個人的な目標として一話分の締切を七日間に設定しているのですがまともに守れてないですね。頑張らなきゃ……。
FGOのCCCコラボが楽しみだけどまだキャメロットすらクリアできてないマン。
島に上陸する前から、一向は眼前に見える唯ならぬ雰囲気に心臓を鷲掴みにされているような、窮屈な気分に陥っていた。
中央付近には異様な形をした西洋の古城を彷彿とさせる建物があり、周辺にダークマターがうようよと漂っている。
生え揃えられた木々の葉は全て例外なく枯れ落ちて、歪な形をした枝が不気味にその先を伸ばす。
そして何よりも彼らの意識を惹き付けたのは、等間隔にそびえ立つ4本の光……。
今のところ敵が襲い掛かってくるような気配はないが、警戒を解かずゆっくりと上陸を始めることにした。
船底が浅瀬の浜に引っかかることのないギリギリの位置で漁船を止め、そこからは備え付けの救命ボートで浜まで移動する。
『私はここで待機しています。何か御用があればこの無線で連絡を下さい』
永夢達の耳元から、極小のノイズと共に吹雪の声が聞こえてきた。
「わかった。君も命の危険を感じたら僕達に伝えて。最悪、僕達のことは構わず離脱していいから」
『了解しました。すみません、私も皆さんと一緒に戦えたらよかったのですけど……』
艦娘は、陸では非力だ。艤装を外し一度少女として役割から解放され、人としての生を謳歌する時、その身は唯の人となってしまう。
魂が世界大戦時の『艦』であるからこそ、彼女達はどこまでも大海原を駆ける存在でしかない。
誰かの力になりたいと願いながらその想いが叶わず俯く吹雪に、全く異なる舞台で戦う彼らは笑顔で答えた。
「気にしないで吹雪ちゃん。吹雪ちゃんは重要な役目を十分に果たしてるよ!」
「そうだよ。こうしてダークマターの居場所を発見出来たのは君のお陰なんだ。ありがとう」
『いえ。こちらこそお役に立てて光栄です。……武運長久を』
最後に吹雪は海軍式の敬礼と共に勝利の祈りを、消えていく戦士達の背中へと贈った……。
「まるで魔王を討伐しに来た伝説の勇者みたいな気分だぜ」
「実際似たようなもんだろ?見た目はガキでも中身は悪の親玉だって話じゃねえか」
「つまるところ我々は、世界の命運を託された希望というわけだ」
「英雄になど興味はない。俺はドクターとして、オペをするだけだ」
童話の中にあるような恐ろしい木々の合間を縫いながら、中央の巨大な城を目指す。傲慢な者は皆、世界の中心で一番高い所に立ちたがるものだ。十中八九あそこにいるだろう。
しかしここは既に敵の本拠地。これまでのように、お気楽道中というわけにはいかないらしい。
「おっと、お出ましだぜ」
続々と、彼らを古城へ行かせんとするべく、人型ダークマターが姿を現した。
その総数は計りかねるが、ざっと街中で戦った時よりも多く感じる。
『マイティアクションエーックス!』
「敵も本気だ……」
全員戦闘態勢へ。永夢もガシャットを起動する……。
「野放しにしておくとすぐに暴れまわるじゃじゃ馬共め」
瞬間、忌々しそうな台詞が木霊したかと思えば、
『!!?』
飛彩と翼、大我とクリス、そして貴利矢、響までもが、順に闇色の球体に取り込まれ消失した。
「!? みんな!!」
「安心しろ。バラバラの箇所へ飛ばしただけだ」
ふわりと、少女の姿をした魔王が永夢の前に降り立つ。
「ゼロ……!」
「この場所を突き止めるとはやるじゃないかエグゼイド。だが悲しきかな。苦労してやってきたみたいだが無駄なことだ。世界は私達ダークマターのものになる」
「無駄なんかじゃない」
永夢は、一歩前に踏み出した。支配に抗うように……。
その両目が赤く光る。
ゲーマーモードの永夢は、静かに怒りながら淡々と覚悟を告げた。
「カービィは俺に託したんだ。俺がお前を止めるって信じてくれたから、あの時守ってくれたんだ……だから俺はその想いに答える。世界の運命は、俺が変える!!!」
『ガシャット!レッツゲーム・メッチャゲーム・ムッチャゲーム・ワッチャネーム!?アイム ア カメンライダー!!』
もう下は向かない、後ろは振り返らない。全力で前に進むことだけが、未熟なドクターで仮面ライダーである自分に出来る、たった一つの事実だ。
永夢は、エグゼイドに変身する……。
『ガシャコンブレイカー!』
「いくぞゼロ!」
向かってくるダークマターをガシャコンブレイカーで全て打ち落としながら真っ直ぐゼロへ迫るエグゼイド。
しかしゼロは無防備にも構えない、微動だにせずその場に立っていた。
(なんだ……なぜ動かない!?)
不審に感じながらも、このチャンスを逃すまいとエグゼイドはガシャットをブレイカーに挿入する。
『ガシャット!マイティ・クリティカル・フィニッシュ!!』
『マッスル化!』
さらにエナジーアイテムのバフを受けてその威力を上げた一撃を、叩き込む。
「うぉおおおおおおおお!!!!」
ゼロは最後まで、エグゼイドの攻撃を防ごうとも避けようともしなかった。
「ぐぁあああああ!!!」
地と水平になって振り上げられたガシャコンブレイカーはゼロの肉体に直接大ダメージを与えた。その証拠に、これまで聞いたことのなかった苦痛の叫びが、その口から発せられる。
木々を木っ端微塵に吹き飛ばしながら、ゼロは連続的な爆発と共に岩の壁に激突した。
特徴的な和服は正面が焦げ落ち、胸の辺りから腹部にかけて人間ならば致命傷と見て間違いな程の痛々しい傷を作っている。
「やった、のか……?」
初めて攻撃がまともに通った。手応えもあった。間違いなく大きなダメージだ。
しかしなぜか、エグゼイドは腑に落ちなかった。
あんな見え見えの正面からの大技を、対応する隙はあったはずだというにも関わらず何もせず甘んじて受けたようにしか感じられなかったからである。
ただの慢心……そうであって、ほしかった。
「いい一撃だ。だが無意味だ」
嫌な予感は望まずとも的中してしまった。
ゼロは何事もなかったように、すくっと立ち上がる。
服が破れ、女性としての肢体が扇情的に見え隠れするが、生々しい傷跡が気まずい気分を相殺させる。
突如、光の柱がより一層強く輝いた。
光は曲線を描きながらゼロを覆い、その傷を瞬く間に癒していく……。
「なんだと!?」
エグゼイドが驚いた頃には、服も完璧に直してしまったゼロがそこにいた。
「今の私は絶対に死ぬことのできない領域まで達している。最初に攻撃を受けたのは、貴様に抗いようのない絶望を植え付けるためだ!」
なんと、えげつないことだろうか。
絶対的な「差」はなおも健在どころか、さらに大きく、壁となって隔てられていた。
もはやエグゼイドに勝機はないだろう。例え響達が再び集ったところで、倒せないのであればいずれこちらが死ぬだろう。
ゼロは胸の高鳴りを必死でこらえながら仮面の下で青ざめているのであろうエグゼイドを見据えていた。
今の自分は10人いれば10人とも命惜しさに
まだ笑うな。笑うのは、全宇宙を手に入れてから……。
Hit!というダメージエフェクトと共に、ゼロは僅かに驚愕する。それは自らの支配を拒む者が抵抗していたという証だ。
しかし解せない。ゼロは理解できなかった。
それは攻撃そのものに対する困惑ではなく、なぜ目の前の男はなおも自分の前に立ち塞がるのかということに対するものだった。
「――だったら、どうした?」
ドスを効かせた声色で、エグゼイドは言う。
「さっきも言ったぞ。お前の運命は俺が変える……お前が引き起こそうとしている最悪の絶望すら変えるってな!!」
眼前の戦士は、諦めていなかった。
理解不能、解読不能。弱者であるにも関わらずなぜ跪かない?いつまで抗う?
「!」
そこでゼロは初めて気がついた。
自分が、一歩後ずさっていた事に……。
つまり、一瞬にもゼロはエグゼイドを恐れたということになる。支配者であるはずの、宇宙最強の種族を束ねる長が、小さな惑星の小さな戦士に、敗北のビジョンを描かされたのだ。
すると幻覚のように、エグゼイドの姿が一人の星の戦士――カービィと重なって見えた。
憎悪が『闇』の底から沸き上がってくる。マグマのように、ぐつぐつと煮え滾るのを感じ、唇を噛み締める。
それは、たった一度の敗北が生んだ、屈辱への恐怖故か……。
「貴様は私を怒らせたっっ!!」
右の瞳を深紅、否、深血に染め上げながら、莫大な『闇』を島全体から吸い上げてエグゼイドにぶつけようとする。
これはやばいと感じたエグゼイドはチョコブロックを伝い距離を取ろうとする。だが、恐らく無意味だ。ゼロは島ごと破壊するつもりでエネルギーを充填しているのだから。
「い、いけません主!ダークプラントまでお釈迦になってしまう!!」
城の中で顛末を観戦していた三体の側近は、慌てて主の暴走に危機感を覚えていた……。
『レベルアーップ!マイティジャンプ・マイティキック!マイティ・マイティ・アクション!エーックス!!』
逃げられないことを悟ったエグゼイドは受けて立つことにした。
レベル2となって、キメワザスロットホルダーにガシャットを挿入し二回ボタンを押す。
『キメワザ!マイティ・クリティカル・ストライク!!』
可能であれば相殺……いや、不可能だろう。それほどの一撃であることは、天才ゲーマーの勘が告げている。
それでも逃げはない……カービィの願いを、無駄にしないために!
周囲の事など知るものかと、破滅の『闇』が爆発せんとしたまさにその瞬間。
――――エグゼイドは見た。友として隣にいた星の瞬きを……。
――――ゼロは捉えた。復讐の心に従い屠った筈の星の気配を……。
電光石火の如きシューティングスターは、『闇』を容易く霧散させた。
そしてゆっくりと、エグゼイドの前にやってくる……。
光に包まれて確認できなかった姿が、地に降りたことで少しずつ露わになる。
いや、それがしっかりと姿を見せる前から、エグゼイドとゼロには正体は分かっていたのだろう。そうでなければ、信じがたい事態を二人が唖然と眺めることなど、出来はしないのだから……。
エグゼイドににっこりと微笑むそれは、丸かった。
エグゼイドの胸に勢いよく飛び込んだそれは、ピンク色だった。
「おかえり!」
思わず感極まりエグゼイドが抱きしめ返したそれは――――星のカービィだった。
復活の詳細は次回に持ち越しです。