それと、前回の後書きにて『聖晶石300個貯まるまでガチャ禁』と言ってましたが、正直やりすぎたと判断し、『EXTRAシリーズに参戦したサーヴァント』と、各イベント礼装、並びにストーリークリア後に10連1回に限り、ガチャを回そうかと思っています。心にもないことを書き、読者の皆様を惑わせてしまったこと。深く反省しています。申し訳ございませんでした。
長々と失礼しました。それでは今回のガチャ報告回を行おうと思います!!
二〇一七年九月。毎年行われる戦いの祭典。『ネロ祭』は今年も開催された。去年に行われた激闘の七日間に加え、今年の分も加えた十四の戦いがあった。
噂に聞いた聖杯大戦でのスペックで襲い掛かってきた反逆の
変幻自在。多種多様の戦闘スタイルで俺たちを翻弄した狐耳の
その身を四度砕け散らそうとも、五度立ち上がり、渾身の一射を放つ
此の度、遂にタッグを組んで祭りに参戦したインド神話、マハーバーラタにおける二大英雄。カルナとアルジュナ。
自身が手掛け、ありとあらゆるギミックでこちらのペースを搔き乱した星の開拓者の一人。
冠位のクラスを捨てたとはいえ、圧倒的な力。そして、最強の
そして、これらとはまた別の六騎の英霊に加え、祭りの主催者である
これには、主催者側に立っていた彼も満足だ。普段は顔を合わせることができない人たちと会話ができたし、挑戦者が挫折するのを見ると麻婆豆腐(中辛)を食べる蓮華も進むというもの。……………尤も、彼自身もテストプレイで挑戦した身なので、彼らには同情もしたが。
そんな中、一人だけ姿が見えない人がいることに気付いた。いや、気付いたというよりは
だが、事態は結構深刻な物だった。彼女は、北欧の
「それは、違います。貴方は確かに強くなりました。初めてあった頃から成長し、人理を救済した。貴方は、胸を張って『英雄』と呼ばれる偉業を成し遂げたのですから」
「―――そう言ってくれたのは嬉しいよ。貴方に、多くの英雄を導いた貴女に言ってもらえるのは光栄だ。…………でもさ、
静かになった英霊召喚場。黒鋼と彼女は二人っきりで言葉を交わしていた。彼の質問に彼女は何も答えない。霊基再臨最終段階である鎧を身に纏い、自身の身の丈程ある大槍を両手で握りしめながら、何も言うことなく儚げに微笑んだ。その笑顔を見た時、黒鋼は苦笑した。
―――ああ。これは、何を言っても止まることはないな。なら、俺ができることは一つしかない。
己をここまで導き、共に戦い、そして笑いあった彼女に向けるものではないと理解しておきながら、黒鋼は自身に刻まれた魔術回路を起動させる。護身用に持ち歩いている模造刀を抜き、懐から一枚のカードを取り出す。それ見た彼女は悲しそうに表情を変えながら、大槍を俺に向けて構える。自分のことを思ってくれるのは嬉しい。けれど、その果てにあるのが彼女の自滅というのであれば。黒鋼研砥は彼女を止めなければならない。それが、今の自分ができる
「力は、繋がりで出来ている――――――!!」
「………………………なんか、最近俺の労働環境がおかしい件について」
「いきなりどうした? いやまぁ、確かにそれは分からなくはないがな」
ネロ祭りも佳境に入り、いつものように売店の手伝いをしていた俺は、たまたま休憩室で会ったデミヤと言葉を交わしていた。俺が手伝っていたのは、いつもの食堂のメンバーが作った店だったので、彼が抜けたタイミングで休みに来たのだが。というか、本当に俺の労働環境がおかしいと思うのだが。
「まず今年のネロ祭のエネミーの配置を考える。これはホームズさんとかがやってくれたから良い。去年と今年の超高難易度のテストプレイも、まぁ軽く絶望しかけたが主催者側だから仕方ないとして。何故に売店の手伝いとボックスガチャの周会もしないといけないんだよ………。頼むから俺に休みをくれ」
「いや、それも大変だったかもしれないがな。一番大変なのは一人でブリュンヒルデの暴走を止めたことだろう? 彼女も本調子ではなかったとはいえ、生身の人間がトップサーヴァント相手によくもまぁ立ち回ったことだ」
「うるさいなぁ。一人でヘラクレスやスパルタクスに挑んでい行った人にだけは言われたくない」
お互いに軽口を叩きながら、そこらの売店で買った物を口にして食べ歩きをする。ローマのコロシアムとその周辺を投影したものだが、それだけでも十分なリアリティがある。ここで働いているサーヴァントたちも実際にいる人だし、NPCだってちゃんと自我を持っているように行動している。売店の手伝いや周回をしていたとはいえ、全く休んでいなかったといえば嘘だ。しっかり六時間も寝て、それから売店の手伝いと周回。少しの食べ歩きをしてから夜の手伝いと周回。しっかり明日の準備をしてから眠るという、マスターの鏡のような行動を取っている。
「さてと、そろそろ店の手伝いに戻るか。キャットや頼光さんも困ってそうだしな」
「いや、彼女たちは彼女たちで勝手に争っているから問題ないと思うが………。いや、それよりもマスター。これをお前に渡しておく」
そう言ってデミヤは懐から、結構な厚みのある紙袋を俺に手渡す。何だろうと中身を確認した時、俺は驚きのあまり紙袋を落としそうになったが、彼が俺の体を引き寄せて事なきを得た。
「大丈夫か? そんなに驚くとは思っていなかったな」
「いや驚くわ!! なんだこの大量の呼符は!? パッと見ただけで十数枚はあるぞ!?」
「正確には十四枚だがな。今回の手伝いをしてくれたマスターへの駄賃だそうだ。報酬はしっかり受け取ってくれ」
くだらないことに執着しているのを見て楽しんでいるのか、乱雑に頭を撫でてくるデミヤ。その、少し武骨な手だけども、どこか安心させてくれる手つきに照れてないのをバレないように下を向く。その、凄く恥ずかしいのだが。何故かされるがままになってしまっている。
「今は祭の最中だ。赤い方の皇帝やブリュンヒルデは召喚済みだが、白い方は爆死したままだろう? あの女の霊基を確認した去年のバレンタインから、お前が彼女の召喚で来ていないのはあいつらも知っている。召喚のも足しにしろと言っていた」
早く召喚場に向かえ。最後までどうでもよさそうに、デミヤは俺が持っていた荷物を取り上げて来た道を引き返した。堂々と人込みの中を進んで行くその後ろ姿は大きく、振り返らずに進めと言っているような気がした。その姿がカッコ良くて、どこまでもお人好しだと苦笑した。ここまでお膳立てしてもらったのだ。なら、今度こそ彼らの思いに応えるのが真のマスターといえるだろう。
「さて、と。一人で召喚するのも久しぶりだな。え~と、呼符は全部で何枚あったかな………?」
今回は誰も呼ばれず、俺は一人で召喚場に足を運んでいた。先ほどデミヤからもらったものと合わせ、自分の手元にある呼符の枚数を確認する。すると、つい先日のように召喚場の扉が勢いよく開いた。その後の展開をなんとなくだが予想した俺は、すぐさま魔術回路を起動させて後ろを振り返る。
「余がきたぞぉうふっ!?」
「………そう何度も、俺が同じ過ちを繰り返すと思うなっ!!」
砲弾もかくやの速度で俺に飛び込んできた少女。ネロの突撃を軽く逸らして抱きとめる。こうすれば鳩尾に当たるこもないし、誰も痛い思いをせずに済む。最近、ランサーの書文先生とかに武術の教えてもらって良かった。内心でそう思いながら、胸に抱き着いたままのネロを引き剥がす。
「で、何でここにいるんだネロ? お前、まだ花びらの交換で店番しないといけないはずだろ?」
「それはそうなのだがな。研砥が一人で召喚を行おうとしていると、黒い方のアーチャーに言われてな。代わりの店番にエリザベートを残し、ここまで飛んできたのだ!」
「………いや、来てくれたのは嬉しいけどな。だが、その前に少し着替えて来い。もうすぐ祭りも終わりだってのに、いつまでそんな恰好をしてるんだ……」
今、ネロが来ているのはいつもの男装と呼べるのか分からない程に露出した、赤を基調とした礼服ではない。額に巻かれた赤い鉢巻きに、無地の白い服に刻んだ『ねろ』という名前。それから、大胆にも太ももから先を露出した旧時代の体操服。そう、所謂ブルマ姿で彼女はここにいるのだ。正直に言うと、いつもより更に露出が多くなっているせいで目のやり場に困る。この間、ネロのこの姿をこっそりと見ていたところをブーディカさんに目潰しされたので、あまり顔を合わせないようにしていたりするのも、理由の一つだったりする。
「む、別に良いではないか。それに、祭りというのは終わって後片付けをするまでが楽しいのだ。であれば? 余が本当に祭りが終わったと思えるその時まで、この姿でいるのは間違いではないはずだが?」
「至極まっとうな正論をどうもありがとさん。でもまぁ、正直に言うと目のやり場に困るからとっとと着替えて来い」
「面倒くさくなって本音を言い出したな!? だ、だが断るぞ! 余はこのイベントが終わるまでは絶対に着替えぬ! 着替えぬからなっ!!」
幼い子供の様に我儘を言い出すネロに頭痛がする。彼女と過ごしてもう二年近くになるが、未だにこの我儘だけは何とかならない。普段は我儘を通すだけの仕事をこなしてくれているから何とも思わないが、こればっかりは譲れん。もう目潰しとかされたくない。だが、これはこれで俺の我儘だ。それを自覚した時、俺は溜め息を漏らしながら召喚サークルの前に立つ。
「しょうがないからそのままで良いけどさ。頼むから俺の前とか横には出るなよ? 本当に目のやり場に困るんだからな」
「う、うむ。分かっておる。そ、そのだな。研砥よ。一つ聞いても良いか?」
「………? ああ。俺に答えれる範囲でならな」
「うむ。その………余のこの新衣装、どう思――――――」
「呼符をサークルにシュートッ!! 超エクサイティンッ!!!」
変なことを聞こうとしてきたネロの言葉を遮り、俺は数十枚はあろう呼符を数枚叩きつけた。本来は一枚ずつ入れないといけないのだが、これは仕方ない。だって、システムが起動しちまえば何も聞こえないんだから。
「ちょ、研砥よそれは酷くはないか!! 余の思いを踏み躙るようなことをして楽しいのか!?」
「馬鹿野郎っ!! そんなことに正直な感想を言ってみろ!! あとでまたブーディカさんに目潰しされるだろうがァ!!」
ぶっちゃけた話、ネロのブルマ姿は異常な程に可愛い。いつもの子犬のような、いや寂しがりだからネコか? まあどちらでも良いが、とにかく可愛いのだ。こう、俺の足らない語彙力のせいでちゃんと説明することができないのが悔しいが、とにかく可愛い。一家に一人くらい置いて癒されたいレベルまである。
そんなことを考えていると、目の前で起動し続ける召喚サークルに金色の光が灯る。強力なサーヴァントの召喚に成功したというその反応から飛び出てきたのは、金色に輝く騎士が描かれたカード。
「おおぉっ!! こんな序盤で金セイバーを引くとは! 遂に花嫁の余を召喚するのか!?」
「………いや、金演出なら妥当なとこで☆4サーヴァントだろ」
「初登場したバレンタインから、ずっとこの時を待っておったものな! それに今は余がついておる! 負ける理由などあるまい!!」
「うわ~この皇帝陛下人の話聞いてね~」
凄いハイテンションでこちらの言うことを無視して続けるネロに、諦めにも近い棒読みで召喚される人を俺は待つ。金色のカードから光が溢れ出し、それが形取ったのは見たことのある体型の少女だった。
身に纏うのは赤を基調した露出の多い礼装。金色の髪に翡翠色の瞳。右手から延ばされた細い腕には、少女の衣装と同じ赤の大剣。どこかで見たことがあるというより、もはや見飽きたといっても良い少女が召喚されていた。
「サーヴァント・セイバー。ネロ・クラウディウス、呼び声に応じ推参した! うむ、よくぞ余を選んだ! 違いの分かる魔術師よな!!」
「って、何となく分かってたけどお前かーーい!!」
「むむっ! 流石は余が信を置いたマスター! まさか新たに余を召喚して宝具レベルを上げるとは! やはり違いの分かる魔術師よな!」
「うむうむ。どうやら先に余を召喚し、育成しているようだ。ならば、この場で余は身を引くとしよう。何、ここにいる余が力になるのだ。これからももっと余を構い、余を頼るが良い!!」
自信満々に胸を張る二人のネロ。ここで彼女が来るのは少し想定外だったが、確かに宝具レベルが上がるのはありがたい。ネロの絆レベルは既にカンストしているから戦闘に出す機会はあまり無いかもしれないが、それを抜きにしても宝具の威力が増すのはありがたい。ここぞという時ではブーディカさんを超えるかもしれない耐久力を発揮するのが、ネロの特徴だからな。
「と、とりあえずガチャを続けるぞ。残り十数枚程度だが、も、もう一人くらい高レアの人は来て欲しいからな」
「む? 何を弱気なことを言っておるのだマスター?」
「ひょ?」
残った呼符を投げつけようとした時。後ろに立っていた二人のネロが前に出る。新しく召喚された方は問題ないが、未だにブルマ姿のネロには下がるように命じたが、それを無視して彼女達は続ける。
「まだ、花嫁の余を召喚しておらぬではないか」
「まだ、呼符と石が残っておるのであろう? ならば――――――」
そこで一度言葉を切り、ブルマ姿のネロがサーヴァントの筋力で俺の手元にある箱を取り上げる。それに驚いた俺は目を丸くしたが、次に彼女達がしそうなことを思いつき、それを止めようとするも、新たに召喚された方のネロがそれを阻む。具体的には羽交い絞めにされた。召喚されてあまり経験の無いはずの彼女だが、それを抜きにしても鮮やかすぎる動きに焦る。
「ちょ、お前HA☆NA☆SE!! やめろぉ………頼むから、それだけはやめてくれぇぇ!!」
「「全てを投げうってでも余を当ててみせるくらいの気概を見せよ!! マスター!!!」」
「ふっざけんなお前勝手に十連回してんじゃねェェェェェェェッ!!」
遂に恐れていたことが起こってしまった。今回のネロ祭りと前回の水着イベントで爆死してから貯めた石。丁度十連一回分は溜まっていた石と、残った呼符を全て投げつけやがったのである。あまりにも不遜。あまりにも無謀。その行動から生まれるであろう絶望的なガチャ結果を夢想し、俺は膝を突いてその場に倒れ伏す。
「あぁ………俺の………俺の貯めていた石がぁ………!!」
「ふっふっふ~。なぁに、これは余の予想だがな。今回ばかりは当たると思うぞ? 花嫁衣裳を身に纏った余が登場したのは去年のバレンタインイベント。それから、此度のピックアップで四度目の登場だ。ガチャを回した回数は今回のを合わせると二百と少し。これで出ない方がおかしいであろう?」
「だからってなぁ!! もうすぐカルデアの方から重大発表があるから、できるだけ石貯めとけって言われてんだよ! 何やってんの!? 俺がその重大発表のために石貯めてたのに何やってくれてんの!?」
今回ばかりは許すに許せん。ブーディカさんや食堂にいるメンバーに頼んでジャンクフードしか出さないように頼もうとしたその時、先に行われていた十連召喚が終わりを迎えようとしていた。最初に今回で四枚目となる『2030年の欠片』が出た時点で諦めモード全開だったが、さっきのネロ召喚に応じるかの如く、再び召喚サークルが黄金の輝きを放つ。そして、サークルから出現するは全く同じ輝きを放つ騎士のカード。まさかの事態に俺は戸惑い、二人のネロが歓声を上げる。
「おぉ!! うむうむ! やはり余の勝負強さは一級品よな! これで本当に余が来たら、聖杯を捧げてレベルもカンストさせるのだぞ!」
「いやいやいやいやいや!! こ、これはクー・フーリンとメドゥーサさんのための聖杯だからな!! 残り四つしかない貴重な聖杯だから使わないからな!!」
「照れずともよい。あぁ楽しみだ。研砥が最も信を置くあのブーディカと同じ土俵に立てると思うと、今から楽しみで仕方がない!!」
「だから使わないつってんだろぉ!?」
もう駄目だこの皇帝早くなんとかしないと。本気でそんなことを考えていると、目の前に召喚されていたカードから光が溢れる。遂に始まったサーヴァントの召喚だが、結果はあまりにも無慈悲なことだった。新たに召喚された英霊。それは、さっきからずっと隣に立っているものと同じだったのだから。
「あれは誰だ? 水着か? 花嫁か? 勿論、(赤い方の)余だよ!!」
「コフッッッ………」
「「マスタ――――――!?」」
まさかの三人目の登場に、俺はその場で某桜色の剣士よろしく血を吐いてぶっ倒れる。いや、さっきまで膝を突いてたから最初から倒れていたかもしれんが。それでもあんまりな結果に絶望する。予想外のアクシデントがあったとはいえ、ここまでやってもまだ来てくれないという事実を思い知り、俺はその場で挫折する。
―――その時、後ろにある扉が開く音がする。誰が来たのかと振り返った時、目の前に立った人は驚きのあまり目を丸くしていた。
「お~い研砥~。エミオル君に言われて来た……………」
「む? ブーディカではないか! 仕事は終わったのか?」
「おぉ! ブーディカ! ここに来て早々に会えるとは! うむ、やはり持っておるな! 余!!」
「ブーディカ――――――!!」
召喚場に入ってきた女性、ブーディカさんに目掛けて一斉に走っていく三人のネロたち。それを見た彼女はいつものように避けるのではなく、されるがままに抱き留めていた。ネロたちはそれがどうしてなのかを考えず、自分の欲求のままブーディカさんへと甘える。普段のブーディカさんだと絶対に許しそうにないことをされているのにも関わらず、されるがままにされている。 どうしたのだろうと挫折から立ち直りながら彼女の前に立つ。
「お~いブーディカさーん? 大丈夫………!?」
とりあえず顔の前で手を振って意識の確認をしたその時だった。驚きのあまりブーディカさんが目を丸くしている。それは問題ない。だが、問題だったのは、そのまま口を開いたままで息をしていないことだった。どうやら、ネロが三人いたという事実を認識しないために、体が勝手に行動してしまった結果らしい。そこまで理解した直後、これはかなり危ない事態だということに俺は気づいた。
「って、かなりどころか絶対やばい奴だよな!? おぉい!? なに急に霊基消滅しようとしてんの!? と、とりあえず婦長のところに連れてくぞ!! 来い、小太郎!!」
内心焦りながらも指を鳴らす。すると、数舜の後に忍者の恰好をした幼い少年――――――こんな容姿だが立派なアサシンのサーヴァント―――――、風魔忍軍の頭領。風魔小太郎が推参していた。
「研砥殿。お呼びですか?」
「ああ! 悪いが大至急、ナイチンゲール婦長の元にブーディカさんを送り届けてくれ! 任務遂行の為には令呪も辞さん!」
「承知。では、行って参ります」
何も言わずにブーディカさんの肩を乗せながら、登場した時に近い速さでこの場を去る小太郎。その仕事の速さにいつも助けられていると改めて実感すると共に、今度日本系列のサーヴァントを集めて周回でもするかと考える。東西の英霊を召喚しているとはいえ、基本的には西洋の方が数は多い。俺とて日本で生まれ育ったのだ。最近会ってない金時たちと周回するというのは、楽しいかもしれない。
「け、研砥よ!! 見てくれ! 召喚場が凄いことになっておるぞ!!」
「はぁ? 今度はなんだネロ………?」
今回の騒動の主犯。というか本人の意図してないから誰の責任でもないのだが、ネロがいきなり声を荒げてこちらを見るように訴える。それになんだと思いながらサークルを見てみると、結構な数の礼装が吐き出されているに気づく。それも、その大半が今回のイベント特攻の礼装だ。
「おいおい。急にどうした? 十連が終わってこっから先は呼符の単発ガチャだろ? こんなに礼装出るなんてどうかしてるぞ……?」
「『フード・コロシアム』に至っては限凸しても問題ないくらいには出ておるしな! うむ! やはり余の勝負師としての勘は間違っておらぬな!!」
再び自慢げに胸を張るネロに適当に相槌を打つ。確かに、イベント礼装が出てきてくれるのはありがたい。だが、今回のメインはボックスガチャだ。今は七十箱くらいあけることは出来ているが、できればもう少し周回したいところだ。具体的には百箱くらいはいきたい。
そんなこんなでガチャを回し続けること数十回。正直こんなに回す予定はなかったガチャも最後の一回に突入した。高レアは結局、ここにいる二人のネロしか召喚されず、他は礼装や銀枠のサーヴァントばかりだ。最後に召喚されたのは何だろうと思っていると、光の輪が三本に分かれた。そして、その光の輪から現れた物に俺は息を飲んだ。三本の光のラインから現れたのは、金色に輝く騎士のカード。通算三度目となる登場に、俺の足が震え始める。
「ま、さか。ここで金枠のセイバーだとォッ!?」
「無演出の金枠サーヴァント召喚は久しぶりだ! これは………ひょっとするのではないか!?」
「それはフラグだからやめろぉ!!」
ここでもし七人目のデオンとかだったらもう立ち直れる自信はない。ネロなら宝具レベルが最高値の一つ手前だからまだましだが、それ以外だと致命傷だ。ここで同じ最高ランクのセイバーだということでアルテラとかが召喚されるのも、それはそれで困るが。
「祈るのだ研砥!! あの時、バレンタインイベントで初登場した花嫁の余を呼ぶのにここまで来たのだ!! 最後まで諦めるでないぞ!!」
「お前に言われるまでもないッ!! 頼む…………来てくれ………………ッ!!!!」
両手を合わせて拝むように目の前のカードを睨み付ける。いや、途中から召喚された人を見るのが怖くなって思いっきり目を閉じる。思い続けるのは彼女を初めて見た時のこと。バレンタインイベントでその存在が確認され、第五特異点で遭遇した時のこと。いつの日か、ここではないあの世界で見た彼女の姿。再び会おうと約束したあの誓いを果たすべく、俺は何度も召喚に挑んできた。今度こそ。今度こそと自分を振るい立たせながら。
幾度となく挑んだその結果は、今回を合わせて全てが失敗に終わっている。だからだろうか。最後の最後にこんなチャンスが与えられて、文字通り藁にも縋る勢いで召喚を行っている自分がいる。
――――――なぁ。神様。本当に、貴方という奇跡の存在がいるのであれば。
召喚が実行される。黄金の騎士が描かれたカードから光が溢れる。その時、一陣の風が部屋の中に吹いた。その風は心地良く、目の前の事実と向き合おうとせず、強く閉じていた瞼をゆっくりと開かせる。
――――――ここまで来たんだ。これが、ネロ・ブライドが召喚できる最後の機会かもしれないんだ。
ゆっくりと、少しずつ閉ざした瞼を開く。カードから溢れた光の粒子は既に、新たに召喚されるであろうサーヴァントの姿を形作っている。見覚えのあるその姿に、俺は遂に奇跡は起こらなかったのだと落胆する。
――――――だから、頼むよ。なあ神様! 最後に一度くらい……………
再び顔を俯かせようとしたその時。目の前に溢れる光が炸裂した。今までにない召喚のされ方に驚き、俺はたまらずその場で尻餅を着く。何が起こっている、戸惑う頭の隅でそれを模索していると、目の前に現れた人影が叫んだ。
「アトラスの勇者よ! 余を求める其方の声! 確かにこの耳に届いたぞ! この時を何度待ち続けたことか!! 今はその場で待つが良い! そこに座して待ち、余の声に耳を傾けよ!!」
何度もこの耳に通したあの声。余りにも不遜。だが、その全てを許してしまいそうになる少女の声。その声はどのような楽器よりも美しく、その姿は万人を魅了する。そう、目の前に立つ彼女の名は――――――
ーーーーー良い夢を……………見せて……………!!
「うむ! 装いも新たに再登場だ。嫁セイバー。あるいは~………ネロ・ブライドと呼ぶが良い!!」
「え…………ほん、とうに…………?」
目の前で登場した、たった一人の少女。俺が何度も求め、遂には全てを投げうった召喚。その最後の最後で、彼女が召喚される。そんな、奇跡にも等しいことが。本当に起こっているのだろうか。驚きのあまり頭が理解することを拒んでいると、白いネロはは突如としてこちらに向かって飛び込んできた。
「ようやく………ようやく会えたな! マスタ――――――!!」
「うわぁっ!?」
いきなり飛び込んで来たことに驚いて、その場で2人揃って倒れる俺たち。その肌の感触。触れた肌と接触したことで温まりを感じた時。俺はようやく理解した。これは本物だと。今、ここにいるのは。紛れもない彼女なんだということを、よくやく認識した。
感動のあまり声も出ない。目からは涙が溢れ出し、少しからず嗚咽を漏らす。だが、それでも必死に笑顔を創り上げながら、俺は隣にいる少女に声をかけた。
「ようこそ、アトラス院へ!! これからよろしくな! ブライドッ!!」
「うむ! 存分に余に頼るが良い! これからよろしく頼むぞ! 我が
こうして、かれこれ二年近い年月を経た戦いは、ここに終止符が打たれた。これから先、俺と彼女は共に闘うことになる。だが、今はもう少しだけ休ませてほしい。もう少しだけ………この喜びの余韻を、楽しんでも罰は当たらないだろう?
なお、この後で赤いネロの強引な召喚によってブライドの召喚に成功したため、そのお礼に聖杯を捧げてLv98にした模様。
というわけで、今回のネロ祭ピックアップ!! 遂に我がアトラス院にネロ・ブライドが召喚されましたッ!!! 長かった戦いもこれにて終幕! だがしかし、この時はまだあのイベントの存在を知らなかったのです。そう………1000DLボーナスという奇跡の存在を………!! 皆さんは誰を選びましたか? 自分は次回の投稿で発表しますので、楽しみに待っていただけたらと思います!!
さてさて。もうすぐ10月ですが、今年のハロウィンは誰が☆5枠なんですかね? もしここでゴスロリ玉藻とか来たら私、正月のメルト用に貯めこんでいる財布の紐を外す自身はありますよ!!
ここまでの読了、ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!!