何事も休みが必要だろう。これは小休止だ。
「……はぁ」
鏡灰馬は聖都大学附属病院の近隣にある公園で大きなため息をついた。
明日那が帰還したためCRに居残る日向審議官の対応を一任し、自分は少し休憩するため外出している。
だが、空には今も『闇』が渦巻きとても気分が良くなるような状態ではなかった。
灰馬の気落ちの原因は、それだけに留まらない。
CRと衛生省を繋ぐ中間管理職のこと、息子のこと、そして何より多方面から自分の存在が蔑ろにされている気がしてならないのだ。
実際、何か良かれと思って発言すれば飛彩と明日那から煙たがられるのが日常と化している。そこ、実際に鬱陶しいとか言わない。
最近めっきりエグゼイド本編でも見かけないのはこうしていることが多いからである。かつてはちょこちょこCRにいたが本編の盛り上がりが最高潮に達している今、余計出ていきにくくなってしまった……。(時間軸的にはまだ1クール目)
はたして自分の存在価値はあるのだろうか。気づけばネガティブな思考ばかりが頭を支配する。
「「…………はぁ」」
再びため息がこぼれた。
その時、彼は声が重なったことに気が付く。
ふと隣のベンチに目をやると、腰を抑えて苦痛に顔を歪ませる初老の男性が座っていた。
「いたたたたた……こりゃいかんもう限界じゃ。早いとこ病院にいかんと」
どうやら腰を痛めているらしい。
灰馬はこれでもドクター。流石に放っておくわけにはいかないので、恐る恐る声をかけることにした。
「あのー、大丈夫ですか?」
初老の男性――仙人が灰馬を見る。
「うん?お前さんは?」
「あ、これは失礼。そこの病院で院長をやっているものですが、よろしければお連れしましょうか?」
「おお、それは助かるわい!いやぁ湿布貼って寝ていても治らんので自力でここまで歩いてきたんじゃが限界での」
「それはそれは。では、手を貸しましょう」
仙人は灰馬にしがみつくようにしてゆっくり立ち上がる。
しかし灰馬も灰馬で結構歳がいっている方なので、大人の男一人支えるのも一苦労。
フラフラしながら公園を出たところで、仙人が愚痴るように口を開いた。
「まったくタケルはともかくだーれも年寄りのことなんぞ忘れてどこかへ出かけおって……こちとら『平成ジェネレーションズ』にも『スペクター』にも出れなくてストレス溜まりまくりんこじゃ。どうなっとんの、このわしあっての『ゴースト』じゃろうに」
「は、はあ……何を言っているのかさっぱりですが、ご愁傷様です。うおっとととと!?」
「いたぁ!?」
よろけてバランスを崩した灰馬に引っ張られてさらに腰を痛める仙人。
もはや長官の威厳もくそもないただの老人は申し訳なさげに青ざめる灰馬を見て、恨めしげに、
「お主も覚悟せいよ?今は出番をもらっているかもしれんがいずれ存在すら忘れ去られる日も近かろう。きっと今年の平成ジェネレーションズ第二弾にはオファーが来ないなんてことも有り得るぞはなまる」
「ひぃいい!!そ、それだけはご勘弁を!!!」
……とまあ少々メタで危なげなやり取りをしながら人気のない街を往くおっさん二人。実際に最終回以降関わりのある作品に影も見なくなった先輩からのありがたーい忠告に後輩は恐怖しつつ、医者としての責務くらいは果たして株を上げておかねばと決心、仙人を覚束無い足取りで病院へと連れて行くのだった…………。
ギャグって難しいですね。