新年から五カ月がたち、去年の今頃はCCCコラボがありましたね。今年のコラボ先はアポクリファですが、主人公のジーク君を最終再臨&スキルマにした私に死角はありません。宝物庫システムを備えてるらしいので、早く宝具5にしたいです。
周回の方ですが、自分は万年虚栄の塵と狂骨難民なのでカルナさんとジャックのところを周回しています。皆さんはどんなところを周回いますか? 適度に、自分のペースで周回してくださいね。あ、それから自分は石を砕いて周回することを覚えました! いやぁ、ガチャで爆死するくらいなら周回してやるっていう人の気持ちが今になってよく分かりました!
長々と失礼しました。それでは、本編をどうぞ!
10月末日といえば、大抵の人はの人は声を揃えてハロウィンと答えるだろう。子供たちが仮装をして家を回り、「トリックオアトリート!」と声を揃えてお菓子をねだる。その可愛らしい姿を見た大人たちは笑顔でお菓子を渡し、子供はまた次の家を目指す。時に笑い、時に遊ぶ。そんな微笑ましくもどこか非日常な一日こそがハロウィンなのだ。
………では、なぜそんな当たり前のことをこんな冒頭で確認したのか。理由は至極簡単であり、それでいて難しいからだ。ではここで、ここ二年で行われてきたハロウィンをよく振り返ってみるとしよう。
~~~2015年10月某日~~~
「――――ハロウィンをするわ!!」
突如として聖杯の欠片を回収したランサーのサーヴァント。ハンガリーにその名を轟かせた吸血婦人カーミラ………その幼少の名、エリザベート・バートリーによって引き起こされた
「歌うわ!!!」
いつものマイクスタンドを兼ね合わせた槍を捨て、フォークのような三叉槍を。少し露出の多い私服姿から魔女のコスプレ衣装に身を包んだ彼女は楽し気に、爛々と目を煌かせながら宝具を展開する。それを見た大勢の人間・英霊・死霊が止めに入ろうとするも、既に舞台装置の展開は済んでいる。おもむろに姿を現す巨大なスピーカーが搭載されたミニチェイテ城をバックに、エリザベートが(破滅的に音階のズレた)絶世の歌を披露する。
「ボゲ~~~~~♪」
直後、その場にいた一部の人を除いた全ての人間の鼓膜は破壊された。当時はナイチンゲール女史がいなかったこともあり、当事件の黒幕(?)であったエリザベート氏はセイバーの金種火を三百個を回収するまで帰れない刑に処された。
~~~2016年10月某日~~~
「―――ハロウィン、忘れてたわ!」
面倒なのでかなりストーリーを簡略して説明するが、エリザベートは前回の事件で処罰されながらもまだハロウィンを捨てられずにいた。なので、今度こそ大丈夫だと準備をしていたのにも関わらず、自分ことしか考えていなかったがため。仮にも城主でありながらも”執政”を行わなかったのである。それに見限りを付けたエジプトの女帝クレオパトラが、チェイテ城にファラオ・オジマンディアスより授かった王の威光、
だが、それで終わってしまっては物語としては成り立たない。エリザベートは奪われた大事な城を取り戻すべく、時代遅れなビキニアーマ―と愚直なロングソードを手に、彼女の下に集まった仲間たちと共にチェイテ城を取り戻す戦いの幕が上がった。
そして、事件は数日の内に解決された。いや、事件を終えた後もチェイテ城には向きを逆にして突き刺さったピラミッドがあるがそれはさておき。何はともあれ、クレオパトラが行っていた執政を取り消された。その後、チェイテ城の城主として改めてハロウィンを行うことにしたエリザベート。するとどうなるか、勘の良い皆さんは既にお分かりだろう。
「色々あったけど、何とかなったわ! だから歌うわッ!!」
その場にいたエリザベートの仲間たち、敗北したクレオパトラとその愉快な仲間たちでさえ一斉に彼女を取り押さえようと迫る。だが悲しいかな、事件が解決して安堵して力を抜いた直後に行われた死のライブは既に開催されてしまっている。直後、今まで歌えなかったストレスが溜まっていたのか、今まで以上に(絶望的に音階のズレた)美しい声が彼らに襲い掛かった。
「ボゲ~~~~~♪」
直後、たまさかそこに居合わせてしまったファラオをも巻き込んだ破滅の歌が全員を卒倒させる。この後、エリザベートはそれぞれの組織に召喚されていたルーラーの公正な裁きにより、全クラスの金種火100個回収するまで帰れない刑に処されたのであった。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
さて、かなりダイジェストでお送りした過去に二回行われたハロウィンだが。これを見た貴方たちはどう思っただろうか。果たして、この特異点で行われるハロウィンは楽しいと本気でお思いになられただろうか。そう思われた方がいるなら私に石を投げてもらって結構。だが、それと引き換えにこのエリザベートのライブが録音されたボイスレコーダーを流すのであしからず。
なにはともあれ、今回もハロウィンがやってきてしまったという事実は変えられようがない。既に招待状も送られており、チェイテ城に微小特異点の存在を確認してしまったが故にレイシフトの準備は整っている。それに、今から死地へと赴くというのにそれでも自分に付き合ってくれる酔狂なサーヴァントもいる。ならば、これから目の前で繰り広げられる地獄も怖くないというもの。
―――――さぁ! いざ行かん! 新たな地獄へと足を踏むこむ時だッ!!!
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「いやさ。色々とやばいことになるとは思ってはいたけどさ。それでもピラミッドの上に姫路城を乗っけるのはいかがなものかと思う訳でさ。完全に糞コラ画像案件じゃんあれ? メカエリチャンやら二号機やら守護神像やらでてきてさぁ………もう、考えるのが辛くなってきたんだよ」
「う、うん。そうだね? とりあえず落ち着こう?」
「いや、俺は冷静だよ? 冷静だからこそこうやって今回のイベントをかいつまんで説明してかつバッシングしてるんじゃないか」
半ば投げやりになりながらアトラス院のマスター。黒鋼は今回持ち込んだ召喚アイテムの数を確認している。その隣に寄り添うようにブーディカは苦笑しながらも否定しない辺り、言われても仕方ないことだと理解していた。2017年のハロウィン、それは前回チェイテ城に逆さ向きに突き刺さったピラミッドの上に姫路城が乗りかかり、その城主である刑部姫が真に引きこもるためにチェイテ城に密かに作られた守護神。メイガス・エリザベート・チャンネル。略してメカエリチャンを某数学教授が勝手にばら撒いた制作キットを片手に魔改造を施し、最終的にはハロウィン特異点に引きこもるという壮大(笑)な計画を企てていた。
しかも、最初はオリジナルのエリザベートとよく似たカラーリングのメカエリチャンだけだと思ったら、実は格闘ゲームでよくある2Pキャラの如く登場したメカエリチャン弐号機なるものまで現れ、過去のイベントやストーリーに登場した女帝サーヴァントが登場したりと。カオス極まりないイベントだった。幸いにも誰の命を奪うことなく事件は解決したが、事件の発端となった某数学教授には『万死の毒針』を100本回収するまで帰らないようにバビロニアに派遣しておいた。ウルク民を使わせないように巌窟王とベディヴィエールも同行させておいたので、今頃全力で棺桶を抱えながら全力ジャンプをしている頃だろう。
「それはさておき。ブーディカさん、実は刑部姫のこと知ってたんじゃないの?
「え? あ、いや別にそういうわけじゃないんだけどね。何でか彼女に料理を作るように要求されたから、その時のかな?」
「事情も聴かずに作って渡すって、今更だけど人良すぎません?」
「君ほどじゃないでしょ? 知らない人にだって水や食糧分けたり、とりあえずで困ってそうな人がいたら助けたりするじゃない」
「いや、俺のは余り物だったり共通の目的が在ったりしたからであって………」
「そういうのがお人好しだって言ってるの。まあ、エミヤ君ほどじゃないとはいえ偶には振り返って自分のことを大切にしてあげてね? ………私、もうあんな思いをするのは嫌なんだから」
少し物憂げな表情を浮かべながらブーディカはこちらを見ながら微笑む。我が子が大切だと言わんばかりに慈愛に満ちたそれを見ていると恥ずかしくなり、ついそっぽを向いてしまうがとりあえず謝罪しておく。彼女が言っていたあんな思いというのは、黒鋼自身も思い出したくない忌々しい過去のことだ。今さら話して胸糞悪くすることでもないので詳細は伏せるが、その内明らかになるだろう。
「そう…………だな。よし、それじゃこの召喚が終わったらゆっくりするかな。どこかにレイシフトでもしてゆっくりするかな」
「そうだね。その時は、私も腕によりをかけて作らせてもらうよ」
「ああ。それじゃ、さっそく行きますかね!」
今回用意したのは呼符4枚と10連召喚用の石を2回分だ。期間限定イベントということもあり、もう少し石を増やしても構わないと思ったのだが今回の配布枠は十分強い。あまり多くのサーヴァントを召喚しても育成しきれないため、今回はこれだけで勝負に出ることにしたのだ。
「というわけで早速呼符から行きますか。ま、星3の礼装が出れば御の字ってことで」
「いや、研砥の場合単発召喚の方が良いのが出てる気がするんだけど」
「誰でもそうだって! 10連で来なかったから残りの石を投げたら来たって例はあるじゃん!」
見苦しい言い訳を漏らしながらも黒鋼は数枚残された呼符を投げつける。いつものようにサークルはぐるぐると光の輪を開いては閉じを繰り返し、ものの数回目にして金色の光が輪を彩った。
「え、マジで? ここで☆4以上の演出来んの?」
「ほらやっぱりぃ。研砥は単発で回した方が高レア出るじゃないか」
「い、いや確かに高レアが来たけれどもよ。ここで本当に刑部姫が来たら祟られるぞ俺………」
内心恐々としておきながら、新しいサーヴァントが来るのに少しだけウキウキと喜ぶ黒鋼。伊達にいつ来ても大丈夫なように種火と素材をストックさせてあるだけのことはあり、どのような前科があるサーヴァントであろうともしっかりと育てるその心構えは一流のマスターのそれである。尤も、彼のトラウマの一つである諸葛孔明だけは別ではあるのだが。
それはさておき、金色の光の中から出現したのは金色の暗殺者のカード。その瞬間、黒鋼の心臓がドキッとしたが、現れたのは眼鏡を付けた物憂げな引きこもり姫ではなかった。肩まで伸びた白い髪に、手に握られた禍々しい杖。そして、後方に聳え立つ
「──あら。これも運命というやつかしら。サーヴァント、アサシン。カーミラと呼びなさい」
「あ、カーミラさんだ。こっちだと初めましてだな」
「あら、アトラスの坊やじゃないの。今更になって私を喚ぶだなんて、随分と指名が遅いのではなくて?」
「いや、それはこっちの不手際じゃなくて召喚システムの問題というだな……まあいいや。何はともあれ、これからよろしく頼みます」
「言われるまでもないわ。ところで………あの小娘はいるのかしら?」
召喚されてから二、三言葉を交わした後。カーミラが
「あはは………でも、何もそこまで溜め息を吐かなくても」
「吐きたくもなるわよ。サーヴァントというのは、英霊の座に登録された時点で変化するはずがないもの。それが、ハロウィンだということであんなにも過去の自分が増えていくのよ? 現在進行形でな量産されていく自分の黒歴史を前に絶望してはいけないのかしら?」
「ごめん、こっちが悪かった。だからおもむろに殺気を放つのはやめよう? ね?」
結局、ふつふつと増幅されたエリザベートに対する殺意を抑えるのにかなり時間をかけた。本人も申し訳ないと思ったのか深々と頭を下げながら召喚場を後にしたが、半ばやけくそになりながら部屋を出て行ったので完全に怒りが消えたわけではないかもしれない。それでも、多少なりともストレスが発散できただろう。ここにサーヴァントとして現界している以上、否が応でも過去の自分と顔を合わせるのだから仕方が無いと言えばそれまでではあるのだが。
「さてと、それじゃあとは適当に十連回すぞー。礼装が出たら撤退な」
「うん。さてと、今度はどんな子が来てくれるかな………?」
貯めに貯めた聖晶石がサークルに落として召喚システムを実行させる。今回は早い所で礼装が出て来てくれれば幸いだが、実際はそんな簡単にことが運ぶはずもなく。召喚されていくのは既に召喚済みの低レアのサーヴァントと、イベント礼装ではない既存の礼装ばかり。むしろ、一回目の十連にして高レアリティのカードが一枚も出て来てないまである。
「え、ちょなにこれ。最後の一枚が『優雅たれ』だったらもうガチャ回さないんだけど」
「これは、この間までSSR連打だったから流石にガチャ運が低下し始めたのかな……? まあ、きっと最後の最後で礼装が来てくれるよ」
「えぇ~? 本当にござるかぁ~~あぁ!?」
今回のガチャ結果に素朴な疑問を某エセ侍口調で尋ねた直後。最後の一枚が排出されたのだが、奇声を上げたのはそのカードのイラスト。なんと、先ほどのカーミラさんと同じ金色のアサシンのカードだったのだ。
「れ、連続で高レアアサシンだとッ!?」
「待って、この間武蔵ちゃんと頼光さん、忘れ去られてる孔明君と合わせて三人も呼んだんだよ? こ、ここでまたSSRが来るはずがないよ!」
「そ、そうだな! きっと二人目のカーミラさんかふ~や~ちゃんだな! きっとそうに違いないッ!!」
まさかの事態に驚き喚く二人。焦りの余り互いに肩を抱き寄せ合いながら目の前で行われる召喚の結末を見守る。これまで色々と召喚を実行してきた黒鋼達ではあったが、ここまで連続でレアリティの高いサーヴァントを召喚し続けたことはあまりない。まず間違いなく後ろからアゾット剣で刺される状況だ。固唾を飲んで見守る中、遂に目の前に現れたサーヴァントカードから召喚が実行された。
だが、目の前に現れたのは彼の吸血婦人でもなければ嘘を嫌うチビッ子でもない。薄汚れたボロボロな黒いマントに身を包み、白い髪にブーディカと同じ翡翠色の瞳。無垢な瞳からはかけ離れた紫を基調とした二つのナイフを構えながら一人の
「アサシン、ジャック・ザ・リッパー。よろしく、
「……………………………マジか」
「あ、
「研砥、後で話があるんだけど」
「ちょっと待て今のは俺が悪い要素がどこにもないと思うから俺は無罪だッ!!」
召喚サークルから現れたのは、今回ピックアップされている刑部姫と同じ星5のアサシン。ロンドンをその名で轟かせた殺人鬼『ジャック・ザ・リッパー』である。こんな可愛らしい女の子のどこが殺人鬼なのか分かった物じゃないかもしれないが、幼い言動とは裏腹に冷酷、そして残酷なまでに人を
「しっかし、まさかジャックが出て来るとは。流石にこんなの予想できんぞ……」
「確かに。これで不夜城のアサシンやカーミラだったら納得できたけど、まさか星五のアサシンで思いっきりすり抜けもんね。けどいい結果なんじゃない? これでジャックはこれで二人目でしょ?」
「絆レベルカンストしてるから使うのに抵抗があるんだがなぁ……」
実を言うと、黒鋼がが初めて召喚した星五のサーヴァントこそ目の前にいるジャッなのだ。というのも、2016年の新年に開催された福袋召喚を思い切って回した結果がこの子だったというわけで別段そこまで強い感情を持っているという訳ではない。いや、ジャックと同時に『カレイドスコープ』も来てくれたのでストーリー的には第二特異点あたりまでは彼女の無双っぷりに圧倒はされていたが。とにかく、可愛いから思いっきり優しく接している以上にやましいことは一切考えてはいないのだ。
「にしても、なんでジャックが呼ばれたんだ………怖ぇよ。ついこの間まで怒涛の星五ラッシュだったのに更に星五引くとか、絶対夜道に一人で散歩してたら後ろからアゾット剣で刺されるパターンだよこれ……」
「えっ……? おかあさんは、わたしたちが来たら嫌だった? わたしたち、悪いことしちゃった………?」
「そんなわけがないだろう!! ジャックは良い子だよ!! 今度一緒にフリクエ周回しようねッ! いやぁ最近『竜の牙』とか『龍の逆鱗』とか足りてなかったから助かるよ!! 来てくれてありがとうッ!!」
「すごい掌返しだなぁ……」
なんとなく自分たちが来て研砥たちが迷惑がっていると思ったのか。泣きそうになってしまったジャックを全力で宥めるマスターを尻目に、ブーディカはほとほと呆れながらも少女の頭を優しく撫でてている。暖かい人の温もりに天使のような可愛らしい満面の笑みをジャックは浮かべ、泣き止んだと思ったら小さい体と数いるサーヴァントの中でもトップに入る敏捷ステータスを駆使し、マスターである黒鋼の首元へと飛び乗る。
「ちょ、ジャック!? おま、さすがに肩車は不味いからおんぶでがま」
「やっぱり…………だめ………?」
「駄目じゃないですよ―――! もうね、ジャックちゃんが満足するまでいつまでも肩車してあげちゃう! それ―――――!!」
「うーん………あれ、もうジャックの方がマスターを操ってるんじゃないかなぁ……?」
なんやかんやで召喚されてしまったジャックとその場で遊ぶこと数分。本人の気もすんだのか、満面の笑みを浮かべながらジャックは召喚場を立ち去って行った。ジャック・ザ・リッパー。あの少女はロンドンで死んでしまった子供たちの怨念の集合体。誰にも望まれることなく死した子供たちの想いの塊ではあるのだが、今はああやって楽しそうに日々を過ごそうとしている。それを改めて知ることが出来たことが、他のどのサーヴァントがやってきた時より嬉しく感じた。
「しっかし、ここまで礼装が出てこないのも珍しいな。ここまできたらいっそのこと、リンゴにものを言わせて周回してやろうか……?」
「けど、そのリンゴもあんまりないじゃない。いや、石を砕いて周回するっていう手もあるけどね?」
「今回はそこまで美味しいイベントじゃないからなぁ。仕方ない、次の10連で終わらせるぞ」
あまりこういったことに時間を割いている余裕があるはずもなく、ささっと次の石を投入する。せめてイベント礼装が1枚でも出てくれればありがたいと思いながら行った最後のだが、開始して早々にイベント星4礼装が出現した。
「おっ、エウリュアレとアステリオスがメインの礼装が出たな。ったく、こんな遅く出て来るなんてガチャ渋すぎだろ……」
「まあまあ。これでようやく周回に専念できるんだからそんなこと言わないの。さてと、カーミラが来たから久しぶりに腕をふるって料理でも………?」
「うん? どしたのブーディカさん………っ!?」
急に息を飲むブーディカに釣られて何事かと辺りを見渡す黒鋼。視線の先にあるのは召喚サークル。いつも通りに光の輪が広がっているのだが、問題はその輪を囲む光。なんと、最高レアリティのサーヴァントが召喚される時に輝く虹色が出現していたのだ。
まさか、と黒鋼が思うや否や召喚が終了した。サークルの中央には一人分のシルエットが出現し、その姿が段々露わになっていく。フード付きの衣に身を包み、サーヴァントが持っていいのか分からないタブレット端末を片手にこちらへと素顔を見せる少女。その周囲には折り紙で折られた蝙蝠が多く飛び回っており、彼女のこちらへの警戒心を現しているかのようだった。溜め息を吐き、気怠い雰囲気を隠すことなく口上を述べる。
「あ――………あ? はいはい、アサシンの刑部姫でーす。ね、もう帰っていいかな? ダメ? あ、そう」
「座に帰れください」
「いやったぁぁぁぁ!! さっすがアトラスのマーちゃん! 私のことをよく分かってるぅ!」
召喚されて早々に帰宅命令をされたにもかかわらず、それに体の全てを使って喜びを表現する刑部姫。今回のイベントでは所謂黒幕(笑)な立場にあった彼女ではあるが、根っこのところはとことん引きこもりのニートなのである。今回の騒動も、結局のところこの刑部姫が引きこもれる理想郷を求めたが故の結果であることから、手の施しようのない引きこもりであることに変わりは無いのである。
「それにしても、姫を召喚しようと努力してるなんて。アトラスのマーちゃんも隅におけないな~。あ、もしかして姫と一緒に引きこもりたかったとか?」
「いや、ぶっちゃけていうと礼装が欲しかっただけで全然狙ってない。物欲センサーって怖いわぁ」
「………………………え、なにそれ。全国の姫ちゃんファンが血の涙を流して召喚している中サラッと呼んじゃったわけ?」
「そういうことになるかな。いや、その、ごめんね? 研砥は拗らせる時はとことん拗らせるんだけど、どうでもいいことには正直だから……」
「それってさりげなく私のことはどうでもいいってこと!? うわぁぁぁん! この間散々な目に遭ったけど、これはこれで酷い――――!!」
涙を流しながらこちらに抗議してくる刑部姫だが、正直な話その姿は滑稽の一言に尽きる。人の事は言えないが、これでも黒鋼は人見知りな方だ。なので、初めてあった人や他人に話しかけるだけでも相当な勇気がいるのは理解しているつもりだ。今回の場合は逆だが、既に知り合った人に「お前の事なんてどうでもいいから」なんて言われたかなり精神的に来るに違いない。少なくとも、黒鋼ならばマイルームに一日引きこもるくらいはする。
「ま、因果応報ってやつだな。それから、家には玉藻さんとか武蔵がいるから仲良くやれよ~」
「既に逃げ場がなければ黒歴史がいる!? 誰か――――! 姫に安住の地を――――!!」
なんやかんやで色々あったが、結局のところ刑部姫はここでの召喚に応じることになり正式に契約を交わすことになった。相変わらずの引きこもり癖だけはどうにもできなかったが、暇な時があればジャックたちや玉藻といったサーヴァントたちが入りびたるようになり、より一層賑やかさが増したのであった。
というわけで、今回のガチャはここでは初登場となるカーミラさん。それから、何でかやってきてしまった二人目のジャックと、刑部姫ということになりました。本当に礼装が欲しかっただけなのにどうしてこうなった………?
さてさて、これまででハロウィンが終わり、残るはセイレムとクリスマスで2017年のガチャ報告は終わりですね。GW中に出来る限り書くつもりではありますが、次の投稿はいつになることやら。こんな小説でも楽しみにしてくれている方がいる以上、可能な限り素早く書き終えるつもりではありますが、気長にお待ちいただけたらと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。次回のセイレム篇をお楽しみに!