ブーディカさんとガチャを引くだけの話   作:青眼

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祝、デオン・ドレイク・ヘラクレスモーション変更!!
いやぁ、3人ともかっこよくなりましたよね!これであとは、デオンに宝具強化。ないしスキル強化クエストが実装されれば問題ナッシング!!期待してるぞ運営!!

二周年記念ということでシャーロック・ホームズがルーラーで登場し、石を110個もボーナスでくれる運営はいい運営。福袋も新規の人が来てくれましたし、これからのfgoも楽しみですね!!


さて、それでは本編を始めましょうか。今回は、アガルタの女ピックアップガチャ編です。亜種特異点組の真名バレしますので、ご了承のほどよろしくお願いします!


アガルタは胃痛ストーリーだった(真顔)

「そぉらそらァ! どうしたよ世界を救った英雄さんよォッ! さすがのテメェらもこいつには手も足も出ねぇってかァ!!」

「っ、自分の力もでないくせによく吠えやがるッ!」

 

 新たに発見された亜種特異点。新宿で確認され、その存在を散りばめてまで逃げ去った残り三柱の魔神。それらが作り出した亜種特異点を消滅させるべく、俺たちはこの地下世界。『伝承地底世界 アガルタ』にやってきた。

 ここまでの展開は省略させてもらうが、結構大変な戦いだった。ドレイク船長の皮を被った偽物。不夜城を拠点とし、誰もが正直であることを望んだ女帝。何故か巨大化して暴走するヘラクレス。そして、ギリシャの男英霊を憎むアマゾネスの女王。

 どれも。どれも壮絶な戦いだった。だが、それでも俺たちは諦める事なく、最後まで戦い続けた。ムカつくことに、目の前にいるクソ野郎と俺の思考回路は似ているのかもしれない。

 

ーーー生きていれば。諦めなければ。必ず報われる時が来る。自分の目指した場所に辿り着くことができる。そんな当たり前の、誰もが知っていることを。その思想と全く同じものを持っている俺は、もしかしたら、目の前の男と同じになるのではないかと。

 

 不覚にもそんなことを思ってしまった。俺がここまで来れたのも。俺がこうやって生きているのも。結局は『死にたくない』と願ったからに他ならない。けれど、そんな思想の果てにあんな男のようになるのだとしたら。俺は、いっそここで果てるべきなのではないかと。そんなことを考えてしまった。そして、それがきっかけとなり、俺に死の鉄槌が下される。

 

 

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ーーーーー!!!」

「ッ、マスター! 危険です! 逃げてください!!」

「子ウマ! 早く避けーーー」

 

 巨大化したヘラクレス。否、『巨英霊ヘラクレス(ヘラクレス・メガロス)』が咆哮と共にこちらに迫る。前線で戦っていたジャンヌとエリザベートを吹き飛ばしながら、酷く歪んだ体と武器をこちらに向かって振り下ろす。

 全身から赤黒い雷光が迸り、いつもの倍はあろうと思える巨体。それに加えて理不尽すぎるスピードに彼のみが持つ最強宝具ーーー今回は機能していないーーー『十二の試練(ゴッド・ハンド)』。そんな絶望的すぎる状況下の中、俺は思考が止まってしまった。自分の命が砕け散る一撃が迫っていると理解していても、体が動こうとしなかった。このまま、怪物と化した彼の一撃をその身に浴び、星の聖剣を納めた鞘も持っていない俺の命は、物語は終わりを迎えるーーーー

 

 

 

「研砥は、マスターは殺させないッ!!」

「うむ! やらせぬぞ大英雄ッ!!」

 

 

 

 ーーーはずだった。岩を、今となっては海をも割かねない『巨英霊ヘラクレス』の一撃が止まる。下に向けかけた視線を戻す。すると、そこにはーーー

 

「くっ、つーー!! 流石はヘラクレス! 二人掛かりで受け止めるのが精一杯かな!」

「弱音を吐くなブーディカ! 我らは、マスターを護るのであろうッ!」

「あんたに指図されたくないねッ!!」

 

 ーーーそこには、複数の車輪、それから赤と銀の二つの刃を持ってヘラクレスの一撃を防いでいる二人いる。人理焼却を防ぐ旅に出た当初から俺を支え、共に戦ってくれた大切な仲間にして戦友。ライダーのブーディカさんと、セイバーのネロ。生前、敵同士だった彼女たちが俺を護る為にその力を行使している。

 

「「はぁぁぁぁぁーーーーーー!!」」

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️ーーーーー!?」

 

 一瞬だが、ヘラクレスの意表を突いた彼女たちの一撃が、5メートルはゆうにあるヘラクレスを弾き飛ばす。しかし、流石はギリシャ神話の誇る大英雄というべきか。すぐに体制を戻して襲いかかって来るその速さ、威力。まさに嵐の如し。けれど、ここにいるのは彼女たちだけではない。

 

「我が旗よ、我が同胞を守り給えーーーー『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』!!」

「出雲に神あり。是自在にして禊の証。神宝宇迦之鏡也。『水天日光天照八野鎮石』ーーーー!!」

 

 紺色に包まれた服を纏う、長い金色の髪の女性。ジャンヌ・ダルクが旗を掲げる。彼女を中心として光の結界が広がり、ヘラクレスの凶刃とレジスタンスのライダー。真名、クリストファー・コロンブスの凶弾を全て防ぐ。

 直後、桃色の髪を二つに結った青い巫女服を着た女性。玉藻の前が札と鏡を使い、淡い光の鳥居を出現させ、足元に鏡を叩きつけて結界を作る。ジャンヌと玉藻が作り上げた二重の結界が俺たちを包み込み、傷ついた体が、消耗した魔力が回復する。

 

「ふぅ、何とか間に合いましたね」

「全くです! 間に合わなかったらどうなることかと思いましたよ! といいますか、ちょっと研砥さん。少しよろしいでしょうーーー」

 

 玉藻の言葉を遮るようにパシン、と甲高い音が響く。同時に頬がジンジンと痛くて熱くなる。そこまでされてようやく、俺は自分が叩かれたのだということに気づいた。そして叩いたのが、目の前にいるブーディカさんだということにも。

 

「え………ブーディカさ」

「ネロ公。思いっきりやっていいよ」

「うむ! ではそのように。………歯を食い縛るがよいッ!!」

 

 ブーディカさんが場所を譲り、ネロ小さい拳が俺の頬を思いっきり殴り飛ばす。体こそ小さいが相手はサーヴァント。ましてや全力で殴られて防御もできなかった俺は無様に吹っ飛ばされて、ジャンヌの作った結界の端までノーバウンドで叩きつけられた。

 

「がっ……。ちょ、一体何を」

「少しは目が覚めたか? 全く、あの様な男の言葉に乗せられよって。それでも余達のマスターか!!」

 

 目の前で思いっきり憤慨するネロ。今まで見た中でも一、二を競うレベルの怒り心頭っぷりに目を丸くするも、救いの手を差し伸べてくれるであろう他の仲間に視線を送る。だが、誰としてこちらを見る目は仕方がないと呆れている目か、ネロと同じくらい怒っている目だった。

 

「おいおい、俺と同じで奴隷を使ってたローマ皇帝様が何やってんだ? そいつと俺は同類だ。生きたいと願って最後まで足掻くろくでもねぇ」

「少し、黙りなよ」

 

 コロンブスの言葉をブーディカさんが遮る。いつもの優しい彼女の声ではなく、表情を怒りに染め、今まで感じたことのない密度の殺意を解き放っていた。

 

「確かに私たちのマスターは、研砥は生き汚い所があるよ。でも、それはあんたみたいな下衆な事を思ってのことじゃない。何の力も持たないからこそ、非力だからこそ怯え、死にたくないと必死なだけだ」

「はっ、んな綺麗事じゃ済まされてねぇんだよ。なら、何でカルデアのマスターやサーヴァントを連れずにここにいやがる? そりゃあお前、外で1000を超えるアマゾネスなんぞより、女王様と戦った方が楽に決まってるからじゃねぇか!」

 

 コロンブスの言い分にそれは違うと反論したかった。確かに、ここに狭間はいない。だが、それはあいつが勝手に引き受けたからだ。普段は俺がするべき裏方の仕事を、今回はあいつが請け負った。そして、それを良しとしたのは俺だ。

ーーーだが、確かにコロンブスの言う通りなのかもしれない。千を超える雑魚を相手にするより、強大な一の敵を倒す方が楽だと、心のどこかで思っていたのかもしれない。

 

 

「それによぉ、俺は知ってるんだぜぇ? テメェとそこの皇帝サマは蹂躙した、された側じゃねぇか! 絶対に相容れない二人が仲良く手を取り合ってるなんざ、俺には信じられねぇなぁ!!」

 

 気持ちの悪い顔で高笑いして、攻撃をしかけてくるコロンブス。拳銃に込められた銃弾をブーディカさんに放つ。飛び出した弾丸は三発。銃口を見るに全弾急所。回避は間に合わない、ジャンヌの結界も消滅した。弾丸が彼女の肉体を抉るーーー

 

「ーーーさっきから聞いていれば……五月蝿いんだよこの下衆がァ!!」

「なっーーーー!?」

 

 ーーー肉体を抉るはずだった弾丸は、彼女が激昂しながら振るわれた剣に叩き落とされる。さらに振るわれた先から斬撃が飛び出し、それは勢いを落とすことなくコロンブスに向かう。たが、コロンブスの言いなりになっているヘラクレスがその身を盾として主人を守る。誰もが見ても今が攻め入る好機。だが、誰もが口も足も動かせないでいた。そして、その視線はブーディカさんに向けられている。

 

「さっきから聞いてれば研砥もバカ皇帝を侮辱して! いい加減にしなよ、海賊風情がッ!」

 

 優しさに満ちていた緑色の瞳は大きく開かれ、彼女の美しく長い赤髪が炎の様に揺らめく。間違いなく幻だと思うが、心なしか彼女の姿も揺らめいている様な気がする。

 

「あぁ確かにそうさ! 私とネロ公は敵同士だ! けどね、それでも互いにとって大切な人がここにいる! 共に戦った一年もの時間があるッ! 何より、この馬鹿皇帝より気にくわない奴がいるッ! 共闘の理由なんて、それだけで十分だッ!!!」

 

 愛剣と白いマントを翻し、弾丸の如くブーディカさんが飛び出す。当然、主人であるコロンブスを守るべくヘラクレスが立ちはだかる。巨大な斧が彼女を両断するべく振るわれる。だが、そこで信じられないことが起こる。

 

「邪魔だ、大英雄ッ!!」

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ーーーー!?!?」

 

 振るわれた斧に対し、突如現れた大量の車輪がその攻撃の身代わりとなる。直後、超高速でブーディカさんが剣を振るう。ヘラクレスの体に八つもの切り傷を加え、オマケにその体を足の裏で思いっきり蹴飛ばした(・・・・・)

 信じられないことに、あの『巨英霊ヘラクレス』の体がボールの様に吹き飛ばされ、壁に激突して地面に倒れ込んだ。そのことから、今の一撃で再起不能になるレベルのダメージを受けたことがうかがい知れる。だが、それを信じることができなかった。何故なら、相手はあのヘラクレスなのだ。今までの攻防でダメージが蓄積していたとはいえ、ブーディカさんがあのヘラクレスを一撃で沈めたことに理解が追いつかない。

 

「なっ、何だとォッ!? 馬鹿な!? あのメガロスだぞッ!? あの怪物をこんな負け犬女如きに」

「黙れと言ったのが、聞こえなかったのかッ!!」

「ぐぅぉっ!?」

 

 驚愕の余り隙を見せたコロンブスの顔面に、ブーディカさんの容赦のない鉄拳が突き刺さる。彼もまた壁にぶち当たるまでノーバウンドで吹き飛ばされ、壁に体の跡をくっきりと残した。

 

「お前は今、私にしてはならない事を三つ犯した。一つ! 私の目の前で研砥を、大切なマスターを侮辱したァッ!!!」

「がはッ!?」

 

 床が割れるほどの力を込めて飛び出し、コロンブスの体を更に殴り飛ばすブーディカさん。更にその胸ぐらを掴んで叫ぶ。

 

「二つ! そこの馬鹿皇帝を侮辱したッ! そいつを侮辱していいのはッ! 怒っていいのはッ! 私だけだァッ!!」

 

 いつの間にか剣を鞘に仕舞い、両腕を使ってコロンブスをサンドバックの様に殴り、殴り、ひたすら殴り続ける。さながら殴殺刑とでも言うべき連撃がコロンブスに叩き込まれる。だご、それでもまだ怒りが収まらないのか、再び自分より大きい男の体を軽々と持ち上げる。

 

「そして三つ!! 私の祖国を! ブリタニアが蹂躙されたことを嗤ったァッ!」

「が…………がはぁ…………」

 

 持ち上げた体を放り投げ、愛剣を居合い斬りの様に抜刀し、コロンブスの胴体を切り刻む。あまりの威力に体が再び吹き飛ばされ、壁に叩きつけれる。そこまでしてもまだ怒り狂っているのか、怒りに満ちた双眸と剣先をコロンブスに突きつけながら叫んだ。

 

「立ちなさいよド三流!! 私たちと貴様との、格の違いってやつを見せてあげるッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『立ちなさいよド三流!! 私たちと貴様との、格の違いってやつを見せてあげるッ!!!」』

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!! お願いだからその記録消してぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 アガルタでの出来事を記録した映像ファイルを再生され、ブーディカさんが悲痛な叫びを上げる。それを見てニヤニヤと意地悪く笑うネロと、キャーキャーと叫ぶジャックやナーサリー。絶望しきった顔でその場で倒れこむ彼女の肩を叩くアルトリア・リリィ。色々とカオスな状況が俺のマイルームに現れていた。

 

「いやぁ、まさかブーディカがあそこまで怒りに囚われるとはな。いつぞやのマンションの時みたく、バーサーカも待った無しの凄い顔であったぞ!」

「ああ! でも、最終的には俺たちを思って戦ってくれたんだよな〜。ほら、この戦いのラストとかタイミングバッチリでーー」

「いいからッ! もう再生しなくてもいいでしょッ!? 早く! 消して! お願いッ!!」

「「だ・が・こ・と・わ・るッ!!」」

「うわぁぁぁぁぁ!! 研砥とネロ公のイジワルーーーー!!!」

 

 ここでも、普段の彼女では決して見られないレベルの珍しいことを言い出すブーディカさん。いつもは俺たちを彼女の持つ圧倒的な母性で包み込むのだが、今回は逆にあやされてしまっている。こういった彼女も悪くない、と勝手に頷いてしまっている自分がいた。

 

「それにしても、今回は色々と酷かったな。アガルタでの出来事もそうだったが、何より研砥に対して無礼を働いた女どもに対し、怒り狂った頼光とBBが恐ろしかった………」

「頼光さんはまだ分かるけど、BBなんてあれだぞ。『センパイをペット扱いしていいのは私だけなんです!!』っていう、変な理由だからなぁ。………恐ろしかった。『C.C.C(カースド・キューピット・クレンザー)』からのアーツクリティカル二連打。瞬間的にNPが溜まって即宝具。ってループコンボしてたからな……」

「キャス狐の宝具とも相性が良いしな。いやはや、まこと恐ろしき連携攻撃だった……」

 

 互いに恐ろしかったを連呼するくらいに恐ろしかった。こう、あれだ。ダユーとか武則天とかもう瞬殺でかつ無傷の勝利だったからな。やっぱり、配布サーヴァントで『自己改造EX』持ちはチートなのだと改めて理解した戦いだった。ヘラクレス? 『真名裁決』と『黄金の盃』で無力化しましたあげく、ブーディカさんが引導を渡しましたが?

 

「それでも、最後のあれは頭がおかしいって。まさかロボ単騎もどきをすることになるとは思わなかった」

「メドューサにも感謝を言わねばな。あやつの『魔眼A+』(スキルレベル10)がなければきつかった戦いは多かった………」

 

 とんでもないネタバレになるが、アガルタの特異点を作った魔神柱はとんでも強さを誇っていた。本当に死に損ないの魔神柱かと疑うほどにだ。『明治維新』や『SE.RA.PE』の時とは比べ物にならないレベル。というか、今回に限って性能がおかしかった。なんだよルーラーって。ロボがいなかったらマジで詰んでたぞゴラ。

 

「何はともあれ、今回も無事に亜種特異点の攻略も済んだな。それで、ガチャは回すのか?」

「一応、十連を一回だけな。ストーリー終わったら一回は回すって決めてるからな」

 

 マイルームにあるテレビから今回の記録が入ったディスクを取り出し、保管庫から聖晶石を30と少しだけ取り出してから、いつものように黒い外套を羽織る。ガチャを回しに行くことを伝えると、一部のサーヴァントはダウンしているブーディカさんを慰めるために残ると言われ、俺はそれに苦笑しながら部屋を出て行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけでガチャを回しに来たわけですが。何で先回りしてんだギル」

「別に良かろう。貴様がガチャを回す未来が見えたから末路を見届けにきただけだ」

「それって祝福しに来たの? それとも笑いに来たの?」

「さてな、回せば自ずと分かるだろうさ」

 

 マイルームから召喚場に直行すると、そこには既に先客がいた。燃えるような赤い瞳に、絹のように美しい金色の髪。ウルクの王にして人を導く全てを視た王。賢王ギルガメッシュだ。ちなみに、おまけで茨木童子までいた。この組み合わせは少し珍しい。

 

「ギルはまだ分かるけど、何で茨木までいるんだ? 普段は酒呑にくっついてるじゃないか」

「かかか。酒呑とていつも暇ではないのでな。今日は別行動を取っているだけよ」

「と言っておるが、本当は酒呑童子と頼光の戦いから逃げて来ただけだ。その途中で偶々拾ったに過ぎん。捨て置け」

「なっ、貴様それでも元吾のマスターかっ!? あまりにも酷くはないかははう、賢王!」

「…おい、これで何度目だ小鬼。俺は貴様の母ではないし、言うのなら父であろう。それにだ、貴様が我が財を狙ったことも、ウルクを護る戦いに参加しなかったこと。我は許したつもりはないぞ………!!」

 

 高笑いをしながら言う茨木のセリフをギルが両断。堪らずその場で崩れ落ちる茨木だが、さらに追い討ちに殺意と粘土板を開くギル。茨木の背中から飛び出る炎の勢いが弱くなるところを見る限り、本当に気落ちしているようだ。

 全面的に茨木が悪いが、ここで暴れられても困る。仕方がないが、茨木に助け舟を出すとしよう。

 

「ギル。悪いけどそこまでだ。どうせ暴れるならレイシフトしてくれ。ここで暴れられるのは困る」

「……仕方がないな。此度は特別に見逃してやる。だが、次はないぞ」

 

 鼻を鳴らしながら粘土板を閉じるギル。やっぱり、アーチャーの時より人の話を聞くようになってくれている。俺がよく一緒に行動しているというのも理由になると思うのだが、最近は特に優しい。やっぱり、絆レベルが7後半にまで来るとちゃんとした信頼関係が築けるものだ。

 

 

「よし、それじゃガチャを回しますか。誰がきてくれるかな……?」

「ああ。それでは全身全霊の力を込めて回すが良い。その末路、この我が見届けてやろう」

「いや、今回はそこまで力込めるつもりもないんだけどな……」

 

 千里眼、魔術世界において最高峰の『眼』を持つギルの瞳は未来を見通す能力がある。そんな彼がわざわざ俺の未来を見通してまでここに来てくれたのだ。一体何が出たのだろうと気になるが、とりあえず三十個の石をサークルに放り投げる。

 

「えーと………、初めからから『千年黄金樹』と『死霊魔術』が出て来たんだが。これってもう高レア来ないんじゃね……? いや、シェヘラザードが来たらぶん殴るってでも座に返すけどさ……」

「…ふと思ったのだが、研砥が嫌うサーヴァントはキャスターが多くはないか?」

「仕方があるまい。我もあの女は好かん。対王宝具なんぞを持っている時点で王に対する不敬よ。加えて、彼奴がしてしまったことを鑑みれば、研砥があの女を嫌うのも無理はあるまい」

 

 何やら外野が騒がしいが、とりあえず無心でサークルを凝視する。あんまり来て欲しい人はいないが、今回のピックアップで強いて言うなら不夜城のアサシンか、エルドラドのバーサーカーが来て欲しいところだ。

 ところで、新宿のアーチャーことジェームズ・モリアーティーは期間限定サーヴァントなのに、なんでシェヘラザードは期間限定じゃないんだろうな。

 

「む、おいマスター。 何やら輪が金色に光っておるぞ」

「はっはっは! まっさか〜。そんなことあるわけないだろってマジで光ってる〜〜!? 嘘だろお前!? 何で今光るんだよ!? どうせ光るなら鬼ヶ島で光れよ!」

 

 久しぶりに行う十連ガチャ。ここ最近は単発しか高レアサーヴァントの召喚に成功していなかったが、まさか十連召喚で呼び出すことができるとは。これは少し嬉しいぞ。

 

「それも金色のセイバーだな。ふむ、またもや物欲センサーが働いたか。やはり研砥のガチャ運は振り幅が大きいな」

「嫌なこと言わないでくれます!? むむむ、ここで来るならやっぱりジークさんかな。ブーディカさんのマスター的にはそろそろアルトリアさんに来て欲しい………!?」

 

 誰もが固唾を飲んで召喚されるサーヴァントの登場を待つ。数秒後、遂に光を伴いながら現界が始まる。

 

 

 

「私はシュヴァリエ・デオン。フランス王家と君を護る。白百合の騎士!」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

「…………うむ。強く生きろ、マスター」

 

 青い帽子に騎士の服装に身を包んだ女顔のセイバー。今は髪が短いが後にロングヘアになるオプション付き。加えてブーディカさんとよく似た声。ここでは遂に6回目の登場となる、デオンくんちゃんだった。

 

「AAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」

「おわぁっ!? マスターがバーサーカーになったぞ!?」

「いかん! あまりにも新しいサーヴァントがきてくれないせいで研砥が暴走しておる! 早く何とかしなければ!!」

「何とかってどうすれば良いのだ!? とりあえず殴れば良いのか!?」

「それは一番ダメなやつだ!」

 

 いつ新しい人が来ても大丈夫なように貯め続けた黄金に輝く種火。その数は保管庫に入れても遂に溢れ出し400個にまで増加した。そう、新しい人が来てくれたらすぐにレベルをカンストにすることができるようにという、俺の準備だったのだ。

 それがどうだ。出てくるのは礼装と既存のサーヴァントのみ。いや、この間は新規の星5サーヴァントが二人も来てくれたがそれは置いておくとして。こうも物欲センサーが働くとバーサーカーになるのもやむを得ないだろう。というか、同じ星4サーヴァント6人目って人生で初なんだが。そこまでガーチャーというわけでもないのに何故こんなことに……。

 

「くっそ! こうなったら自棄だ! もっかい10連回してやるぅぅぅぅぅ!!」

「うわぁぁぁ! やめんか研砥! それは水着キャス狐のためにとっておくのであろう!?」

「今が! ガチャを! 回す! 時!!」

「もうやだ余のマスター!!」

 

 必死に抑え込んでくるネロたちを引き剥がそうとするも、さすがはサーヴァント。圧倒的な筋力値で俺の動きを制してくる。ちなみにギルはそんな俺のことを少し離れたところで笑っていた。いや、あれは『笑う』より『嗤う』というのが正しいか。おのれこの愉悦部めっ!! 後で麻婆豆腐でも食わせてやるっ!!

 

「不敬(怒)」

「どわぁぁ!? い、いきなり何するんだよ!?」

「戯け、貴様が我によからぬことを企んでいることなど『眼』を使わずとも分かるわ愚か者。その無礼、ここで正してやっても構わんぞ?」

 

 魔杖を『王の財宝』の中から取り出し、こちらに照準を合わせるギル。まさかここまで真面目にキレるとは思わなかったので、正直なところ申し訳ない気持ちが半分、どんだけ麻婆食べたくないんだよともう半分で呆れていた。

 ギルの目が据わっていることに気づいてくれたのか、側にいたネロが『原初の火』を取り出す。一触即発の状況の中、互いがどう動くのか。それを見極めていた時。俺は目の前で信じられないことが起こり始めた。

 ギルの攻撃を躱すのに必死だったせいで開いてしまった聖晶石の箱から、ちょうど三つの石が転がってーーーーサークルに吸い込まれていくのを。

 

「あ、ああああーーーー!? い、石が! 俺の石がぁ!?」

「なぬっ!? 石が勝手にサークルに入ってシステムが起動しただと!?」

 

 この展開はギルも視ていなかったのか、驚きのあまり目を丸くして蔵の門を閉じた。偶々とはいえ、一度起動してしまったシステムは止まることはない。何故か発生してしまった最後のガチャに誰もが視線を向ける。

 

ーーーそして、サークルの中に出現したカード。それは、金色に輝く狂戦士が描かれていた。眩い光と共に現界が始まる。短くて青白い髪。少々露出の多い服を着込み、刺々しい鉄球に繋がれた鎖を持つ女性。

 

 

 

 

「バーサーカー・ペンテシレイアだ。先に言っておくが、アキレウスがいるのなら出せ。隠し立てすると殺す」

 

 

 

 

 『エルドラドのバーサーカー』改め、アマゾネスの女王『ペンテシレイア』が、明確な殺意を持ってこちらを睨んでいた。召喚に応じてもらった以上、彼女は俺の仲間だ。だが、ギリシア神話系サーヴァントの反応を感覚で察知したのか、最初から不機嫌そうにしていた。一瞬、その殺気に気圧されたが、すぐに気を取り直して彼女に向き合う。

 

「あ〜……。残念だけどアキレウスはいない。ギリシア神話系のサーヴァントなら他の人たちがいるけど…」

「ほう? 一体誰がいる。味方とはいえアキレウスの同郷の者だ。まずは手合わせに向かうとしよう」

 

 心から楽しそうに笑うペンテシレイア。だが、彼女の笑みは楽しそうに笑ってはいるが目が笑っていない。間違いなく、出合い頭に殺し合いが始まるに違いない。

 

「ゴルゴーン三姉妹と、大英雄ヘラクレス」

「ヘラクレスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 メドゥーサさん達までは良かったが、ヘラクレスの名前を呼ぶと同時にこちらに襲いかかるペンテシレイア。一瞬で狂化状態に陥った彼女の拳が、容赦なく俺へと迫る。瞬間的な速力ではここにいるサーヴァント達でも上位に食い込む一撃。だが、俺はそれ以上に疾い人たちと共に過ごしてきた。加えて、狂化状態特有の精細に欠いた一撃など怖くもない。………訂正、流石にヘラクレスの攻撃は怖い。

 顔面に迫った一撃を、首を少し動かすだけで躱す。ただの人間がサーヴァントの一撃を躱したことに驚いたペンテシレイアが、動揺のあまり動きが一瞬止まる。その明確な隙を突いて彼の名を呼ぶ。

 

「ギル!」

「伏して悔いよ、『天の鎖(エルキドゥ)』!!

 

 ギルが叫びながら自身の蔵を開く。中から現れた複数の鎖がペンテシレイアを絡め取り、その動きを完全に封じる。ギルの唯一の親友の名が付けられた鎖、『天の鎖(エルキドゥ)』はとてつもなく頑丈な鎖であり、神性が高い者には更に強く絡まり、その力を奪うという粛清宝具。以前戦ったことがあるペンテシレイアには、『神性』のスキルを持っていることは知っている。あの時はギルが居なかったから使えなかったが、今回は居てくれて助かった。

 

「ふぅぅぅぅ!! うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「………これはダメだな。完全に狂化が入っちまってる。ギル、悪いけどこのまま縛っていてくれ」

「仕方があるまい。後で贋作者(フェイカー)の茶菓子を用意しておけ。それを此度の労働の報奨として要求する」

「ありがたきお言葉。………それじゃ、また後で。行くぞ、ネロ、茨木」

「うむ。では、またな賢王」

「気をつけろよ。いつその鎖が千切れるともわから」

「我の友を甘く見るな小鬼。貴様も一緒に縛ってくれようか?」

 

 いらぬ心配だと言わんばかりに殺気をぶつけてくるギル。その気にやられたのか。茨木が物凄い勢いで逃げ出した。ギルの地雷を的確に踏み抜いていく茨木に感動しながら、俺は召喚場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜残された召喚場にて〜〜〜

 

「どうだ。少しは落ち着いたように見えるが。ああ、別に貴様は何も言わなくて良い。そのまま鎖に繋がれておけ」

「……………………………」

 

 研砥たちが居なくなって既に数十分。既にペンテシレイアの狂化は解除されていたが、ギルガメッシュは『天の鎖』による拘束を解いてはいなかった。それが何故なのかは理解できなかったが、少なくともペンテシレイアをいたぶろうとしないところを見る限り、彼が怒っていないのが分かる。

 

「…………何故、狂化されていない貴様を未だ縛り続けるか。理由がわかるか?」

「私が危険だからであろう。当然だ、私はバーサーカー。いつマスターを殺すか気がきてならんのだろう?」

 

 ペンテシレイアが吐き捨てるように言う。鎖に繋がれた無力化されているのが余計に腹ただしいのか、拘束が解ければいつでも殺しにかかるような手負いの獣如き視線でギルガメッシュを睨みつける。だが、彼はそれを退屈だと言わんばかりにため息を漏らした。

 

「戯け。貴様がバーサーカーであるなどという理由で縛り付けていたら、鎖がいくらあっても足らぬわ。バーサーカーでなくとも、マスターを平気で殺そうとする者も少なくないからな」

「………何だ、それは。私より狂ってはいないか」

「おうとも。そも、マスターが気に食わなくて殺したくサーヴァントなぞ多い。マスターからすれば、『自分を殺そうとしているサーヴァントが一人増えた』。程度の認識だろうさ」

 

 笑いながら呟くギルガメッシュの言葉に、ペンテシレイアが信じられないと目を開いて驚く。自分のマスターを殺そうとするサーヴァント。確かに、彼女のように気に食わなければすぐ殺そうとする英霊はいるだろう。それでも、そうしようとしたサーヴァントを受け入れるなど、並大抵の精神ではできないことだ。

 

「我らのマスター……研砥はな。魔術も存在しない世界、いわゆる並行世界の住人というやつだった。戦を知らず、無力で無知な凡夫として人生を謳歌していたある時、此度の騒動に巻き込まれた。今でこそ人理焼却を防いだ英雄、その片割れとして評されてはいるがな。あやつも戦い始めた頃は酷い者だったぞ? 何度も挫折し、何度も絶望し、何度も死の恐怖を味合わされ。敵の策に溺れ一度は悪夢に苛まれた」

 

 懐かしむように瞼を閉じ、淡々と語るギルガメッシュ。ありがちでつまらない物語だったかもしれない。けれど、それでも。その闘争の果てに得た今という未来は。尊い物だと彼は語った。

 

「『無力な自分に代わって、戦う力としてお前たちの力を貸して欲しい』……。まこと奇妙な人間よ。サーヴァントなぞ使い魔だと扱っている者が多い中、あの大馬鹿者は我らを仲間と。それも自分より上の存在だと扱っておるのだ。………それに反比例するかの如く、自分の事は過小評価しているがな」

 

 優しく笑いながら、ギルガメッシュは蔵の門を開く。その中から黄金に輝く盃と容器を取り出し、自分とペンテシレイアの間に置いた。

 

「さて………。我がマスターの大体の説明は終えた。次は貴様の番だ、ペンテシレイア。貴様の英霊としての格、ここで我に聞かせてみせよ」

 

 酒盛りの準備を整えた後、ギルガメッシュは指を鳴らす。直後、ペンテシレイアを縛っていた『天の鎖』が消える。自由になった手足をさすりながら、目の前で酒を飲むギルガメッシュを睨みつける。

 

「貴様、さっきから何がしたいのだ。私の動き封じたかと思えば、次は晩酌の相手をしろと?」

「はっ、貴様如きに王の相手が務まるものか。俺はただ、貴様という英霊の『格』を見たいだけだ。曲がりなりにも俺と同じ『王』を名乗っているのだ。生前の貴様の人生、我の酒の肴として献上するが良い」

 

 愉快そうに笑いながら、ギルガメッシュは酒を飲む。そのことに少し逡巡するように眉を寄せるペンテシレイアだったが、溜め息を吐いて自分の酒を飲み干した。

 

「よかろう。では、語ってやる。このアマゾネス女王、ペンテシレイアの生涯をな」

「ふっ、まぁ精々我を楽しませろ。内容にもよるが、愉快であれば褒美をくれてやる」

 

 アマゾネスの女王とウルクの王。全く縁のない二人の『王』の酒盛りが、ここに始まった。静かだが、とても楽しそうな笑い声が召喚場にから響いていた。

 




というわけで、今回はエルドラドのバーサーカーこと、『ペンテシレイア』さんが来てくれました!ありがとうっ!!
来てくれてから残っていた種火を早速注ぎ込んで使って見たんですが、もう攻撃モーションが過激っすね。いやぁ、荒々しい言いますかかっこいいと言いますか……。

今回のオマケ、実はブーディカさんを予定していたのです。予定していたんですが、急遽予定を変更して賢王が相手になってしましました。マイルームのサーヴァント、ランダムにしてるのに一日に一回は部屋に入って来るんですよ王様。

あと、個人的な感想なんですが、多分ブーディカさんがバーサーカー、ないしアヴェンジャーになったらペンテシレイアみたいになると思うんですよ。あくまで、個人的な感想ですが。理想的すぎるバーサーカークィーンで内心焦ってます。

さて、次回はファン待望の水着ガチャですね。次回、黒鋼君こと私は無事、去年のリベンジはできるのかっ!やっぱり物欲センサーが妨害しに来るのか!
次回、『(水着サーヴァントが当たるなどという)理想を抱いて溺死しろっ!!』でお会いましましょう!!
↑嘘です。


ここまでの読了、ありがとうございました!
次回もお楽しみに!!

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