ブーディカさんとガチャを引くだけの話   作:青眼

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どうも皆さん、なんだか『銀魂』みたいなサブタイトルになってしまいつつあるガチャ報告を投稿する青眼です。二、三週間ぶりですかね。

アポクリファコラボが終わり、突如始まった謎解きイベをこなし。少しはお休みかと思ったら即座に始まった明治維新のイベント復刻。復刻版なのでガチャを回す予定はありませんが、そろそろ過労で授業中寝そうです……皆さんも周回は自分のペースでやってくださいね?
それでは、本編スタートデース!



今更だけどカドアナ尊い←ナニイッテンダコイツ



死ななければ問題ないという言葉はあるが、死ぬギリギリの傷はかなりヤバい。

「あ~……………ちょっと、今回ばっかりは死ぬかと思った。割とマジで死ぬかと思った」

「確かに、今までの戦いでもかなりやばかったわね」

 

 アメリカのマサチューセッツ州にある港町。セイレムと呼ばれたその土地が今回発生し、そして最後の亜種特異点だった。『冠位時間神殿』での激闘からもうすぐ一年。あそこから命からがら逃げ延びた魔神柱がいた。本来、彼らは大本であったゲーティアからの魔力などの供給が無くなった時点で消滅する。だが、彼らはそれぞれの手段でその命を繋ぎ止め、驚くべきことにその命を自らのために費やしていた。今までゲーティアからの命令を下に活動していた彼らが、皮肉にもカルデアのマスターたちに倒されたことによってその命を自覚し始めたのだ。

 

 ある一柱は、己が忌み嫌っていた人類史の御伽噺、幻想を下にその身を宿してカルデアへの復讐を決意した。

 ある一柱は、魔術という存在を消滅させることによってかつての人類史崩壊を企んだ。

 ある一柱は、死ぬ間際にとある少女に取り付き。己が命を繋ぎ止めようと足掻いた。

 ある一柱は、とある海洋油田基地を拠点して活動を開始したが………まあ、あれは無かったことにされたのでカウントしなくても良いだろう。

 

 今回の特異点で行おうとしたのは、この宇宙の法則に縛られない未知なる存在、『外宇宙』と称される領域外の存在する神の力を借りることで人理の転覆を目論んだ。それを知ったのはセイレムを舞台としたあの世界の終わる頃だったが、カルデアのマスターたちはそれを阻止した。だが、その神を呼び出すための依り代となった少女―――アビゲイルと呼ばれた少女の体には、結果的にその神の力が宿ってしまった。その処遇はどうしたものかと思ったが、どうやらそっちはそっちで何とかなったらしい。

 ………らしいというのは、それは先ほど喋っていた青年。黒鋼はその行方を知らないからだ。というのも、今回の戦いでは何故か彼の方が集中的に狙われ、少女が旅立つその時に立ち会えなかったからだ。全身打撲に加え、骨も何本か折れた。魔術回路も焼き切れる寸前という重症である。それがあの少女を護るためだったとはいえ、今回に限ればカルデアのより重傷だった。だが、その結果に彼は後悔していない。

 

「ま、アビゲイルが無事に旅立って。俺達は誰一人欠けることなく帰ってこれた。その結果さえあれば問題は無い」

「えぇ。全く以てその通りです。ですが、貴方の退院を認めた覚えはありませんよ。マスター」

「………ですよねぇ。とほほ。俺は一体何度ここにお世話になれば良いのやら」

 

 なにはともあれ、様々な障害に弊害に満ちた亜種特異点Ⅳ(セイレム)を解決した黒鋼達だが。当然マスターである彼は重症のため強制入院である。しかも、このフロアの担当者はクリミアの天使で有名なあのフローレンス・ナイチンゲール。今を生きる命を救うためならばその対象を社会的・精神的に殺してでも救うというバーサー看護師である。そんな彼女が今の状態の黒鋼を見過ごすはずがなく。手枷足枷を付けられた状態で黒鋼は彼女達と会話をしているのである。

 

「あの、ナイチンゲールさんや。そろそろセイレムに登場した人たちのガチャを回さないといけないのですが、いやすいません何でもないですなので無言で撃鉄を引かないでくださいッ!!!」

 

 腕を汚染されているのなら腕を。足から毒が回るのであれば足を容赦なく斬り落とすこの人に向かって、説得なんてものは意味をなさない。多少なりの慈悲を求めて交渉をしようとした黒鋼ではあったが、腰のホルスターから銃を引き抜こうとする無言の圧力に屈した。意気地なしと思われるかもしれないが、実際に彼女と面と向かってから物申してもらいたい。恐らくだが、初撃で三途の川が迎え入れてくれるだろう。

 

「まあまあ、フローレンスも落ち着いて。とりあえず、研砥の容体が安定するまではこのまま看護を頼むよ。あ、でもさすがに手枷足枷はやりすぎじゃないかな?」

「隙あらば部屋を抜け出し、病院食では物足りぬと鬼の童女と一緒にお菓子を食べるのを許容できますか?」

「OK、あと二週間は縛っておいていいよ」

「さすがにその扱いは雑過ぎないか!? え、ちょっと! 本気で俺を置いていく気なのか!? おいィッ!?」

 

 ブーディカの無慈悲な通告に異議を申し立てようとする黒鋼だったが、ノーモーションで振り下ろされた拳銃の鉄槌を頭から叩き込まれて意識を失った。さしものブーディカもそれには同情を禁じ得なかったが、これも自分のマスターの為だと割り切って病室から立ち去るのであった。

 

 

 

 

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

 

「というわけで、今回は研砥の代わりに召喚よろしくね」

「はい! 任せてください!」

 

 場所は変わってアトラス支部の中でも割と大きめなフロア。召喚システム・フェイトが鎮座する召喚場だ。普段、ここでは黒鋼とブーディカの二人が揃ってガチャを回す場所だ。だが、今回はその黒鋼が病室に監禁されている。なので、今回はアトラス(ここ)にいうもう一人のマスター、藤丸立香に協力してもらうことにした。いつも黒鋼が前線に出張っているせいで影が薄くなっているかもしれないが、彼女もまたアトラスの立派な錬金術師。マスター資格とレイシフト適性を持つ稀有な存在でもある。

 

「というか、本当に私が召喚していいんですか? こういうのって、マスターになる研砥がやるべくなんじゃ……」

「まあまあ。細かいことはいいからいいから。研砥の聖晶石だからパパっと使っちゃてね。これで誰も来なかったら研砥の運が無かっただけだから!」

「………何だか、ブーディカさん機嫌悪くないですか?」

 

 召喚場に集まった二人。召喚システムは正常に機能しており、あとは消費する聖晶石(アイテム)を放り込めば起動する。だが、その前に立香は隣に立つブーディカに微妙な顔をしながら尋ねる。聞かれた方は苦い笑みを漏らすだけ何も言わず、それに立香は今度は何とも言えないような表情を浮かべ、了承した。

 

「まあいいですけど、本当にやっちゃっていいんですよね? これで爆死したら研砥絶対怒ると思うんですけど」

「いや、ちゃんと本人から了承してるから大丈夫だよ。なんなら、『セルフ・ギアス・スクロール』でも結んでこようか?」

「そんなことのために自分の命を容易く賭けないでくださいよ!? まったく………。それじゃ、早速行きますからね!」

 

 半ば投げやりではあるものの、立香は今度こそ用意された聖晶石を召喚サークルへと注ぐ。溢れんばかりに大量の石を注がれたサークルは今日も今日とて元気よく回り始める。今回用意した聖晶石は十連召喚三回分だ。呼符は既に消費した後なので、ここから先はひたすら連続でガチャを回すだけ。何が出るだろうか、と固唾を飲んで二人が見守る中。最初に十連にもかかわず黄金の輝きが輪を包み込む。

 

「お、いきなり星4以上のサーヴァントだ! 幸先いいわね!」

「はい! 召喚されたクラスは……ランサー、ですね」

 

 サークルの中央に出現した金色の輝きを放つ槍兵(ランサー)のカード。今回ピックアップされているサーヴァントの中にはそれに当てはまる人がいるため、これから行われる現界に期待する。黄金のカードから光が溢れ、一人の少女の姿が形成される。燃えるような赤い槍に、チャイナ服を身に纏う中性的な容姿。召喚された時点(・・)で空中に浮き、片方だけ結ったいわゆるサイドテールが特徴的な彼女は、こちらに面を向いてから口上を述べた。

 

 

 

 

 

 

「サーヴァント・ランサー。哪吒(ナタ)。…………それだけ」

 

 

 

 

 

 

「あ、哪吒ちゃんだ! 久しぶり~!」

「ん、ヴィクトリア。久しぶり。そっちの少女、僕、知らない。誰?」

「初めまして哪吒さん! 私は藤丸立香、ここでオペレーター兼マスターの役割に就いてます! 今回は、ちょっと黒鋼さんの体調が悪かったので私が代わりに召喚させていただきました」

「了承。(マスター)、息災か?」

セイレム(あっち)での傷がまだ治ってないだけさね。良かったらお見舞いにいってあげて? きっと研砥も喜ぶだろうからさ」

 

 ブーディカの頼みに哪吒は表情一つ変えずコクリと頷き、召喚場を後にする。少し不愛想にも取れるかもしれないが、出来る限り素早く移動しているところを見るとマスターを心配しているのが目に見える。素っ気ない態度かもしれないが、あまりそれを表に出さないだけなのはセイレムで共に時間を過ごしたブーディカは良く知っている。それはさておき、哪吒が召喚された後は、これまでよく見た星四の礼装ばかりが出現して一回目の十連召喚は終わった。幸先が良いと言っても問題はないだろう。

 

「さてと、次の十連もパパっとやっちゃおっか。あまり時間もかけてられないしね」

「そうですね。次に行ってみましょう!」

 

 流れるように新たに三十個の聖晶石をサークルに放り込む。聖晶石での召喚において確実に高レアリティのサーヴァントが出現する保証はない。むしろ、さっきの召喚だけで残りの二回では召喚されないというのがザラである。だが、今回は本当に運がいいのか。それとも向こう側からこちらに会いに来ようとしているのか。そのどちらでもあるかもしれないし、そうではないかもしれないが未契約のサーヴァントの反応を感知した。しかも、先ほど召喚された哪吒と同じくカードの色が金色に輝いている。そのカードに描かれているのは杖を持った老人の姿。魔術師(キャスター)のサーヴァントが召喚される。

 

「おっと、ここでキャスターということは彼女かな?」

「メディアさんも喜んでくれますかね?」

「さあ、どっちかというと微妙な反応するんじゃないかな? 自分の師匠とはいえ、セイレムに向かう直前にあんなことされちゃあねぇ……」

 

 心なしか呆れながら召喚の行方を見守る二人を前に、カードから新たな女性の姿が形成されていく。身長は先ほど召喚された哪吒より小柄で、身の丈以上の杖を片手に構えている。人懐っこい笑顔を振りまくその姿は美少女のそれだが、彼女の周りから溢れる魔力が不思議な雰囲気を醸し出している。

 

 

 

 

 

「やあ。もうきみを寂しくはさせない。この魔女キルケーを呼び招いたのだからね! ふふ」

 

 

 

 

 

「やっほーキルケー。ついこの間ぶりー」

「あ、英国の女王様じゃあないか。ということは、私はこっち側に呼ばれたってことかな」

「そういうことになるね。あっちだと本当にお世話になったよ。改めて、ありがとね」

「よしてくれよ。私は私のできることしかやってないさ。それより、あの坊やはどこだい? 姿が見えないようだけど……」

 

 セイレム以来の再開なので会話に花を咲かせる二人だが、ここのマスターである黒鋼の姿が見えなかったことが不思議に思ったキルケ―はブーディカに尋ねる。向こうで負った傷が思いのほか深く、今は入院していると簡潔に伝えると目に見えて動揺し始めた。

 

「なななななんだって―――!? こうしちゃいられない、なぁブーディカ! 調理室はどこだい!」

「え? あー、それならこの召喚が終わった後で行こうと思ったから、良かったら一緒に行こっか?」

「是非頼むよ! 入院してるってことは、今の彼は簡素で質素な病院食しか食べれてないんだろう? だったら私の出番さ! 私特製の麦粥(キュケオーン)を披露してあげるよ!」

 

 上機嫌と言わんばかりに鼻歌交じりに首を振るキルケ―を見て、藤丸は少しだけ驚いたように目を開いていた。セイレムでの出来事は黒鋼を通して記録してはいたが、聞き知っていたのと実際にあったのではその情報量にも差が出るだろう。こうしてキルケ―という魔女に出会ったことが。何より、本当にキュケオーンを推しまくる姿を見て驚いているに違いない。

 

「えーと………その、本当にキュケオーンがお好きなんですね、キルケ―さん」

「それは勿論さ! キュケオーンは私にとって魔術の次に大切なものだからね! ここまで来ると一種のアイデンティティに等しい。あ、良かったら君もキュケオーンを食べるかい? 大丈夫! 毒なんて入ってない栄養と美味しさがたっぷり籠ってる最高のキュケオーンを味合わせてあげるともさ!」

「は、はい。その時は存分に堪能させてもらいますね」

 

 あまりのキュケオーン推しに藤丸は少し戸惑いながらもその勧めを受け入れる。なお、キルケ―が召喚された後も十連召喚は続けられてはいたが、特筆すべきものは何も出なかったので省略させていただく。

 さて。十連召喚を二回行い、ピックアップされているサーヴァントをそれぞれ一人ずつ召喚したわけだが。今回の主役にしてラスボスであるアビゲイルは未だに召喚されてはいない。というのも、メタ的なことを言わせてもらえれば哪吒やキルケ―がピックアップされていたガチャではアビゲイルが召喚できないのだ。所謂ストーリーピックアップ第二弾という方に期間限定(・・・・)サーヴァントとしてピックアップされているのだ。一応、同時ピックアップで『ミドラーシュのキャスター(ティテュバ)』がピックアップもされている。それから、アビゲイルは外宇宙の神の力をその身に取り込んだ。これにより、これまで確認されてきたエクストラクラスの新種。『降臨者(フォーリナー)』という特殊クラスを獲得した。このクラスの性能は、バーサーカーに対して有利というこれまでの戦いを左右するかもしれない特殊クラスである。だが、何故かアルターエゴが弱点ということもあり、この間のハロウィンで召喚されたメカエリチャンが大活躍するという結果になったりしていた。後日、「あのアラフィフ、ただの悪役(ヴィラン)なアラフィフじゃなかった」と多くのサーヴァントたちが言っていたが、結局悪事を働いたことには違いないので情状酌量の余地は無かったりする。

 

「さてと、次が最後の十連だね。張り切っていこう!」

「ここでもしアビゲイルちゃんが来たら、それこそ育成地獄ですけどね。まあ、周回するのは研砥なので知ったことではありませんが!」

 

 さりげなく黒鋼(マスター)の仕事を増やさんとする二人がいるのだが、システムはただひたすらに己に課された仕事を全うするのみ。最後に残った三十個の石を綺麗に飲み干し、再びぐるぐると勢いよく回転し始める。するとだ、始まってから数えて三つ目で予想外の概念礼装(もの)が飛び出してきた。

 

「おおっ!? こ、これは最強概念礼装TOP3にその名を馳せる『カレイドスコープ』!! やりましたね、これはもう勝ち確定ガチャですよ!」

「これ一枚あるだけで戦況をガラリと変えられる優れものだからね。これで三枚目だがら、あと二枚で限凸だね」

「え? そんなものなくても私はすぐに宝具を使えるよ? だって『高速神言』持ちだからね! そんなものがなくても宝具の速射くらいお手のものさ!」

「その代わり自前のNP獲得量は低いけどねー」

 

 さりげなく出来る魔女アピールをするキルケ―に対し、容赦の無いブーディカの一言がキルケ―の胸をえぐる。スキルによって自前で大量のNPを稼げる人たちの多くに共通して言えることだが、実際の攻撃で稼ぐNP量が非常に少ないことがネックである。そう言った点でいうとライダークラスのドレイク船長は破格の性能と言えるだろう。『星の開拓者』によって大量のNPを回復しながら、『黄金律』で消費したNPを回復するのだから。宝具の速射と連射を行うという、ある意味で頭の悪い戦法が得意としている。

 

「うう。でも、私だって特別なことが出来るんだからなぁ! デバフ解除とか、毒だって盛れるんだからなぁ!」

「あ、いやごめんキルケ―! 研砥と一緒にパーティーの編成とかしてるとそういったことに目が行っちゃうのよね。別にキルケ―のことを貶してるとかじゃないから。だって、ローマ特攻付与しかできない(・・・・・・・・・・・・・)スキルを持ってる私の方がよっぽど」

「それ以上は駄目ですよブーディカさん! それ以上は研砥の、全てのブーディカさんの

マスターの精神衛生上よろしくないです!!」

 

 自分が余計なことを言ったせいで涙ぐむキルケ―を泣き止ませるべく、今度は自身の欠点ともいえるスキルに付いて言及しようとしたブーディカを藤丸が全力で止める。余談だが、彼女の第一スキルが活きる場面はかなり限られている上に特攻倍率が60%で3ターンと微妙なのである。同じ3ターン特攻付与スキル持ちなら龍殺しのジークフリートがいるが、彼は『竜』属性持ちに対して特攻が80%と高く、『竜』属性のエネミーからの攻撃にも耐えれるように特防も付与されている。更には後の強化でAランクの魔力放出による最大50%ものBuster性能アップが施されている。明らかに優遇されているのを見て、何度ブーディカをメインにしているマスターが血の涙を流していることか。早く救済措置が施れて欲しいと願うマスターは数多くいるだろう。

 

「さてと、『カレイドスコープ』と新規サーヴァントが二人も来てくれたんだし、研砥もきっと喜ぶよ。早く報告しに行こ……!?」

 

 召喚サークルから吐き出される概念礼装を回収しつつ、退出の準備を進める三人。だが、それは思いもよらないことが起こる。今回の最後の十連召喚、その終盤にて再び黄金にサークルが輝きだしたのだ。出現したカードに記されていたのはキャスターの絵。そこから出現したのは、先ほど召喚されたキルケ―ではない。セイレムで過ごした日々にいた、もう一人のキャスターだ。

まず、そのキャスターの目が行くのはアトラスとカルデアでの召喚に応じた数いる女性サーヴァントの上位に食い込む素晴らしい体の黄金比だ。エキゾチックな装いに身を包んだその姿に十分魅力的だが、少し尖ったケモ耳と尻尾もまた魅力の一つ。ストン、と召喚サークルから降り立った彼女は、ブーディカと同じ翡翠色の瞳を爛々と輝かせてから口上を述べた。

 

 

 

 

 

「ハァイ、出ましたー。シバの国を治める女王、と呼ばれてました。“シバ”とお呼びください。 ハイ? ホントの名前ですか? う~ん、そこからは別料金ですねぇ」

 

 

 

 

 

「まさか貴女まで召喚されるなんてね。今回は大成功、かな?」

「おやぁ? ブーディカさんがいらっしゃるということは、私はアトラスに呼ばれたのですね?」

「そういうことだね。何はともあれ、これからはよろしくね。シバの女王」

「いやですよぅ。今の私はただのシバ。貴女もここでは一人のブーディカでございましょう? でも、それはそれとしてお互いに一応王様(・・)同士ですし、仲良くお茶でもいかがです?」

「いいね。それじゃ、私は茶菓子でも作るよ」

 

 召喚されて早々お茶会の準備をするあたり、二人の行動力はすさまじい。互いに初見じゃないというのが一番強い理由だと思うが、それでも次々に茶会の招待状とかの作成準備にも取り掛かろうとしているので、女王二人の行動力は本当に高い。その後、実は密かに召喚されたサーヴァント全員からサインをもらおうと画策してる藤丸が、シバにサインを強請っていたが、当然ながら彼女のガードは硬く。今回は断念することになったのだが、それはまた別の機会に話すとしよう。

 

 

 

 

 

個人的な欲求が()爆発しただけで()すごめんなさい()

 

「っ、ふぅぅぅ………! そ、そのぉ。マスター、そろそろ、離れ、っ…」

「ごめん、もう少し。もう少しだけだから……!」

 

 新たにサーヴァントの召喚に成功してから既に一週間。セイレムでの負傷も優秀なキャスター勢の治療魔術や、ナイチンゲール婦長を始めとした徹底的な衛生管理によってけがを完治させた黒鋼。復帰した後の彼は、今まで休んでいたのを無かったことにするかの如く種火を搔き集め、新たに召喚された三人のサーヴァントの再臨を完遂させた。それぞれが多種多様な固有スキルを持っていることもあり、これからの戦いにもバリエーションが豊富になった。なので、マイルームにてこれまでの戦闘データの管理を済ませていた時だ。後ろから柔らかさの化身の如き物が覆いかぶさってきたのは。

 

「そ、その。誘ったのは確かに私ですが、ちょっとがっつきすぎじゃ、きゃああ!?」

「柔らかい……暖かい……ここが、ここが俺の遥か遠き理想郷(アヴァロン)か……!!」

 

 黒鋼にされるがままにされているのは、此度の召喚に応じてくれたサーヴァントの一人。ミドラーシュのキャスターこと『シバの女王』その人。というのも、彼女はからかい半分。それからマスターとの交渉半分の目的で尻尾をモフらせる(こんなこと)をさせたのだが、如何せん相手が悪かった。以前からタマモキャットやロボのモフモフに触りたいと思っていたが、二人とも最悪半殺し以上のBad-end√間違いなしなのでモフモフに飢えていたのだ。そんな彼にシバの提供したそれは何よりも得難いもの。加えて、人懐っこい彼女がこのような声を出すことも相まって、背徳感が後押しして病みつきになっていた。

 

「ちょ、ちょっとタンマですぅ! こ、これ以上は有料になりますよぉ!?」

「では、何を差し出せばいい。素材か? QPか? それとも聖杯か? よかろう、差し出せるものなら何でも差し出してくれる……!!」

「ちょっとマスターキャラ変わってませんかぁ!? うぅ……抜かりました、まさかマスターにこのような一面があろうとは。このシバ、一生の不覚ですぅ……!!」

 

 よよよ、と泣き崩れるような仕草を見て若干だが黒鋼がたじろぐ。確かに、彼女自身が「私が有料だと言うまでモフらせてあげますよぉ」と言われたから全力でモフっていたとは言え、さすがに三十分近く尻尾や彼女に付き従う使い魔(ジン)たちを堪能したのはやりすぎたかもしれない。だが――――

 

「だとしてもッ! まだまだモフりたいぞぉ!」

「ひぃぃ!? だ、誰かぁ! このままだと私、マスターに乱暴されちゃいますぅ!!」

「人聞き悪いことを言うなよ!?」

 

 シバの悲鳴を聞いて素に戻るあたり、既にモフることには満足しているように見える黒鋼ではあるが。このまたとない機会を物とするべく、おあつらえ向きにベッドにいるシバに毒牙を向けようとしたその時。突如としてマイルームの扉が勢いよく開き、目の前に立っていた黒鋼に向かって勢いよく両足を向けて突っ込んだ。

 

ケモ耳キャスター(ライバル)が先走っていると聞きましたッ!!」

「何故俺にライダーキックッ!?」

 

 突如として現れた青い女性のライダーキックが黒鋼の背中に炸裂し、そのまま勢いよく壁の中に顔がめり込んだ。目の前でいきなり起こった殺人紛いの事件を目の当たりにしたシバは「あわわ……」と声を漏らす。なお、マスター殺し(こんなこと)をした青い巫女服のキャスター……玉藻の前はガッツポーズを決めていた。

 

「いよぅし何とか間に合いましたっ! マスターが他のケモミミサーヴァントと戯れようがどーでもようございますが、同じキャスタークラスが相手なら容赦はしねー。サクッとお仕置きタイムでございます!」

「いやお仕置き感覚で殺されるような目に遭ってるんだけど!? 一瞬マジで綺麗なお花畑が見えたぞ! ロマンが手を振って出迎えたからね!?」

 

 ガバッ、と壁にめり込んだ顔を引っ張り上げながら玉藻に抗議する黒鋼。だが、当の本人は上品に笑うだけで何も言わない。どんなシリアスな空気でも場違いなことを言ってはあたりの調子を狂わせる彼女にとって、これくらいはなんてことはない日常の範囲なのだろう。尤も、付き合わされる方は溜まった物ではないが。

 

「べっつに~。マスターがこの私を差し置いて他のケモミミとフレンズなごっごをしていると耳にしただけでして。タマモ~、全っ然興味はなかったのですけど~」

 

 

 

 

 

―――随分とお楽しみだったそうですねぇ? ま・す・た・ぁ・?

 

 

 

 

 

「ヒエッ」

「いえいえ。別にそこまで怯えなくても結構ですよ? ですがこの玉藻の前。後に呼ばれた名も知らねぇケモミミ女に出番を取られとあっては、京の都を壊滅にまで追い込んだ大化生の名が廃りますので♪ ちょ―――っとだけ、マスターと一夫多妻去勢拳(スキンシップ)したいなぁって思っただけでござますから♪ それではマスター? お付き合い、してくださいますよね? ね?」

「え、いや、あの…その、玉藻さん? ちょ、ちょっとスキンシップって変なところにルビ振ってない? てか何でシャドーボクシングしてるの!? く、来るなぁ! た、助けてシバさんっていねぇ!?」

 

 半ば虚ろな瞳でこちらに迫る玉藻の前。彼女には心に決めた人がいるのは知っているので、あまり深くまで分かり合おうとしてなかったこともあり、まさかここまで執着(?)されるとは思いもしなかった。予想だにしていないこの急展開に近くにいたシバに助けを求めた黒鋼だが、商売人としてのセンサーが働いたのか。既にマイルームから退去した後であった。背水の陣どころの話じゃないと理解した直後、情け容赦のないジャッジが下された。

 

「さてと、それじゃ逝きましょうか。ますたぁ?」

「………………………………………ははっ。オワタ」

 

 その後、黒鋼のマイルームにて多少(・・)の物音はあったが。近くにいたサーヴァントや職員はいつものことだと呆れながらその前を素通りした。なお、騒ぎを起こしてからものの十数分で玉藻はマスターである黒鋼を引き連れてマイルームを後にした。その時の彼女の肌はピッカピカに輝いていたが、黒鋼の方はまるで魂が抜け落ちたかのようにどこかげっそりとしていた。何があったのか気になる人もいたが、聞けば最後。自分がどのような目に遭うのか予想もついていたので、心の中で黒鋼に合掌して無事を祈るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、今回はセイレムに登場したサーヴァントのうち。アビゲイル以外の三人全ての召喚に成功しました! うーん、バイトを始めたからと言って多少課金の紐が緩くなってきた気もしなくはないですがそれはそれ。セイレムはセイレムで面白かったから是非もないよネ!
あ、そういえば今更な報告なんですが。実は私の友人、今回のセイレムピックアップ2でアビゲイルを5人引いたんですよ。信じられます? なんか、一人目引いたけどティテュバに会わせたいとか言って課金したら、ティテュバと一緒に二人目が。中途半端に石残すのもあれだからということで更に十連回したら一気に三人と。本当に信じられねぇ結果になって一瞬キレそうになりましたね。自分もあんな神引きをしてみたい……。

さてと、これで2017年ガチャは残すところクリスマスのみ! 頑張って五月中に書き終え、六月上旬には投稿するぞ―――!! 

誤字脱字等の指摘、感想はいつでもお待ちしております! それでは、次回もよろしくお願いします! 

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