時系列が合わないことを承知して、且つ公式設定との差異が生じる可能性も覚悟でとあるキャラの台詞を一部改変しました。
『ステージセレクト!』
――――視界が、全く異なる世界を映し出す。
現在ゼロだったものが見ている景色は、地球の大海原ではなく宇宙を彷彿とさせる仮想空間。
かつて望んだものによく似ていて、その静寂の中に自分だけの世界が広がっているようで思わず見惚れ、動きを止める……。
だがそれもすぐに終わる。
キラリと光る二つの希望が、一直線に自分のところへ駆け抜けてきたから……。
カービィはエグゼイドのようにチョコブロックを足場にしながら、そしてエグゼイドはカービィのように大きなサイズのワープスターに搭乗して、ゼロと同じ目線までやってこようとしていた。
ゼロはそれを見るや、文字通り血相を変えて全身からエネルギー光線を射出する。
無差別に放出された光線が空中で次々と大爆発を起こす中、カービィとエグゼイドは器用にそれらを避けてゼロ本体に狙いを定めた。
カービィはガシャコンブレイカーを手にすると、天才ゲーマー「M」と同等の身のこなしを披露しゼロの側面を斬り込んでいく……。
しかし当然ゼロがその程度で怯むはずがなく、すぐに反撃を受けそうになり距離を取るためバックステップで後退した。
それとほぼ入れ替わるようにゼロの頭上に飛び込んだのはエグゼイド。
彼は大乱闘スマッシュブラザーズXX内に名を連ねる名作『ゼルダの伝説』に登場する戦士・リンクのマスターソードを突き刺した。
「うぉおおおお!!」
振り落とされそうなのを、左手で深く突き刺さった剣を掴み何とか持ちこたえながら自由な右手に高電圧の電気エネルギーを収束させ、一気にゼロを殴りつける。
『ポケットモンスター』を代表する人気キャラ、ピカチュウの十万ボルトだ。
全身を駆け巡る電撃に、ゼロは目に分かる程に悶える。
(どうだ!)
一瞬手応えを感じたエグゼイドであったが、電撃を浴びながらもゼロはさらに多くの光線を弾かせていく。
思わず剣から手を離し、エグゼイドは空中に待機させていたワープスターに飛び乗ってカービィと共に様子を見ることにした。
やはりこの程度では終わらない。ゼロは先程よりも力を増しているように見える……。
思いの力は、どこまでも生物の可能性を進化させるようで、それはゼロも例外ではないようだ。
しかし……。
「何度だってやってやる!!」
二人とて、覚悟は負けていない。必ずみんなを助けるという誓いは、そう簡単には砕けない。
深紅に染まったより高密度のエネルギー光線が屈折しながら二人を狙う。
カービィはロボットアクションゲーマーとなり、エグゼイドが操る『スターフォックス』のアーウィンの先端に乗っかると光線が飛び交う真っ只中に特攻を仕掛けた。
しばらくゼロの周りを旋回し、光線を次々と撃ち落としていくが、追尾能力を備えた攻撃にアーウィンの翼がついにもがれる。
エグゼイドはすぐさま消滅するアーウィンから脱出すると、カービィが作り出したブロックに着地して新たな力を発現させた。
ブロックがゼロ目掛けて一直線に展開されたのを確認すると、全力で駆け出す。
エグゼイドを狙う光線の数はかなりのものだ。
しかし迷うことなく、右手に炎を纏わせて、エグゼイドは自分やチョコブロックを破壊する数多の攻撃の雨を掻い潜って距離を詰めていく。
「ファルコォォォォンパァチ!!!!」
そうして、ゼロ距離まできたエグゼイドが繰り出したのは、レースゲーム『F-ZERO』に登場するキャプテン・ファルコンのスマブラオリジナルにして知名度の高いパンチ攻撃。
炎を纏った重い一撃は、ゼロの巨大な球体を押し退けるまでに至り、追い打つ勢いでカービィのロケットパンチが立て続けにクリーンヒット。球体がパキッと音を立てて僅かにひび割れ、その箇所から濃縮された、ゼロを形成しているであろう『闇』が空気のように漏れ始めた。
それを見たエグゼイドは、『光神話パルテナの鏡』のピットが授かった神弓を召喚。
ドラゴナイトハンターZ(フルドラゴン)のカービィと共に、パルテナの神弓による遠距離からの全方位攻撃を繰り出した。
それにより、ゼロから全体から少量ずつではあるものの、力の源である『闇』が失われていく。それに伴い、ゼロの攻撃の激しさをナリを潜め、今では数える程度の光線しか放てなくなっていた。
漏出過多による『闇』が、肉体を構成することで精一杯でそれ以外に力を回せないでいるのである。
それでも、ゼロの奥底にあった執念は、並大抵のものではなかったのだろう。もはや本人が死んでいようとも、何も成し遂げることが出来ないであろうとも、ゼロの思念体はこの世界に留まることを止めない。
否、止められないのだ。ダークマターの頂点として生まれたゼロ……それは生まれながらに支配者であることを運命付けられた存在。それ以外など価値がないとでも言うように、唸り声を上げる。
「…………もう、終わらせよう」
静かに、エグゼイドは呟いた。
ゼロが何を思っているのか、エグゼイドには分からない。単純に立場が違うのだから当然のことだ。
けれどゼロの唸り声を聞いて、奴もまた、自分達と同じ規格の生物であったのだと理解する。
だからこそ終わらせる。もうこんなことを繰り返させないために。
カービィも同じことを思っていたようで、エグゼイドの呟きに無言で頷いた。
『スマッシュ・クリティカル・ストライク!』
『マイティ・クリティカル・ストライク!』
『スーパーマリオブラザーズ』の主人公・マリオがそうするように、ジャンプでエナジーアイテムを次々と獲得、極限まで能力値を引き上げた状態となって、二人はクリティカルストライク――必殺のダブルライダーキックを放った。
ライダーキックはゼロの中心……即ち本体である血眼を真っ直ぐ捉えると、内蔵されていた『闇』が全体から一斉に噴射され、崩壊を始める。
そして、二人のキックがゼロを貫通し切ると共に、ついに支配者の思念は木っ端微塵に吹き飛んだ。
『『会心の一発!!』』
『終わるのか、何もかも……。だが、何故だろう。ひどく、清々しい………………』
完全に消滅する間際。
カービィとエグゼイドは、そんな声を聞いたような気がした…………。
「ほう……エナジーアイテムと眼魂、それにダークマターのデータ回収が出来ればと考えていたが、艦娘か……実物はとても興味深いな」
無人島から遠く離れた崖の上に、白服を着た異国の女性が立っていた。
その手には、どういうわけか携帯端末の他に起動済みのストップウォッチが握られている。
「魔術師であるあの男の失態は財団の損失であったが……それを補ってあまりある収穫だな」
端末にはダークマター、シンフォギア、エナジーアイテム、眼魂の他、ドライブシステム、ロックシード、魔法石……数多の情報がまとめられた資料が表示されており、女性は細く微笑む。
女性は特に艤装や艦娘、深海棲艦といったものに関わる資料を重点的に確認すると、足早に海を背に歩き出す。
「ダークマターのデータを手土産にして、パヴァリア光明結社への投資会議の時にでも再提案してみるとするか……」
財団Xの女性――ネオン・ウルスランドは呟くと、ストップウォッチを止める。
その数字は、19.45秒を示していた…………。
『……今回、我々を襲った脅威は完全に取り除かれた。取り憑かれた人々も、ダークマターの消滅に合わせるかのように目覚め、既に日常に復帰している。これも諸君の努力のおかげだ。本当にありがとう』
ダークマターとの戦いから数時間の時が流れ、人々は再び平穏を取り戻そうとしていた。
事件に関わったCRと『S.O.N.G.』、協力してくれた鎮守府に、名も知らない戦士達……。
ここにいない者も含めその全てに感謝の意を込めて、日向恭太郎はCRのモニターから告げた。
「滅相もございません日向審議官!これも私の優秀な息子である飛彩のオペのおかげ……」
「親父黙れ」
「院長が喋るとロクなことにならないから黙ってて!」
「アカシックレコード!?」
CRにいたのは、鏡親子にポッピーピポパポだけ。
大我と貴利矢は部外者であるためここにはいない。
響、翼、クリスの三人は挨拶を済ませるや否や、慌ててCRから出て行ってしまった。
何でも欧州で開催される翼のライブがゆっくりしていては間に合わなくなるとか。
翼のファンであるポッピーはサインをもらい損ねたことに後から気が付き泣き喚いたとかなんとか。
ひとしきり涙を流し落ち着きを取り戻すと、彼女は今この場にいない二人の事を思う。
「二人共、楽しんでるかなぁ」
あの戦いを終えてすぐ、エグゼイドが使っていたスマッシュブラザーズXXガシャットは壊れてしまい、カービィが飲み込んだマイティアクションXガシャットは排出されて永夢の手に戻った。
緊張が解け、地面にへたり込んだ二人の身を案じて真っ先に駆けつけてくれたのは響だった。
同じ船でやってきた面々とタケルは、既に帰りの準備を整えているという。
士郎とブラックロックシューターの行方が見当たらないことを響に問いかけたが、彼女も自分の戦いが終わった後、その姿を見ていないそうだ。
挨拶もなく何処かへ去っていってしまい、少しだけ残念に思う三人。
でも、平和が戻ってきたのだ。今はそれを喜ばねば、自分達の行いが嘘というものである。
そして、彼らは無人島を後にする……他の仲間達と喜びを分かち合うために……。
「約束だよカービィ。一緒に美味しいものを食べに行こう!」
日向達の歓迎を受けた後、みんなと別れた永夢はカービィにそう切り出して、戦いの疲れも忘れて夜の街へと繰り出した。
街はダークマターのせいでボロボロであったが、幸い小さな建物などは被害が少なく、カービィの望む店を次々と食べ渡り歩いた。
それは待ち望んだ幸福な時間。突然の出会いから始まり、熾烈な戦いを乗り越えてようやく勝ち得た、友達との大切な時間。
そしてそれは光の速さで過ぎていく……この時ばかりは、時間の流れが本当に恨めしいと思った。
『闇』が晴れ、宇宙の星の輝きがよく見える高台へやってきた二人。
お腹をパンパンに膨れ上がらせて、よいしょとベンチに腰掛ける。
高台の広場には二人しかおらず、美しい夜空を二人じめだ。
しばらく眺めていると、不意に永夢は口を開いた。
「僕、カービィと出会えて本当に良かったと思ってる。たくさん美味しいものを食べ歩いたり、こんなに素敵な空を誰かと一緒に見た経験、なかったから」
嘘偽りのない胸の内を、今ここで打ち明ける。共にいた短い時間とは裏腹に、二人の絆は深く、深く心に刻まれていたから。
だから今、言っておきたかった。
別れが近いことを、何となくだが永夢は感じていた……。
「「!」」
その瞬間、夜空に一筋の流れ星が煌めいた。
流れ星はだんだん二人に近づいてきて、輝きを保ちながら高台の広場にゆっくりと降下してくる。
流れ星の正体は、ワープスター。カービィの愛機だ。
カービィはベンチから体を下ろすと、ワープスターまでてくてくと歩いていく。
ついに来てしまったのだ、別れの時が……。
「カービィ!!」
「!」
ワープスターに手をかけた時、永夢に名を呼ばれ、カービィは振り返った。
永夢の顔は、胸の内から湧き出る何か必死に我慢しているような表情で、可笑しく歪んでいた。
それがどういう感情からなる表情であるのかを、カービィは瞬時に理解する。
地球とポップスターは、あまりにも距離が離れており、近所の友達の家に遊びに行く感覚で会うことは出来ない。
ここで離れ離れになるということは、もう、永遠に会うことが出来なくなるかもしれないということだ。
一度紡がれた絆は、どうしてこんなにも正しさを拒むのだろう。
二人の視線は、少しの間だけ交錯していた。別れたくないという、ささやかな抵抗だ。
でも、ずっとこのままではいられない。だから……。
「――――また、ね」
永夢は、笑顔で再開を約束する。
カービィもまた、それを受け入れて笑顔で頷いた。
カービィを乗せたワープスターがゆっくりと夜空に浮かび上がり、お互いの距離が遠くなっていく。
けれどもそれで二人の絆が消えることはなく、むしろ約束のおかげでより強固なものになっているから何の問題もなかった。
最高峰の輝きを誇る流星となったカービィは、夜空の中を突っ切って宇宙へと飛び出す為に速度を上げていく。
その星輝は、この戦いに関わった者達だけでなく、街の人々をも注目させて……いや、恐らくは世界すら覆うほどの光を放ちながら消えていった……。
世界はその一瞬の奇跡を観測すると、再びあるべき姿へと戻っていく。
永夢は途端に訪れた孤独感に胸をギュッと締め付けられるも、顔を上げて広場を後にした。
ダークマター一族との戦争は終わりを告げた。
しかし、バグスターの根絶、自らに秘められた謎、仮面ライダークロニクル……まだ見ぬ激闘が待ち受けている。
宝生永夢は戦う。ドクターとして、仮面ライダーエグゼイドとして、患者の笑顔を取り戻す為に…………。
星輝の奇跡が届いた、何処かの世界――――
「……あっ、流れ星だぁ!」
「え、どこどこ!?」
「もう探してもおせぇだろ。にしてもラッキーだなひかり、近々何か良い事あるかもしんねぇぞ?」
「本当ですか!?えへへ~、何か起きるといいなぁ」
See you Next Crossover
エグゼイド本編ではきりやさんが帰還し、ムテキゲーマーが登場した本日、記念すべき第一作である本作も一応の完結となります。
およそ半年間、本作を読んでいただき本当にありがとうございました。