ブーディカさんとガチャを引くだけの話   作:青眼

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今回は『ぐだぐだ本能寺 復刻ライト版』と、『カルデアボーイズセレクション 2017』のガチャ報告です。色々と大変な回でしたが、何とか書き上げました!オマケで勝手な想像を元にした話を書きましたので、それの感想を貰えたら嬉しいです!!

というか今更だけどサブタイ長ぇ……


10連ガチャで爆死した後は、単発で引いた方が良いのが出るってばっちゃが言ってた!!

「あーだるい。超だるい。具体的に言うとイベントが超ぐだぐだでやる気なくすぐらいに超だるい」

「メタ発言は控えよとよくブーディカに言われておるが、こればかりは仕方がないことよな……」

「いや、こたつに篭ってテレビ見てるだけでしょ二人とも。いくら大学受験が終わったからってぐだぐだしすぎでしょ」

「「リアルの事を持ち込むなよブーディカ(さん)」」

 

三月下旬。リアル的には大学受験を終わらせて、ようやくゆっくりしてきた頃、ホワイトデーガチャやら復刻ぐだぐだ本能寺やらでイベントを周っていたのだが……余りにもドロップするアイテムが少なすぎたり、久しぶりに爆死したからやる気を削がれ、俺とネロはこたつに入ってるぐだぐだしていた。ぐだぐだ本能寺だけに。

 

「というか、アイテム出なさすぎだろ……まだガチャ回してないけど、これイベント礼装出ないと完走できないよなぁ…」

「高ランクのイベントボーナスを持っているサーヴァントも、儂や紅茶だけじゃしのう。む?確か、ここにはもう居なかったか?あのクラス詐欺のアーチャー」

「いや、あれ反転(オルタ)化してるから、ボーナス付かないんだよね。……元のエミヤと同じくらい料理上手なんだけど、大抵ジャンクフードか麻婆豆腐ばっか作ってるしなぁ」

「 切嗣さんとか夢中で食べまくって、弁当用に作って貰ってるのを少し引いてしちゃったなぁ」

「しゃあないて。味覚が駄目で時間が無い時ってジャンクフードが至高って思っちまうもんだよ」

「「「いやそれはない」」」

 

この場にいる三人に突っ込まれる。偶にはジャンクフードだっていいじゃないか〜。提出日が明日でワークに答えをを23ページ書き写さないといけない時とかさ〜。コタツでぐだぐだしたくなるのは仕方ないじゃないか〜。駄目か?そうか〜……

 

「けどまぁ、そろそろガチャ回さないとな。ぐだぐだし始めてきたイベントにも飽きてきたし、リンゴを齧るわけにもいかんし。とっととガチャ回しますか」

「そうじゃの〜。んじゃいってらっしゃいじゃ。儂はまだここでぐだぐだしておるから、結果だけ知らせてくれ〜」

「へいへ〜い。あ、ここでぐだぐだしてていいけど、働かない分飯は相当悲惨なことになると思え。今のままだと間違いなく処刑料理(麻婆豆腐)を食わされると思え」

「ノブッ!?どういうことじゃ!?儂あれじゃぞ!cv,釘宮じゃぞ!?そんな儂にそのようなことをしてもよいと本気思っとるのか!?」

「いや、cv,釘宮ならもうクレオパトラさんとかいるしね。全体攻撃アーチャーなら子ギルとかいるし、ぶっちゃけ釘宮ノッブの出番なんてほぼないから、倉庫番してても是非も無いよネ!!」

「それ儂のセリフ!ってか待て!もしかして儂の出番ってこれだkーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけでやって来ました召喚場。今回のガチャを回すと真剣に蓄えが無くなるが、まぁイベントだし仕方ないと割り切る。というか割り切れないとやってけないわ。

 

「さぁて、今回はぐだぐだ本能寺だから当たり枠は桜セイバーこと沖田さんと、星五礼装だな。うん、当たる気がしないぜ!」

「最近、研砥のガチャ運は振り切っておるからな。そろそろ爆死する頃なのだが…」

「ここぞという時意外は引き悪いしねぇ。一番酷かったのは…確か、魔法少女事件だったかな。当たったのって星四礼装一枚だけだったし、追いかけるようにガチャを回しても出てくるのが総じて『ずんがずんが』だけだったなぁ」

「や・め・ろ!!あの時の事は忘れろ!一番ガチャ運がヤバかった時期なんだからな!?」

 

今、家にいる褐色ロリ蠱惑キス魔ことクロエ・フォン・アインツベルンだが、彼女はガチャで入手したサーヴァントではない。あれだけ完成された星四アーチャーだが、とある事件をきっかけに協力関係を築いている。簡単に言うとイベント配布サーヴァント、という奴だ。

正直、あれで配布サーヴァントというのはどうかしている性能だ。『キス魔』と『投影魔術』で火力とスターを稼げるし、『心眼』という回避スキルまで持ってる。自前の火力も申し分無いので、聖杯でレベル80にしたロビンの立つ瀬が無いというのが現状だ。まぁ、絆レベルが9だから、まだまだイチイの木を生やして貰うつもりだけど。

 

 

閑話休題。何はともあれ、あの程酷いガチャは無かった。六章ピックアップでブーディカさんの為に、同郷である円卓勢を召喚しようと試みるも、出てくるのが『レコードホルダー』やら『理想の王政』のみという悲劇を味わい。直後に発生した謎の特異点、『魔法少女紀行〜プリズマコーズ〜』で、少しでもイベントを楽にするべくなけなしの呼符で召喚してみるも、出てくるのは星三礼装ばかり……正直に言うと大爆死だった。

 

「それに、この間バレンタインでキャス狐という星五サーヴァントを引き当て、挙句新宿ピックアップでアーチャーとアヴェンジャーを当てる。ここまで条件が重なっておるのだ。爆死するのは自明の理であろう」

「ふ、ふふふふ。ふはははは!確かに!確かにその通りだな!だ・が・し・か・し!!今の俺ならばほぼ当たらないと名高き星五礼装、『ぐだぐだ看板娘』を引き当てれる自信がある!!何故ならば!!」

 

召喚を行う前に、俺は手元にあるタブレットから今回の前に行ったガチャ結果を見せつける。それも、十連ガチャの結果を纏めたものだ。

 

「見ての通り!俺は既に爆死した後なのだよ!なればこそ!今回のガチャは当たるはずだ!」

「……古傷を見せつけて、楽しい?研砥?」

「ぐはぁ!?」

 

ババ〜ン、と効果音が付きそうなジョジョ立ちをして見せつけるも、冷静に突っ込みで一撃粉砕される。ちなみに、この前に行ったガチャと言うのは、【カルデアボーイズセレクション 2017】のガチャ結果だ。史実通り(・・・・)の男性の騎士王、アーサー・ペンドラゴンを対象に行われたピックアップで、目下一番欲しいサーヴァントランキング一位のヴラド三世(狂)を目的に回したのだが……

 

 

「まさか、期間限定の星四礼装をコンプリートするとはな。見ていて気持ちが良いほどの爆死っぷりであった!」

「こふっ」

「こらネロ公。そんなこと言っちゃ駄目でしょ。研砥だってまだ爆死してから日が浅いんだし、傷もまだ残ってるんだから」

「こぷっ」

「ああ、すまんなブーディカ。しかし、こうして見ると本当に、家のマスターはガチャの成功率のアップダウンが激しいな。関係ないことかもしれぬが、一月ごろに開催されていたお団子イベントでは、イベント礼装が一枚もドロップしなかったしな!」

「くはっ」

「こ〜ら!それ以上言ったらネロ公でも怒るよ。エミヤのジャンクフードしか渡さないからね!」

「それだけはやめてくれ!時々食べるジャンクフードは良いが、毎日だと流石に堪えるのだ!ブーディカの家庭の味の方が美味しいのだ!!」

 

若干涙目になりながら訴えかけるネロだが、ブーディカは黒い笑みを浮かべながら「どうしよっかな〜」と、実に楽しそうに笑っていた。いやね。別に良いんだけど。良いんだけどさ。

 

「ちょ、ちょっと二人とも。俺のこと言の葉で刺しすぎじゃないかな?ここまで来るとちょっとオーバーキルじゃないかな〜、なんて」

「「知らぬ(ない)そんな事は()の管轄外だ(よ)」」

「ダウト!!それ絶対ダウト!!というか二人ともそんな事言う人じゃないだろ!?」

 

二人仲良く知ら管発言され、「うおぉぉ……」と唸りながらも、俺はガチャる準備をする。今回用意したのは石を三十個と呼符を3枚。比較的に少ない数だ。だからこそ、その分ガチャの結果に期待する気持ちが大きくなっている。

だが、俺の経験上、今回というか今月のガチャは振るわない気がしてならないのだ。さっきの爆死したというのも理由の一つだが、何より強い理由は去年の今が、最もガチャが振るわなかった時期だからだ。

 

「正直、あんまり乗り気じゃない。だが、(ガチャ爆死というの名の)地獄の底に希望があるってんなら……」

 

石が入った箱をしっかりと両手で持つ。召喚サークルから十分に距離を取ってから走り出す。同時に箱の封を解きーーー

 

「地獄の底から!!引きずり上げてやるしか!!ねぇよなァ!!」

「だから!!貴重な石を!そんな乱雑に扱っちゃ駄目だって言ってるでしょ!?」

 

パイ投げの要領で召喚サークルへと石を叩きつける。バチバチと音を立てながら稼働する召喚システム・フェイト。最初に発生したのは三本線。つまり星三以上のサーヴァントが確定した。

 

「ほーしー四!!ほーしー四!!ほーしー四!!」

「まだ星四以上のカードが来てない時は、つい叫んでしまうものよな。サーヴァントが来れば勝ち確だからな!」

「……うん。やっぱり、ネロ公も私もそうだけど、結構俗世に染まって来たよね」

 

「「「よォ。サーヴァント・ランサー。召喚に応じ参上した。まァ、気楽にやろうや、マスター」」」

「「……物好きな人ですね。生贄がお望みでしたら、どうぞ自由に扱ってください」」

「「牛若丸。罷り越しました。武士として、誠心誠意尽くさせていただきます」」

「いやァァァァァァァァ!?!?星四がァァァァァァァァ!?!?」

「あっはっはっは!!やはり爆死したな!どうだ?余の勘は鋭いであろう?」

「……うん。なんとなーく知ってたよ、私」

 

召喚されたのは槍兵(ランサー)と言えばこの人と呼ばれる星三詐欺サーヴァント。『クー・フーリン』。報われてないお姉さん系騎兵(ライダー)の『メドューサ』。そして、第七特異点では味方・敵だった『牛若丸』。どれも強力なサーヴァントだが、全員宝具レベル・サーヴァントレベルもカンストしていた。

今回召喚されていた星四は、礼装の『天の晩餐』一枚だけだった。やばい、久しぶりの星四が一枚しか出ない地獄だ。グロい。グロ画像過ぎる。

 

「くっそ!まだだ!まだ行ける!それいけ俺の呼符!」

「おいおい。それ以上は良くないと思うぜマスター?ガチャってのは要は賭け事みてェなもンだ、今運気が無いってんなら、やめておいた方がいいと思うぜ?」

「ならどうしろってんだよ!!お前が引いてみるか幸運値Eランサー!!」

「よし喧嘩売るってンなら買うぜマスター?とりあえずケルト式ブートキャンプから始めるとしようや」

「それ軽く死人が出るだろうがァ!」

 

レベルも1のくせに!!召喚されたてでレベル1のくせに!今着ている礼装が『カルデア戦闘服』だったら不意打ちで『ガンド』を一発お見舞いしてやるってのに!!

 

 

 

 

 

 

 

さて、これからどうしようか。残りの札は三枚。10連で爆死した以上、この三枚で星四礼装か星五礼装を引けなければ、今回のイベントでは本当にヤバい。………よし、ここは俺の力だけじゃなく、皆の力を借りるとしよう。

 

「というわけでネロ。ブーディカさん。三人で一回ずつガチャ回そうぜ〜」

「む、良いのか研砥?こう言ってはあれだが、余は前回(バレンタイン)では爆死したのだぞ?」

「まぁ、今回はもうイベントだからガチャを回すってだけだから。気楽に回そうぜ」

「まぁ、そういうことなら別に構わないけど。それじゃ、最初の一投目よろしくね」

「おう!それじゃーーー行くぜ!」

 

右手の金色に輝く札。呼符を天高く掲げる。その場で一回転しながら札を握った指を離し、サークルの輝きを見ながら叫ぶ。

 

「全ての光よ!力よ!我が右腕に宿り、希望の光を照らせ!シャイニング・ガチャーーーー!!」

「それ、確かどこぞのカードゲームのセリフでしたような……」

「まぁまぁ、ガチャだって召喚される時にはカードだし、ね?」

 

叩きつけられた呼符が光とともに消え去り、サークルから一枚のカードが弾き出される。光の輪は一本。つまりは礼装のカードが確定した。こちらに飛ばされたカードは『打ち上げオーダー』。今回のイベントで礼装だ。

 

「よっしゃあ!!『看板娘』じゃないけど星四礼装来たァ!次だネロォ!後に続けよ!!」

「うむ!任せよ!行くぞ!『皇帝特権』発動!対象スキルは『コレクター』!」

「え、『皇帝特権』ってそんな風に使っていいの?」

「こう言うのはノリだから問題ないと思いますよ!ブーディカ殿!」

 

心強い事にわざわざ『皇帝特権』まで使ってガチャを回してくれるネロに感謝。サークルから迸った光の輪は三本。サーヴァントの召喚反応だ。が、前回同様何故か警報が鳴り響き、輪の中から金色の狂戦士のカードが現れる。

 

「何故に!?何故に警報が発生するの!?」

「また危険性のあるサーヴァントが出てくるの?全く、人力焼却を防いだのに全然安心できないね…っと、召喚されたのはバーサーカーか……あれ、確か家って結構バーサーカーは召喚されていたような……」

 

 

 

 

 

 

「◾️◾️◾️◾️◾️ーーーーー!!」

 

召喚されたカードから現れて目に留まったのは巨大な体。黒色の肌に鍛え上げられた筋肉。そして右手に持った斧の様な無骨な大剣。ギリシャ神話に名高き大英雄・ヘラクレスが召喚されていた。

 

「ファッ!?ヘラクレスゥ!?やっちゃえバーサーカーの代名詞のあのバサクレスゥ!?」

「おお!ヘラクレスではないか!去年のネロ祭では世話になったな!これからは、我が家でもよろしく頼むぞ!」

「◾️◾️◾️◾️!!」

 

召喚されたのはヘラクレスに抱きつき、下から目線で頼まれると照れた様に上を向き、斧剣を高く振り上げる。召喚場が壊れるから止めて欲しいと頼み込んだあと、男同士の熱い握手を交わした。………握った手が潰れるかと思ったが。

 

「それじゃラスト!頼んだぜブーディカさん!」

「ブーディカの!かっこいいとこ見て見たい!!」

「えぇ!?このノリで行くの!?あ〜もうどうにでもなれ!スキル『アンドラスタの加護』!」

 

 

ブーディカさんもまた、自分のスキルを発動してガチャを回してくれる。召喚時の輪の数は三本。またまたサーヴァント確定だ。が、召喚されたのは銀色の弓兵(アーチャー)だ。

 

「むぅ。ごめん研砥。やっぱり、私も肝心な時に弱いみたいだ」

「いやいや。別に問題ないですよ。俺だって爆死した回数多いですし」

「うむ!よし、では今回のガチャはここでぇえ!?」

 

召喚されたのは銀色のカードがバチバチと光りだす。銀色から金色へ。星三の弓兵から星四以上の弓兵へと変化する。カードから光が溢れ出て、新たな英霊(サーヴァント)が召喚される。

 

「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ参上した」

 

両手に構える白と黒の中国双剣『干渉・莫耶』。赤黒いコートを着て、短い白い髪を逆立て、ニヒルな笑みを浮かべる浅黒い男性。錬鉄の英霊『エミヤシロウ』が召喚されていた。

 

「エミヤ……なのか?本当に?」

「何をそんなに驚いている。あの時、君と共に戦うと誓ったアーチャーだ。……まぁ、再召喚に少し時間が掛かり過ぎだと言いたい所だが、まあ、いいだろう」

 

いつもの様に笑みを浮かべながら手を差し伸ばす。けれど、いつもより少し優しげな笑みを浮かべていた。

 

「さて、ようやく召喚されたのだ。親交を深める為にも、料理の一つでも振舞って」

「うわああああん!!エミヤくーーーーーん!!」

「会いたかっぞアーチャーーーーー!!」

「なんでさぁ!?」

 

握手を交わそうとしたエミヤだが、久しぶりの再会に感極まったネロとブーディカさんが、エミヤにタックル染みた勢いの強い抱擁を交わす。新たに召喚された為、レベルも1のエミヤにはレベルも90と100の二人の力に逆らうことも出来ず、そのまま後ろに倒れた。その姿を見て笑った後、「ここもまた、賑やかになるな」と俺は呟いた。………目頭が少し熱かった、そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★召喚された後の食堂にて★

 

「ふぅ。これで今日の営業も終わりだな。相変わらず、作り甲斐の人間が多いな。ここは」

 

使い慣れた食堂。その厨房で私は黙々と皿洗いを続けながら、今日も皆が食べた時の顔を思い出す。自分で作ったものを食べるのも良いが、やはり自分で作ったものを食べて喜ぶ顔を見るのは、何とも気分が良いものだ。

 

 

「ーーーっと、確か、作家系のサーヴァントは今日も徹夜で新作を書いていたな。後で夜食でも作って差し入れに行くとしよう」

 

皿洗いを終え、冷蔵庫の中に何があるか確認しようとした時、食堂の扉に付けられた鈴の音がした。どうやら、閉店の看板を掛けているここに誰か来たようだ。

 

「すまない、今日の営業は既に終わってーーーむ」

「何だ贋作者(フェイカー)ではないか。まだいたのか貴様」

 

食堂に現れたのは、いつもは逆立てていた金色の髪を下ろし、燃える様な赤い瞳をした青年。第五次聖杯戦争では圧倒的な力で蹂躙の限りを尽くした英雄達の王、『ギルガメッシュ』がそこにいた。最も、ここに居るのはあの時の弓兵(アーチャー)ではなく、不老不死の秘薬を手に入れる旅に出て、王として成長した魔術師(キャスター)としてのギルガメッシュだ。

 

「貴様こそ何の様だ。此処に用があるとはとても思えんが」

「ふん、今日は多少忙しくてな。晩飯を食うのを忘れたので残り物を漁りに来たのだ。で、何か残っているか?」

「生憎、今日は何も残っていない。必要ならば作ってやろうか?」

「ああ。すまないがよろしく頼む。研砥やブーディカが言うに、貴様の作る飯は絶品だそうだからな」

 

食堂に設置された椅子に座り、「余り物で構わん。早く作れ」と命令するギルガメッシュ。だが、あの(・・)ギルガメッシュが私に頼み事(・・・)をした事に驚き、少し驚いてしまった。

 

「どうした。早く作って持ってこい。それでもシェフか貴様」

「あ、ああ。すぐに作って持って来よう。少し待っていてくれ」

 

英雄王の気が変わらない内に作るべきだと判断し、手元にある物を確認する。

 

(炊飯器にはまだご飯がある。冷蔵庫には殆ど無いが、卵があるな。ふむ。他にはネギとラーメン用のチャーシューもある。ならば、ここはあれを作るか)

 

これから作る物を決め、使い慣れた中華鍋とエプロンを投影し、調理に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

調理に取り掛かる事十分。完成した物を深皿に移し、それをギルガメッシュに渡す。

 

「待たせたな。残り物ですまないが炒飯(チャーハン)だ」

「ああ。手間を取らせたな。後片付けはやっておこう、貴様は早々に部屋に戻るがいい」

「一人分の皿を洗うのにそう時間はかからん。食べ終わるまで待っておくから、冷めない内に食べておけ」

 

私がそう言うと、ギルガメッシュは無言で頷いた後は黙々と炒飯を食べ始める。私としては「贋作者(フェイカー)の作った物など食えるか!恥を知るがいい雑種!!」とでも言うと思ったのだが。まぁ、食べた事に変わりはないのだから、それに越した事はないのだが。

無言で食べ続けること数分。米を一粒残さず食べ終わった皿を渡され、私はそれを無言で洗う。こういう時、自分で投影した調理器具というのは助かる。別に調理器具を洗うのに抵抗はないのだが、何分飯を作る量が多いので、一々調理器具を洗う暇がないのだ。

 

「ほら、食後のお茶だ。要るか?」

「ああ。すまんな。手間を取らせる」

「………はぁ、貴様、本当にあの(・・)ギルガメッシュか?私の知る彼とはイメージが全く違うのだが」

「貴様が言っているのはアーチャーの(オレ)であろう。(オレ)とあれは別だ。一緒にするな」

 

いや、それは無理だろう。内心で呟く。余りにも私の知る彼とは違いすぎて寒気がする程だ。確かに、第七特異点では今のギルガメッシュと共闘したが、私は外の魔獣を借り続けていたので彼の人となりを全く知らないのだ。

 

「一つ、質問してもいいか?」

「何だ?貴様の作った料理に免じて一つだけ問いを許してやろう」

「助かる………単刀直入に聞こう、今の貴様は、私の事をどう思っている?」

 

正直、今一番気になっている事を尋ねる。すると、ギルガメッシュは片目を閉じ、少し考える様な仕草をする。ふむ、と一言呟いた後、閉じた目を開く。

 

「そうだな……特に何も(・・・・)、というのが強いな。贋作を作る貴様の魔術を鬱陶しいとは思うが、それだけだ。別段思うところはない」

「は…………?」

 

ギルガメッシュが言った事に呆気に取られ、鳩の様に口を開いてしまう。いやだって、仕方がないだろう。天上天下唯我独尊。「他人が作り出した贋作など見るにも耐えん」と断言した、あの英雄王が嫌うと言わず、どうでもいいと一蹴したのだ。驚くのは無理もないと思う。

 

「何だその顔は。さては貴様、またアーチャーの(オレ)と比べていたな?」

「いや、仕方がないだろう。理屈は分かっているのだが、未だに慣れん」

「早く慣れておけ。後々面倒だぞ」

 

どうでもよさそうに呟き、淹れたてのお茶を飲む。その姿はとても様になっていて、彼が一人の王として国に君臨していたのだと思わされる。もっとも、私が尊敬するのは騎士王である彼女なのだが。

 

「…さっきも言ったが、確かに貴様の使う魔術は気に食わん。だが英霊になるまで……いや、貴様の場合は守護者だったか?まぁどちらでも良いが、その域に達した貴様の投影魔術(それ)を忌み嫌いこそすれ、笑う事はせん。貴様が研鑽し、血反吐を吐いてまで極めたそれを笑う事は愚者のすることだからな」

 

世話になった。と飲み干した湯呑みをテーブルに置き、ギルガメッシュは扉に手をかける。らしくない。私の知る英雄王()と余りにも懸け離れた言動に悩まされたが、不遜な物言いは相変わらずだ、思い直す。

 

「……ギルガメッシュ」

「何だ?」

「また、食堂(ここ)に来るといい。今度は余り物ではなく、ちゃんとした料理を振る舞おう」

「ふん。気が向いたら来てやろう。ではな贋作者(フェイカー)。……まぁ、貴様の飯は美味かったぞ」

 

去り際にそう吐き捨ててギルガメッシュは食堂を去って行った。だが、その横顔が少しだけ笑っていたのを私は見逃さなかった。

 

「………さて、朝食の仕込みでもしておくか。美味しい物を用意しておかないと、王様が恐ろしいからな」

 

少しだけ笑いながら、私は明日の準備に勤しむだった。あの王様に、もう一度美味いと言わせるために。

 




というわけで、ようやく家にエミヤ(弓)とヘラクレスが来てくれました!!やったぜ!!でも育成が大変だぜ!!(白目)
今思えばオルタが来た後にオリジナルが来てるんだよな…UBWみたいな展開にならないと良いけど。

後半の話は、エミヤとギルガメッシュ(術)との会話です。某動画サイトで、術ギルのセリフ集がありまして。エルキドゥを所持している時に「我はウルクを治める人の王となった」って言ってるんですね。それを見て、七章で見せたあの賢王っぷりならこう言ってくれそうだなぁっと思い、今回の話を書いてみました。

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