雪風の青髪少女   作:【時己之千龍】龍時

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第8話 武器屋

 

 学院に戻るとまず学院長室に向かい、エリザの事を話しに行った。話しの時には私に任せてとタバサに言われ、龍燕はタバサに任せた。移動中にタバサは考えていたようだった。

 

 タバサは学院長に『その子は龍燕の養子となった』と、ただそれだけ言った。それだけで大丈夫なのかと龍燕は不安になったが、学院長は『うむ、そうかわかった。特別に許可しよう』と言い返し、龍燕とエルザは凄く驚いたが口には出さなかった。勿論の事だが、吸血鬼であることの説明は学院長に伝えてはいない。

 

 

 

 

 そして任務から帰って数日が過ぎた。タバサは「今日は休みだから城下街に行く」と言ってきた。エルザは「城下街は初めて」とはしゃいでいた。煉や暁もどんなところかと考えたりしていた。

 

 煉と暁のことは前の学院長との話の後にエルザに紹介し、仲良くなった。

 

「出発の準備は出来たな」

「うん」

 

 そこへ扉がドンッと音をたて、開かれた。

 

「ちょっとタバサ聞いてよ!ダーリンが!」

 

 煩く感じたのか、タバサは杖を一振りするとキュルケの声が消えた。キュルケは声はないが両手を動かしながら必死に何かを話しているのがよくわかった。

 

 一分程経つとタバサはもう一振り杖を振り、声を戻した。

 

「…なたはちゃんと言わないとわかってくれないもんね。あたしね!恋したの!でね?その人が今日、あのにっくいヴァリエールと出掛けたの!あたしはそれを追って、二人が何処に行くのか突き止めなくちゃ行けないの!わかった?」

 

 タバサはいつもの顔で頷く。

 

「出掛けたのよ!馬に乗って!貴女の使い魔じゃないと追いつかないのよ!助けて!」

 

 キュルケは涙目でタバサに言う。

 

 タバサはキュルケをじっと見て頷いた。

 

「ありがとう!じゃ、追い掛けてくれるのね!」

 

 タバサは再び頷くとはっとした表情を見せると同時に声を漏らした。

 

「あ…」

「どうしたの?」

「シルフィードに全員で乗るのは難しい」

 

 タバサは悩み始めた。シルフィードが乗れるのは馬を追うことを考えて、精々四人くらいが限界である。今いるのは、タバサ、龍燕、煉、暁、エルザ、キュルケの六人。二名は乗れない。

 

「タバサ、俺はエルザを抱えて駆けるよ」

「いいの?」

「友人の頼みなんだろう?なら聞いてやるといい」

「ありがとう」

 

 準備は皆終えていたため、外に出るとすぐに城下街に向かった。

 

 

 

 

─城下街

 

「ここが城下街か。…でこの通りは裏道か?」

 

 龍燕達が通っている通りの幅は腕を広げた大人が三人並ぶ程度の広さだった。

 

「ここは中央通りで広いって聞いたけど?」

「中央……通り、だったのか」

 

 キュルケの答えに龍燕は少し驚いた。そこでふと龍燕はある気配に気づいた。

 

「ん、この気配は」

「どうしたの?」

 

 龍燕は才人たちの気配を感じ、周りを見回した。

 

「才人達だ。前方の方から感じる」

「前方から?…いたわ!」

 

 キュルケは才人を見つけ、声を出した。

 

「あの店は?」

 

 龍燕は才人の入った建物を見て呟いた。

 

「あれは…武器屋」

 

 短くタバサが言った。

 

「武器屋か。入るか」

「ちょっと待って」

 

 進もうとする龍燕の腕を掴み、キュルケが止めた。

 

「どうした?」

 

 龍燕は振り返る。

 

「武器屋に入ったって事は、ルイズはダーリンに武器をプレゼントするって事よ!だから、ルイズよりあたしが良いのを買ってプレゼントしてやるの!」

「…そうか」

「龍燕」

 

 エルザが口を開いた。

 

「どうした?」

 

 エルザはゆっくりと龍燕の手を握った。

 

「ん?」

 

 続いて煉が逆の手を握った。

 

「煉?どうした?」

 

 すると暁は龍燕の前に立つ。

 

「出て来るのを待つんなら、何処かよろうよ。折角来たんだから、タバサも回ろうよ」

 

 暁は龍燕とタバサを交互に見て言った。タバサは頷いた。

 

「えっ?あたしは?」

「来る?」

 

 暁はキュルケに言い、煉もじーとキュルケを見ている。

 

「あたしは…。そうね、あたしはそこのお店を見に行こうかしら」

 

 そう言ってキュルケは行ってしまった。龍燕はそれをどうしたんだろうと首をかしげ

ながら見ていた。

 

 

 

 

 城下街を回り昼食を終えた後、龍燕達はキュルケと合流して武器屋に入った。

 

「いらっしゃいませ!」

 

 店主が迎えた。

 

「店主~」

 

 キュルケはいきなり店主に近づいた。

 

「な、なんでしょうか」

 

 店主は鼻を赤くさせて答える。

 

「ここで一番上等な、高価な剣を下さいな」

「少しお待ちを!!」

 

 店主は駆け足で倉庫に行き、一振りの金ぴかな剣を持って来た。

 

「お待ちしました!この剣なんてどうでしょう?!」

「そうね」

 

 キュルケは悩む。

 

「この剣は彼の有名なゲルマニアの錬金術師が造った剣でさぁ。値段はエキュー金貨で三千。新金貨なら四千五百でどうです?」

 

 店主は剣の説明と値段を言って薦める。

 

「ちょっと高くない?」

 

 キュルケの眉が動く。

 

「へぇ、名剣は、それに釣り合う黄金を要求するもんでさ」

 

 キュルケは少し考えた後、思い付いたのか店主の顎下を手で撫でた。

 

「ご主人……、ちょっとお値段が張りすぎじゃございませんこと?」

 

 店主の顔が緩んでいく。それを見て龍燕は溜息を着いた。

 

「へ、へぇ…。名剣、は」

 

 キュルケはカウンターの上に腰掛けた。さらに左足を持ち上げる。

 

「お値段、張りすぎじゃ、ございませんこと?」

 

 ゆっくりと投げ出した足をカウンターの上に持ち上げた。店主の目はキュルケの太腿

に釘付けになった。

 

「さ、左様で?では、新金貨四千「少しここ、暑いわね?」…!」

 

 キュルケはシャツのボタンを一つ外した。店主の顔が赤くなっていく。

 

「シャツ、脱いでしまおうかしら……。よろしくて?ご主人」

「お、お、お値段を間違えておりました!二千で!へぇ!」

 

 キュルケはさらにボタンを一つ外す。

 

「千八百で!へぇ!」

 

 再び、一個外した。キュルケの胸の谷間があらわになる。それからまた、キュルケは谷間を見る店主の顔を上げた。

 

「せ、千六百で、へぇ!」

 

 キュルケはもう一つのボタンに手を掛け、もう片方の手をスカートの裾に触れた。

 

「千よ」

 

 キュルケは言い放った。

 

「あ、ああ…」

 

 顔を赤く染め、震える店主。キュルケは笑みを浮かばせ、スカートの裾を微妙に上へずらした。

 

「千、よ」

「あ、ああ…」

 

 するとキュルケは裾を元に戻し始め、希望の値段を繰り返して言い放つ。

 

「千」

「千で結構でさ!!」

 

 キュルケはカウンターから下りると、さっさと小切手を書き、カウンターに置いて品を持った。

 

「買ったわ。タバサ、私外にいるわね」

 

 用はもうないと言う様にキュルケはまっすぐ店を出ていった。扉の閉まる音を聞いた店主は我に戻った。

 

「ああ~~っ!!あの剣を千で売っちまったよ!」

 

 頭を抱え始めた店主を気にせず、龍燕は周りを見回る。周りには剣や槍、盾や甲冑と沢山置かれていた。

 

「これは?」

 

 たくさんある中から木製の箱を龍燕は見つけ、積もった埃を払った。その蓋に灼煉院家の家紋と酷似する描かれているのに気づく。

 

「何故灼煉院家の家紋が?」

 

 さらに気づいたのは、箱は二重の封が掛けられていた。また、家紋以外にも羅暁国の字で『この文字が読める者へ これを授ける』と書いてあった。

 

「店主!」

「ん?なんだ」

「これを頂けないか?」

「そんな埃塗れな箱捨てようと思っていたんだ。それ持ってさっさと出て行きな!今日は早仕舞いだ」

 

 店主は不機嫌に言い放つと、引き出しから酒瓶を取り出して飲みはじめた。

 

「有り難く頂く」

 

 龍燕達は店から出た。するとエルザが聞いてきた。

 

「龍燕。それはなんなの?」

「わからないが気になった」

「なんで?」

「灼煉院家の家紋と俺のいた国の、羅暁国の文字で書いてある」

「そう、なんだ」

 

 キュルケと合流して学院に戻った。

 

 

 

 

 学院に着くとタバサはキュルケと共にルイズの部屋へ行き、龍燕達は先にタバサの部屋に戻った。

 

「龍燕。これどうするの?」

 

 暁が龍燕に聞く。

 

 龍燕はその箱は灼煉院家の誰かが遺した物かもしれないからとても貴重な物だろうと思った。しかも箱は開けられたり、壊されたりとされないように特別の封が二重に掛けてあった。しかし、龍燕は開けようと考えたが封している二重の古い術式に頭を悩ませていた。

 

「開けたいが…難しいな。これはどうやって開けるんだ」

 

 すると煉が箱を取り、裏面を指差した。

 

「龍燕。裏」

「裏?」

 

 煉が指差した裏面を見てみると、薄く擦れているが『神炎を掛けよ』と書いていった。

 

「神炎を?」

 

 龍燕はまさかと思い、煉から箱を取り千変の炎の『清めの炎』を掛けた。すると木製の箱は浄化され、綺麗になった。同時に封が消えた。

 

「封が…消えた?」

 

 エルザが覗き込む。

 

「…開けるぞ」

 

 龍燕は箱を開けた。中には武己と古本が入っていた。

 

「武己、か。多分…いや確実に俺の国で造られたものだな。本は…」

 

 何かを言いかけた龍燕は木箱の蓋を閉じた。

 

「どうしたの?見ないの?」

「今度見よう」

 

 そう言って龍燕は箱を武己へ仕舞い、煉と暁も武己へ戻った。

 

「龍燕。ただいま」

 

 タバサが戻ってきた。

 

「もう遅いから寝よう。今日は床に寝るよ」

 

 そう言って龍燕は布団を武己から出して敷いた。

 

「私も下で寝る」

 

 するとタバサは龍燕の隣に横になり、そのまま寝てしまった。

 

「早いな…」

「私も…いいかな?」

 

 エルザは龍燕の腕を掴んだ。

 

「わかった。けど布団一つで三人は狭いな」

 

 龍燕は再び武己から布団を出し、龍燕は真ん中に横になった。

 

「おやすみ。エルザ、タバサ」

 

 

 

 

 

 


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