この作品のキーパーソンとなるという事を書き残しておこう。

 

 

そして、『Fate/EXTRA』シリーズは第三作目、『Fate/EXTELLA』へと移行する。『Fate/』シリーズ初のアクションゲームとして登場したそれは、俗にいう無双ゲーというカテゴリーに含まれーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「おい研砥。いつまで宣伝をしている。そろそろガチャを回すのではなかったのか?」

「願掛けだよ願掛け。こうやって『EXTRA』シリーズの宣伝をしておけば、良いことが起こるかもだろ?」

 

ひたすらキーボードに『EXTRA』の事について打ち込んでいると、一部を切り取られたチョコレートケーキと、淹れたてなのかまだ湯気が立ち上る紅茶を盆に乗せた、アーチャーがそこにいた。どうやら、いつものように休憩用の作ってくれたようだ。本当に、この赤いアーチャーは気がきく。

 

「で、エミヤとしてはどうなんだよ。あっちの世界でもお前が活躍してるの、俺は知ってるんだからな」

「どうと言われてもな。私はエミヤシロウという一人の人間の理想であり、抑止力に仕える守護者だ。あの世界の私は……向こうでは無銘と呼ばれているようだが、平行世界の別人と呼ぶのが正しいだろう」

 

無銘、こっちの正義の味方が使わず、向こうの正義の味方が振るう最強の一振り。固有結界、『無限の(アンリミテッド・)剣製(ブレイド・ワークス)』を展開している場合にのみ使える最強の剣。

その名は『永久遥か(エクスカリバー・)黄金の剣(イマージュ)』。かの騎士王、アーサー・ペンドラゴンが持つとされる人々の願いが込められた剣。それを投影できる無銘は、間違いなくエミヤと関係がある。まぁ、根底が同じなだけの、別人というやつだろう。同じ顔の人間は3人いるというあれと同じだ。

 

「ほら、休憩はそろそろ終わりだ。皆が待っている、早く召喚場に向かうぞ」

「あ、ああ。悪いな、後片付けは俺がしておくよ」

「別に構わないさ。誰かに料理を振る舞うのは、私の楽しみの一つだ。ゆっくり寛いでくれ」

「……SG『奉仕体質』、か」

「待て、何故そこでその単語を言う!?それは平行世界の私であって、この私とは違うぞ!おい、聞いているのか研砥!?」

 

後ろの方で何か喚いているアーチャーを置いて、俺はマイルームを後にする。仮にも剣術、魔術の両方において師匠ではあるが、あそこまで家事万能で女性と接点がある奴は好きにはなれない。敢えて言おう。

 

「リア充爆発しろ!!いや、爆ぜろ、アーチャー!!」

「なんでさ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エミヤとの会話のドッジボールを済ませた後、俺は聖晶石の入った箱を持って、召喚場に向かう。すると、そこには事前に呼び出していたサーヴァントがいた。

 

「む、遅いぞ研砥!待ちくたびれたからな!!」

「確かにな。王たる(おれ)を待たせた罪は重いぞ、研砥?」

「ええ!これはもうあれね、私の新曲を聞くまで帰れま10の刑にーー」

「いやいや!!それやっちまったら本当に帰れなくなりますからね!?そこんとこ分かってるんですかこのドラ娘は!!」

 

後ろにエミヤを連れ、前にいたのは4人のサーヴァント。セイバーのネロ。ランサーのエリザベート。キャスターのギルガメッシュ。そして、同じくキャスターの玉藻の前だ。

 

「悪い悪い。ちょっとエミヤの淹れてくれた紅茶飲んでてさ。来るのが遅れちまった」

「……おい贋作者(フェイカー)。次に茶菓子を用意しろと言ったのは我の筈だが?」

「分かっている。後で焼きたてを持って行ってやるから、それで許せ」

 

ムスッと機嫌が悪くなったギルに、エミヤが苦笑して約束をする。どうやら、何か知らない間に二人は仲良くなったようだ。とても良い事なのだが、あのギルがエミヤと仲良く(?)しているのを見て、少し驚いた。

 

「む、アーチャー!余も菓子を所望するぞ!あと美味い紅茶もだ!」

「それなら私の分も用意してね?お礼は後で支払ってあげるわ」

「やれやれ、事がバレたら色々と厄介なのだが、そこの所は理解しているのかね?」

 

ギルにお茶の約束した後、ネロとエリザベートも食い付いてくる。エミヤの作る一品一品はとても美味しく、家の食堂でもエミヤが当番の時は行列ができる。いっそ、外界に一人放り出して、自営業で食堂を出したらどうだろうか。ただでさえ経済・資材難である家も、少しは豊かになると思うのだが。

一人でそんな事を考えていると、いつの間にか色々と人が集まっていた。ナーサリーやアンデルセン。ドレイク船長といった、『EXTRA』に関係しているサーヴァント達だ。

 

「おいおい、いつの間にこんな事になってるんだ?さっきまで五人しか居なかったよな?」

「いや〜、それがですね、紅茶さんの菓子や茶が飲みたいとあの三人が話していると、それを偶々聞いたサーヴァントがやって来ちゃいまして」

「OK理解した、解説ありがとう玉藻さん」

 

要するに、皆が皆エミヤの作る物を食べたくてやって来たらしい。だからと言って、ここまで集まるのは異常だと思うが。まぁ、エミヤの飯は世界一とでも言っておけば納得してもらえるだろう。材料と手間を惜しまないオカンだし。

 

「さてと、それじゃそろそろガチャを回すかね」

「うむ!頑張って花嫁衣装の余を当てるのだぞ!」

「ふっ、正月のリベンジだ。的確に弓の我を召喚し、育てるがいい」

 

今回用意できたのは10連ガチャ3回分ジャストだ。前回の『ぐだぐだ明治維新』で召喚を行なったため、『EXTRA』シリーズのピックアップの為に貯めておいた財布の紐を緩める事になってしまったのだが、仕方がないと割り切っておこう。GW(ゴールデンウィーク)だと思っていたイベントが、4月末に行われるとか誰が思うだろうか。

 

「というか、内容が本当に読めないんだが。何をどうやったらラスボス系ヒロインのBBが配布サーヴァントに……」

「さてな。俺としては嫌な予感しかせん。あの人間を駄目にする歩く18禁尼僧なんぞ召喚されてみろ、俺は部屋に篭って執筆させてもらうからな」

 

うんざりした顔でため息を吐くのは、家でも立派に仕事をしてもらっている作家系サーヴァント、自称三流サーヴァントのアンデルセンだ。確かに、あの尼僧が召喚されたらもう終わりだ。具体的に言うと人類悪顕現レベル。

 

今回行うピックアップガチャは、さっきかるやたらと宣伝している『Fate/EXTRAccc』。それとの大型コラボ、の記念として行われた物だ。人理焼却を防いだとしても、家の様なブラック企業は戦う運命(さだめ)なのだということを思い知らされる。そろそろ石貯め時(休み)をくださいと切実に願う今日この頃だ。

 

「とりあえず、10連分の石をポーイ。さ〜て、何が出るかな?」

「既に召喚されているサーヴァントなら宝具強化だが……今回のピックアップだと、星五の二人を除けば、星四はガウェイン卿が喚ばれていないな」

「6章……キャメロット……祝福(ギフト)……うっ、頭が」

「唐突な自虐ネタはやめぇや」

 

『頭痛持ち』のスキルに合わせて発言したネロにツッコミを入れておく。いや、確かに6章のガウェインは許せなかったけどね。当時、アーチャーで使ってたのはロビンと子ギルしかいなかった弱小マスターだった俺は、頼光さんとスキルで三回ガッツを使えるネロに頼りっきりだった苦い記憶を呼び戻す。

いつもの様にサークルが動き回り、新たに英霊や礼装が召喚されていく。黙々とカードを弾き出されてくるが、8枚目に至るまで礼装まみれだ。

 

「……一向にサーヴァントが召喚されないんだが、ってかもう星四で『鋼の鍛錬』やら、『月の勝利者』とか出ちゃってるんですけどこれは……」

「大丈夫、大丈夫だ研砥!まだ最後の一体が残っておる!」

「待て赤いセイバー。それはフラグだ」

 

遂に9枚目に至るまで礼装祭りだった。最後の10枚目でようやく三本のラインが開き、中央にクラスカードが出現する。色は銀色、光を伴って召喚されたのはーーー

 

「あ〜どうやら大当たりの様ですよマスター!悪魔、メフィストフェレス。罷りこしま〜〜した!!」

 

カラフルな衣装を見に纏い、赤い帽子を被った白い肌の男、道化師(ピエロ)という言葉が最も合う魔術師の英霊(キャスター)、『メフィストフェレス』が召喚されていた。

 

「……あ〜うん、知ってた。でも久しぶりだなメッフィー」

「ええお久しぶりですねぇ〜。うひひひ、第四特異点で貴方方の敵として現れ、どこかの世界線では二つに別れたりした私ですよぉ〜」

 

聞くに耐えない高笑いをしながら、メッフィーは器用に手に持つ鋏を振り回して踊る。この場にいる皆が露骨に残念そうにするが、俺は案外そうでもない。メッフィーは育てれば強いサーヴァントの一人だという事を知っているからだ。

 

「それじゃ、悪いけど先に工房に行っといてくれ。もうお前五人いるからな」

「承知いたしました〜!それでは、私、先に行っておきますねぇぇぇぇ!!」

 

相変わらずのハイテンションぶりに苦笑いしながら、念のためにドレイク船長に案内させながらメッフィーを見送る。1回目の10連は大外れ。だが、この程度で諦められるほど、俺は爆死していない。

 

「次の10連だ。さっきよりも素早く行くぞ!!」

 

30個の石を放り込み、続け様に召喚サークルに設置されたボタンを押す。このスイッチは、一度押せば星四以上のカードのみを排出する便利なものだ。無論、出てくるのは1枚以上だが、最初の10連で爆死している以上、2枚以上は出てくるはずだ。

 

 

だが、結果はどうだろうか。出てきたのは星四は概念礼装ただ1枚のみ。しかも、ここでは11枚目となる『騎士の矜持』だ。ダン卿、ロビンが好きなのは分かるけども、限界突破してるのが2つもあるんだから、もう来なくてもいいんだよ?(白目)

 

「ばかな………ばかな………!!」

「いやぁ〜気持ちがいい爆死っぷりですねぇマスター!それこそ、私の仕掛けた爆弾以上の爆発っぷり!!私、感動の余り涙が出そうですよぉ〜〜〜?」

「………令呪を持って命ずる、自害せよきゃ」

「「「落ち着け研砥ッ!!」」」

 

スキップ召喚を行なった後、後で確認した所で現れる新たなメッフィー。しかも、その数はさっきの三倍。とっとと工房へシュートしてしまいたいが、この道化師、散々人を煽った後でドロンと消えやがった。次に出てきたら問答無用で自殺コマンドを叩き込んでやる………!!

 

「それにしても、今回は本当に振るわないな。いつもなら、20連に一回は星五礼装程度はだすのだが」

「その成れの果てが『五百年の妄執』限界突破だって事を忘れてるのか忘れてるよねぇ!!俺だけだぞ、未だに『フォーマル・クラフト』持ってないマスターは!!」

 

他のマスターは結構持って(限界突破済みの知り合いもいる)いるのにも関わらず、俺は一枚も持ってないのだ。セイバーのランスロットやネロと相性が良いあれは、何としても入手したい礼装の一つだ。まぁ、その代わりにと言っては変だが、『もう一つの結末』は2枚持っているのだが。

というかあれだな、ここまでサーヴァントも礼装も出ないのは本当に久しぶりだ。

 

「くっ……なまじ星四サーヴァントを出し続けたツケが、ここに来たか……!!」

「それもあるだろうが、元々研砥は二、三ヶ月程新規サーヴァントが出ず、一ヶ月程連続して良いのが出る系のマスターであろう?最初のイベントで余や、その後でブリュンヒルデを召喚した後、二ヶ月近くはは星四サーヴァントが呼べなかったからな!」

「古傷を抉るな!?くっ、俺はまたネロ(ブライド)や弓ギルを召喚出来ないのか……!!」

 

地面に拳を叩きつけ、悔しさの余り涙を流す。最初のバレンタインにネロ祭の時も、正月に2回も行われた弓ギルピックアップも、そのどちらも成功しない。ここまでだとあの二人が絶対に呼ばれたくないと言われているようにも聞こえてくる。

血反吐を吐いて、遂には恒常サーヴァントを召喚するという目標さえも投げ捨てた召喚行為。俺の願いは、祈りは彼らには届かないというのか……!!

 

「否ッ!断じて否ッ!彼らは俺の祈りに応じてくれないのではないッ!!ただ単に……まだ、その運命()ではないというだけの事ッ!!ならばーーー俺はァッ!!」

「あの〜、ちょっとマスターの口調が巌窟王さんっぽくなってるんですけど、どうしちゃったんですかね?」

「ああ、この間カルデアで作られたエドモン・ダンテスのドラマCDの影響だろう。私も聞いてみたが、あれは中々に辛い。それに、研砥は表で活躍する人物より、裏で活躍する苦労人系の人間が好きだからな」

「ああ。あやつの好みは理解したが、中々特殊な趣味をしている。騎士王やヘラクレスといった人気なものより、そこの贋作者(フェイカー)といった裏方の人間を好む。ま、言うなれば英雄より反英雄が好きなだけだ」

 

後ろの方で何やら喋っている気配がするが、こっちは気にする余裕がないので無視する。最後に残った30個の石を構える。

 

「今こそ……今こそ俺に力を!!運命とは自らの手で切り開くもの!!俺のターン………ドロォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

石が入った箱を召喚サークルに叩き込み、そのまま何かを引き抜くように手を振りぬく。いつもより荘厳なBGMが流れつつ、召喚サークルが起動する。

 

「1枚目ェ!『呂布奉先』!2枚目ェ!『百貌のハサン』!3枚目ェ!『ディルムッド・オディナ』!4枚目ェ!『イマジナリー・アラウンド』!5枚目ェ!『過ぎ去りし夢』!!」

「今回はサーヴァントの比率が高いな。このまま行けるか……?」

「まだだ。最後まで気を抜くなよ研砥(マスター)……!!」

 

召喚されないサーヴァントに危機感を感じつつ、俺は一心不乱にドロー素振りを続ける。ここまで来たのだ。最後までこの地獄に付き合ってやる………!!

 

「6枚目ェ!『エウリュアレ』!7枚目ェ!『騎士の矜持』!8枚目ェ!『俵藤太』!9枚目ェ!『牛若丸』!!」

「くっ、星五礼装が来たから諦めろと、物欲センサーが言っているのか……!?」

「まだよ!まだ最後の1枚が残ってるわ!諦めるんじゃないわよマスター!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

エリザベートの熱いエールに応えるべく、俺は右手を地面に当てる。自身の持てる力の全てを注ぎ込み、勢いよく引き抜くーーーー!

 

「ドロォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

俺の叫びに応える様に、召喚サークルもバチバチと音を立てて回転する。その輪の数は三本。サーヴァントの召喚が確定。最後の10枚目、泣いても笑ってもこれが最後だ。激闘の末、最後に召喚されたサーヴァントはーーー

 

 

 

 

 

 

 

「ほいほい、呼ばれたからにはそれなりに働きますよっと」

 

 

 

 

緑色のフード付きの外套に身を包み、葉巻を口に咥えた優男の声。家でもかなりの古参である星3(・・)のアーチャー。『ロビンフッド』だった。

 

「………ははは………はははははは。クハハハハハッ!!」

「ミコッ!?お、落ち着いてください研砥さん!!本当に巌窟王さんみたいになっちゃってますよ!?」

「これが!!これが落ち着いていられるものかッ!!今回のイベントの為にッ!!俺がどれだけ努力したと思っているッ!!具体的に書くと『EXTRAccc』の全8ルートを受験が終わった後でもう一回攻略したんだぞ!!ここまで!!ここまでの努力をしても!!俺はァァァァァァ!!」

 

自分の無力さに、そしてここぞという時に妨害してくる物欲センサーに怒りを抱く。そうか。久しく忘れていた。これが怒りだ。全世界中に存在するガチャで爆死した者たちが等しく手に入れる一つの感情だ。

 

「こうなったら自棄じゃぁ!!残りの呼符も全部使ってやるゥゥゥゥ!!」

「おいおい落ち着けよマスター!そいつ次のイベントガチャのために取っておくってグホォ!?」

「ランサーが死んだ!」

「この人でなし!!」

 

相変わらず混迷を極める召喚場での騒動は、偶々ここを通りかかったエレナとナイチンゲールによって(物理的に)止められた。結果として呼符ガチャは挑まなかったが、俺は再びネロ(ブライド)と弓ギルを召喚できなかったのだった。久方ぶりの大爆死は応えるぜ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー後日、食堂にてーーーーー

 

「そっか。結局新しい人は誰も来なかったんだね」

「ああ。本当にごめんなブーディカさん。折角歓迎パーティの準備をしてくれてたのに」

「別に構わないよ。それじゃ、この料理は晩御飯に回そっか。結構量はあるし、2日は持つんじゃないかな」

 

全く嫌な顔をせず、今回のガチャで新しい人が呼べた時の為に、厨房に配置していたブーディカさんに謝罪しながら、作られた料理が乗せられた皿を運ぶのを手伝う。

普段、俺はここには来ないのだが、今日は頼光さんが担当している日ではないので安心して来ている。あの人、俺が軽い料理を作ってるのを見ると何故か泣き出すから本当に困る。金時(ライダー)が困るのも無理はない。

 

「それにしても、ここまで礼装祭りだったのも懐かしいな。この間まで、いい感じに星4のサーヴァントを引き当てれたのが奇跡的だったんだと、今更ながらに思い知ったよ」

「いや、単に運が悪かっただけじゃないかな。それによかったじゃない、最近来てくれた茶々ちゃんだって、全然育成できてなかったんだし」

「それは……そうだけどさ。やっぱりガウェイン卿くらいは召喚したかったなぁ。ブーディカさんも、同郷の人がいたら嬉しいだろ?」

 

家にいるブーディカさんと同郷の人が……イギリス出身のサーヴァントは作家系と多重人格者(ジキルとハイド)を除けば、ロビンやジャック。あとは薬を調合してくれたナイチンゲールぐらいなものだ。

彼女の後輩達……円卓の騎士は、ベディとランスロット。それからアルトリア・リリィやサンタオルタしかいなのだ。俺としては、一人でも多くのイギリス出身系のサーヴァントを召喚して、願わくばフルコンプしたいところだ。

 

「ふふっ、本当に研砥は優しいね。私みたいな地味〜なサーヴァントなんかに付き合ってくれるし、気も使ってくれるし」

「地味だなんて、そんな事を言わないでくれ。俺は貴方の事が好きだし、そんな貴方に応えれるように聖杯も、スキルレベルも上げて来たんだから」

 

これは紛れも無い事実だ。俺はブーディカさんが大好きだし、そんな彼女のマスターに相応しい人になれる様に頑張ってきたつもりだ。あの時、冬木で彼女に救われる前から、この世界に来る前から彼女のことは好きだったのだから。

 

「うん、知ってるよ。だから、ねーーー」

「え、ちょブーディカさん!?」

 

突然、こっちに身を委ねる様に倒れるブーディカさんを、俺は成り行きで抱きとめる。女性として成長しすぎな二つの柔らかい物が当てられるが、そんな事はどうでもいい。問題は距離だ。俺とブーディカさんの顔が、互いの息が届く距離にまで狭まっている。

 

「あ、あのブーディカさん。こ、これは一体」

「もう、本当に鈍感さんだね。ここまでしないと、研砥は気づかないのかな?」

 

駄目弟を見る様な優しい目つきで、ブーディカさんは唇を近づける。彼女の赤い髪と、深い森を思わせる瞳。そして、彼女の美しい唇に目が釘付けになる。

数瞬が何時間にも思われる刹那。ついに、俺と彼女の唇が触れるーーー

 

「そうはさせる、かぁぁぁぁぁ!!」

「ふぇ!?ちょ、ネロ公!?」

 

事はなく、突如俺の腰に手を回した何者かによって、俺はイナバウワーの要領で頭部を地面に叩きつけられる。これは間違いない、バビロニアでケツァル・コアトルに教わったプロレス技の一つ、ジャーマンスープレックスーーーーー!!

 

「って!?いたたたた!!痛い痛い痛い!!ちょ、誰だプロレス技かけてるの!?ギブギブギブギブゥ!!」

「む、す、すまぬ研砥!!少し待っておれ!!」

 

聞き慣れた声が後ろからする。横に倒される様に技から解放された俺は、荒くなった息を整える様に深呼吸をしていると、目の前でまた喧嘩をしているネロとブーディカさんがいた。

 

「もうっ!本当に良い所邪魔して来るよねネロ公!良い加減にしないと、本当に斬るよ!!」

「ほほぅ、やれるものならやってみせるがいい。そなたは『戦闘続行』でガッツが1回。余は『三度、洛陽を迎えても』で3回ガッツ。結果は明白だと思うがな!」

「くぅ!汚い、流石ローマ汚い!!というか何さその服!何で赤い方のあんたが花嫁衣装なんて着てるのよ!!」

 

毎度の如く喧嘩を繰り返す二人だが、さっき召喚場で会った時とは違い、今のネロはいつもの赤い舞踏服ではなく、召喚する予定だった星五のネロの衣装を着ていた。その事に触れてもらえたのが嬉しかったのか、さっきまでの怒り顔から一変、照れる様に笑った。

 

「うむ!先ほど研砥が爆死した故、少しでも気を紛らわせないかと思いこの衣装を着てみたのだ!因みに、メディアに頼んだら快く作ってくれたぞ!!」

「何やってんだあの人は………!!」

 

相変わらずのアルトリア好きなメディアに少し呆れる。けどまぁ、悉くアルトリアピックアップもスルーされたりしてストレスでも溜まっているのだろう。まぁ、あくまでネロはアルトリアと顔が似ているというだけであっって、本人では決してないのだが。

 

「それよりも研砥よ。折角余が新しい衣装を身に纏ったのだ。何か、言う事があるであろう?」

「いや、お前は星5のネロじゃないだろ。それに、色々と見慣れてるから別に言うことも……」

 

 

呆れながらそう言おうとしたその時だ。目を少し潤ませているネロを見てやれやれとため息を吐く。何はともあれ、少しでも俺を励まそうとしてやってくれたに違いない。ならば、それに応えてやるのが良いマスターというものだ。

 

「ああ。凄い似合ってる。やっぱりネロは美人だよ」

「!!うむ!うむうむうむ!!やはり研砥は違いの分かるマスターよな!良いぞ!今宵は、余の晩酌に付き合う事を許そうではないか!!」

「恐悦至極でございます、ネロ・クラウディウス皇帝陛下殿?」

 

とりあえず、ネロの服装について感想を言うと、満足そうに笑ったのを見てほっとする。何はともあれ、ネロが泣き始めるという一大事にはならずに済んだ様だ。

急遽入った予定に頭を悩ませ始めたその時、俺の体が宙に浮き、後方へと引き寄せられる。

 

「戯け。今宵は我と飲み明かすのだ。他の雑種共と飲むなど我が許さん」

「……あの〜ギル様。一体何をしていらっしゃるのでしょうか?」

「見て分からぬか。我の所有物を手元に引き寄せただけだが?」

 

自信満々にドヤ顔をする術ギルを見て、凄く頭が痛くなる。おかしいな、こっちのギルは王として成長した後のギルの筈なのに、凄い頭が痛い事をしでかしてくれている様にしか思えない。

というか、何故に術ギルが神話礼装(その姿)で現れてるんですかね!?

 

「何、少しばかり興が乗っただけのこと。今宵の我は、英雄王として貴様に接してやろう」

「いきなりキャスターからアーチャーにクラスチェンジするとか無茶苦茶だな!?」

 

確かに、ギルの宝具の原点を駆使すればクラス替え程度造作もないかもしれないけれど、ここまでのチートっぷりだといっそ清々しい。

 

「……ねぇギル。ちょっと研砥を離してくれないかな?私、ちょっと話したい事があるんだよね」

「余もだぞ!研砥を離さぬか金ピカ!!」

「ふはははは!馬鹿め!我の所有物を使うのに、何故貴様らの事を聞かねばならぬ!いつもなら即刻首を切り落としておくところだが、今は気分が良い。そのまま後ろに下がるというのであれば、不問としてやってもーー」

 

ギルがアーチャーの時の言動で話したその時。辺り一面が眩い閃光に覆われる。光が消える頃に広がる荒野。上空に浮かぶ大小無数の歯車。見慣れた世界を展開した者の名前を俺は呼ぶ。

 

「今度はお前かエミヤ!?なんだなんだ!?一体どうしたってんだよ!?」

「いや、私は別に君を思って宝具を使ったわけではない。ただ、私が固有結界を展開する前にいた場所を思っての事だ」

「む?固有結界を発動する前の場所………あっ」

 

エミヤのいつもより少し低い声に驚きつつ、さっきまでいた場所を思い出して俺は背筋が凍る。この世界になる前まで居たのは食堂、つまりエミヤの戦場(聖域)だ。それはまぁ、怒っても仕方がないかもしれない。

 

「さて、三人とも………懺悔の用意は出来ているなッ!!」

「いやそれ別の世界のエミヤの(中の人的な意味の)ネタだろうがぁ!!」

 

かくして、固有結界(食堂)内で行われた戦いは熾烈を極め、結果は魔力切れで戦いは呆気なく終わる。そして、被害は食堂の一部損壊と料理長二人が寝込むという結果となり、復帰するまでは式さんと頼光さんが厨房で働くことなるのであった。

俺はというと、戦いの惨禍に巻き込まれて気絶。魔力の枯渇で寝込む事となった。自業自得(?)とはいえ、どうしてこうなったと思いながらも、自室でナイチンゲールが調合した、苦い薬を飲み続ける事になる。

 

ちなみに、寝込んだ俺の看病をするのを巡り、玉藻さんとキャットが殺し合いを始めるのは、この後だった。

じ、自己処理ががががががががががががごが

 

 

 




ここまでの既読、ありがとうございました!
皆様のガチャの結果も、メールか感想で貰えたら嬉しいです!勿論、話の感想・誤字脱字・設定の食い違い等の私的もお待ちしております!

本編も同時更新していますので、感想をもらえたら嬉しいです!!それでは!

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