兎に優しいIS世界   作:R.H.N

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後編です、今回でもってモンド・グロッソでのお話は一端終わり、舞台は篠ノ瀬研究所へと移ります。


兄弟+1の世間話、後編

二人の会話はこれまでちらりとすら話題に見られることのなかった日本の暗部へと移っていく。

 

話が真面目になったりそれたりする度に、タバコ(葉巻)を咥えたままに真剣な顔つきと緩い顔つきとをいったり来たりしている兄弟だが、この話の時はタバコ(葉巻)をわざわざ取り替えるなど、特に真剣な表情なのがうかがえた。

 

 

 

「・・・・・・私が政界を引き下がってから、暗部の各家の反応はどうなんだ?」

 

 

「・・・・・・ダメだね、懐柔策効果無しのようだよ」

 

「・・・・・・マジか、」

 

 

「やーっぱり父さんの時点で国が暗部と決定的に対立したのが効いてるみたいだ、天ヶ瀬首相に変わった後も、これまでの暗部と情報省による二頭並立対立構造は変わってないね」

 

「・・・・・・・・・親父ェ・・・・・・なんで俺が警官やってた頃によりにもよって暗部の大親玉、【更識家】と正面衝突したんかなぁ・・・・・・」

 

話の主題はなんと国の暗部についてであった。

 

正直あまり話したくないのか小声になる二人、しかし、病院の真上なんかで話してて良いのだろうか?

 

そんな疑問が浮かび上がってしまうほどに話す場所を間違えてるとしか言い様の無い内容であった。

 

 

「国の公的機関の裏側に暗い部分を任せるのはスペツナズの例があるから情報省に暗部の役割を任せるのは間違ってないんだ・・・・・・でもさぁ、だからってあんな強硬な事しなくても・・・」

 

 

「親父が更識に頼らずに独自ルートでロシアと膨大なチャンネル築けるチートスペックしてたのが裏目に出たからなぁ」

 

 

 

「どうするよ兄さん?実際問題、対ロシアと防諜関係で更識の力が必須な状況ってもうないよね?」

 

 

「平和条約と北方問題が一番の使いどころだったが、更識の力借りずに親父が亜光速で二島返還案ショルダースルーさせて条約成立からの国交完全回復コンボ噛ましたのが・・・・・・、おまけに情報省だからなぁ・・・今でもロシア関係のチャンネルの大半は更識だけど対露関係超絶に改善されてるからそこまでいるかと言うと・・・・・・欲しくはあるが必須ではないしなぁ・・・」

 

 

「他国へのチャンネルは父さんの代で義成さん頑張って情報省がだいたい掌握しちゃったし・・・・・・」

 

 

「・・・・・・このままガン放置はできないのか?」

 

 

「無理だね、天ヶ瀬さんの話によれば暗部が勢力を結集させて独自に戦力網を構築しようとしているらしい、今は傘下の会社がライセンス生産してる機体を独自改修し始めた位の初動と言ったところだけど、このままだと最悪内乱の疑いをかけないといけなくなる、ってかヤバイことに僕の系列会社の建物付近で一部の人間が不穏な動きしてるんだよ・・・・・・」

 

「・・・・・・不味いな、和解のための工作は?」

 

 

「同じく不調、情報省関係者は更識邸を門前払い、他のところを仲介させようにも更識と話をするときは情報省との件は話題に出させないよう更識から脅迫混じりに圧力がかけられてる、僕に至っては更識邸に近づくだけで足元に警告のメッセージカード飛ばされるからね」

 

「あまり使いたくない手だが、自衛隊の南条海将に仲介してもらえないのか?更識との交流があった筈」

 

「ダメだね、純香さんにによる仲介はクッソ丁寧に断られたそうだ、あんまりしつこく依頼するとまだ暗部と良好な状態を保ててる海自と、政府との仲まで悪化しかねない」

 

 

「・・・・・・八方塞がりか、どうにか打開策はないのだろうか…?」

 

 

 

 

二人の話は、主に日本国暗部の中枢、【更識家】の事である。

 

日本が裏の世界においての工作やらなんやらを賄うのが日本の暗部な訳だが、更識家はその中でも最たる大家なのだ。

 

んでもって、話の中心はその更識と対立している構図をどうにかしたいと言うものであった。

 

詳しいことは省略するが、今は亡き父の所業を原因として、更識家は今日の今日までずうっと対立したままなのである。

 

(正確には、現状更識が政府を一方的に敵視してるだけなのだが・・・政府としては困ったものなのであった。)

 

どーにかこーにか更識と和解の手だてを立てたい所ではあったが、暗部を相手取る関係上取れる手段は非常に限定されたものだし、余程父の事を恨んでいるのか和解のために人を送っても意に介さず、間接的に和解の場をセッティングしてもらおうと動くも経済界には圧力が入って事態に介入できず、軍部(自衛隊)は暗部と繋がりが残ってる所なせいで微妙に暗部よりな為、仲介は期待できない。

 

義秋が自ら赴いたが今度は警告を食らって更識邸に近づくこともできない有り様となっていた。

 

「もう俺がダイレクトに乗り込んだ方が手っ取り早いんじゃなかろうか?」

 

 

「父さんとそっくりの兄さんが向かうと逆に刺激しかねないから却下、ってか僕もそうだけど更識に下手な接触して兄さん死んで真相が露見したら国民と天ヶ瀬首相と自衛隊マジギレして鮮血の結末しか見えないから大却下、ついでにそんな無茶をしようとする元首相は出荷よー」

 

 

「(´・ω・`)そんなー」

 

 

あまりにも手だてが無さすぎてやる気が削がれ、放置してもout、自分達で対処しようにもやれることが無い八方塞がりのクソゲー状態に思わずネタに走ってしまうほどになってしまった二人、そんな時、義秋とともに病院にやって来ていた義成がこの場にたどり着いた。

 

 

「・・・・・・・・・地味に遅いなとか思ってたらボウズ、お前ら揃って病院の上でタバコとかなにやってんだよ・・・・・・」

 

 

「んー今?更識関係の対処で手詰まり起こしてるのを再認識して、おまけに更識が独自戦力持ち始めててオワタwww\(^o^)/ってなってるだけー」

 

 

「マジでどうしよって言う・・・・・・」

 

 

「・・・あー、更識の事かぁ、ウームムム・・・ボウズ共相手とは言えここまで長引くとは思わなかったなぁ」

 

 

「何か良い手無い?正直父さんの頃から丸30年近く情報大臣の座に居座ってる貴方ぐらいにしかこのクソゲーどうにもできなさげなんですが。」

 

 

(ダメだコリャ・・・完全にお手上げでやる気失ってテキトーになってやがる・・・)

 

完全にやる気を失ってタバコ(葉巻)を吸ったまんま普段の言動が崩れてきた二人を見て、義成は思わず頭を抱える。

 

更識がここまで頑なになった理由に、自分自身の頑張りすぎで更識から彼らお得意の海外の暗部へのカウンターパートとしての出番を完全に奪ってしまったのが一因にあることは彼が一番よく知っていたが、義成もここまで問題が長期化するとは予想していなかったのであった。

 

 

「・・・しゃーない、秘蔵の最終手段使うか、更識の方は俺が何とかするから取り敢えず他のことに集中しとけ、俺自身ではどうにもならんが、なんとかできる人がいるからその人に仲介を依頼しておく。」

 

 

「えっ!?まじで(;゜∇゜)!」

 

 

「さすが情報省大臣!頼みます!」

 

 

「・・・そろそろ真面目になってくれると嬉しいかなーって」

 

 

「「アッハイ」」

 

 

 

 

完全にヤル気失って気の抜けたモードに移行していた二人を引き締めると、義成は話を続けた。

 

更識に関しては彼に対応策があるみたいだ、秘蔵とか言い出す辺り、対応策あるんならさっさと使えよ、とかは言ってははならないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・更識は義成さんに任せることにしてと、義秋、国際IS委員長として聞きたいが、最近のIS関係における不穏な動きは?」

 

 

「・・・・・・特にはないかな、全般的に素で怪しげなところだったらいくつかあるけど」

 

 

「・・・どこだ?」

 

 

「一つ目はフランスの【デュノア社】、第二世代機ラファール・リヴァイヴ開発後あたりから、社長以外の経営陣が突然一新されたらしい、二つ目はドイツの【ベルソン重工】だ、何でも新型の二足歩行ロボット兵器の実験機を開発中だとか」

 

(デュノア社か・・・・・・あの嬢ちゃんが元気だと良いが・・・・・・・・・ベルソンは・・・よく知らんから情報省に任せよう)

 

最後に3人はここ最近のIS関連の産業の裏側について話し始めた。

 

「3つめは俺から言っとこうか、ついでだが、前述二社が既に怪しいとして情報省が遠回しに監視ながら詳細の調査をしてる所で、ここは現在軽い監視に留めているところだ」

 

「・・・義成さん、続けてください。」

 

「三つ目は能登重工だ、話の通り、更識傘下のあそこは自衛隊供給向けのトルコ製のIS、【ティラノプテルス】を量産している所だが、完成品の何機かが更識に流れて改修され始めていると言う話があった」

 

「改修内容を具体的に説明することは?」

 

「ヤバイことに、拡張現実装置【プラティオフタルムス】の仕様変更らしい」

 

「・・・・・・それモノ次第だとヤバイことになりますよね?」

 

「販売元のレイヴン・インダストリー社に動きが見られないのが更に不自然だ、更識相手だから下手には動かせんが・・・・・・なるべく早くに実態調査にこぎ着けるようにする」

 

 

「IS委員会の者としてお願いさせて頂きます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の真面目な話を終えた3人は、義照、義秋がタバコと葉巻を新しくしたところで、再びゆっくりと話が移り変わって行く。

 

 

「後は・・・特に今話すことは無いか、」

 

「あ、兄さん、そいえば過労でぶっ倒れたとか言ってたけど大丈夫?」

 

 

(何かが飛んでいる音)

 

 

「ダイジョーブダイジョーブ、早川医師に2日は絶対安静とか言われてたけどこの通りピンピンしてるからね」

 

 

「・・・・・・首相現役時代にそうやって数日働きづめになって、デカイ仕事と終えたらぶっ倒れるを繰り返してなかったっけ?」

 

 

「所でボウズ、何か変な音しないか?具体的にはエンジンの・・・うおおっ!?

 

 

「義成大臣!?」

 

やっとこさ真剣な話が終わったと思ったら、いきなり情報大臣が布にくるまれて簀巻きにされてしまったのであった。

 

 

医者の通告を完全無視して病院を脱走した挙げ句、院の屋上で呑気にご兄弟で喫煙とは大きく出ましたね、義照さん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・げえっ!?ナイチンゲール!!?

 

 

声のした方向を見て義照と義秋が目撃したのは、数少ない正晴博士製民間型であり、医療用のISである紅と黒を基調とした第三世代該当型機、【ナイチンゲール】に乗り込み、二人を恐ろしい剣幕で見つめている早川 癒希医師(英国での車輌事故で死にかけた義照の当時の主治医)であった。

 

「いったいいつのまに!?」

 

「ついさっき、です何を長々と話していたのかについては気にしないでおいておくとして、貴方が本来どうあるべきかはお分かりですよね?」

 

 

 

「いや、ちょっと待って、私は寝っぱなしはあれだからと気分転換を・・・・・・」

 

 

問☆答☆無☆用!!

 

 

「あっ!ちょっと待って・・・・・・!?、ピョゲェェェェェー!?」

 

 

「何で僕もー!?!?」

 

 

「タバコを止めさせるべき場所と対象なのに何で便乗してるんですか!貴方も同罪です!!」

 

 

「ちょっと待って!それには深いわけが!」

 

 

「仮にもIS委員会委員長が言い訳ですか、そうですか、これは覚悟を決めていただかねばならないようですね」

 

 

え?うわなにをするやめ・・・・・・・

 

 

「ナイチンゲール」の巧みな手さばきによって義照が即座に簀巻きにされ、なんとか逃れようとした義秋も、言い訳むなしく布団にくるまれる。

 

 

 

翌日、見舞いと称して義照達のもとに重造がやって来たのだが、その時簀巻きにされてベッドに転がされてる三人を見て大爆笑するのはまた別のお話である・・・・・・

 

 

 

~続く~

 




本作は名前関係を色んな所から引っ張ってきてます。

ベルソン重工と聞いて何を作ってるのかすぐに察せた貴方は間違いなく原作ゲームをやり込んでいる・・・筈かと。

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