今日は、実験の為に幻光河北岸に来ている。要はグアドサラムのすぐ近くだ。
私が現在使える魔法は、四属性(火、雷、水、氷)のラ系までの攻撃魔法、属性攻撃を防ぐバ系の補助魔法、下級の回復魔法、状態異常回復魔法だ。
先日、本来この世界には存在しないはずの魔法を発動できた。恐らくこれが与えられたチートなんだろう。という訳で色々試そう。
「ふむ。まずは分かりやすいものから。"エアロ"」
"エアロ"は、風属性。そもそも存在しない属性だが、
「……成功しましたね。他の属性に有利かは分かりませんが」
あの後、様々な記憶にある限りの魔法を試してみて分かったことは多い。
まず、使えるのはFFの呪文。"メラ"など、他のゲームの魔法は使えない。全てのゲームの魔法を知っているわけではないが無理だろう。ああ、召喚魔法も使えない。
次に、FF10にあり、私がまだ修得していない魔法は使えない。例えば、FFシリーズによく登場する魔法"ヘイスト" これは、時間の流れを速め、動きを速くする魔法でFF10にもある。だが、使えなかった。他にも使えない魔法がいくつかあり、共通点はこの世界に存在し私が修得していないことだった。
最後に、消費MPに関してだ。同じ位の威力の"ファイア"と"エアロ"を比べると、後者の消費MPは圧倒的に少ない。チートとしての補助だろう。だが、ジャ系という最上級の攻撃魔法のみ変わってくる。MPが全て消費され発動しなかったのだ。恐らく大規模な破壊はできないようになっている。
まあ、制約はあるが便利なチートだ。
暗くなってきたので、グアドサラムに帰ってきたんだが家に入りづらい。というのも、今は父ジスカルが帰ってきているんだ。無邪気にバカップルに割り込む度胸は無い。仕方がない、入るか。
「ただいま帰りました」
「ふむ。お帰り」
珍しくジスカルが迎えてくれる。そして母様がいない。
「シーモア。少し話がある」
「何でしょうか?」
「母さんの体が弱いのは、知っているな?」
「……ええ」
確かに原作では、若くして死期を悟っているような描写があり、普段から咳き込んだり顔色が悪かったりするからな。何とかしたいと思っているがどうすればいいのか。
「母さんが倒れた」
「……!」
「心配しなくても直に回復する。だが持病でな。長生きはできないと言われている」
「母様の病気とは?」
「詳しくはわからないが、不治の病といわれていて徐々に体力がなくなっていくものだ」
あれ?それって……
「珍しい病気でな。母さんは昔、未知の魔物と戦ったときに罹ったそうだ。呪いじゃないかとも言われていてな、母さんは周りの人から避けられるようになった」
「母様のところへ行っても?」
「ああ、行ってこい」
可能性は、あるっ。
「あら、お帰りなさい。シーモア」
「ただいま。母様」
「また魔法の練習?いつも熱心ね」
「はい。それで、母様、新しく白魔法を修得したのですが使ってみても良いですか?」
「ふふ。どんどん成長していくわね。流石、私たちの子。ええ、いいわ。見せて頂戴」
母様は、どんな魔法でも楽になったふりをするつもりだろう。
「"リブート"」
「こ、これはっ。…………体が、楽に!本当に楽に!?」
はぁ~。良かった。上手くいった。
「父様を呼んできますね」
「え、ええ。どうなっているの?」
「ま、まあ、それはまた後で」
で、呼んできた。
「おまええぇぇぇ」ガシッ
「あなたあぁぁぁ」ヒシッ
予想通りの光景が広がっている。
私の使った魔法"リブート"は、"ウイルス"状態を解除する魔法だ。"ウイルス"状態とは、HPが減る際、最大HPが減少するという恐ろしい状態異常だ。ただ、本来FF10には存在しない。母様が、本当に"ウイルス"状態だったかは分からない。もしかしたら、未知のウイルスか、体力が最大HPと認識され、それが減り続けるという状態を回復したのかもしれないが、効果があったのは事実だ。
「なに?シーモアが白魔法で?」
「ええ。今日、修得したと言っていたわ」
「そうか。シーモア、どういうことなんだ?」
さて、どうしよう。
「ええ。"リブート"という魔法です」
「"リブート"今までにない魔法だな。どういう効果なんだ?」
「漠然とですが特殊な状態異常を治すもののようです」
「状態異常?毒のような?つまり特殊な毒を受けていたということか。それこそ呪いのような」
「やっぱり、あの時の魔物かしらね」
「だろうな。しかし、どうやってシーモアはそんな魔法を?」
誤魔化すしかないな。
「私自身よくわかっていませんが、エボンの賜物かと」
ようは神様のおかげっていってみる。チートくれたからあながち間違っていないし。
「ははは。そうだな。きっとエボンの賜物だ」
「そうね。後でみんなでお祈りをしましょう」
「その前に母様、一度お医者様に確認をしてもらいましょう」
「大丈夫よ」
「そうもいかないだろう。待っていなさい。直ぐに連れてくる」
その後、母様は医者に健康体だとお墨付きを貰った。
完全にチート頼りではあったがなんとかなったな。それとこの調子だと、世界の修正力というのはないのかもしれない。勿論気は抜けないが、母様が召喚獣になることはないだろう。
作者の都合上FF12の魔法が多く登場する予定です。