ブーディカさんとガチャを引くだけの話   作:青眼

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今回は、皆さんが待ちに待った水着イベント復刻版!去年、虹演出で槍玉藻が来てくれたと思ったら、実はジャンヌが来てしまった私は、無事に槍玉藻を引けたのか!というかサモさんが可愛くて強いので欲しいんですけど!?

さて、前書きが長くなってしまいましたが、本編をどうぞっ!!


無人島と大英雄と優しい彼女

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夏だーーー!!」

「海だーーーー!!」

「かいたくでーーーーす!!」

 

 元気よく青く美しい海ではしゃぐ三人の少女たち。うちの可愛い三人娘、アサシン、ジャック・ザ・リッパー。キャスター、ナーサリーライム。ランサー、ジャンヌ・オルタ・リリィ(略)。それぞれが、自分とよくあった水着を着て浜辺で戯れる様子は、俺の荒んだ心を洗い流していく。全て遠き理想郷(アヴァロン)はここにあったのだと呟きたくなるが、それをするとまた俺がロリコン扱いされるので、心の内にしまっておくことにする。さて、それでは俺が何をしているかというとだなーーー

 

「暑い………溶ける………灰に、なるぅ………」

「大丈夫………なわけないよな。ほら、これでも飲みな」

 

 スカサハ(殺)さんに走り込みの訓練を強制的に参加させられ、体力が尽きてその場で倒れ込んでいた。燦々と輝く太陽の直射日光を一身に浴び、暑い砂の上で這いつくばっていた俺に、アーラシュがさりげなく冷たい水を提供してくれる。ペットボトルに入っていたお茶を一気飲みし、勢いよく立ち上がる。

 

「いよっしゃァッ!! 水分補給完了ッ!!」

「うぉっ、一気に元気になったな! さっきまで『心を失くした者』も真っ青なゾンビっぷりだったのに」

「ちょっと待て、それってさっきまでの俺がゾンビだって言いたいのかアーラシュ」

 

 俺の質問に口笛を吹いて無視するアーラシュ。普段はお世話になっていて頼れる兄貴分なんだが、ある日の贋作英霊イベントのように、そこらにいるお兄さん系の人として接してくるから少し苦手だ。どうしようもないことなんだが、一人っ子だった俺にはあまり理解できない。

 

「あ〜……。そういやアーラシュ。いつも周回に付き合ってもらっちゃって悪いな。その………毎度の如く爆発四散させちゃって……」

「おいおい、謝んなよマスター。お前が普段、どんだけ忙しいのかってのは俺も知ってる。少しでもお前を休ませてやりたいから、俺は宝具を使ってるんだ。礼を言われこそすれ、謝って欲しくはないぜ?」

 

 頭を下げようとした俺に手を当て、少し怒った表情を浮かべるアーラシュ。たとえ本人に止められようと、一度は謝らないと思っていた俺に、アーラシュが一枚のカードを差し出した。

 概念礼装『聖なる献身』。アーラシュの力を最大限に発揮する、彼のみが扱える意味通りワンオフ礼装。自身が消滅するときにその力を解放させる概念礼装。

 

「もし、本当に俺のことを思ってるんなら。また一緒にクエストに行こうぜ? な? マスター?」

「……………どうして、俺のところにこんな良い人が集まるんだろうなぁ」

 

 独り言のようにため息と共に吐き出しながら、俺はカードを受け取る。保管庫にカードを転送した後、真っ直ぐアーラシュを見つめる。

 

「ああ。悪いが、これからも俺に力を貸してくれ。アーラシュ」

「任せな! 俺はアーラシュ・カマンガー! 戦いを終わらせる英雄だからな!!」

 

 いつものように、頼れるかっこいい笑顔と共に、アーラシュは俺の手を握る。これから先も、共に戦い続けようと願いと共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーラシュと新たに絆を育んだ後、俺たちはクー・フーリンが経営している海の家に向かうことにした。今回の無人島生活は、前回の焼き直しみたいなものだ。なので、事前に準備していた兄貴が普段は使わないルーン魔術を駆使し、僅か一日でこの無駄に立派な店を建築してみせた。流石はスカサハ師匠直伝のルーン魔術。以前、ここで建てた武家屋敷にも勝るとも劣らない完成度を誇っている。

 中を少し覗いてみたが、アンデルセンやシェイクスピアといった非戦闘系のサーヴァントたちが、エアコン完備のこの店で酒を飲んでいた。ここにいる間は休みだと通告してからというもの、この怠け切った生活を送っている。正直注意するべきだとは思ったが、いつもバフ要員として働いていくれている。今だけはその怠けた生活を見て見ぬふりをしておこう。

 

「お〜い兄貴〜。かき氷と焼きそば一つ頼むわ」

「はいよー! おいテメェら! テキパキ動きやがれ! オーダー溜まってんぞッ!!」

「うはははは!! それはこの海の家に入る人数を超えてるからなのだな! 駄菓子菓子、それでも頼まれたオーダーを果たすのがキャットの美点。良かろう! 此処より本当の酒池肉林をお見せするとしよう! なので、報酬には金色に輝くネコ缶を要求するのだワン!」

 

 テイクアウト用の注文を店主の兄貴に言ってから、厨房で忙しなく働いている二人を見て申し訳なさが出てくる。忙しい時は俺も手伝っているのだが、今回に限っては手伝うなと他の皆にも言われたので、俺はこの無人島生活を満喫しまくっている。ぶっちゃけると凄く楽で幸せだが、目の前で仲間が働いているのに、一応マスターである俺が働かないのは如何なものか。そんなことを、休みを謳歌してから三日経った頃あたりから思い始めていたりする。

 

「はいマスター。こちら、注文されていたかき氷と焼きそばでございます。ゆっくりしていってくださいね?」

「ああ、ありがとな玉藻さん。今日もお疲れ様。ところで、やっぱり俺も何か手伝わせて」

「だ・め・で・す♡ 日頃から溜まりに溜まっているストレスや疲れもございましょう? せめて、この無人島生活を送っている間だけでも休んでもらいたいと皆で決定したのですから、どうか大船に、いえ天翔ける王の御座(ヴィマーナ)に乗ったつもりでお任せください♡」

 

 俺の頭を軽く撫でながら、玉藻さんはホールの仕事に戻っていった。いつもの巫女服の袖を短くし、髪型をポニーテールしているその後ろ姿はとても魅力的で、少し見惚れてしまっていた。これはいかん、いかに無人島生活だったとしても、自分の使役しているサーヴァントに欲情することなどあってはならない。ケルトを思い出せ。職場恋愛、ダメ、ゼッタイ!!

 ともかく、玉藻さんのノースリーブ和服美人っぷりに見惚れながらも、溶けないうちにかき氷を食べるべくスプーンで氷を掬う。だが、スプーンは何も触れずに空を切った。疑問に思った俺は容器を見つめると、既に中身がなくなっている。そして、目の前で美味しそうに俺の物だったかき氷を食べる子供を見て、溜め息を吐く。

 

「………なに俺のかき氷勝手に食べてんだクロエ。食いたいなら自分のを注文しろ」

「別に良いじゃない。また新しいのを注文すれば」

「新しいのを買っても、今あったかき氷は帰ってこないんだよ……!」

「え〜。じゃあ、まだ氷が残ってるから食べてみる? ひんやりして美味しいわよ? 私のお・く」

「すいませぇぇぇぇぇん!! かき氷の抹茶シロップ一つお願いしますッッ!!!」

 

 突然18禁になりそうなことを言い出した褐色ロリッ娘の言葉を塞ぐべく、つい大声でオーダーしてしまう。厨房の方で兄貴が大笑いしているのを聞こえたので少々恥ずかしい思いをしてしまった。だが、この後のことを思えば何にも問題はない。QPは少し減ったけど。

 

「ちっ、やっぱり、そう簡単に魔力供給させてくれないわね」

「させるわけねぇだろ!! んなことされてみろ、今度こそ俺のロリコン説が完成しちまうだろうが! 何なの、そんなに俺を困らせたいのかお前!!」

「どうどう、落ち着けよマスター。ほら、俺の焼きそば分けてやるから。な?」

 

 愉快そうに笑いながら、自分の焼きそばを提供してくれるアーラシュの優しさが身に染みる。ほんと、どうしてこんな良い人なのにレアリティが最低の1なんだろうか。気遣い、スペック、人徳。全てにおいてハイスペックなサーヴァントなのに。

 

「そういや、お前はキリツグさんやアイリさんと一緒にいなくていいのか? 並行世界の住人とはいえ、元を辿れば家族だろう?」

「いや……、そうしたいのは山々なんだけど。ちょっと、あの空気には入れなくてね……」

 

 疲れているOLのように肩を落としながら、クロエはジャックたちが居るところとは別の海岸に指を指した。指された先にある姿を見たとき、心の中でクロエに同情した。

 

「どうした、もう終わりかね私。なら、貴様はそこで這いつくばっているといい」

「はっ、たかが3匹リードしただけでよくほざく。今のうちに慢心していろ。すぐに追いついてやる………!」

「貴様の方こそ、私について来れるかフィィィィィィィシュッ!!」

 

 エミヤとそのもう一人のエミヤ、所謂オルタ化したエミヤの二人が、海岸で全力で釣り対決を行なっていた。それも、二人とも尋常じゃない速度で魚を釣り上げてバケツに放り込んでいる。というか、もはやバケツを見ずに放り込んでいる。何してんだあの弓兵どもは。

 

「いや、人には色んな趣味があるとは思うけど。あれは正直言ってないわ。うん、あれはない」

「ま、まぁ釣りは男が通る楽しみにの一つみたいなもんだからしょうがねぇさ。あ、また一匹釣り上げてる」

「あいつらもう弓兵(アーチャー)じゃなくて、釣師(フィッシャー)でいいんじゃねぇか……?」

 

 三者三様の感想を言い合った後、俺は新しいかき氷を口に頬張る。うむ、やっぱり暑い時には冷たい物が一番だ。かき氷ならシロップが、アイスクリームならバニラが一番だと俺は信じている。

 

「さて、と。とりあえず昼飯も食ったし、そろそろ召喚場に向かうとしますかね」

「あ〜、やっぱり今回も回しちゃうのね。でも、あんまりおすすめしないわよ? 誰も新しい衣装に着替えてないし、ていうか前回もしたっていう無人島生活の焼き直しでしょこれ?」

「色々とメタいことを言うなお前……。でもまぁ、去年のリベンジはしないといけないからな。今度こそ水着の玉藻さんを……!!」

「駄目だな。これはもうガチャ回すまで止まらねぇぞ。………念のため、ブーディカの姐さんでも呼んでおくか………」

 

 ジト目でこっちを見てくるクロエの視線を振り切り、俺はここに建てた拠点。武家屋敷へと向かう。今回も全然通信が通じないため、わざわざ建築した施設に召喚サークルを設置したのだ。さて、今回の無人島生活の為に貯め込んだ150個もの石。これだけあれば高レアサーヴァントの一人くらいは来てくれるよネ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! ふざけるなっ!! ふざけるなぁっ!! バカヤロォォォォォォォォォォォォ!!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「………………………凄まじい爆死っぷりよね。あそこまで行けば、いっそ清々しさまで感じるわ」

「はっはっはっはー!! いやぁ相変わらずひどい結果だねぇ。うむ、目の前で誰かが困っているのを見ると、飲む酒の量も増えちゃうネ!」

「おう後で覚悟しろよこの完全犯罪者! テメェを滝に叩き込んで超エキサイティングしてやるからなァ!」

 

 10連召喚を行ってから今ので3回目。合計30回にも渡る回数の召喚を行なっているが、結果は報われていない。そもそも、本当にピックアップはされているのかと疑問に思うレベルの成功率の低さだ。今回の為に鬼ヶ島やら女神ピックアップもできる限り我慢して来たというのに、ここに来ての爆死っぷりである。

 召喚された無人島生活を楽にするための礼装は少なく、召喚されたサーヴァントも全員宝具レベルがカンストしている人たちばかりだ。それならば高レア礼装はどうなってるんだと聞かれたら、『聖女の依代』という礼装が4枚まで集まって程度だ。あれ、これまたジャンヌに邪魔されてね?

 

「またしても………またしても俺の邪魔をするのかっ!! 絶対に許さねぇぞ! ブツヨク・センサァァァァァァァァァァァッ!!」

「あ〜もう、遂に泣き出し始めたわよ? 仕方ないわね。ほら、地面に何度も頭突きしないの。頭から血が出ても知らないわよ?」

 

 悔しさのあまり立ってその場に崩れ落ちてを繰り返していると、結局付いて来たクロエがよしよしと頭を撫でてくる。とてつもなく恥ずかしいが、今はその優しさが身と心に染みる。

 あと、偶然ここで涼んで人の爆死を嗤い、それを肴にして酒を縁側で飲み干すモリアーティーは絶対に許さん。あとで島の汚染されている湖にも叩き込んでやる………!!

 

「どう? 少しは落ち着いたかしら?」

「………まあ、うん。ありがとな、クロエ」

「別にいいわよお礼なんて。私は、私らしくここで好き勝手させてもらってるんだから。それよりこれからどうするの? まだ召喚を続けるのかしら?」

 

 その場に座り込んで、これからどうするかを真剣に俺は考える。さっきは思いっきり使ってしまった石だが、ぶっちゃけると今回の為にひたすら貯め続けたものだ。このまま使い果たすまで回すのもありといえばありだ。だが、あくまでこの無人島生活は前回の焼き直し。ともすれば、また新しいイベントや特異点が出現し、そのサーヴァントたちのピックアップが始まるかもしれない。

 今残っている石は67個。10連召喚があと2回できる。ならば、俺が取れる行動は一つだけ。

 

「そろそろ石も少なくなって来たしな。次の10連で今回のガチャは終わらせるわ。これ以上爆死しても嫌だしな」

「それがいいと思うわ。というか、色々と欲深いのよ研砥は。もう少し無心でガチャを回してみなさいな」

「いや、これでも結構無心で回してる方なんだけどな…。まあいっか、そらそら回れ回れぇ!!」

 

 残っている石の半分をサークルに投げ込む。本日4度目の10連召喚に淡い希望を抱き、サークルから弾き出される礼装やサーヴァントに注目する。

 

「む、『トワイライト・メモリー』か。そういや、俺まだアタランテさん召喚してないな……」

「こっちは『リミテッド・ゼロオーバー』ね。まったく、並行世界のお兄ちゃんとはいえ、ここまで来ると笑うしかできないわね」

 

 次々に召喚される礼装やサーヴァントだが、一向に高レアサーヴァントが登場する気配がない。さっきも言った高レア礼装の他には、アサシンの荊軻さんや、アーチャーのロビンとかが召喚されたが、英霊の座でも今は休暇中ということを知ってたのか、キャンプ場に向かって全力疾走してた。ロビンはともかかく、どんだけ酒飲みたいんだよ荊軻さん。

 お月見やクリスマスでみた酒乱っぷりを思い出して笑っていると、司会の端が眩しくなっていることに気づいた。光源を見ると、召喚サークルが金色に輝いていた。

 

「え、ちょっと嘘だろ!? ここでゴールデン演出だとぉ!?」

「召喚されたクラスは……アーチャーね。なんだか、今年に入って急にアーチャークラスのサーヴァントが増えてない?」

 

 目の前に突如として現れた金色の弓兵のカード。その事実に驚きながら、俺たちは固唾を飲んで召喚されるサーヴァントの現界を待つ。眩しい光の中から、遂に新たな英霊の姿が露わになる。

 

 光の粒子は二つに分かれ、二人分の姿を形作る。一人の姿は身長がとても高く、もう一人は先の人の腰程度の低い身長だ。金色の長い髪にマスケット銃を構えた金髪の美女に、その彼女の近くに立つカトラスを携えた少女。どちらも露出の多い服装だが、それぞれが着るその服は、彼女たちの魅力を更に引き立たせていた。

 

 

 

 

「はいマスター。この水着、いかかです?」

「………視線がやらしいよマスター。…………ふん」

 

 

 

 

 本来、ライダーのクラスで召喚されるはずの海賊コンビ。世にも珍しい二人で一人のサーヴァント。今回の無人島生活にてアーチャーのクラスで現界した女海賊、『アン・ボニー』と『メアリー・リード』が出現していた。

 

「おぉ! 遂に水着サーヴァントが召喚されたか!」

「あらやだ、私たちの参戦に喜んでくれてるみたいですよメアリー?」

「いや、僕たち元はライダーだし。その頃の記憶とかもちゃんとあるから。マスターに頼られてるのも知ってるからね?」

 

 喜ぶアンにメアリーがすぐさまツッコミを入れる。ライダーだった時もタイミングピッタリで敵を蹴散らしていたが、こっちはこっちでとても仲が良さそうだ。ライダーの時はメアリーが先陣を切っていたが、アーチャーの時はアンがメインで戦うようになっている。つまり、アーチャーとライダーのそれぞれのアンたちを編成すれば、二人で同時に戦場へと出せるのだ。

 

「ところでさ、オリジナルと水着と別々で現界してるんだが、それって特に不都合があったりするのか?」

「いえ、別に戦える範囲が限定されたりはしませんわ。ただ、アーチャーの時はアーチャーで。ライダーの時はライダーの私たちが現界しているので、人数が少し増えてしまう程度ですわね」

「サーヴァントのオルタ化みたいなもの、かな。説明しづらいけど、そんな感じに思ってくれたら良いと思うよ」

 

 まだ召喚途中ではあるが、とても気になったことだったので質問してみた。戦闘中ではメインとなるサーヴァントのみを残し、残りのサーヴァントは別空間で待機する感じになるらしい。つまりアーチャーのアンたちだとメアリーが、ライダーだとアンが待機する形になるようだ。別空間に待機させ、宝具を使うときに召喚するということは、ギルの宝物庫と似た感じなのだろうか。

 

「さて、質問も終わりましたし、私たちもここから降りますわね。まだ召喚の途中ですし」

「といっても、アンたちが8回目の召喚だしな。後2回でそこまでいいのが出るとは思えないが」

「こーいうのは駄目元で頑張ってみるもんだよマスター。大丈夫、良いのが来なかったら僕たちが慰めてあげるからね」

 

 えっへん、と胸を張ってドヤ顔を披露するメアリー。今の感想を正直に書くと、とても可愛らしかったので、今すぐにでも集めた種火を注ぎたいが我慢する。俺と同じ喜びを感じたのか、アンさんがメアリーを思いっきり愛でているのを見届けながら、残り2回の召喚に向き合う。

 

「9枚目は『ルーム・ガーター』か。もう限凸してるから、あとで『天の晩餐』のレベル上げに貢献してもらうか」

「もうすぐレベル70だしねあれ。確か、この間のアガルタでも大活躍したんでしょ?」

「おうよ。いやぁ、ヘシアンとロボの『復讐者A』と限凸した『天の晩餐』を組み合わせたら、被ダメでNPを稼ぐ稼ぐ。今思えば、あれが初めての単騎だったな」

 

 アヴェンジャーであるが故にルーラーにから受けるダメージが半減され、更には被ダメでNPを稼ぐ彼らは、アガルタにおける最終決戦では大活躍だった。瞬間的に防御性能を上げる『堕天の魔B+』と、敵のバフを消しつつ攻撃力・即死耐性を下げる『死を纏う者A』。この二つを持ってすれば、ルーラの攻撃なぞあまり意味を持たない。ある意味、あの戦いおける最後の切り札的存在だった。

 つい数週間前の酷い事件だったが、今となってはいい思い出だ。目を閉じて少し感傷に浸っていると、目の前が眩しく煌く。何事かと目を開くと、さっきと同じように、金色の光を伴いながら三本の光輪が現れた。

 

「おいおい、久しぶりに10連召喚の運がやって来たんじゃねぇか? 基本、単発じゃないと良いのが出ない病の俺なのに、急な高レアラッシュだなぁおい」

「た、確かにそうね。さて、今度はどんなサーヴァントが召喚され…………ええ!?」

 

 金色に光ったということは、それは星4以上のサーヴァントの召喚に成功したということだ。自然とピックアップされているサーヴァントがやって来てくれるのではないかと思うが、ここで少し冷静になって出現したカードを確認する。確認したその直後、俺達の目は見開かれた。なぜなら、光の柱の中央に出現したのが、黄金に輝く槍兵のカードだったからだ。

 

「う、嘘でしょう!? こ、ここで高レアランサーを引くの!? これは、ひょっとしてひょっとするのかしら!?」

「れ、れれれれれれれ冷静になるんだクロエ。こここここここれはあれだ。そう、カルナさんだ!! 真の英雄は眼で殺すことで有名なランチャーのサーヴァントだよ!!」

「あんたが一番落ち着けなさいよっ!!」

 

 この場にいる誰もが新たなサーヴァントの召喚に期待される。ピックアップされている彼女のレアリティは、当然のことながら最高値の5。通常ならば呼ぶことさえできない人だが、今だけは目の前の高レアランサーを睨み続ける。固唾を飲んで見守り、遂に新たなサーヴァントの召喚が始まる。

 

 金色のカードから光が溢れ出し、まず目に映ったのはスラリと伸びた白い手足。次に映ったのは腰に取り付けた浮き輪と、その中から伸びた美しい狐の尻尾。手に持った色彩豊かなパラソルに、桃色の髪に尻尾と似た色の耳。そう、彼女の名はーーーー

 

 

 

「パンパカパーン! 浜辺と聞いて即参上! 誰が呼んだかハネムーン。サーヴァント・ランサー、玉藻の前。攻め気満々で参りました♡ 一夏の冒険、しちゃいます……?」

 

 

 

「――――――――――――――――――――」

 

 実際に目の前で召喚された彼女を見たとき、俺の頭はそれを処理することができなかった。目の前にいる女性の姿はちゃんと理解できている。けれど、それが本当のことなのかどうかが分からない。文字通り、驚きのあまり開いた口が塞がらない。

 それでも、とりあえず現状を理解しようと頭を抱える。想像以上の出来事に頭の処理が追い付かず、オーバーヒートしそうにはなったが、その場で何度も深呼吸を繰り返す。呼吸のテンポが戻ってきたことを確認した後、覆っていた手を放して顔を上げる。直後、金色の瞳と目が合った。

 

「うぉぉっ!?」

「あらやだ、どうかしましたマスター? もしかしてぇ、タマモの水着姿にぃ、悩殺されちゃいましたぁ?」

 

 あまりにも妖艶な雰囲気に飲まれそうになる。これはだめだ。70騎近いサーヴァント達のマスターとして簡単に飲まれるわけにはいかない。問題ないと伝えようとした時、右腕にとても柔らかい感触が迸る。

 

「いやですわぇね玉藻さん。貴方より先に私達が召喚されてるのですから、悩殺したのはこちらだと思いませんか? ねぇマスター?」

「そうだよ~。淫乱ピンク狐は海の家でバイトでもしたらどう?」

 

 感触は右腕に留まることなく、左腕にまで柔らかい感触があった。両腕を見たらアンとメアリーがくっ付いていた。それも、俺の腕を掴んで胸の谷間に挟み込んで自分のものアピール的なことをしていた。正直な話、男としては非常に嬉しい感触だが、このままじゃ絶対に行けないということだけは分かる。

 

「ちょ、アンにメアリー!! お前ら何やって――――――――」

「あれぇ? もしかして私のこと忘れてないかしら研砥?」

 

 海賊コンビアーチャーを窘めようとした直後、今度は腕だけじゃなく首にまで柔らかい感触が奔る。声の感じからして、クロエが首に抱き着いてきたのだということが分かった。この時、女の子って本当にあれがないんだなって分かったんだが、直後、とてつもない殺気が俺を襲った。恐る恐る玉藻の方を見ると、満面の笑みを浮かべてパラソルを構えていた。

 

「あはははー。やだなぁアンさん。それにクロエさんまでそんなことするなんて、恥ずかしくないんですかぁ?」

「ええ。別に問題ありませんよ? だって私、今回はガンガン攻めて行くって決めましたので♡」

「う~ん、私として大事なマスターだしぃ、それに貴方みたいなおばさんに研砥を渡したくないしね~」

「………はい分かりました☆ とりあえず、ぶ・ち・こ・ろ・し確定ですわね♡ マスター?」

「何故そこで俺!? ちょ、モリアーティーなんとかしろぉ!」

 

 まさかまさかの、空前絶後の水着サーヴァントによる戦争が勃発しかけている。何とかしてもらうためにモリアーティーに視線を配る。武家屋敷の縁側にいるモリアーティーは、残ったビールを一気に飲み干した後――――――無駄に上手いウィンクを決めながら親指を突き出した。

 

「グッドラックだよ黒鋼君! まぁ、私はこれにドロン」

「令呪を持って命ずる、モリアーティーを殺せっ!! ランサー・玉藻ォッ!!」

「了解ですわマスター。さぁ、懺悔しやがれ完全犯罪者っ!!!」

「え、ちょMA☆TTE!! 暴力反対、アァ―――――――!!!」

 

 この日、亜種特異点で遭遇した新宿のアーチャー。犯罪界のナポレオン(笑)、ジェームズ・モリアーティーの悲痛な断末魔が武家屋敷を包み込んだという。それから数日、彼の姿を見た人はいなかったらしい…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――同日、海の家にて――――

 

「というわけで、Happy(ハッピー) Birthday(バースデー) Chloe(クロエ・) Von(フォン・) Einzbern(アインツベルン)!!」

「…………ほぇ?」

 

 無駄に滑らかな英語発言の後、数十を超える大量のクラッカーが部屋の中に炸裂する。火薬の匂いがあたりに充満するが、奥の厨房から運ばれてくる大量の料理がそれをかき消す。しかし、祝われた彼女は、何が起きているのか分からないと言いたげに首を傾げていた。それが気になったのか、ここにいるサーヴァントたちと契約しているマスター。黒鋼研砥が近くに寄り添った。

 

「む、どうしたクロエ? もしかして、こういうのはあんまり好きじゃなかったりしたか?」

「いや、別に問題ないんだけど……。きゅ、急に祝われて驚いたっていうか。っていうか私、今日が誕生日だなんて誰にも教えてないんだけど!?」

 

 驚きのあまり声を荒げるクロエ。確かに、誰にも教えていない誕生日を勝手に知られて、その上で祝われたら誰だって驚くだろう。そのことに気づいた黒鋼は確かに、と頷いてそれを肯定する。

 

「いやね、この前、狭間のとこにいるイリヤスフィールがな、自分とクロエの誕生日は7月20日だって言われてさ。私はクロエとは違う場所にいるから一緒に祝えないけど、せめて俺たちで誕生日を祝ってやってくれって頼まれてな」

「何それ、何お姉ちゃんぶってるのかしらイリヤったら。あの子より優秀な私の方が姉だって、何度も言ってるのに」

「とか何とか言ってる割には、嬉しそうなだけどな」

「う、うるさい! こっち見ないでよこのロリコン!!」

「ちょっと待て、いきなりその罵倒は酷くないか」

 

 図星を突かれたのが恥ずかしかったのか、ペシペシと黒鋼の胸を叩くクロエ。言動こそ恥かしさ故の行動に見えるが、顔が嬉しそうににやけている。他のサーヴァント達に見えないように努力しているのは認めるが、恐らく無駄な努力だろう。

 そうこうしているうちに、クロエの誕生日パーティー会場である海の家には、次から次へと料理が運ばれていった。アーチャー・エミヤ二人が大量に釣り上げた魚をふんだんに使った海の幸の料理。男サーヴァント達が、『陣地作成A』を持つギルガメッシュの指示によって作られた、最高の作物となった山の幸。お前らもう食糧不足とかないだろうと言えるレベルの大量の料理が次から次へと運ばれて行き、多くの人たちの胃袋へと消えていく。この場にいる誰もが笑顔で食を満喫していた。

 

「美味しいわねこの料理! あ~、やっぱりここにいて最高だわ! こんなに美味しいご飯を毎日食べれるなんて最高!!」

「そうかい、そりゃ良かった」

 

 かくいうクロエも、運ばれてくる料理を美味しそうに頬張っている。もちろん、それは黒鋼も例外ではない。そんな中、彼は隣に座る彼女に話題を切り出した。

 

「なぁクロエ。元の世界に帰るつもりはないか?」

「………………え?」

 

 一言。けれど、その一言は騒がしい海の家の中でもクロエの耳に届いた。食べる手を止めてこちらを見上げるクロエを端に捉えながら、黒鋼は続ける。

 

「お前がここにきてもうすぐ1年だ。人理焼却を防いだのはもう半年も前。あの時、並行世界のお前たちを軸として起こったあの事件での借りも十分返してもらった。お前が元の世界に帰りたいって言うんだったら、今すぐにでもBBやバベッジさんたちにお願いして、お前の世界の座標を割り出してもらうが、どうする?」

 

 正直な話、俺はあまりジャックやクロエといった子供たちに戦って欲しくはない。クロエの参戦した時期的に、特異点攻略に参加してもらったのは第7特異点だけだ。それでも、あの戦いは壮絶な戦いだったはずだ。確かに、クロエはゴルゴーンやキングゥだけでなく、ラフムやケイオスタイド。原初の母(ティアマト)といった存在が蔓延っていたあの戦場を戦い抜いた。けれど、彼女はまだ精神年齢は二桁に達したばかりの子供なのだ。

 これもイリヤスフィールから聞いた話だが、クロエはサーヴァントの力を秘めた特殊なカードと、彼女の大量の魔力を糧として生まれたサーヴァントもどきらしい。つまり、見た目はイリヤスフィールと同じでも、精神年齢が少し高かったりするかもしれないが、実年齢は一桁なのだ。そんな彼女に、あまり戦って欲しくないと思うのは俺のエゴかもしれない。もしかしたら、帰った先でもイリヤスフィールたちに何らかの戦いを求められるかもしれない。だが、それはきっと、ここでの戦いより酷いものじゃないだろうと思った。最悪、餞別に聖杯の一つや二つを注いだって構わない。その旨をゆっくりと、けれどしっかりと俺の気持ちをクロエ伝える。それを聞いたクロエは目を閉じて逡巡した後、長い溜め息と共に呟いた。

 

 

 

 

 

―――馬鹿じゃないの?

 

 

 

 

 

「は?」

「いやいやいや。まさか、私のマスターがここまで馬鹿だったとは思わなかったわ。いや、これもう馬鹿ってレベルじゃないわね。私のお兄ちゃんと同じレベルの朴念仁だわ」

「……何でだ、お前を思ってのことを言ったつもりなのにすげぇ呆れられてるんだが。すげぇ解せないんだが」

 

 黒鋼はなぜ自分が呆れられたのかさっぱり分からないのか、頭に手を当てて考え込む。そんな姿が可笑しかったのか、クロエはくすくすと笑った。

 

「そりゃそうよ。だって、私がこっちに来たのは確かに借りを返すのもあったけど、他にも理由があったのよ? 研砥お兄ちゃん(・・・・・・・)?」

 

 思いっきり深いため息を漏らした後、クロエは黒鋼に向けて笑った。妖艶に、けれど輝かしい笑顔で。

 

「私は、私の意志でここに来たのよ。どこか無茶してそうな、馬鹿なお兄ちゃんの力になるためにね?」

 

 どこか暖かい眼差しと笑みを向けられた黒鋼は、一瞬目を丸くしていた。だが、数舜の後には、毎度のごとく苦い笑みを浮かべていた。

 

「そうかい。それじゃ、これからも頼りにしてるぞ? クロエ」

「はいな、私の御主人様(マイマスター)? あ、これから私のことクロって呼んでよね? っていうか、1年くらい一緒に暮らしてるんだし、いつまでもクロエ呼びは酷いと思うんだけど?」

「はいはい、誤解を招くようなことを言うのはやめような? クロ」

「分かればよろしい。それじゃ、今夜は寝かせないわよ!!」

「いやだから、誤解を招くような発言はやめろぉ!!」

 

 結局、この日はパーティーが終わった後も部屋に押しかけられ、その騒がしさに釣られてジャックやナーサリーたちもやって来るという忙しい日となった。朝まで騒がしい1日だったが、こういう日も悪くはないと思う自分がいた。

 

 

 

 

 

 




というわけで、今回の水着ガチャは大成功に終わりました!! 実はこの10連の後、単発で2人目の水着玉藻さんを召喚することに成功しちゃって、男性アーチャーに対する殺意が一気に跳ね上がったんですよ。いやぁ、ウリボーシティーでテスラの股間爆発事件が何度も起こって笑っちゃいました。というか、宝具レベル2の☆5サーヴァントって、去年ひたすら課金しても来てくれなかった玉藻さんだけなんですけど、これは一体………。

あと、今回のオマケは凄く遅くなりましたが、うちの主力アーチャーの一人、クロエの誕生日的な何かです。召喚時に言ってた借りはもう返してもらってるから、元の世界に帰っても問題ない。けど、人理を取り戻しても帰らなかったのは、ひとえにここでの生活を楽しんでいるというのもあると思うんですが、無茶な主人公の支えになってあげたいっていう、優しい心の持ち主だと思うからなんですよ。まぁ、隙あらば魔力供給(キス)を狙う褐色ロリっ娘なんですが(苦笑)。

次回は今年の福袋と、遂に実装されたシャーロック・ホームズ(ルーラー)&各特異点ピックアップガチャですね。いやね、確かに小説書いて投稿してる私ですけど、まさか本当に書けば出るなんて思わなかった………!!
詳細は、次回の投稿を待っていただけたらと思います!! 今、絶賛夏休みを満喫してますので、近日中に投稿する予定です!!

ここまでの読了、ありがとうございました!
次回もお楽しみに!!

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