side、正晴
「ハロルド首相!?オーレンドルフ首相!?」
「くそっ!離しやがれ!コンチクショウ!!」
「zzz.。o○」
出入り口へ向かう私たちが見たのは、抵抗むなしく独軍の屈強な警備部隊に連行されるかのごとく連れていかれるハロルド首相と、爆睡したまま担架で運ばれるオーレンドルフ氏だった。
また、私自身は専門外なので確信は無いが、ハロルド首相を除けば、拘束する警備部隊に限らず辺り一帯の人々をよくみると、皆一様にして
さっき束はオーレンドルフ首相に手招きされて彼処に向かった、と言うことはつまり・・・・・・
私は何が起きているのかをある程度察し、束の元へと引き返すことにした。
「みとり達は先に避難しててくれ!、俺は束のところへ行く!」
「正晴!?ちょっと!」
「話す余裕がない!」
束の身が危ない、今この場にいるのが本物のオーレンドルフ氏だとすれば、さっき束を手招きしたのはオーレンドルフ首相に変装した何者かと言う事になる。
しかも大会自体が長丁場にかつ昼休憩を挟んだものであった為、どのタイミングで入れ替わったのか?或いは最初から偽者だったのか?、それは解らないが、どれだけ短くとも、試合実況のため試合中大体は隣にいたハロルド氏が決勝戦開始から決勝が中止になる段階までは違和感を覚えなかったほどだ、その点も含めて非常に巧妙な変装能力がある。
・・・・・・もしかすれば
こうしてはいられない、急いで戻らねば!
束、無事でいてくれよ・・・・・・
side 束、
「始めまして、と言うべきか?まぁその様子だと私の遺伝子は恐ろしいほど仕事をしているようだが」
変装を解いて私の目の前に現れたのは、殆どはるるんと言っ良いほどに似た一人の男性だった。
(違う点を挙げるとすれば、目の色が日本人としてはごく普通の黒であるはるるんと違い、彼は灰色である点ぐらいだろうか)
「まぁ話を早くする必要があるし、取り合えず自己紹介と起点となる話をしよう」
その人物は今だ困惑する私を気にしつつも、放置するかのように話を続ける。
「私の名前は、村ノ瀬 正成(むらのせ まさしげ)、正晴は私の
「、話って言うのは、《私からの伝言》と・・・・・・《織斑姉弟の家族に関する話》な訳だけども、ぶっちゃけどっちからがいい?」
「!!!」
・・・驚きがあっという間に一周回って逆に冷静になってしまった。
幾ら姿がはるるんそっくりだからと言えど、余りにも話すことがピンポイントだ、ちーちゃんの家族の件はJAXAではタブー視され口外禁止になるほどだったのに、どこからその情報を聞き付けたのか逆に知りたくなってしまった。
なんせ、ちーちゃんの家族の事を知ってるとまで言うのだ、とてもそうとは思えなかったが、この時、その胡散臭さが私が回答を躊躇わない理由にもなった。
「うーん・・・それじゃあまず貴方からの伝言とやらからを聞こうかな?わざわざ私をここに閉じ込めておいてつまらない話は聞きたくないけど」
「だろうな、まず1つ、これは私のひ孫に当たる正晴へ、《私の真実は根元に眠る、そこに私の咎と共に眠る、パンドラの箱を開けたいのならば私にかかわる古業を知る覚悟をせよ》」
「二つ目はアンタと千冬さんへ、これはバミューダへの航路の最中解析した白騎士と、トルコから一時的にパクった打鉄、ティラノプテルスの解析からの結果だが、予想が正しければ《千冬さんの弟、一夏くんだっけ?、はISに関する適性を有している可能性が非常に高い》、今のうちにその事を想定して準備しとくと良いぞ。」
「3つ目は槇田元首相へこう送ってくれ、《親と同道はどうでもいいが、動きすぎると親と同じく早死にするぞ?》とね」
「・・・・・・え?」
正直、何を言ってるのか解らなかった。
最初の言葉はまるで意味が解らなかったし、白騎士が解析されてるなんていってるし、いっくんに適性があるってどうやって・・・
言いたいこと聞きたいことはたくさんあったが、続け様に彼は更なる話を続けてくる。
「・・・まぁ、幾ら天才と言えどもここまで来ると理解しきれんだろうし、今内容を纏めた紙ペラと
色々と聞きたいことができて混乱する中、彼は一番近くのドアを開き、そこから何かを抱えてやって来る・・・・・・
「ん?誰かを抱えて…!?、ちーちゃん!?」
そして、再びの衝撃が私を襲った。
side、義照、数か月前のとある日
モンド・グロッソの開催が近づき、世界中がにわかに沸き始めた数か月前のあの日、私は待ちに待った報告をとあるところから電話で受けることになった。
「・・・私だ」
「槇田首相、やっと件の情報を収集し終えました、今更ながらではありますがご報告させていただきます。」
「・・・私は元首相だぞ?」
「依頼時点では首相でしたので」
「はぁ・・・まぁいい、報告を続けてくれ。」
電話してきたのは日本の情報省の長官(つまり情報大臣)で、彼ら情報省の人員には、おおよそ10年近く前、まだ束や正晴が「白騎士」を開発していた初期の頃、日本の情報省に命じていた織斑千冬、一夏姉弟の家族構成、行方等に関する情報を調べさせていた。
そして、この日ついにそれに関する報告がでて来たのであった。
「・・・しかしここまでこだわるって、首相に何があったんですか?どれだけ時間がかかってもいいからと言われたんで確実を期すために結果10年近くかけてしまいましたが・・・」
「大臣、首相になる前の私の職は知ってるな?」
「・・・・・・ああ、成る程、首相は元々警察の方でしたっけ?」
「割りと一般人には忘れ去られている側面だがね」
「私刑は現代社会では論外ですよ?」
「只の人探しくらい大したことないだろう?それよりも報告を続けてくれ」
「はぁ・・・解りましたよ、」
一通り大臣とやり取りした後、彼からの報告を聞く。
「まず最初に、織斑氏の家族構成でしたが、予想に反して一夏君、千冬さん、ご両親の他にもう一人、織斑 円香(まどか)と言う名の一夏くんの
「五人家族!?んなバカな!?」
「・・・話は続いてます、問題はここからです」
「問題?」
「まず、織斑夫妻の行方不明の理由に関してなのですが・・・・・・」
・・・・・・私の回想から語れるのはここまでである。
だがこれだけは言える。
あの日私はそれまでの奇妙な人生に、自分では予想だにしなかった
そして、今日、私は見つけた。
「ゼェ・・・ハァ・・・ゼェ・・・ハァ・・・見つけた、やっと見つけたぞコンチクショウ・・・」
「・・・・・・見つかっちゃったか」
「・・・まぁ、こうなることは予想できてたよ」
「ハァ・・・ハァ・・・一夏と千冬に・・・ゼェ・・・ゼェ・・・説明してもらうからな・・・・・・ハァ・・・ハァ」
私が店から飛び出してどれ程たったのだろうか?、私は偶然の発見を元に、やっと千冬の両親を見つけることができたのである・・・