兎に優しいIS世界   作:R.H.N

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本話は前後編共に比較的濃い成人の喫煙描写が入っています。

本とは一話で済ませる予定でしたが、長くなる様子だったので二つに分けました。

今回は前話に出てきた槇田元首相の弟と元首相の情勢に関する会話回となります。


兄弟+1の世間話 前編

~ドイツ、モンド・グロッソ会場近くの病院屋上にて~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・やっぱりココにいたのかい、兄さん」

 

「・・・義秋か、」

 

 

「珍しいね、話にあったタバコじゃなくて普通のタバコを吸ってるなんて」

 

「・・・・・・まぁいい、こっち来てテキトーに座れ」

 

「んじゃ邪魔するよ。」

 

 

千冬たちから白桜のスペックを見せられた義秋は、モンド・グロッソ会場近くの病院にやって来た後、病室から脱走して騒ぎを起こしていた兄を探し、通常の方法ではこれない病院の屋上へとやって来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・折角だし御相伴させてもらおうかな?一本とライターある?」

 

 

「ホレ」

 

 

「(火をつけつつ)・・・・・・ありがと。」

 

 

「おう」

 

 

義照からライターを借り、ついでにタバコを貰って、火をつけ吸い始める。

 

その後、話は義秋のぼやきから始まった。

 

「・・・兄さん酷いよ、何で千冬さんたちに僕の事紹介してなかったのさ?」

 

「すまんすまん、あの頃からずーっと他の事に気を使っていたからな、千冬の両親にしかり、束たちのIS研究に然り、お陰さんで会うことはないだろうからと紹介を忘れていてな、束たちの事だ、お前の事教えたら無理矢理にでも会いにいくだろうと思ってな」

 

「お前の事だ、会社の方が忙しいだろうし束達がアポ無し突撃噛ますかもとも思ってな、開発当初なんか飛び級で大学を卒業してた正晴はともかく、束と千冬は純正なギリギリ中学生だ、世の中のわずらわしい事情の類いは知らんだろうとも思ってたから先送りにしちまって・・・」

 

「んで、すっかり忘れてこの様と、知ってる前提で来ていた僕は良い面の皮だったよコンチクショウが、」

 

「・・・・・・会社の方はどうだ?、ISの影響を受けにくい業種でジブラルタルからバミューダに逃げるときに系列の会社の世話になったとはいえ、政治家引退後はそっちの動向をほとんど知らないから気になってたんだか」

 

 

「順調だよ、都合上、我が【明成通運】はISで代用しようとすると面倒なことこの上ない業務を取り仕切ってるからね、白騎士をデチューンしたようなのが沢山沸いてくると流石にアレだけど、今のところは問題ないよ」

 

 

「そうか、ならよかった、」

 

「兄さんの方も、古巣の民和党大丈夫なの?、その気になれば社を通して全面バックアップできるのにそういったことしないで正面勝負し続けて」

 

 

「むしろお前の会社のバックアップ受けた方が問題になるがな、親族経営の大企業のバックアップ受けて政治活動とか公平性欠きすぎてて大変なことになるのがオチだから、その辺を排除したかったって所がある」

 

 

「・・・ああ、道理で僕の会社関係だけやけに国の監査全般厳しいのか・・・・・・」

 

 

「まぁそうやって経済界からの影響をなるべく排除する調整がうまくいったからこそ、天ヶ瀬防衛大臣に後任を引き継げたし、彼女が国際情勢の激変に振り回されながらもうまく舵取り出来たわけだがね」

 

「なるほどね・・・ああそうそう、白桜のスペック確認させてもらったよ」

 

 

「・・・そうか、IS委員会委員長お前だからスペック確認に来たのお前ってことになるのか!」

 

「そうだよ!なんなのさあのチートスペック!」

 

「俺もあれ見たときはなぁ・・・・・・」

 

 

 

先ず、二人は互いの近況を話し合った、タバコを吸いながらの会話はどことなくしんみりとした物だったが、それと同時に何か懐かしそうな様子であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、兄さんが【遊星】・・・・・・この銘柄のを吸ってるってことは、よっぽどの何かがあったって訳で、病院で脱走騒ぎを引き起こしてまで二人だけでこうして話したいわけだよね?」

 

 

「・・・・・・情報大臣は?」

 

 

「兄さんが脱走したと聞いた辺りから察してたんだろうね、病院内の捜索引き受けて僕に病院の外を探してくれと言ってきたよ」

 

 

「・・・そうか」

 

義秋の一言から状況は一転、二人の目が真剣なものになる。

 

 

「・・・んで?兄さん、何を話そうとしてこんなことを?」

 

 

「・・・・・・・・・・・・()が、」

 

 

「・・・兄さん?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

声を震えさせながら何かを言おうとする義照、怯えてる、と言うわけでは無いが感極まってるのを察した義秋が軽く声をかけるが、意に介してるようすがない。

 

 

「【流星宰相】が・・・・・・親父が生きている可能性がある

 

 

 

なっ・・・・・・!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双方、全く信じられないと言った表情であった。

 

 

 

 

 

ちょっと待ってくれ兄さん!父さんは()()()()確かに僕たちの目の前で米軍の原子力空母の上から母さんと一緒に・・・・・・

 

 

だが()()()()()()()()()()()・・・・・・そうだろう?義秋?

 

 

だけど!あのとき父さんも母さんも空母艦上で撃たれて・・・・・・明らかに致命傷で・・・っ!

 

 

俺だって信じられんわこんな話!だけどなっ!・・・だけどなぁ!!

 

 

義照の話にそんなのあり得ないと反駁する義秋、義照も反論するが、義秋は焦りを隠せずに持ってるタバコを握りつぶしてまでに義照に食いかかる。

 

義照も、義秋の反論内容そのものが自分が言った、そんなような事はあり得ない事だと証明している事には気づいていた・・・・・・・が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・止まった機関車に過去はあっても未来は無い

 

 

「!!!」

 

 

罪の清算は行動のみで行える

 

 

「・・・・・・・・・母さんと、父さんの」

 

 

不意に発した発した義照の二つの言葉が、反駁する義秋の行動を止めた。

 

 

「お前は覚えてるだろう?親父が良くも悪くも名高い政治家として生きていた頃、俺達兄弟がまだ右も左も分からない子供だったころ、母さんと父さんが常日頃から言っていた座右の銘だ」

 

 

「二人が座右の銘だとか言っておきながら、マスコミに聞かれるとずーっと暈し続けて、ついぞ世間に対して用いることのなかった言葉だね・・・・・・」

 

 

「俺達以外だと最も親父と交流の深かった義成情報大臣や重造()()()()()()()言葉だ、一般やマスメディアから言わしてみれば【永遠の謎】とすら言われた言葉だ」

 

 

「・・・でもこの言葉が何に?」

 

 

「・・・このテープレコーダーを聞け」

 

 

二人が落ち着きを取り戻した段階で、義照は義秋に小さなテープレコーダーを渡した。

 

「・・・コレは?」

 

「織斑夫妻を追いかけている間に俺がこっそりと起動させていたテープレコーダーで、モンド・グロッソ会場近くの裏路地で夫妻を追いかけている時から、あのロボット騒ぎが終わる辺りまでの音声をこっそり録音してたブツだ。」

 

「・・・中途半端な所から再生されるようになってるけど?」

 

 

「途中の所で関わってくるからな、あらかじめ早送りして準備しておいた」

 

 

「なるほどね、それじゃあ一つ・・・・・・」

 

 

義秋は義照に渡されたレコーダーを再生させる。

 

途中からの再生となっていたが、その部分には夫妻が一夏達へ事の経緯を話しているところが録音されていた。

 

【以下、録音】

 

 

・・・・・・「それから数年、廃人同然だった私達の元に、ある人が訪ねて来たの、そしてその人はこう言ったわ、【取り戻したい物があるのなら、失ったのは自業自得が原因だとしても取り返したい日常があるのなら、懺悔してでも迷惑をかける覚悟をしてでも、これまでにやらかしたことよりも遥かにすさまじい事をやらかす事となってでも、進み続けろ】」

 

 

 

 

 

「【止まった機関車に過去はあっても未来は無い、】・・・・・・【罪の清算は行動でのみ行える】・・・とね、」

 

 

【録音、ここまで】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ハハハハハハ!成る程、兄さんがタバコを吸いたくなるわけだ…やっば、さっきタバコ握りつぶしちゃってたなぁ…」

 

 

「・・・・・・ホレ」

 

 

「いや、良いやこっち使うよ」

 

 

録音内容を聞いた義秋は笑いながらタバコを吸い直そうとする。

 

 

・・・・・・が肝心のタバコは握りつぶしてしまっていたため、義照がライターを貸そうとするが、義秋はそれをやんわり断ると、潰したタバコの残骸を携帯灰皿にしまって懐から多少大きめの小箱を取り出しそこから一本の葉巻を取り出した。

 

 

その後ポケットからマッチ箱を取り出すとそこからマッチ一本を取りだし火をつけ、使い終えたマッチをさっきの灰皿に詰め、そのまま携帯灰皿をポケットにしまう。

 

 

「チャーチルサイズ…お前、相変わらずのヘビースモーカーなのな・・・・・・」

 

 

「現在大絶賛プーさん状態な兄さんと違って僕自身はなかなかストレスたまる職場にいるからね、こう言うのは外したくないんだよ」

 

 

「・・・水菜さんにまーた小言言われるぞ、」

 

 

「良いんだよ、水菜の目がないときぐらいこうするのも僕にとっては乙なものだからね。」

 

 

「それよりも兄さんもいい加減身を固めたらどうだい?一夏くんが高校に入る頃には40になるんでしょ?」

 

 

 

「んなっ!?ななななにおうっ!?」

 

 

義秋の喫煙に言及する義照だが、あっさりと受け流される。

 

それどころか自分がまだ独身なことをいきなりど突かれて思わず赤面し、加えていたタバコを落としそうになる。

 

 

「そ、それよりもだ、だいたい言いたいことがわかったか?」

 

(話題そらしたか・・・まあ今回は主題違うしこれで勘弁してあげるか・・・)

 

「・・・まあね、成る程確かに父さんが生きてる可能性を真面目に考えるわけだ、報告にあった織斑夫妻の事の経緯の通りなら、父さんは気づけば間違いなく夫妻にあの言葉を投げ掛けようとするだろうしね、さっきの言葉の前の言葉も正面突破思考の父さんらしい言葉だ。」

 

露骨な話題そらし(本題復帰)でなんとかしのいだ義照、話は再び真剣なものへと戻ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・限りなく確率は低いよ?」

 

「わかっている、しかし生きてるとなったら一大事だ、正直原状の世界情勢がまた激変しかねん」

 

 

「それをまるで否定できないのが父さんの恐ろしいところなんだけどね・・・」

 

 

 

 

「話は変わるけど・・・・・・兄さん、白騎士事件の調査は進んでるかい?」

 

 

「うんみゃ、全くだ」

 

 

「そう・・・まさかまさかの偶然なのかな?」

 

 

「あり得んな、あの事件から数ヵ月後のあの日に、私も天ヶ瀬首相もお前に指摘されて今更かのように気づいたが、今もあの事件に関しては同じ疑問符をなお残している」

 

 

何で全てのMARVが分離せずに直接本土へ向かったのか・・・だね

 

 

話が変わって、二人は今なお疑問符として残っていた白騎士事件に関するある1つのおかしい点に話題の中心は移りつつあった。

 

 

 

 

 

ココから話は一端解説にはいる。

 

 

本来、現代のICBMはMARV(マーヴ)と呼ばれる核弾頭を()()有し、ミサイル発射後、大気圏越えた辺りで分離することで、それぞれが違う目標に攻撃ができるようになっている弾頭搭載方式をかなり広範の国々で採用しており、当然、事件の時自衛隊を苦しめた【トライデントX】のようにそれらのタイプのミサイルも放たれたわけだが、それらのICBMは本来の大きく運用から外れ、弾頭が分離されることなく本来の運用を外れて単弾頭の旧式と同じように日本へと真っ直ぐ向かっていったのである。

 

 

実のところ、このために自衛隊や各国軍の奮闘と白騎士の活躍によってなんとか日本は滅亡への窮地を脱せた、と言う側面があった。

 

 

言ってしまえば、MARVが正常に起動していたのなら、一部でも稼働していたのなら、日本本土のいずこか、或いはそのすべてに再び広島と長崎の悲劇が舞い降り、最悪そのままなし崩しで第三次世界大戦もあり得たのである。

 

MARV無しでも白騎士が参戦しなければ同じ結末を迎えていたと言われているだけに、この事実は不思議といって仕方の無い代物だった訳であったのだ。

 

 

 

 

「弾頭の分離部分にに細工するなり、ミサイルのプログラミング書き換えるなりなんなりの工作を行うことでMARVが機能しないようにすること自体は可能だとは確証がついた、だがどれも時間がかかるし、何より非効率的だ、内部から準備するにしても、中東の核まで使われていた以上、コネクション作りやらなんやらでどうあがいても最低でも10数年は準備にかかる計算になる」

 

 

「日本を潰す気であればあれば弾頭に工作なんて必要ない、単純に日本を攻撃して第三次世界大戦の引き金を引きたいんならわざわざ世界中のミサイルを使う理由がない、1~2発本物を飛ばして自衛隊に迎撃させるだけでも十分、最悪ミリタリーバランスを考慮しても各国から数発ずつ飛ばすだけで十分な筈だ・・・・・・犯人はいったいなぜに?」

 

 

「まったくわからん、だが、現状では思い付きもしないような何かしらのデカイ目的があった可能性が高い」

 

 

話を戻せば、二人はこの原因をチマチマと情報を集めては捜査していたのだが、全く糸口がつかめずにいた。

 

 

事件から8年近くがたった今もなお犯人・・・いや規模からしておそらく組織ぐるみの犯行なので犯行組織とでも言うか、犯人達と言うべきか・・・とにかくそれがこの事件に関して、その原因、方法、目的、その他もろもろの一切が不明のままなのだ。

 

 

「・・・ダメだな、暫く前後関係の洗い直しからやってみるか」

 

 

「兄さん、すっかりやってることがジャーナリスト染みて・・・・・・」

 

「しゃーないだろ、プーさんは能動的に動かないとやることねーんだから」

 

 

「そもそも怪我で政界引退したのはともかくその後の無職状態で世界巡りって・・・」

 

 

「お前のところの飛行艇にはいっつも世話になっとるがな、お陰さまでマイレージが爆溜まりよ」

 

 

「はぁ・・・相変わらず父さんにそっくりな・・・」

 

 

「警官の頃と首相やってた頃の貯蓄があったからな、使い道ねーからって結構のこってたのの良い使い時だったよ」

 

 

「・・・・・・兄さん、残りの貯蓄は?」

 

 

 

 

「・・・・・・各国で指名手配犯を片っ端から豚箱に送ったから、その関係の報酬のせいで大して減ってないな。」

 

 

「・・・・・・兄さんはホントに過労死したいのかい?」

 

 

 

真面目な話からまたそれているが、義秋は義照が裏で色々とやってるのを察しきり、タバコの煙の混じった大きなため息をはいた。

 

 

 

「まぁ良いや最後の真面目な話に移ろう、兄さん」

 

 

「・・・・・・本国の()()か?」

 

 

・・・・・・再び二人の目は真剣なものへと戻っていた。

 


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