本話はかなりの長丁場になるのが目に見えてるだけに更新速度を戻して行きたいところです。
場所は遥か離れて日本国は篠之瀬製作所。
「いけー!千冬さんガンバレー!」
「他の機体も随分頑張ってますね・・・」
「千冬さーん!負けないでー!」
「千冬さーん!ガンバレェェェェェェェェ!」
「オイ誰か大神のサントラ持ってきてる奴はいないか!太陽は昇る流したいんだが!」
「\此処にいるぞ!/」
「種子島や宇宙ステーション、相模原や筑波とかの中継陣も見えてるかー!千冬さんの決勝、そろそろ決着の時が来るぞー!」
「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
「おう、お前ら少しは落ち着けや!」
千冬達が決勝の終わりに入った頃、謎の機械がその目を覚ました頃、篠之瀬製作所ではメンバーのうちただ一人留守番を担った行信と、たまたま休暇であったJAXA職員20数名が、他のJAXA関係施設の人々とスカ○プ等を通して交流しながら製作所内部のテレビで決勝の様子を見守っていた。
「ん?全ての機体の動きがとまりましたね」
「・・・次の一撃でこの一戦の結末が決まるな」
決勝戦はといえば、その様子たるや最後の時が迫ってると言わんばかりで、本気を出して激しく砲火を交わしていた4機共に初期位置近くで停止し、
ティアーズは武器は手持ちの近接武器であるインターセプターのみ、
テンペスタは風の分身が全滅し武装も腕部のクローのみ、
轟天は全ての武器が機能を停止しており、ロケットブースターのみが稼働している様子、
暮桜は武器である刀はまだ健在だったが、機体自体からバチバチと漏電しており、「機体がこれ以上保たない」のが目に見えるようになっていた。
「暮桜が・・・・・・」
「各所にガタが来ているのが目に見えるように・・・・・・」
「行信さん、別の機体で出場できなかったんですか?暮桜には多数の予備パーツがあった筈」
「予備パーツは決勝に行くまでに全て損耗した、暮桜以外の機体では今の千冬の本気だと一試合分の時間ですら持たないだろうな」
「そもそも、暮桜のベースとなった白騎士は機動に関して言えば《一人乗りの人型宇宙ロケット》と言わんばかりに直進性を高くした設計の代物で、競技用ISの枠組みにブチ込む代物じゃあない、要するに、白騎士を競技向けに再設計して産み出されたのが暮桜だ」
「武装や装甲は貧弱どころではない代物だが、こと機動力は機動性重視型の第二世代機を軽く越えてるし、機体の強度に至れば各国で開発中の第三世代機が完成した程度ではどうあがいても越えることの出来ないレベルだ」
「要するに暮桜はAK-47みたいなものを目指して設計されたと?」
「単純な扱いやすさと頑丈さの面で言えばそれに近いな、しかし、問題はそれを以てしても暮桜は千冬さんの本気に
「その前にこの試合で保つかどうかさえ怪しいんですがそれは・・・」
「大丈夫だ、心配する要素は何一つ無い、千冬はこの戦いも制するさ」
試合中、千冬は大技である「零落白夜」を一度も使用してない等、この場で勝利を掴めるのか?とJAXA職員達が不安がる中、行信はその場ではただ一人、千冬の勝利を確信していた。
その確信が直後、純然たる《予想外》によって裏切られるとは思わずに・・・・・・
ウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!
「なっ、何です!?」
「警報!?会場で何かあったのか!?」
千冬達が決着をつけようとしたまさにその時、突然会場全体に大音量のサイレンが鳴り響いた。
「お知らせします、先程突如出現した謎の大型機械への対応の一環として、本地域全体に対して戒厳令が発令されました!、これによりモンド・グロッソを直ちに中止、ご来場の皆様方々は直ちに会場から地域郊外へと避難し、警備部隊は緊急時対策マニュアルタイプBの内容に従い一般市民その他の避難誘導を行うようお願いいたします!」
「繰り返します!先程、本地域に対して戒厳令が発令されました!・・・・・・・・・」
突然発令された戒厳令、余りに急な出来事は、試合がクライマックスへと入り、凄まじい熱狂に包まれていた会場の空気を一気に冷やし、先程までの熱狂に負けず劣らずの壮大なパニックを引き起こすには十分すぎた。
「・・・何が起こってるんだ?」
「・・・!、行信さん!このチャンネルに変えて見てください!」
「何だ・・・?何だこいつは!?」
テレビ越しに起きた突然の出来事、訳がわからず呆然とする行信は、今見ているのとは別のテレビ局よる生中継も平行して視聴していたJAXA職員に促され、チャンネルを変える。
そこには、ISと言うには余りにも相違点の多すぎる、二足歩行で片腕を有する巨大な人形ロボットと、それに対峙する会場周辺をを警備していた独軍の姿があった・・・・・・。
一方、会場近くの酒場にいたアルバン元帥とロレッタ中将は、酒場の人に避難するように話を通した後、近くに駐車していた軽装甲車に乗り込み、現在は緑の大型ロボットと同時に出現した青いキャタピラのロボットのすぐ近くにいた。
「アルバン元帥、良かったの?大会に最大級の冷水ぶっかけた訳だけど」
「・・・こればっかりは仕方ないんだ、こればっかりは・・・・・・・・・」
青色のロボットに対峙するロレッタとアルバン、先程まで酔っていたロレッタは既に酔いを冷ましており、それとは別に、ロボットと対峙するアルバンの表情は非常に暗いものとなっていた。
「使うことは無いだろうと思っていた権限だったが、まさかこんな形で使用することになろうとはな・・・・・・」
「でも貴方の言う通りの性能ならば仕方のないことだと思うけど?」
「念を押しただけだ・・・・・・
「閣下!戦車隊が配置につきました、何時でも前方の青いのに斉射を浴びせられます!」
「よし、私が指示するまできっかり半数ずつ、奴の左右の回転機本体接続部分を照準して待機!、
「了解!」
(・・・・・・たまたま見つけた妄想の産物かと思っていたものがまさか本当に出てくるとは・・・・・・!もしもあの記録の通りだとすると事態は既に深刻なことになっていると言うことにッ!)
「閣下、会場警備のIS部隊が本空域に出現した青い魚のような飛行物体との交戦を開始しました。」
「了解した、くれぐれも油断するなと部隊には念を押すように、不味くなったら対空戦車隊に任務を引き継いですぐに退却するんだ!いいな!」
「はっ!」
「アルバン元帥、大丈夫ですか?」
「心労がちとヤバイかな、サレナとラウラ達がこの場にいなくてホントよかったと言うべきか・・・」
実は、大会中止による批判、経済的損失、その他もろもろの予測可能な被害を全て考えた上で、先程戒厳令を敷き大会を中止に追い込んだ男こそ、目の前に展開する謎の大型ロボット群を見たアルバンであった。
彼は義照を見失った後、暫くは決勝を見ていたのだが、会場を巡回警備していた配下の警備部隊が発見し存在を報告された謎の大型ロボット群を見て、非常に強く戦慄した状態で戒厳を敷いたのである。
そして今、必死に部下との緊密な連携をもってパニックに陥った会場の防衛を行うところだったのだが、このとき既に彼の心労はピークに達していた。
と言うのもそもそもをして、この時巨大なロボット群は会場に向け動いてこそいるものの具体的な攻撃行為を行っておらず、戒厳を敷く要因としては不適切で、本来、この状況では戒厳を敷く事が出来ない状態だったのである。
アルバンは彼自身が有していたとある権限を行使して無理矢理戒厳を敷いた訳なのだが、後々に飛ばされる非難の嵐を想像すると、正直、ほぼ確実に巻き添えとなるオーレンドルフ首相の事もあり気が重たくなるのも仕方のないことであった。
(ピーピピガガガッ、フィッシュ325沈黙、コレヨリ周辺の軍事戦力ヲ全テ敵対認定、
「IS部隊が青い飛行物体を一機撃墜しました!」
「よし、よくやっ・・・・・・喋った!?」
「元帥・・・不味いわ!!アレを見て!」
会場に迫る飛行物体の一機を撃墜したとの報告を受けたその時、アルバンとロレッタには青いキャタピラのロボットから
「・・・・・・なんてこった」
「おい!すぐに束さん達に連絡だ!会場の様子を確認しろ!」
「ダメです!先程の映像で安否確認の電話が急増したからか回線が繋がりません!」
「独軍のIS部隊がものの数秒で・・・・・・」
「信じられん・・・あのデカブツ跳躍しやがった・・・・・・」
テレビを見ていた行信達は、テレビ越しの光景を最初信じることができなかった。
まず最初に、青いキャタピラロボットの側輪みたいなのが高速回転したかと思うと、その側輪の四方八方から超高速でミサイルが大量に放たれた。
目標は上空で青い魚に攻撃していた独軍のIS計8機で、突如大量に放たれたミサイルを避けきることができなかった4機がモロに喰らいSEを切らして撃墜、2機は幾つかを避けるが爆風で視界が悪くなったところを残っていた数機の青い魚に集中放火され同じく墜落、残った2機は巧みな機動でミサイルを避けきるも、
幸い、絶対防御が機能していた事と近くに独軍の部隊がいたことからパイロット達は無事に回収され退却したが、この事により独軍の現地防衛戦力のISは壊滅、残った通常兵器での迎撃を余儀なくされたのである。
しかも、出現していたロボット兵器(青いキャタピラが1、緑のロボットが2、詳細不明だが10機前後と思われる青い魚)は魚が一機撃墜されただけである、状況ははっきり言って最悪といってよかった。
「・・・どうなってやがるんだ!」
「中継ヘリも現場から退避するみたい・・・・・・本格的に大惨事になってきましたね・・・・・・」
中継カメラがロボット兵器から離れて行くのを見ている職員達、現地は一体何がどうなっているのか解らない状態に至っていたが、この直後に起こった出来事が製作所にいた行信とJAXA職員達の混乱を加速させた。
「!?、白騎士が何で動き出している!」
「えっ?」
ふと振り返った行信が見たのはスラスターを吹かして今まさに飛び立たんとする無人の白騎士の姿であった。
そして、職員の一人が行信の叫びに反応して白騎士の方を向いたと同時に、白騎士は製作所の天井を無理矢理ブチ抜き、そのまま何処かへと飛び去っていったのである。
「・・・、これは一体・・・・・・?」
「白騎士・・・・・・まさか!」
「でしょうね、何とも言いがたいですが、これでやるべき事が出現したと言えますね」
飛び去っていった白騎士を見た職員達は、このとき白騎士がどこに向かうのかを簡単に予測することが出来た。
「・・・・・・首相に緊急連絡だ!」
「急げー!可能な限り、白騎士をしっかりと送れるようにするんだ!」
「連絡しなきゃ(使命感)」
「IS委員会にも連絡!」
「此方も可能な限りのアシストを行います!」
行信の号令を起点にその場にいた職員のみならず中継で事の顛末を見ていた他の施設の職員達も一斉に動き出す。
その目的はただ1つ。
千冬の元へと向かった白騎士を無事に送り届けること。
(暮桜があの状態である以上、無理をしたとしても千冬が本領を発揮できるのはもう白騎士のみ、頼む皆、無事でいてくれ・・・ッ!)
各国の防空網に掛からないようIS委員会を通して急ぎで連絡をいれようとする職員達。
白騎士が空けていった天井を眺めながら千冬達の無事を祈る行信。
そんな彼らを後に置き、白騎士はその進路を遥かドイツへと向けて行く。
その身を流星のように光らせ、世界の空を駆けて行く・・・・・・・・・
~続く~