兎に優しいIS世界   作:R.H.N

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動き出す現場と起動する「白騎士」

ミサイル発射から5分後・・・日本国防衛省

 

 

 

「いったい何がどうすればこの有り様になるのよ!!外国の弾頭ミサイルは簡単には発射できないとかいってたが、全部嘘とか聞いて無いわよぉ・・・・・・」

 

 

 

 

「防衛大臣!言いたいことは判りますが取り敢えず指示を!!」

 

 

「わかってるわよ!全軍に伝達!!なんとしてでも本土に落とさせないで!!迎撃に関しての一切はこの際現場に一任するからやれるだけのことはやって!!」

 

 

防衛大臣、天ヶ瀬 深那(あまがせ みな)は嘆いていた。

 

日本に向かって凡そ2500発前後もの戦略弾頭ミサイルが放たれたのだ、ワケがわからないし何でこうなったのか理解したくもない、やれることも少ない(日本全土を目標にしているため、住民への避難誘導も意味を成さない。)

だが、やれるだけのことはやりきらねばならない。

 

 

これだけの弾頭が放たれた時点で日本が核の炎に包まれるのはほぼ確実、独国から連絡が入ったのはいいが、亡国になるのが確定したようなこの状況下ではヤケクソにもなりたいものである。

 

更に何がヤバイって首相と連絡がつかない、今頃ニューカッスルで機を待っている頃の筈なのに、(ってかこの状況で日本行きの機が飛ぶとは到底考えられない。)

 

首相の身に何かあったのだろうか?だとしたら最悪とか言うレベルを越えている、この時点で首相が海外で遭難とかまったくもって笑えない。

 

「防衛大臣!首相と電話が繋がりましたが・・・・・・」

 

「本当!急いで代わって!」

 

「そ・・・それが・・・」

 

「いいから早く!!」

 

首相と電話が繋がったと言う事実に気を取られ、部下の晴れない顔に気づかず電話を取る深那、しかし電話先の音は凄まじいものであった。

 

 

 

(ウーウーーーーーーピーポーピーポーピーポーピーポーウーウーゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!ピーポーピーポーピーポーピーポー)

 

「私だ、防衛大臣!状況を報告せよ!」

 

「えっちょっ!首相、そちらはいったいどういう・・・!!」

 

「さっさとしろ!!」

 

「はっはい!!」

 

通話先のイギリスは間違いなく修羅場である、救急車、消防車、警察のパトカーが大量に入り乱れているのが分かる。

 

だが、そんな事どうでもいいと言わせんばかりの槇田の剣幕に押され、深那は急いで状況を報告する。

 

「・・・・・・話はわかった。」

 

「・・・首相?」

 

「全国民をできるだけ幾つかの箇所に誘導して集め、その周辺地点に弾着予定のミサイルを迎撃すればあるいはと言った所だ(チッ,シカイガカスンデキヤガッタ)、」

 

「・・・義照首相?」

 

「こうなれば法律も糞もない、防衛大臣、すまんがわたしの代わりを頼む、私はこのタイミングだと他のことをやらざるを得んのでな(ヒダリウデノカンカクモカ…)」

 

 

「・・・了解致しました、やれるだけのことはやります。」

 

 

「・・・スマン、後事を託す。」(ガチャリ)

 

こうして電話は切れた、

 

「・・・・・・防衛大臣、南丞 純香(なんじょう すみか)幕僚総長が勝手に艦隊の方へ・・・」

 

 

「黙認しなさい、先程首相から代行を依頼されました、今さらではありますが、此れからわたしの指示のとおりにお願いします。」

 

 

「義照首相から・・・!、了解しました!!」

 

 

(無事でいてくださいよ・・・首相)

 

いまの深那には、首相に関しては出来る精一杯のことをしながら、彼女は指示を次々と送りだす・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな・・・こんなのって・・・」

 

「・・・とちくるったのか?」

 

 

一方此方はJAXAの工廠、ミサイルの件が速報され、束共々インフィニット・プロジェクトチームのメンバー全員がその場で固まっている。

 

辛うじてしゃべることだけ出来る束と正晴も、どう表現すべきかあまりにも困る表情を浮かべ、呟くのが精一杯である。

 

「・・・自衛隊や太平洋艦隊とかでどうにかなりませんかね?」

 

職員の一人が恐る恐る聞くが、当然束と正晴博士の答えは、

 

 

「「うん、無理」」

 

「「ですよねぇぇぇぇぇぇぇ~!!!」」

 

返答は非情であった。

 

 

「いくら自衛隊と在日米軍に強力な弾頭ミサイル迎撃能力があるからって、2500発とか無理ゲーにも程があるよ~」

 

 

「イージス艦、PAC3、スクランブルによる航空迎撃・・・全力で迎撃しても全体の45%・・・いや、海外で迎撃してるところもあるから累計でも80%ぐらいの迎撃が限界だろうな。」

 

「そして、残った二割でも元の数が元だから日本を吹き飛ばすのには十分・・・さすがの私でもどうにもならないよ・・・・・・」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

現場を重苦しい雰囲気が包む、だが・・・これをぶち破った人物がいた。

 

 

「なぁ束・・・・・・ISなら…出来たばかりのコレなら出来るんじゃないか?ミサイルの迎撃。」

 

千冬である、彼女はよりにもよってISでのミサイル迎撃を提案したのである。

 

 

「無茶だ!ISの飛行機能は大気圏離脱しか基本的には考えられてない!宇宙空間を飛ぶのと空中を飛ぶのとだと話が全然違うよ!!」

 

 

真っ先に反論するのは義照がIS開発に置いて特別に招聘した航空学者、川城 みとり(かわしろ みとり)博士である。

 

 

「・・・・・・それだ、」

 

 

「え?」

 

 

「川城さん、ISが大気圏に突入するときにISの飛行能力じゃ降下地点をミスした時に燃料が足りずに海に落っこちる可能性があるからって、ISで持ち上げられる滑空用のフライングボード作ってたよね?」

 

 

「ああ、一応できてるけど・・・・・・そう言う事か!」

 

 

みとりの言葉が引き金になったのか、束は一連の流れで「何が出来るか」を掴んだようだ。

 

 

「なるほど、大気圏ギリギリまでISで上昇して、そこからフライングボードで滑空しながら迎撃か、だが、そんなことやれるのか?」

 

 

「大丈夫だ、コイツには隕石迎撃用のレールガンがある、攻撃に関しては問題ない、」

 

 

「当てるかどうかだが・・・・・・私がやって見せよう。」

 

 

「ちーちゃん!?」

 

 

「ちょっと待った!!、一応、確認だけとらせてくれ。」

 

 

「なんだ?」

 

 

ここで千冬を止めたのは、国から正晴理事長の紹介で航空法等との折衝を任された上田 行信(うえだ ゆきのぶ)氏、IS開発における法律上の問題をクリアーしてきた人物である。

 

 

「あまり言いたくはないが念押しの確認だ、もしもコレが成功したら・・・ISは兵器扱いされかねないが・・・、いいんだな?」

 

 

「!!!」

 

 

彼はここに来て特大の指摘をした、

もしもここでミサイルの迎撃に成功すれば、世界はこぞってISを新しい軍事兵器として求めるだろう、そんなことになれば肝心の宇宙開発はどうなるか?自明の理と言うものである。

 

 

だが、千冬は迷うことなくこう答えた。

 

 

「私には守りたいものが沢山ある、守る為の力があるのならば、周りにどう言われようが、構わんさ。」

 

 

「千冬さん・・・・・・」

 

 

「私も・・・ISが軍事用にされるのは嫌だけど・・・此を見逃したらそれ以前の問題になっちゃうから・・・だから・・・・・・」

 

「束・・・・・・、」

 

やはりISが軍事用にされるのを恐れているのかはっきりと言えない束、その時、正晴が彼女の肩をぽんっ、と叩いた。

 

 

「取り敢えずさ、コレが片付いたらみんなで元凶探してフルボッコに仕立て上げようや、俺達の怒りをありったけ込めて・・・な?」

 

 

「・・・はるるん?」

 

 

「日本を救うにはISが軍事用に転用される危険性を甘受しなければならない、ならいっそやり過ぎなくらいやっちゃって、軍事的に危険物扱いにしてスポーツ専用とかに仕立て上げちまうんだよ、別段、軍事用になっても採算取ろうとしなくなれば宇宙開発用としての研究は続けられるだろうし。」

 

 

「んでスポーツ用に仕立て上げたら俺らが好き勝手いじくったやつで後進をボコボコにしてやるんだよ、悔しかったら俺らを越えて見せろ!とか大言してみたり。」

 

 

「まぁ要するに何が言いたいのかって言うと、使い方が変わっちまうんならソレなりに新しい《楽しさ》を見つけようぜ、ってとこ。」

 

 

「はるるん・・・フフフフ・・・・・・」

 

 

「ISの今後云々はともかくとしておいても元凶をタコ殴りにするのには大賛成ですね、こんなことされてキレない理由がない。」

 

 

「はっ!まてよまさか今回のミサイルはISを世の中に間違った認識で出すために仕組まれたものである可能性が微レ存・・・。」

 

「流石にそれはないでしょ、まぁ複数人か単独かどうかはわかりませんが何者かが意図的にやらないとこんなことにはならないでしょうね、」

 

 

「ッてか冷静に考えたら能力的に真っ先に疑われるの束さんじゃないかな?」

 

 

「みとりん、それはないよ~何で束さんが疑われなきゃならないの~~」

 

 

「いやだって束さんのクラッキング能力凄まじいし・・・・・・」

 

 

「それはイカンな、神社の篠ノ之さんの所の神社は願掛けでお世話になったし、たしか妹さん含めて四人家族だったろ?」

 

 

「弁護しなきゃ(使命感)」

 

 

「そういや千冬さんのところは、今いるの弟君だけなんだっけ・・・・・・」

 

 

「・・・・・・(´;ω;`)ブワッ」

 

 

「やべえ、ワイその話知らんかった・・・道理で話聞くたびブラコン拗らせとるなぁ・・・と……」

 

 

「助けなきゃ(使命感)」

 

 

「ストーップ!!ストップストップストーップ!お前らいきなり話がずれてるぞオイ!!」

 

 

「意外といつもの事だからね、仕方ないね。」

 

 

自分が話始めたのに他の職員達が騒ぎだし途中から脱線したので話を戻した正晴理事長、実は開発中の頃の会議とかでも、話が壮大にそれて理事長に引き戻されると言った事はわりと日常茶飯事であったりする。

 

 

ただ、この場ではミサイル迎撃に赴く千冬、自分の夢をこんな形でぶち壊しされた束、そして何より自分達の総力をかけても産み出したISのことを案じているのは確かであった。

 

 

「・・・そうだ!ちーちゃん、私もISでミサイル迎撃するの手伝わせてくれない?」

 

 

「?、どう言うことだ?」

 

何が思い付いたらしく同行を提案する束、

 

 

「ジャジャジャーン!IS用バックパック~!、ISの背中に装着することで後ろに人を3人はのせられるスペースが出来るのだぁ!!空気抵抗はIS本体のシールドで防げるし、私もコレでちーちゃんについていこうかなって!!」

 

束がドラ○もんのごとく取り出した装置をみて更に話は加速する。

 

 

「んじゃぁせっかくですしそこにレールガンの予備弾薬を仕舞っときましょう、人一人分ぐらいのサイズ使っちゃいますが。」

 

 

「んじゃ後一人正晴理事長で、」

 

 

「ファッ!?」

 

 

「この中で軍事知識に一番聡明なの理事長じゃないですか、軍事関係の知識を講座出来るレベルなんですからもしもに備えて着いていってください。」

 

 

「それやったら逆にISやられたときの損失が恐ろしい事になるんだけど!?」

 

 

「責任重大だな・・・フッ、任せてもらおう。」

 

 

「いや私はいかない方が・・・「じゃけん束さんと一緒に理事長をしまっちゃおうねー「ちょwwwwおまwwww」

 

 

「さっさとゲートを開けろぉぉぉぉぉ!!IS一号機がまもなく発進するぞーー!!」

 

抵抗するまもなく束と他職員たちに連れていかれIS用のバックパックに詰め込まれる正晴とレールガンの予備弾層、束も乗り込み、燃料補給を済ませ、発進する準備が整ったと同時にゲートが開き終わる。

 

 

「・・・・・・インフィニット・ストラトス、織斑 千冬、発進するッ!!」

 

 

「いけいけゴーゴー♪」

 

 

「こうなりゃヤケだ!!!やってやらぁ!!」

 

こうしてJAXAの工廠から遂に1つの機体が飛び立った、そしてこの日、後まで語り継がれる壮大な伝説が生まれることとなる・・・

 

 

紫髪の兎耳少女の願った「夢」は、形を変えて、極東と呼ばれた小さな島国を救う「白き騎士」となる・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・続く。


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